DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
では、原作キャラが少しだけ登場しつつも、まだまだ巡ヶ丘が平和な第二話もどうぞ。
その後、ホテルにチェックインを済ませた晴明はまず地理の把握が優先だと判断し、市内を優先的に散策することに。
最初はここ、巡ヶ丘に住んでいるペルソナ使いの弟子に案内を頼もうか、などと思っていた晴明であったが、そもそも彼女は大学生であり、そちらの方を優先させるべきと思い直して自分の足だけで散策していた。
(それに、朱夏はペルソナという異能を持つだけの表側の人間だからな。今コッチに引っ張り込むのは流石に忍びない、か)
そんなことを思いながら散策を続けていた晴明だったが。ふとした拍子に、今も続いている警鐘とはまた別の不愉快な感覚が頭をよぎる。
(何だ、この感覚は? 人が死ぬ? どこで?)
不愉快な感覚に、怒りを募らせながら晴明は周囲の確認をする。すると、百メートルほど先の横断歩道、そこに飛んでいく小さな帽子とそれを追いかけて、家族であろうか? 茶髪のロングヘアの髪に制服をまとった少女の手を離れて横断歩道に侵入するベージュ色の髪の女児の姿が見えた。そしてその横断歩道の信号は赤信号であり、近くには走ってくる自動車までいるという始末。
「────マジかよ!?」
その姿を確認した晴明はすぐさま自身の中にある生体マグネタイト【MAG】を活性化させ走り出す。その速度を見ることが出来るならば、プロのアスリートがまるで子供の追いかけっこに見紛うほどの速度であり、事実彼が通り過ぎた後には突発性の強風が吹き荒れて、他の通行人たちは何が起きたのかと辺りを見渡している。
そしてその速度のまま晴明は走り続け、横断歩道の十メートルまで差し掛かると。
「──疾っ!」
自身の足に更なる力を込めて踏み込み、足元のコンクリートを破砕しながら一足飛びに横断歩道へと飛び込んで、女児と、ついでに帽子を掻っ攫って先程いた歩道と逆側の歩道に着地する。直後、背後で自動車の急ブレーキ音と、少女の「るーちゃん!」という叫び声。そして車から降りた人間や周りの通行人からの困惑した様子の声が聞こえてくる。
当然だろう。自動車の運転手にとっても、通行人にとっても、あのタイミングであれば女児を轢いてしまっているのが確実であり、それなのに被害者の女児の身体も、血の一滴すら存在しないのだから。
晴明はそんなことを思いながら、自身が抱きかかえている女児に話しかける。
「よう、お嬢ちゃん。怪我はないか?」
話しかけられた女児はぽかんと放心している。
彼女の主観ではさっきまで横断歩道にいたはずなのに、いつの間にか見知らぬ男に抱きかかえられて、別の場所に移動しているのだから仕方ないだろう。
その時、後ろの方から「お、おい、あれ!」という声が聞こえてきた。ようやくこちらのことに気が付いたようだ。
晴明は抱きかかえた女児を地面におろしながら、もう一方の手に掴んでいた帽子を女児の頭にかぶせて笑いかける。
「お嬢ちゃん、いくら横断歩道でも急に飛び出しちゃ危ないからな? 気をつけるよーに」
そんな事を言いながら、女児の頭を軽く撫でる晴明。
すると背後から切羽詰まった雰囲気をまとった少女が走ってきた。
「るーちゃん、大丈夫?! 怪我はない?!」
そして女児が無事であることを確認すると、心配したとばかりに女児へガバっと抱きついた。
「…………りーねぇ?」
その少女の行動で、その女児、るーちゃんの方もようやく思考が落ち着いたのか、少女の名前らしきものを呟く。
りーねぇと呼ばれた少女はしばらくそのまま、るーちゃん、妹である瑠璃を抱きしめていたが、助けてくれた
「あ、あの! るーちゃんを、妹を助けてくれてありがとうございました!」
深々と頭を下げながら晴明に対して感謝の言葉を告げる。
少女の言葉を聞いた晴明は照れくさそうに頭をかきながら。
「いや、なに、偶々間に合う位置にいたからな。その幸運でも噛み締めておいてくれ。それで、ええと、お嬢ちゃんは……」
その晴明の口ごもったことで、自身が焦って自己紹介をしていなかったことを思い出した少女は、改めて自己紹介をする。
「あ、私は【若狭悠里】です」
そして、少女、悠里は自身が抱きしめている、るーちゃんと呼んでいた妹の方を見て。
「この子は妹の【若狭瑠璃】です」
姉である悠里に紹介された妹の瑠璃は、晴明に向かって軽く頭を下げることで挨拶する。
その時一人の男性が近づいてくる。先程の乗用車の運転手の男性だ。
「あ、あの、その子は大丈夫ですか?」
運転手の男性が自身が轢きそうになった瑠璃を心配し尋ねてきたようだ。
「ああ、さっきの運転手さんか。あなたも運がなかった、いや俺がいた分、運があったのか? まぁ、ともかくこの子は無事だよ」
「それはよかった」
晴明から改めて無事なことを確認できたことにより男性は胸を撫で下ろしているようだった。そのやり取りを見ていた悠里は妹の瑠璃を見ると。
「ほら、るーちゃん。このおじさんに謝って」
と、先程の横断歩道への飛び出しについて謝るように告げる。
姉の言葉を聞いた瑠璃は、彼女から離れると運転手の男性へと頭を下げて。
「おじさん、ごめんなさい」
と、謝罪する。
瑠璃からの謝罪を受けた男性は、軽く笑みを浮かべながらしゃがんで瑠璃へと視線を合わせると。
「君も無事で良かった。でも急に飛び出したらだめだよ? 車は急に止まれないからね?」
優しく諭すように告げながら瑠璃の頭を軽く触ると、晴明たちにそれではこれで、と言い去っていく。そして残っていた野次馬たちもまた、ことが終わったと感じてこの場を去っていく。
「ふぅ、とりあえず揉め事にならなくてよかった、と言ったところかな?」
「ええ、本当に」
そう言いながら晴明と悠里は笑い合う。
笑い合う二人だが、晴明がそういえば、と思い出したような顔をして。
「俺が自己紹介をしてなかったな。と、いっても、もう会わないかもしれないが、一応名乗っておくよ。改めて俺の名前は蘆屋晴明だ、よろしくお二人さん」
冗談めかしながら若狭姉妹に告げる晴明。
晴明の言葉を聞いた悠里は微笑みながら返事を返す。
「はい、よろしくおねがいします。蘆屋さん」
その時、瑠璃が晴明にとてとてと近づいてきて。
「蘆屋
と、晴明に感謝の言葉を言ってくる、が。その言葉、主におじさんの部分を聞いた悠里は慌てて。
「る、るーちゃん! おじさんじゃなくて、お兄さん! ね?」
瑠璃に訂正を促すように告げるが、瑠璃は意味がわからないのか首を傾げている。
その妹の姿を見た悠里は、わたわたと慌てた雰囲気を出しているが、姉妹のやり取りを見た晴明は笑いながら。
「わはは、おじさんで構わんよ」
と、悠里に告げる。その言葉を聞いた悠里は申し訳無さそうにしているが、その姿を横目に晴明は瑠璃に質問をする。
「るーちゃんだったかな? 君は小学生かな?」
「うん! 小学二年生!」
晴明の質問に元気良く答える瑠璃。その可愛らしい瑠璃の姿を見た晴明は破顔しながら、よくできました、と瑠璃を褒める。
そして、悠里の方に顔を向けると笑いながら話しかける。
「なぁに、実際に二十近く歳が離れてるんだ。それなら妹さんからしたら俺は立派なおじさんだ。気にすることはないよ」
「は、はい。ありがとうございます……」
晴明の声かけに申し訳無さそうにしながら頭を下げる悠里。姉の姿を不思議そうに見ている瑠璃を見て、晴明は苦笑していたが気を取り直して今度は瑠璃に話しかける。
「それで、ちゃんと質問に答えることができたるーちゃんにおじさんからプレゼントだ」
そう告げながら晴明は懐からあるものを取り出すと、それを瑠璃と、ついでとばかりに悠里にも渡す。渡された二人はそれを自らの視線の前まで持ってくる。
それは、神社で売られているようなお守り袋だった。これにどういった意味があるかわからない二人は、揃って晴明を見つめる。
その二人の仕草を見た晴明は笑いながら。
「はは、わけがわからないという顔をしてるな。見てのとおりただのお守りだよ。ただ、ご利益はあるから安心しな」
瑠璃は晴明の言葉に納得したのか嬉しそうにしているが、悠里はどこか不安そうな顔をしながら晴明に申し訳無さそうに告げる。
「あの、蘆屋さんすみません。宗教はちょっと……」
悠里の消極的な拒絶に、晴明は宗教の勧誘と勘違いされているということに気付いて、苦笑しながら勘違いを訂正する。
「ああ、別に宗教の勧誘ではないから安心していいよ。ただ単にせっかく助けたのにまたさっきみたいなことがあると目覚めが悪いから、一つの保険みたいなものだよ」
それにご利益があることも事実だしな、と告げる晴明。
晴明の言葉を聞いた悠里は勘違いをしていたことに恥ずかしそうにしながら、感謝の言葉を告げる。
「あ、はい、ありがとうございます……」
悠里の恥ずかしそうな姿を見た晴明はどこか気まずげに、そして同時に笑いをこらえながら。
「まぁ、何も知らなければそういう風にしか見えないからな。こっちこそごめんな」
軽い調子で謝罪する。
晴明からの謝罪を聞いた悠里は、その晴明の謝罪に驚きながらとんでもない、と告げる。
「るーちゃんを助けてもらったばかりか、お守りまで頂いて、本当にありがとうございます」
「それは良かった。それじゃ俺はもうそろそろ行くよ」
晴明は悠里にそう告げながらも近づいていき、彼女の耳元で囁く。
「……次は手放さないように、な」
その言葉を聞いた悠里は驚きながらも。
「……っ、はいっ!」
自身に喝を入れるように元気よく返事をする。
晴明は悠里の返事を背に聞きながら、手を振ってその場を後にするのだった。
《でも、マスター良かったの? あんなものを民間人に渡しても?》
あの場から離れた後にバロウズから質問が入る。
先ほど若狭姉妹に渡したお守り袋のことだった。
「ん、あぁ。そこまで目くじら立てることじゃあ無ぇだろうさ。それにさっきあの子に言ったことも事実だしな」
晴明は何でもないことのように告げるが、バロウズが心配していることにも勿論理由がある。と、言うのも実はあのお守り袋、中には大日如来の
《それならいいのだけど》
「心配性だな、バロウズは」
バロウズの心配を笑っている晴明だったが、後ろの方から姦しい声が聞こえてくることに気付く。楽しそうに話している少女二人の声だった。
そしてそのうちの一人が素っ頓狂な声を上げる。
「あ、ちょっと、圭。危ないよ!」
声が聞こえた次の瞬間、晴明の背に何かがぶつかった感触がする。
振り向くと、恐らく後ろ向きにステップでもしていたのか、晴明にぶつかった拍子にバランスを崩し倒れそうになっている、先ほど別れた悠里と同じような制服を着ておでこを出しハーフアップにしている少女と、その少女に手を伸ばそうとしているパールホワイトのショートヘアの髪型の少女の姿があった。
倒れそうになっている少女を咄嗟に抱きかかえる晴明。
見知らぬ男性に抱きかかえられることになった少女は赤面するが。
「圭! 大丈夫?!」
駆け寄ってきたもう一人の少女を見て晴明の側から離れる。そして晴明の方を向くと。
「あ、あのすみません、ありがとうございました!」
晴明に頭を深々と下げて、謝罪と感謝の言葉を告げる。
圭と呼ばれた少女の近くに来たもう一人の少女もまた。
「圭のこと助けてもらってありがとうございました」
と、こちらも頭を下げて感謝の言葉を告げてくる。
その二人の姿を見た晴明は。
「あ、ああ、別に構わないよ。ただ、危ないから気を付けてな」
と、軽く注意をする。
その言葉を聞いた圭と呼ばれた少女は。
「はい、本当にすみませんでした」
と、再び謝罪する。
そしてもう一人の少女が。
「本当にありがとうございました、それでは失礼します」
と、晴明に声を掛けて、圭と呼ばれた少女の手を取り小走りに去っていく。
去っていく二人の少女から、「圭、だから危ないって言ったじゃない!」と、怒る声や、「だから、ごめんってば、美紀ぃ」という声が聞こえてくる。
その二人の姿を見た晴明はしみじみと呟く。
「やれやれ、平和なこった」
《でもマスターはその平和のために働いているんでしょう? なら今回も頑張らないと》
いつの間にか黙っていたバロウズが晴明に再び声をかけるが、晴明はその言葉にどこか自信がなさげに。
「だが、今回は正直な。平和のまま終わらせられれば良いんだが」
と、告げる。だがその後、頭を振って。
「こんな事を言っても仕方がないな。今はできることをするべきだわな」
《そうね、でもマスター? 今日はもう時間も遅くなっているしホテルに戻りましょう?》
バロウズが言ったように、辺り一面夕焼けに覆われて、しばらくすれば完全に夜の闇に落ちるだろう。今日が調査初日である以上無理をする必要はない、と判断した晴明はバロウズの提案に同意してホテルへと戻ることにした。
2/29 追記
今回登場したるーちゃんは、原作で名前が判明していないため独自設定となります。