DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 またまた書き上げることが出来たので早めの投稿。
 果たしてこの更新ペースはいつまで続くのか……。


第二十話 蘆屋晴明という名の怪物

 大粒の雨が降りしきる中、ゾンビたちを殲滅した晴明たち。しかし、殲滅が終わった後にMAGが充満したのか、悪魔たちが召喚されてしまう。

 その悪魔たちを見た妙齢の美女、クー・フーリンと同じように本来の姿が違う、晴明の前世におけるFateに出てきたスカサハと同じ姿をした悪魔【女神-スカアハ】は、どこか失望したように鼻で笑う。

 

「ふん、どのような悪魔が現れると思ったら、この程度か。興醒めよな」

 

 その言葉を聞いた晴明は苦笑しながら同意する。

 

「まぁ、言わんとすることはわかるけどな」

 

 そして晴明はそんなに詰まらないというのなら、と前置きをしてスカアハと、ついでにクー・フーリンにとあるお願いをする。

 

「ならよ。こいつら全員、俺に譲ってもらっていいか?」

 

 晴明の提案を聞いたスカアハは興味なしとばかりに即座に同意する。

 それを聞いたクー・フーリンもまあ良いか、と言った感じで。

 

「それじゃ、俺達はここで守りながら、ゆっくり見物させてもらうぜ」

 

 そう言ってクー・フーリンは気を抜くことこそはしていないが、近くに止まっている透子のキャンピングカー。その運転席近くに背を預けてゆっくりし始める。

 それを間近で見ることになった透子はぎょっとした顔をして、慌てた様子でクー・フーリンに話しかける。

 

「ちょ、ちょっと。ホリンさん! そんな事してて大丈夫なの?!」

 

 そんな透子の様子に、クー・フーリンは気楽そうに笑いながら、安心するように告げる。

 

「ははっ、安心しな、透子の姉ちゃん。マスターがあの程度の悪魔に負けるのなら、そもそもここに来る前に既にくたばってる筈だからな」

 

 そこにスカアハも同意するように話の輪に入ってくる。

 

「全くよ。あの程度の陣容ではマスターに傷を負わせることも厳しかろう」

 

「えっと、スカアハさん? そうなんですか?」

 

 まだ出会って間もないということもあり、いまいちスカアハの言を信じきれない透子は疑問を投げかける。そんな透子にスカアハは、くくっ、と含み笑いをしながらその通りだ、と告げる。

 

「あのヌエ、と言ったか? あの妖怪に関して、確かにこの日ノ本では名の在る存在なのだろうよ。しかしな、マスターや、儂らはあれ程度ならいくらでも屠ってきたのだぞ?」

 

「えっと……」

 

 それでもいまいち理解しきれない透子は助けを求めるような表情でクー・フーリンを見るが、彼はその視線に肩を竦めると。

 

「まぁ、なんだ。もしもマスターが危険になったら助けに行くから安心しな」

 

 と、気負った様子もなく告げる。そこには晴明が負けるといった考えは、微塵も持っていないようだった。

 透子はそんなクー・フーリンを見て、本当に大丈夫なのかな? と、思っていたが晴明と悪魔たちの戦い(蹂躙)が始まると、驚きに目を見開くのだった。

 

 

 

 

 

 晴明は仲魔たちが後ろに下がるのを確認すると、軽く伸びをすることで体の硬さを解し、何の気負いもなく悪魔たちに向かって歩き始める。

 その姿に取り巻きのライジュウたちは馬鹿が来たと嘲笑していたが、その中でヌエだけが仲魔が下がったことで、自分たちが馬鹿にされていると感じて怒りの声を上げる。

 

「オマエ。オレタチ、バカニスルノカ!」

 

 そのヌエの怒りに、晴明は鼻で笑い飛ばすと更に挑発する。

 

「はっ、仕方ないだろう。俺とお前らでは歴然とした力量差があるんだからな。それとだ──」

 

 その言葉とともに晴明の姿がかき消え──。

 

「この頃、ちょっと虫の居所が悪くてな」

 

 次の瞬間、取り巻きの一体の真横に現れると、倶利伽羅剣をそのまま振り下ろす。すると本当に人間の膂力でそれを成したのか。倶利伽羅剣は空気を壁を突き破る轟音とともに、ライジュウもろとも地面を磨り潰し、ちょっとした大きさのクレーターが校庭に出来上がる。

 それを間近で見ることとなったヌエは呆けた声を上げる。

 

「……ハ?」

 

 そんなヌエに構わず、晴明は独り言のように言葉を紡ぐ。

 

「ゆえに貴様ら鏖殺だ。呪うのなら、こんな時に俺の前に現れちまった己の不運さを呪うんだな」

 

 その晴明の宣言とともに、戦いという名の蹂躙が始まった。

 

 

 

 

 

 ヌエの取り巻きの残り一体のライジュウは、一心不乱にこの場から遁走しようとしていた。その胸中は、こんな事聞いていない。ただそれだけだった。

 そもそも悪魔はこの現実世界では早々死ぬことはないし、それに人間とは悪魔よりも遥かに脆弱な存在だ。

 だからライジュウは今回、現実世界と魔界の境界が綻んだと聞いた時、人に例えるならバカンスにでも行くか。という気楽さでこちらの世界に渡ることを決めた。

 ちょうど直前に妖精たちのジャックフロストが行方不明になった、と騒いでいたのもライジュウの決心に拍車をかけた。

 

 ──あいつも現実世界に行ったんだろう。そしてあんな雑魚がまだ戻ってきていないということは、あちらの世界は安全ということだ。

 

 そう思ったライジュウは旅行ついでに美味しい肉(ニンゲン)を喰らい、ある程度気ままに過ごしたらまた魔界に帰る。流石に長く居着いたらクズノハのサマナーが出張るだろうが、短時間なら大丈夫な筈だ、と考えた。

 しかも、いざ現実世界に行こうとした時に、自身よりも更に強大な妖怪であるヌエと同道出来る事になる幸運も得た。これならば万に一つも危険は起きない。と、あの時は思っていたが、蓋を開けたらこのざまだった。

 

 あのニンゲンが一人で自分たちの前に歩いてきた時は、また自意識過剰の馬鹿が来たか、と思った。

 ライジュウ自身、以前異界で出会った新人らしきサマナーは無駄に自信満々だったために、その心をへし折った上で末端からゆっくりと喰らってやった。その時の馬鹿者の絶望の感情は至極美味だった事を覚えている。

 今回もその手合だと思っていたのに、何なのだ、あの化け物は!

 それにそもそも、自分自身もあのサマナーが仲魔を下げた時点で気付くべきだったのだ。戦いの場で仲魔を下げる存在など、よほどの大馬鹿者か、もしくはそれ以上の手練だということを。

 実際に風の噂では、今代の葛葉ライドウは修行と称して格下相手には基本的に仲魔を召喚しない事があると言われている。あのサマナーも同じ手合、もしくはライドウ本人である可能性もあったと言うに。

 

 失敗した、失敗した、失敗した!

 だが、この場から無事に逃げ果せる事ができれば──。

 

 それがライジュウの最後の思考だった。

 

 

 

 

 

 たった今までの戦闘(蹂躙)の一部始終を見ていた放送室の面々。

 ただし、具合が悪くなっているアレックスの看病をしていた美紀と貴依、それと元々晴明のことを知っている仲魔たちと、そのうちの一人、ジャックに遊ぶという名目で意図的に窓際から引き離されていた瑠璃以外の、主に学園生活部+αの間では重苦しい空気、それこそ実際に質量が存在するのならば、全員が地に伏せそのまま押し潰されそうな、そんな雰囲気が室内に充満していた。

 そんな中で一人の勇者がこの空気を払拭するために話し始める。

 

「な、なぁ。りーさん」

 

 その勇者、恵飛須沢胡桃は笑みを浮かべて、なんとか絞り出すように若狭悠里に声を掛ける。なお、本人は笑みを浮かべているつもりだが、残念なことに笑みも声も完全に引き攣っていた。

 

「…………なにかしら、くるみ」

 

 その胡桃の呼びかけに、努めて冷静な様子で答える悠里。ただしこちらも声は震えている。

 

「あの人? が、るーちゃんが言った【おじさん】で、間違いないんだよな?」

 

 どうか間違いであってくれ、そんな切実な願いが聞こえてきそうな声色で問いかける胡桃。しかし、現実は非情で──。

 

「……ええ、そうね。間違いなくあの人? が、るーちゃんを助けてくれた蘆屋さんで間違いないわ。ええ、本当に」

 

 そう自分に言い聞かせるように告げる悠里。そうでもしなければ信じきれなかったのだ。

 何を信じきれなかったのか?

 それは、彼女や胡桃が人という部分に疑問符を付けたことが答えであり、即ち。

 

 ──あいつ、(身体能力とか、一般常識的な意味で)人間じゃねぇ!

 

 この一言に尽きた。因みに、彼女たち二人だけではなく戦闘(蹂躙)を見た全員そう思っている。

 もしも、晴明がこの事を知ったら抗議の声を上げるかもしれないが、先ほどの戦闘の流れを見せられた彼女たちからすれば、声を揃えて『ダウト』ということ請け合いだった。

 そもそも、一体目の化け物を狩った瞬間移動じみた高速接近からのクレーターを作る叩き潰し攻撃だけでも()()なのに、その後、二体目の化け物を狩る攻撃が、さらに常識というものを全力でどこか遠方にぶん投げていた。

 

 その非常識な攻撃とは、彼が持っている拳銃らしき武器から放たれたのだが、そもそも攻撃の準備段階からして既におかしかった。

 と、言うのもまずは拳銃らしきものの銃口に光が集まると、バスケットボール位の大きさの球体が形成され、それを起点として必死に逃げていた化け物に対してビームが照射されたのだ。

 それだけでも十分に驚嘆に値するのだが、それ以上に威力が凄まじかったらしく、化け物を一瞬のうちに蒸発するもそれだけでは飽き足らずに学校を囲っている塀を貫通し、更にはその先にある一般家屋にまで届いたのだろう。

 直線状にあった一般家屋が三軒ほど土煙を上げて倒壊し始めていた。

 

 胡桃たちと同じようにその大惨事を見ていた圭は、どういうことだ、と言いたげな引き攣った表情を浮かべてカーマを見る。そして。

 

「あのぅ? カーマさん? これは、どういうことなんですか、ね?」

 

 素直に晴明が怖いとか、私の心配を返せという怒りとか、本当に何がどうしてこうなった、と言いたくなる困惑とか、そんな色々な感情でごちゃまぜになっている内心を隠すようにカーマに問いかけるが、件のカーマは。

 

「えぇ? どういうことも何も見たとおりですよぅ?」

 

 と、嘲るように告げる。それを聞いた圭はイラッときたのか。

 

「でも、カーマさん。貴方、私が蘆屋先生の事心配してた時に、さぁ? とか、言ってたじゃないですか!」

 

 と、強めの語気で気炎を上げる。が、そんな彼女にカーマはぷーくすくすと、とてもウザい笑みを浮かべながら。

 

「あっるぇ~? おっかしいですねぇ~。私は『そこまで心配することもないでしょう』と、ちゃんと伝えましたよぅ」

 

 と、更に圭をからかうように返答する。それで圭は遅まきながら先ほどのやり取りが自身を担ぐための狂言に近いものだったのだと気付き、『殴りたい、この笑顔』と思うが、それはそれとして、先ほどカーマが言っていた悪魔に困っていたのはどうしてなのかを問いかける。

 

「でも、それじゃさっきあの化け物が現れた時に、困ったと言ってたのはなぜなんです?」

 

「ああ、それですか」

 

 すると、カーマは本当に困ったと言いたげに嘆息しながら顔を顰めると。

 

「いやぁ、なんと言いますか。この頃のマスター、ストレス溜まってるみたいでしたから、丁度いいサンドバックでも現れてくれたらなぁ。なんて、思ってたんですけどねぇ」

 

 あの程度じゃサンドバックにもなりませんよ。と、悩ましげな表情で溜息を付きながらカーマは愚痴を零す。そして今度は嘲るような表情で。

 

「前回現れたのはフォルネウスやデカラビアなんて大物だったそうじゃないですか。それで期待して見てたのに、蓋を開けてみたらあれですよ、あれ。Sレアのピックアップガチャを引いたら、レアどころかコモンしか出なかったとか、そんな感じです」

 

 さて、運営はどこでしたかね? 抗議の電話を入れないと。と、あくまでふざけた態度を崩さないカーマ。

 そんなカーマに圭は不満そうにして詰め寄る。蘆屋先生が心配ではないのか、と。

 その言葉を聞いて笑いを堪えるカーマだったが、そんな中で彼女は圭が一つの思い違いをしていることに気付く。それを感じたカーマは、それの確信を得るために真剣な表情になると彼女に話しかける。

 

「ふむ、なるほど。圭はマスターのことがとても心配なんですね?」

 

「心配に決まってるじゃないですか! あんな化け物と戦ってるのに、なんで心配しないと──」

 

 そこまで聞いたカーマはやはりと思う。やはり彼女は()()()()()()()()()()という人物はある程度理解しているが、()()()()()()()()()()()()()という人物、その有り様を全く理解していない。

 だからこそ、こんな()()()な心配をしている。

 

 全くなんてことだ。いくら間もないとは言え、マスターに弟子入りした人間がその程度の理解もしていないとは、と嘆息しそうになるカーマ。

 しかし、マスターはこの()()に対して多少の後ろめたさを感じているから、あまり強くは出ないだろう。だが、マスターを過小評価されるのはあまり面白くない。

 だからこそ私がこの勘違いした小娘に、少しばかり思い知らせてやろうか、と思うカーマ。

 この裏世界の厳しさを、そしてそんな世界で生き延びてきて、なおかつあの葛葉ライドウと多少なりとも比較される存在である、蘆屋晴明という()()の恐ろしさを。

 そう考えたカーマは、()()()()で軽い殺気を圭に飛ばす。

 

 しかし、彼女自身も一つ忘れていたことがある。と、言うよりも今まで民間人とともに行動する、という機会がほぼなかったために経験していなかった、と言うべきか。

 そもそも彼女は人間と同じ姿を持ち、普段は巫山戯ているとは言え、愛欲の神性を持つ神様。間違いなく強大な力を持つ神話生物なのだ。

 そんな神と呼ばれる存在がほんの僅かとはいえ、一般人に対して殺気を、神威を振り撒いたらどうなるか?

 直接浴びなかった学園生活部の面々さえ、この部屋が急に極寒の地に変貌したかのようにガタガタと震え始めて、生命の危機を遠ざけるために全員で集まり始めている。

 直接浴びなかった者たちがその状態なのだ。では直接浴びた圭はどうなったか?

 

 顔は青褪めるのを通り越して青白く、まるで死人のように生気を失うと同時に目を見開いて滂沱の涙を流しながら歯をガチガチと鳴らし。更に身体全体から膨大な汗がぶわ、と出るとともにガタガタと震わせ、そして彼女の太腿の付け根からは汗とは違う液体が流れて足元に小さな水溜りができている。

 

 そんな圭の姿を見たカーマは、あ、やべ、やりすぎた。と、頭が急速冷却されるが、その時、背後からドンという衝撃を感じる。

 カーマは衝撃を受けた部分を見ると、そこには大粒の涙を浮かべて震えながらも彼女に抱きつく美紀の姿があった。そして美紀はそのまま縋り付くようにカーマに懇願する。

 

「あの、カーマさん。圭がなにか失礼なことをしたのなら私が変わりに謝りますから、だから圭を、親友を殺さないでくださいっ!」

 

 その言葉を聞いたカーマは、あ、これ、まずい流れだ。と思い殺気を消すと慌てて弁明する。

 

「あ、あの、美紀さん? 落ち着いてください、ね? そもそもこのカーマさんが殺すなんて、そんな物騒なことするわけないじゃないですかぁ」

 

 しかし、そんなカーマの必死の弁明に対して美紀の返答は、更に彼女の体をぎゅう、と抱きしめて絶対に圭の元へは行かせない。親友はなんとしても私が守るんだという鋼の意志。つまり、カーマの言は全くと言っていいほど信用も、信頼もされていなかった。

 その答えにカーマは顔を引き攣らせると、助けを求めるように周りを、ジャックは瑠璃を慰めるのに忙しいため除外して、残りの大僧正の方を見て──。

 

「ちょっと待ちなさい。なにかおかしくないですか?」

 

「ふぉっふぉっふぉ。何のことかのぅ?」

 

 思わず疑問の声を上げるカーマと、それを飄々と躱す大僧正。

 その大僧正の背後に学園生活部のメンバーがいつの間にか移動して、ぶっちゃけ彼をカーマから身を守る盾にしていた。

 その事にカーマはツッコミを入れる。

 

「いやいやいや、どう考えてもおかしいでしょう?! なんで私が、死の化身である貴方より怖がられてるんですかっ! 私は神様なんですよっ!」

 

 アイ・アム、ゴット。愛の神様! と声を張り上げるカーマ。

 

 そのカーマの言、主に大僧正が死の化身だ。という言葉に驚きをあらわにする学園生活部の面々、なお彼女が愛の神云々は戯言として処理されている。今までの行動のどこに愛があるのか、という思考で全会一致しているようだった。

 

 その時、ドシャリという音が聞こえる。

 音が聞こえてきた場所では殺気から開放された圭が四つん這いの姿勢で倒れており、ハッ、ハッ、と過呼吸を起こしていた。

 それを見た美紀はカーマから離れると、足がもつれそうになりながら急いで彼女のもとに駆け寄ると、服が汚れるのも厭わずに抱き起こし、圭、大丈夫?! と、声を掛けている。

 そして圭自身も先ほどよりも顔色は多少良くなっているが、未だに過呼吸が収まらず声が出せないのかコクコクと頷くことによって彼女に返事をする。

 

 それを見てカーマはチャンス! と、思ったのか、威厳を出すような雰囲気で二人に近付いていく。因みに、他の面々はいっぱいいっぱいで気付いていないが、ジャックと大僧正はそんな彼女を呆れた目で見ていた。

 

 そしてカーマが自分に近づいてきていることに気付いた圭は怯えた表情で小さく悲鳴を上げる。

 

「ひっ……!」

 

「圭っ! くっ!」

 

 その圭の怯えように、美紀は彼女をかばうように前に出ようとするが、それをカーマは押し留めて、自身もしゃがみ込んで圭に視線を合わせると、なるべき彼女を怖がらせないように優しく語りかける。

 

「さて、と。では圭さん」

 

「ひぅっ。は、はい……」

 

 カーマに呼ばれたことで怖がりながらも返事をする圭。それを見たカーマはにっこりと笑いながら彼女に問いかける。

 

「これで、少しは分かりましたか?」

 

「…………え?」

 

 カーマの質問の意図が解らなかったのか圭は疑問の声を上げる。

 それを見たカーマは、言葉足らずだったか。と反省すると、更に話しかける。

 

「ふぅ、そうですね。なら、マスターから聞いたサマナーと仲魔の関係性は覚えていますね?」

 

「は、はい。サマナーは自分の力量以上の悪魔は契約も召喚も出来ない、……でした、よ、ね?」

 

 次なるカーマの質問に圭は恐る恐る答える。その答えが正解だったのかカーマは満足げに頷くと同時に正解と告げる。

 そしてカーマは、再び先ほどのやり取りについて聞く。

 

「つまり、マスターは私を従えるに相応しい力量を備えている、ということです。……これがどういった意味を持つのか、貴女は身を以て理解した筈です」

 

「え? あ……」

 

 その圭の呆然とした表情に、カーマは満足そうに頷くと。

 

「勿論マスターを心配すること自体は構いません。それが貴女の善性なのですから。しかし、圭。貴女はまず、相手の力量を見る目を磨きなさい。それが出来ずに相手の実力を見誤ると、それが貴女の仲魔や貴女自身、更には親友の命を奪う結果になるかもしれません」

 

 そのカーマの言葉を聞いて圭は顔を引き攣らせると小さく悲鳴を上げる。

 その姿を見たカーマは真剣な表情を浮かべると。

 

「それが嫌なら精進なさい。貴女が死なないように。そして親友を死なせないように。良いですね?」

 

 その言葉に圭は何度も頷く。それを見たカーマは満足げにすると。

 

「幸い貴女は運があります。あの蘆屋晴明に弟子入りできた事、そして今回も命の危険がない場所で失敗を学べました。後はそれを糧として活かしなさい」

 

 それだけ告げるとカーマは立ち上がり、窓際に歩き出す。

 

「さてさて、それでマスターの方はどうなってますかねぇ。もう終わってる頃だとは思いますが」

 

 そう呟きながら外の景色を覗き込むのだった。

 

 

 

 

 その頃、晴明とヌエの戦いは未だ続いていた。だがその内実は──。

 

「ふむ、カーマのやつ、何かはっちゃけてるのか? どうやら騒がしいようだが……」

 

「ゴホッ、ヨソミヲ──」

 

「──する程度には詰まらない、ということだよ」

 

 ヌエの台詞に被せるように晴明は呟くと、一瞬で懐に入ると同時に回し蹴りを食らわせる。

 そして回し蹴りを受けたヌエは、身体から骨が折れる音を響かせながら吹き飛んでいく。

 吹き飛び、地面をゴロゴロと転がるヌエ。その体はまさに満身創痍という有様で無事な箇所を見つけるのが難しい。対して晴明は傷どころか埃も付いていない、どちらが優勢か一目瞭然だった。

 そんな満身創痍のヌエを見て晴明はポツリと呟く。

 

「ふぅむ、中々に頑丈だな。腐っても大妖怪、ということかな?」

 

 と、気楽に、そして予定調和とばかりに悠然としている。

 しかし、なぜ仮にも大妖怪であるヌエと人間である晴明の間で、ここまではっきりとした力の差が付いているのか。

 それは謂わば一つの戦いの経験値の圧倒的な差、そしてその結果得ることになった存在としての格の差だった。

 まず晴明はかつて(第一話)語ったように、堕天使-オセやそれ以外の神話生物、更には人から外れた存在たちと命の奪い合いを果たし、そして生き残ってきた。

 

 その中で晴明は戦闘経験だけではなく、悪魔たちのMAGを取り込むことで生物としての位階を上げてきた。

 今の彼は一般人を示す愚者は既に超えているとして、裏の世界に足を踏み入れたことを示す異能者や、それを超えた裏世界では一流扱いされる覚醒者すら超越し、達人と呼ばれる只人としての一つの限界をも突破した、超人という位階に足を踏み入れている。

 

 因みに、比較として彼の弟子であり少し前に妖鬼-オニ相手に完勝せしめた神持朱夏。彼女の位階は未だ覚醒者に足を踏み入れた程度、かなり甘めに見積もっても達人にかろうじて足は届くぐらい。と言えば、彼が如何に人としての力から逸脱しているかが理解できるだろう。

 

 それに対してヌエは、その位階に照らし合わせるなら覚醒者。一流のサマナーが戦わないと命を落としかねない、まさしく大妖怪に相応しい実力を有している。

 そしてその実力に裏付けされた知性も持ち合わせている事から、もし平時に顕現していたら都市一つが滅んでいたかもしれない。それほどの危険な存在であるのは確かなのだが、今回は単純に相手が悪すぎたと言う他ない。

 

 もっとわかりやすく例えるとするのならば、ヌエのLV(レベル)は30程度、それに対して晴明のLVは75を超える。

 まさしく大人(晴明)子供(ヌエ)であり、この状況は子供が枯れ枝を持って大人にじゃれついているのに対して、その大人は機関銃を持って対抗しようとしている。といった具合なのだ。これは大人げない。

 尤も実際にこれが大人と子供のじゃれ合いではない以上、晴明は手加減も見逃すつもりもないのだが。

 

 そんな中、逃げもせずに未だに晴明に立ち向かっているヌエに対して、これを愚かと呼ぶか、それとも諦めない精神を称賛するかは人それぞれだろうが、しかし、そんな事をしても結果が変わるわけではない。

 ヌエは血反吐でも吐きそうな表情で言葉を紡ごうとする。だが──。

 

「ナゼ、ナゼ、キサマノヨウナバケモノガ──」

 

 その言葉の途中に晴明に詰め寄られると同時に、彼は手に持つ倶利伽羅剣を一閃!

 身体を文字通り一刀両断されたヌエは、そのまま何を告げるでもなく魔界へと強制的に還されるのだった。

 

 そしてヌエを斬り捨てた晴明はぽつりと呟く。

 

「何故、何故だと? そんな事決まっているだろう──」

 

 ただ、生き残るためだ。と呟く晴明。

 

 彼は何の思惑かは不明だが。かの魔神-ヴィローシャナの手によって転生し、ガントレットという祝福(監視)も送られている。

 もし、彼がこの世界にかの神々が居ると気付かなければ。もし、ヴィローシャナから祝福を受けていなければ、逃げるという選択肢もあったかもしれない。

 だが現実には、祝福を受け、それによって神々の存在を知ってしまった。

 そして知ってしまった以上、彼が生き残るには足掻き続けるしかない。その結果が今日の晴明自身である。だが、彼は今の状態でもまだ足りないと思っている。

 何故なら彼は知っているからだ。

 

 ──かの魔神を、かの大魔王を、そしてかの唯一神を。

 

 そんな存在たちからすれば、晴明自身も吹けば飛ぶような矮小な身でしかない。

 

 ──だから強くなる。

 

 自分の命を、大切な誰かの命を弄ばれないように。

 だからこそ強くなる。その為だったら屍山血河さえ築いてみせよう。その果てに安全を手に入れることができるのなら。

 

 ただ、その一心でこの地獄を進んでいるのだから。

 

《マスター……》

 

「ん? あぁ、済まないな。ぼぅっとしていた」

 

 ガントレットのAIであるバロウズに話しかけられた晴明は、頭を振ると彼女に、学園生活部の、この高校の生存者達がいる場所への道案内を頼む。

 

「バロウズ。今、彼女らはどこに居るんだ?」

 

《……ええ、こっちよ》

 

 バロウズの案内のもと、彼は透子たちと合流して生存者達がいる場所に向かう。

 

 その場所で一つの大惨事と圭が憔悴している姿、そしてコソコソと逃げようとしているカーマを目撃した晴明は、彼女の頭上に特大の拳骨を落とすと同時にカーマの悲痛な叫び声が響き渡ったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ひぎゃぁぁぁぁぁ…………!』

 

 

 

 

 





 今回登場した生物としての位階については、名称に関してはメガテンTRPGを参照していますが、レベル帯などの設定に関しては本作独自設定となります。
 あと、今回((´・ω・`)様より第三話の誤字報告をいただきました。
 お知らせいただき本当にありがとうございました。






 それと、実は初心者なりにこの作品のR-18方向のを書いているのですが、需要ありますかね……?
 あるのであれば、そのうち新規枠で投稿するかもしれません。
 因みに現在書いている分では主人公の出番はありません。
 アンケートを置いとくので、教えていただければ幸いです。

 10/10追記
 そう言えば期限を書いていなかったので、一応アンケートの期限は10/16の午前零時までとします。
 ……正直今の推移だど気にする必要はないかもしれませんが念の為に、ということで。

がっこう転生R-18 需要ある?

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