DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
色々あって少々遅れましたがなんとか書き終わったので投稿いたします。
では、そこまで場面は進まなかったよ、な第十六話をどうぞ。
義妹である葛葉
正直な話、透子たち一般人の顔色が良くない──恐らく夜もまともに眠れなかったのだろう──ことからどうしたものかと頭を悩ませていた。
しかし、その中でも圭だけは青白く強張った表情を浮かべながらも、気丈にも晴明に話しかける。
「……あの、蘆屋さん。ヒーホーくんと一緒に暮らす場合はどうすればいいんですか?」
彼女の言葉を聞いた晴明は少しだけ悩み、とある一つの方法を語る。
「一番確実な方法は祠堂さんが俺と同じ【
晴明の言葉を全員一瞬理解できなかったようだが、理解が及んだ時に美紀が鬼気迫る表情で身を乗り出して、噛み付くように抗議する。
「……! それって圭が危険になるってことじゃないですか!」
「……そうだな、それは否定できない」
「……蘆屋さんっ!」
晴明の言葉に激昂する美紀だったが、そこで透子が彼女を落ち着かせるように話しかける。
「まぁまぁ、まずは落ち着いて。えっと、美紀さん、だったわよね……?」
透子が確認するように告げると女子高生組二人は、救助された直後に透子が感染発症したためにまともに自己紹介をしていなかったことに気付く。
「あ、はい。そうです。私は巡ヶ丘学院高校二年の直樹美紀です。で、こっちが」
そう言って美紀は圭の方を向く。その視線で美紀の意図がわかったのか圭はコクリと頷くと。
「美紀と同じく二年の祠堂圭です。よろしくおねがいします」
と、美紀に続き自己紹介をする。それを聞いた透子もまた返礼として。
「うん、二人ともありがとう。で、改めて自己紹介だけど、わたしは赤坂透子。今はしがないラジオパーソナリティーに、なる予定だったんだけどね……」
「なる予定だった、とは……?」
美紀が不思議そうに問いかけるがそれを見た透子は苦笑しながら。
「わたしは元々上京してたんだけどこっちに出戻って来たの。それで巡ヶ丘ラジオに就職してお仕事をこなしてたら、今度の番組更改時に一枠貰えることになってたんだけど、その矢先にこんなことが起きちゃってね……」
「……そうなんですね。って、ん? そう言えば…………」
「どうかしたの、圭さん?」
透子の言葉に同情しつつも何かを思い出したように疑問顔になる圭。それを見た透子はどうしたのか、と彼女に問いかけるが。
「そう言えば、赤坂さんの声、どこかで聞いたことがあるような気がして……。どうしてなんだろ?」
「圭も? 私もなにか聞き覚えがあるような気がしてたんだけど……」
そう言って不思議がる二人。その二人を見た透子は笑いながら。
「ふふ、もしかしたらだけど二人ともわたしの歌を聞いたことがあるのかもね? さっき上京してたって言ったでしょ? その時に音楽関係の仕事で、一応CDも出してたから」
そこまで売れたわけじゃないんだけどね。と笑いながら告げる透子。そんな彼女の言葉を聞いた圭は。
「…………あぁぁぁぁ~~~~!!!」
と、いきなり叫び声を上げると、近くに置いていた自身の荷物を乱雑に漁りだす。その突飛な行動に全員が驚いていたが。
「あっ……たぁ~~~!!」
目当ての荷物を見つけたのか、手に持って天に掲げるとホクホク顔で戻ってくる。そのあまりの落差にどう反応していいかわからない面々は呆然としていたが。
「これ! 赤坂さんのCDじゃないですか!?」
テンションが上った圭は、透子に確認を取りながら手に持っていた小型のCDプレーヤーに入っている音楽CDを再生する。
するとたしかに彼女の手の中にあるCDプレーヤーから、透子らしき優しい音色の歌声が響いてくる。
「へぇ、たしかにこれは透子さんの声だな」
「本当ですね」
「でしょでしょ!」
三者三様に彼女の歌声に聞き惚れていると、自虐を含めて言った冗談が現実になるとは思っていなかった透子が茫然自失の状態から我に返る。
「え、えぇ、これは間違いなくわたしのCDね……。冗談で言ったつもりだったんだけど、まさか本当に買ってくれてたなんて、圭さん本当にありがとうね」
「……えへへ」
透子からCDを買ったことに対して礼を言われた圭は手を後頭部で組みながら照れくさそうに笑う。
それを見た美紀は、彼女がなぜそんなに照れくさそうにしているのか、そもそもなぜ圭が透子のCDを買ったかを思い出す。
「そう言えば圭、そのCD、前に動画サイトで聞いてすごく良かったからCDショップで買おうと探したら、どこにも置いてなかったから駆けずり回ったのよね」
あの時は私も付き合わされたなぁ、と美紀がしみじみ呟くと圭は焦った表情に、透子は驚いた表情を浮かべる。
そして圭は美紀の肩を掴みガックンガックン揺らしながらどうしてそんなこと言うの、と詰め寄る。
「もう、美紀! あの時付き合わせたのは悪かったけど、その後謝ったじゃない! なんでそんなことを本人の前で言うの!」
「ちょっ、圭、痛っ、てか目が回って、キモチワル……、揺らすのやめ……!」
最初こと驚いていた透子だったが、そんな二人のやり取りを見て思わず吹き出す。その音で二人は、この場所には自分たち以外がいることを思い出して赤面する。
「あう、あう、えっとこれはですね……」
そのことでテンパったのか圭は突拍子のない行動を取る、その行動とは。
「えっと、えぇ~と、サインください!!」
と何故かCDプレーヤーを透子に突き出す圭。それを見た透子と晴明は流石に我慢の限界を超えたのか笑い出す。
「くっ、くくく」
「ふ、くっ、ふふ。え、えぇ、いいわよ」
笑いながらも圭からCDプレーヤーを受け取る透子だったが、本当にこれにサインしていいのかと問いかける。それを聞いて本当にサインをしてくれると思っていなかった圭は、再び自身の荷物を漁りだすと、一つのCDケースを持ってくる。
「──これにお願いします!」
と、彼女は透子にそのCDケースを差し出す。それを受け取り透子は近くにあったペンを取るとさらさらと自身の名前を書いていく。そして書き終わるとCDケースを圭に返却する。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございますー!」
圭は透子からサイン入りCDケースを受け取ると、そのままヒャッホウと叫びそうなほどに舞い上がる。
彼女のその姿を見て破顔する透子。それを見て晴明は遠子に話しかける。
「良かったじゃないか、透子さん。ここにもファンが、それも生き残ってくれてて、さ」
「……ええ、そうね」
晴明の言葉に同意しながら、彼女はかつて自分のファンだと言ってくれた、今回の巡ヶ丘の災害にてバケモノに成り果ててしまった先輩に思いを馳せる。
(──先輩、貴女以外にもわたしのファンになってくれた娘がいましたよ。もし先輩が生きていてくれたら……)
もしかしたら、いい友人になったのかも知れませんね。と、舞い上がる圭を見て思う透子。
そんな彼女たちの微笑ましい姿を見ながら晴明は手でパンパンと拍手をすると、申し訳無さそうな顔をしながら告げる。
「あ~……。皆、済まないがもうそろそろ話を戻してもいいかな?」
その晴明の言葉に、ここに集まった元々の理由を思い出したのか三人とも、特に舞い上がっていた圭はハッとした表情になると、いそいそと元の場所へと戻ってくる。
それを確認した晴明は。
「で、どこまで話したんだったか……。あぁ、そうそう。一つの手段として悪魔召喚師のことを言ったんだったな」
晴明の言葉にコクリと頷く面々。その彼女たちの姿を見た晴明は何故悪魔召喚師のことを話したのか、その理由を告げる。
「それで、何故悪魔召喚師のことを話したかというと、結論から言うと他の手段はデメリットしかないからだな」
「「……はい?」」
晴明の言い様に疑問符を浮かべる女子高生二人。透子も同じ気分だったが、それでは話にならないので晴明に話を続けるように促す。
「晴明さん、それはどういった意味で、そうなるのかしら?」
「ああ、それはだな──」
そう言って晴明は、他の手段と、何故デメリットしかないのかを告げる。
その手段とは、圭やジャックフロスト自身を葛葉の里などで保護する方法だが、これの場合保護という名の軟禁生活になる可能性が高い。と、言うのも今回の場合、圭は、ただ悪魔とともに暮らすだけではなく、それこそどっぷりと交流を深めてしまっている。
──魔が差す、という言葉がある。
本来この言葉は普段生真面目な人間が、何らかの悪事に手を染めた場合、まるで悪魔に取り憑かれたかのようだ、という意味の言葉であるが、今回の場合、圭たちはジャックフロストと交流を深めた結果、彼の存在、雰囲気のようなものが彼女に馴染んでしまい今後彼女の元にはそれを道しるべとして多くの悪魔や怪異などが辿り着く可能性が高い。
その観点から見ても元の生活に戻る、というのは論外だ。
説明するまでもないとは思うが、悪魔を惹きつける可能性がある以上何らかの理由で一人になった時に悪魔に襲われて、翌日変死体として発見されたなんてことが起きてもおかしくない。
もちろん晴明はその辺のフォロー、結界を張ったり、若狭姉妹に御守を渡したように悪魔を寄せ付けない護符や御守を渡すことも可能だが、それはそれで問題が起きる。
なんだかんだで、蘆屋晴明という人物は分家とはいえ陰陽師の名家である蘆屋の出であると同時にかなりの実力を持ち、なおかつ今代葛葉ライドウとも親交を持つということから、裏社会ではかなりの有名人なのだ。
そんな人物に配慮されている一般人なんて、それこそ重要人物と喧伝しているに等しく、たとえ御守を持たせていたとしても、ダークサマナー、しかも超人クラスの実力者であるシド・デイビスやフィネガン、マヨーネなどが出張ってきた場合、いくらなんでも御守や護符程度では不足すぎるし、たとえヤタガラスの人員を配置したとしても蹴散らされた上で攫われたり、最悪殺される可能性が高い。
無論、晴明自身も護衛としてある程度行動はできるが、それ以上に彼は悪魔絡みの事件や異界化した土地を正常化するためにあちこち飛び回ることが多いために四六時中護衛できるわけではない。
そのことから考えるにどう見てもリスクとリターンがあっていない、と言わざるを得ないだろう。
そのことを彼女たちに説明していく。それを聞いた圭はまた顔を青ざめながら晴明に質問する。
「……あの、そのダークサマナー? という人たちはそんなにすごいんですか……? 蘆屋さんが戦ったとして、その人たちに勝てるんですか……?」
「ん? ああ、
晴明の答えを聞いて絶句する三人。特に透子は彼のバケモノっぷりを何度も見ているために彼がそうまでいう人物たちが本当に存在するとは思えなかった。
思えなかったゆえに透子は本当にそうなのか、と確認を取る。
「えっと、晴明さん。それは本当に……? 冗談とかではなくて?」
その質問に晴明はなんの迷いもなく首肯すると。
「ああ、残念ながら、な。尤もあの娘、ライドウなら三人相手でも問題なく蹴散らしてみせるだろうが、俺自身にはそこまでの実力はないよ」
と、苦笑しながら肯定する。
それを聞いた三人はもはや何がなんだか、といった様相だった。
透子にとってはゾンビたちを歯牙にもかけない存在、女子高生二人からすればあのエイのバケモノ、彼女ら自身は知らないがソロモン七十二柱の一柱であるフォルネウスと互角以上に戦える晴明と、三人掛かりであればその晴明を殺せる可能性があるダークサマナーたち。
そしてさらに晴明が言うには、そのダークサマナーたちを苦もなく蹴散らせるというライドウと呼ばれる人物。
彼が言うことが本当であるのならば、創作物で俗に言う主人公最強物を体現したかのような人物が現実に存在するということになるのだから、そう思ってしまうのも無理はないだろう。
事実、葛葉ライドウは世が世なら実際に物語の主人公なので彼女らの考えも
「まぁ、マヨーネのやつに関しては色々とあったから積極的に殺し、殺されってのには発展しないとは思うが……。ふぅ、ま、それはともかくとして」
そう言って晴明は、コホンと咳払いをすると次に悪魔召喚師になる場合のことを説明する。
「そして悪魔召喚師になる場合なんだが、実はそっちの場合のほうが危険性は少ない可能性があるんだよな……」
「え? なんでですか?」
晴明の言葉の意味が理解できない圭は思わず疑問を挟むが、それに晴明は苦笑しつつ答える。
「それに関してはさっき話した俺と知り合いだというデメリットが、メリットに変わるというのが大きいな」
そう言って晴明は何故デメリットがメリットに変わるのかを説明していく。
そもそも悪魔召喚師とは裏の業界、隠された存在であることから基本的には元々その世界で生きてきた家系や、現役のサマナーが才能ある者を弟子にとって育成というのが主流となる。
今回の圭の場合は後者となるが、その場合誰が師匠となるか。それは言うまでもなく彼女を発見した晴明本人が師匠となる。
そして晴明は先ほども述べた通りライドウとも親交を持つ裏世界の有名人である。
その弟子になるということは、つまり晴明やライドウの後ろ盾を得るに等しく、そんな存在に手を出すバカは居ない。
それを象徴するように裏社会ではとある一つの言葉が囁かれている。
──曰く、ライドウには手を出すな。手を出したバカがいた場合は、今すぐその者とは縁を切れ。
そう言われる程度には葛葉一族、とりわけライドウという存在は知る者たちにはアンタッチャブルとして扱われているのだ。
実際に圭が晴明に弟子入りした場合、姉弟子となる神持朱夏の時も、それとなく遠くから監視している目はあったが、直接動こうとした折にはどこからともなく現れたライドウに“組織ごと”殲滅された事例も二、三件ほど発生し、それがこの話に拍車をかけている。
その話を聞いた三人は乾いた笑みを浮かべる。
「あ、はは。そ、そうなんですか。……すごいですね」
と、引きつりながら告げる美紀。きっと彼女の中での【ライドウ】という人間は身長3メートルくらいある筋骨隆々の大男のようなイメージになっているだろう。
実際のところはどちらかと言えば、小柄で華奢な見た目の女性なのだから、もし彼女が真実を知った場合は驚きのあまり、ひっくり返るかも知れないが……。
「まぁ、そんな感じだな。で、祠堂さんどうする?」
一応第三の選択肢でジャックフロストとともに暮らすのを諦める、という道もあるがと告げる晴明。
それを聞いた圭はしばし悩むが、答えが決まったのか真剣な表情で晴明を見つめると、自身がたどり着いた答えをはっきりと告げる。
「──私は……、悪魔召喚師に、蘆屋さんの弟子になりたいです」
「圭……」
圭の答えに心配そうな表情で彼女を見つめる美紀。それを感じた圭は一言、大丈夫だよ、と告げる。
それの彼女の覚悟を感じ取った晴明であったが、念の為にもう一度、今度は脅すような形で確認を取る。
「本当にそれでいいんだね? いくら安全に配慮するとは言っても、怪我や最悪死ぬ可能性だってあることはあるが」
「はい。だってあの子は、ヒーホーくんは友達なんです。その友達を、私が危険だから、そんな理由で見捨てたくないんです」
そんなことをしてしまったらきっと後悔する。そして、私は私自身を許せなくなってしまいますから、とはにかみながら告げる圭。
彼女の覚悟の言葉を聞いた晴明は小さく嘆息するとバロウズに話しかける。
「バロウズ、アレを出してくれ」
《……アイアイ、マスター》
そして一つの銃にも見える道具が晴明の手元に現れると、それを彼女に手渡す。
「これを渡そう」
「……銃、ですか?」
圭は手渡された銃らしきものをまじまじと見つめるが、晴明はそんな彼女にとある動作をするように、と告げる。それは──。
「それの引き金を引いてみてくれ」
「え? でも……」
「大丈夫、危険ではないから」
晴明にそう言われ、圭は恐る恐る引き金に指をかけるとそのままトリガーを引く。すると銃身部分が縦に割れて左右に展開し、割れた接面部分にはモニターとキーボードが設置されていたことが確認できた。
その姿を見て、おぉ、と目を輝かせる圭と、物珍しいものを見たという顔をする美紀と透子。
そんな三人の反応を見ながら、晴明はその銃らしきものの正体を告げる。
「それは銃型のハンディ・コンピューター。通称
「GUMP……」
GUMPの名を聞いた圭は噛みしめるように呟く。
晴明はその彼女を見て頷くと。
「そう、そしてそのGUMPには悪魔召喚プログラム、ジャックフロストをはじめとする悪魔たちと契約出来るようにするプログラムが組み込んである」
「それって、つまりこれがあれば……」
「ジャックフロストをこの世界に留めておくことが出来る、というわけだ」
「それなら早速──」
「逸る気持ちはわからないでもないが、それはまだ権限を移譲していないから祠堂さん、弟子になる以上は圭と呼び捨てにさせてもらうが、君にはまだ使えないぞ」
晴明の言葉を聞き、しなしなと萎れる圭だったが晴明は移譲のためのコマンドなどを告げていく。
その後晴明たちはデビルサマナーに関しての知識を少し話した後に、今後の行動についての話し合いを始めるのだった。