DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 今回、前半部分に「真・女神転生StrangeJourney」のちょっとしたネタバレを含みます。
 ご注意、ご理解いただけますようよろしくお願いいたします。







第二十四話 約束

 

 

 

 巡ヶ丘学院高校の一室。

 

 その場で現状出来る分の情報交換を終えた晴明たち秘密基地メンバーと学園生活部の面々は、その後お互いの境遇を知るための雑談に興じていた。

 その中でもともと平和な時にアレックスと同じクラスだった美紀、圭は彼女の無事を喜んでいた。

 

「でも、アレックスも無事だったんだね」

 

「本当だよ。無事でよかった」

 

「そう言うあなた達こそ良く無事だったわね。……あの人に助けてもらったのだろうけど」

 

 珍しく表情を崩した美紀に続くように、圭もへにゃり、と笑いながら安堵していた。

 対するアレックスも二人の無事を喜びつつも、同時に複雑な表情で親友二人を助けてくれた晴明の方に視線を向ける。

 彼女の視線の意味がわからない圭は不思議そうな顔をしてアレックスに問いかける。

 

「アレックス、どうしたの? 蘆屋先生をそんなに見つめて……。ははぁん?」

 

 そこで圭は意地悪な表情を浮かべるとアレックスをからかうように話しかける。

 

「もしかしてぇ、アレックス。……一目惚れ?」

 

 彼女のあまりにも予想外な言葉を聞いたアレックスは、盛大に咳き込むと圭を睨みつける。

 アレックスの視線に圭は、あ、これ、怒られるやつだ。と冷や汗を流すが、そんな圭を見たアレックスは深々と溜息を零すと、心底呆れたとばかりに声を上げる。

 

「……圭、あなたねぇ。まぁ、いいけど」

 

 そしてアレックスは急に真剣な顔をすると圭に質問する。

 

「それよりも圭。あなた、悪魔召喚師になる。ということがどういうことか、本当に理解しているの?」

 

「それは、うん。……本当のことを言えば、まだ実感もわかないし、どうしても理解できてない部分もあると思う」

 

 アレックスの質問に圭はふざけて答えるべきではないと考えて、自身の心のうちにある思いを告げる。

 それを聞いたアレックスは、身を乗り出すように彼女に顔を近づけると、それなら考え直せ、と警告するように話す。

 

「なら、なおのこと考え直しなさい。圭が考えている以上にこの世界は救いはないわ。今ならまだ引き返せるはずよ」

 

 アレックスの言葉を聞いた圭は否定するように首をふるふると横に動かすと、もう一つ、彼女自身のかけがえのない出会いと、その出会いをなかったことにしたくない。と自身の思いを告げる。

 

「うん、私も蘆屋先生にそう言われたけど、でもあの子と、ヒーホーくんとの出会いをなかったことにも、別れたくもなかったから。……これが私のわがままなのも、馬鹿な選択だってこともわかってるつもり。でも、それでも……」

 

 圭の詰まるような話し様を見たアレックスは、頭の痛みをこらえるようにこめかみをおさえると、なんとか自分自身を納得させるように深呼吸する。

 そして、おさえたこめかみをぐにぐに、とほぐすように揉むと、もう一度確認するように圭に問いかける。

 

「本当に覚悟はできているのね?」

 

 彼女の問いかけに圭は真剣な顔でまっすぐ見つめ返すと、コクリと頷く。

 

「本当の意味で覚悟なんて、できてないのかも知れない。でも、選択を後悔したくないの」

 

 圭の口から出た覚悟の言葉を聞いたアレックスは、気を落ち着かせるように息を吐くと手のかかる子を見るような、優しい目で彼女を見る。そして──。

 

「まったく、仕方がないわね。……そんなに言うんだったら大丈夫でしょ。私も手伝ってあげるから頑張りなさい」

 

 アレックスの励ましとも、発破とも言える言葉をもらった圭は満面の笑みを浮かべると。

 

「……うんっ!」

 

 彼女に認めてもらった嬉しさを噛みしめるように頷いて返事をする。

 二人のやり取りでアレックス自身は、ひとまずの納得を得たこともあり、しばし会話が途切れるが、その合間に美紀はアレックスに対する疑問を呈する。

 

「でも、アレックス。あなたは何故悪魔について知ってたの? それに、蘆屋先生に確認してた南極のこと。シュバルツバースだっけ? あれも結局何のことだったの?」

 

 美紀の質問を聞いたアレックスは、バツの悪そうな顔になって額をおさえると、彼女の質問に答える前にジョージに話しかける。

 

「……ジョージ、どこまで話していいと思う?」

 

《彼女たちは君の友人なのだろう? この際だ。警告のためにもある程度の情報開示は必要だろう》

 

「それもそうね……」

 

 彼女たちのやり取りに不思議そうな顔をする美紀と圭だったが、そんな二人を尻目にアレックスはこほんと咳払いをすると、美紀の質問であるシュバルツバースについて簡単に説明していく。

 

「シュバルツバースというのは、(晴明)の言葉を借りるのならば南極に築かれた超巨大な異界のことよ。……異界についての説明は聞いているわよね?」

 

「うん、それは大丈夫」

 

 アレックスの確認に圭が返事を返しながら、二人は首肯する。それを見たアレックスは頷くと説明を続けていく。

 

「それじゃ続けるわね。そもそもシュバルツバーツという異界ができた経緯は、人類自身の怠慢、強欲が原因だったわ」

 

「……え? それってどういう?」

 

 アレックスの物言いに不審なものを覚えた美紀は首を傾げながら問いかける。その疑問にアレックスは、忌々しそうに毒付くように吐き捨てる。

 

「……あなた達も知っているはずよ。人類による不必要な森林の伐採や公害による環境汚染や、人が多く排出している二酸化炭素が起こす地球温暖化現象。武力や経済による戦争での貧富の格差の拡大。また、あらゆるモノを作っては捨て、それが原因で他の生物が死ぬことだってある」

 

 アレックスが言っていることと、悪魔の関連性がわからず二人は首を傾げているがそのことに構わずアレックスは核心について触れる前に二人にとある質問をする。

 

「そういった人類の数々の行動は地球を、他の生物を、そして母なる大地を傷つけていったわ。……ところで二人は病気になった時、ああ、今じゃなくて平和な時よ? その時はどうしてた?」

 

「いや、どうって……。まぁ、病院に行って薬をもらったり、ゆっくり体を休めて治す、とかだよね美紀?」

 

「そうだよね、自分の体の免疫力に頼、る──。まさ、か?」

 

 二人は最初不思議そうな顔をしながらお互いを見つめて確認するように話していたが、その中で美紀は何かに気付いたように、声をかすれさせながら青褪める。

 そして美紀の直感を肯定するようにアレックスは、本当の意味での核心に触れる。

 

「大地を、空を汚染する人類を病原菌と断じた地球は、世界を浄化するための自浄作用として生み出したものがシュバルツバースであり、異界に封印されていた古の、母と呼ばれる神々だった」

 

 アレックスが話したシュバルツバースの真実に、ゴクリとツバを飲み込む二人。

 そして圭は恐る恐るといった様子で問いかける。

 

「……母、お母さんってことよね? そんな悪魔たちがいたの?」

 

「ええ、そのとおりよ。各文明の神話に存在する人や、数多くのものを産み落とした神々。そして、そんな母たちを産み落とした、すべての母たる大悪魔【大霊母-メムアレフ】」

 

「メム、アレフ……」

 

 アレックスの口から出てきた大悪魔の名前を聞いた圭は自身の中で整理するように小さく呟く。

 アレックスは彼女がこぼした言葉に首肯するが、でも、と言ってもう一つ彼女たちにとって衝撃的すぎる言葉を告げる。

 

「さっきメムアレフのことを大悪魔と言ったけど、それは正確ではないの。というのもメムアレフは、これもさっき言ったようにすべての母。即ちすべての生命が生まれた母なる大地たる地球の意思そのものなの」

 

 アレックスの言葉を聞いた美紀と圭の二人は今度こそ驚きのあまりに絶句する。

 そのまましばしの時が流れるが、アレックスの告げた言葉の意味が咀嚼できたのか、圭は俯いてふるふると震えていたがガバっと憤怒に染まった顔を上げるとともに怒号を上げる。

 

「……ふざけないでよっ! 私は、私達は殺されるために生まれたわけじゃないっ!」

 

 そんな圭の怒号に他で話していた面々は、なんだなんだ、と彼女たちを見る。

 その中で由紀だけは、圭の怒りが気になったのか、てててっ、と三人のもとに走ってくる。

 

「どうしたのあーちゃんに、ふたりとも?」

 

 そして美紀と圭からすれば衝撃的な言葉が由紀の口から放たれる。

 その言葉を聞いた美紀は目を見開き、圭に至っては先ほどの怒りも吹き飛んだようで、少しの合間、呆けた目でアレックスと由紀の二人を交互に見つめる。

 そしてアレックスの可愛らしいあだ名に遅れて笑いがこみ上げてきたのか、ぷっ、と吹き出すと堪えきれずに笑いはじめる。

 

「ア、アレックス、くくっ、あーちゃんて、ふふっ、可愛らし、ぷっ、あだ名をもらったのね。あははっ」

 

「ちょっ、圭、まずいよっ!」

 

 そんな圭に美紀は焦ったように笑いをおさえるように告げる。そして美紀の視線の先には、にこやかに笑いながらも額に青筋が浮かせているアレックスの姿があった。

 

「けぇいぃ~~…………!」

 

 そのままアレックスは地獄の底から響き渡るような声を放つと、一瞬にして圭の背後に立ち、彼女に無慈悲な判決を言い渡す。

 

「どうやらお仕置きが必要なようねっ……!」

 

「ははは……ハッ!」

 

 その怒りの言葉を聞いた圭は、今更ながらにしまったという表情を浮かべて慌ててアレックスに言い訳をしようとするが、その前に彼女のギュッと握られた両拳が圭の左右のこめかみに添えられる。

 両拳の感触に気付いた圭は恐る恐るアレックスに問いかける。

 

「あ、あの、アレックスさん……? 慈悲とか、そういうのは……?」

 

 その言葉に圭自身は見ることは叶わないが、アレックスは微笑みを浮かべる。

 代わりにその微笑みを見た美紀が安心したような表情をみせ、そんな彼女の表情を見た圭も微笑みを見せる。

 しかし、次にアレックスが放った言葉で微笑みを凍りつかせる。その言葉とは──。

 

「慈悲なんてあると思う?」

 

 彼女の言葉を聞いた圭は最後の抵抗とばかりに声を上げようとするが──。

 

「べ、弁護士を──」

 

「もはや問答無用っ!!」

 

 要求するっ! と、圭が言葉を告げる前にアレックスは一言で彼女の言葉を切り捨てると、無慈悲にこめかみを拳でぐりぐりする行為、通称ウメボシの刑を執行する。

 そして刑を執行された圭は、こめかみから伝わる痛みから悲痛な声を上げる。

 

「みぎゃあぁぁぁぁ~~~~…………」

 

 

 ──圭に敗因があるとすれば、笑顔とは本来攻撃的なものである。ということを忘れて、あるいは認識していなかったことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 アレックスが無慈悲にウメボシの刑を執行してしばらく経った後、アレックスに美紀と圭、そして由紀を加えた四人は再び話をしていた。

 その中で圭は未だに頭が痛むのか、痛みを感じる場所をおさえながらアレックスを恨めしげに見ると文句を言う。

 

「……む~、アレックスぅ。も少し手加減してくれてもいいじゃんっ」

 

 そんな圭の言葉にアレックスは呆れた表情を浮かべた後に、彼女に見えるように拳を握ると話しかける。

 

「あら? どうやら、まだ足りなかったみたいね? それじゃ、もう一発いっとく?」

 

 アレックスが凄みをきかせながら放った追加の刑執行をする? という脅しに、圭はダラダラと冷や汗を流しながら、焦った様子で彼女を押し止めるように腕を突き出すと、掌をぶんぶんと振って否定する。

 その圭の様子が可笑しかったのか、アレックスはぷっ、と吹き出すと一言、冗談よ。と告げる。

 彼女の笑いで圭はようやくからかわれていることに気付くと、頬を紅く染めるとリスのようにぷくぅと膨らませる。

 圭の様子があまりに可愛らしかったようで、アレックス以外の二人も、くすくす、と笑い出す。

 笑い出した二人に、圭はますます頬を膨らませるが、すぐに彼女自身も笑いはじめる。

 しばらく笑い続ける四人だったが、一頻り笑って落ち着いたのか自然と笑いがおさまる。

 

 笑いがおさまったことで、由紀は先ほど圭が荒ぶっていた内容について問いかける。

 そしてすべてを聞き終えた由紀は、アレックスに一言だけを告げる。

 

「あーちゃん、大変だったんだね」

 

「……え?」

 

 由紀の発した言葉に疑問符を浮かべるアレックス。

 そんな彼女の様子に由紀は慌てた様子ながら、えへへ、と笑みを浮かべるとさらに告げる。

 

「えっと、私もみーくんやけーちゃんみたいにあーちゃんがどれだけ大変だったかは完全にはわからないけど、それでもあーちゃんが皆のために頑張ってたのはわかるよっ! だって、あーちゃん優しいんだもんっ」

 

「ゆきさん……」

 

 とにかくアレックスを励まそうとする健気な由紀の様子に、アレックスは少し呆けるが、すぐに我に返ると、くすり、と小さく笑う。

 由紀もアレックスの雰囲気が少し柔らかくなったことで安心したのか自然な笑みを見せる。

 だが、美紀と圭は由紀の言葉の中、恐らく自分たちのことを差す言葉を小さく呟く。

 

「みーくんって……」

 

「けーちゃんかぁ」

 

 そんな二人の様子に由紀は首を傾げると、なにか問題があったのかと話しかける。

 

「どうしたの二人とも?」

 

 不思議そうな由紀に、美紀は何故自分だけくん付けなのか、と抗議するように告げる。

 

「なんで、アレックスと圭はちゃん付けで、私だけがくん付けなんですか、先輩?」

 

 その言葉を聞いた由紀はますます不思議そうな顔をしながら自身が思ったことを告げる。

 

「え? なんでって言われても……。みーくんが、【みーくん】って感じだったから、かな?」

 

「いや、なんですか、それ……。意味がわからないんですけど」

 

 由紀の答えを聞いた美紀の憮然とした様子に、他の二人は珍しいものを見たとばかりに驚く。

 そして、圭はくすくす、と笑いながらからかうように美紀に話しかける。

 

「まあまあ、いいじゃない。私は可愛いと思うよ、みーくん?」

 

「…………アレックス、GO」

 

 圭のからかいにいらっときた美紀はアレックスをけしかけようとする。

 そのことに圭は慌てて抗議の声を上げる。

 

「ちょっ、美紀! それはあんまりでしょっ!」

 

「圭は調子に乗りすぎ」

 

 美紀の言葉にアレックスもうんうんと頷く。

 それを見た圭は、そんなぁ、と情けない声を上げる。

 そして三人はまるで、かつての平和な時が戻ってきたと思えるような安心した空気を感じて、お互いに笑みを浮かべて笑い合う。

 

 そんな後輩たちを見て由紀もまた安心したように笑う。

 彼女にとってアレックスがこんなにリラックスしている姿を見るのは初めてだったのもあり、それだけでもこの二人が生きていて本当によかった。と、内心安堵していた。

 そして由紀は唐突に自身に気合を入れるように声を張り上げる。

 

「よぉぉしっ! 頑っ張るぞーー!!」

 

 その様に驚いた表情を見せる三人。そして三人を代表するようにアレックスが由紀に話しかける。

 

「急にどうしたんですか、ゆきさん?」

 

「ん? えへへ……」

 

 アレックスに話しかけられたことにより、今の行動を改めて客観視できたのか由紀は恥ずかしそうに笑いながら自身の頭を撫でる。

 そしてアレックス達の疑問である、由紀自身がなぜ気炎を上げたかの理由を告げる。

 

「だって、あーちゃん達が頑張ってるのに、先輩の私が何もしないわけにはいかないじゃない? だから、これからもっと頑張ろうって。それに」

 

「それに?」

 

「巡ヶ丘以外が無事なら、そのうち本当に救助が来るだろうし、それまで頑張れば皆が無事に生き残れるんだから! なら、頑張らない理由がないよねっ!」

 

 学園生活部、ふぁいとっ、おー! と、再び気炎を上げる。

 しかし由紀のとある言葉に美紀がツッコミを入れる。

 

「あの、先輩? 私達はまだ入部したわけじゃないんですが……」

 

「えぇ~~?」

 

 美紀のツッコミに由紀は不満そうに様子で、ぶぅ、と唇と尖らせるが、すぐになにか思いついたのか手をぱんっ、と叩くと笑みを浮かべて美紀に話しかける。

 

「でも、二人は蘆屋さんと一緒に来て、あの人は今生活部の外部講師なんだから、その人と一緒にいる二人とも、もう学園生活部だって言っても過言じゃないよねっ!」

 

「「ええ…………」」

 

「ゆきさん、流石にそれは……」

 

 由紀の超理論を聞いた三人は呆れたような声を出すが、件の由紀自身はまったく意に介しておらず彼女たちに言い聞かせるように話しかける。

 

「私はなにも二人を無理やり仲間にしようとしてるわけじゃないんだよ?」

 

「それなら、なんでゆきさんは二人を何度も勧誘してるんですか?」

 

 アレックス自身、由紀の強硬なまでの勧誘に疑問を抱き質問する。

 それを聞いた由紀は、私そんなにしつこかった? と、頭を掻きながら質問する。

 その質問に三人が何度も頷くと、流石にショックだったのか、目と口を皿のように開いて驚愕する。

 だが、すぐに落ち着いたのか表情が戻ると、こほん、と咳払いをして三人に話しかける。

 

「だって、せっかく生き残った巡ヶ丘の生徒なんだから、仲良くしたいんだよっ」

 

「えっと……?」

 

 由紀の言葉の意味がわからなかった圭は首を傾げて疑問符を浮かべる。

 しかし、美紀は彼女の制服を見て、何故そんな事を言ったのかがわかったのか、顔を少し歪めて圭の肩を叩くと耳打ちする。

 

「圭、ゆき先輩の制服。あれって丈槍の……」

 

「え? あ……」

 

 美紀に耳打ちされた内容を聞いた圭は、改めて彼女の制服を見る。

 そして確かに彼女の制服が【丈槍】を示す特注品ものだった。

 それを見た二人は同時に、ある噂を思い出す。

 三年の先輩に【丈槍】がいることと、その先輩が村八分に近い状態にされていることを。

 二人がそんな内緒話をしていたところで、アレックスからストップがかかる。

 

「はい、そこまでよ二人とも。ゆきさんは、ゆきさん。丈槍なんて関係ないわ」

 

 アレックスの言葉に二人はいつの間にか由紀を【丈槍】という色眼鏡で見ていたとこに気付き気不味くなる。

 そして二人は彼女に頭を下げて謝罪する。

 

「その……ゆき先輩、ごめんなさい」

 

「すみません、ゆき先輩」

 

 そんな二人の謝罪に由紀は安心させるように大丈夫、と語りかける。そして。

 

「今は皆、(由紀)を見てくれるから。りーさんもくるみちゃんも、もちろんあーちゃんだって、ね?」

 

「ええ、そうですね」

 

 そう言って二人は笑い合う。

 そんな二人の姿を見た美紀と圭は短い間ながらも確固たる信頼関係を築いていることを察する。

 そしてそれを可能としたのは、丈槍由紀という一人の少女が持つ人間性、もっと言えば一種のカリスマ性が影響しているのだろうとも感じた。

 二人がそんなことを考えているうちに、由紀が彼女たちの方を見て安心させるような笑みを浮かべると語りかける。

 

「確かにこんなことになって私達だけじゃない、皆大変だと思うんだ。でも、ね。だからこそ皆で協力すれば私達はどこへでも行けると思うのっ! だって、本来がっこうってそういう場所のはずだから。だから、私も学園生活部の部長として、そして一人の人間としてここにいる皆と無事に生き延びようって言いたいの。そして喜びを分かち合うなら一人でも多いほうが良いから。これが、私が二人を生活部に誘う理由かな?」

 

 もちろん部活に入らなくても皆で生き残れればそれもまたいいと思うけどね、と由紀ははにかみながら語りかける。

 そんな由紀の想いを聞いた美紀と圭はどちらからともなく顔を見合わせると、微笑ましそうに笑みを浮かべる。

 そして美紀は幾分か柔らかい表情を見せて由紀に話しかける。

 

「なら、私達も頑張らないといけませんね、ゆき先輩」

 

「みーくん……?」

 

「みーくんじゃないですけど、改めて私達も学園生活部に入部させてもらえますか、ゆき先輩?」

 

 美紀の宣言に圭もこくこくと頷く。

 それを見た由紀は満面の笑みを浮かべると、うん、と力強く頷き。

 

「もちろんだよっ! ようこそ、学園生活部へ!」

 

 由紀は両手を大きく広げて歓迎の意を示すと同時に大喜びする。

 そして彼女は学園生活部部長として、一つの目標(約束)を宣言する。

 

「一番の目標はここにいる全員で生き残ること。そして他の生存者の人達がいれば一緒に生き残ることを目指すよっ! 学園生活部、ふぁいとっ、おー!」

 

 由紀の(とき)につられて後輩たちも同じく、おー! と声を上げる。

 

 彼女達のそんな姿を見て、大人たちで話していた慈は微笑ましく、そして同時に頼もしく中心人物である由紀を見つめていた。

 

 

 

 

 

「そういえば美紀、太郎丸って今どこにいるんだっけ?」

 

「え、太郎丸? あっ! もしかして、まだヒーホーくんと一緒に車の中にいるのかも……!」

 

 その後、二人は慌てて透子のキャンピングカーに戻って、忘れられていたことにぷんすこと怒っているジャックフロストに平謝りしたり、怒れる雪だるまに嬉々として抱きつく由紀の姿が見られたそうな。

 

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