DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
晴明一行に空中から襲いかかってくるヴァルキリーとセイレーン達。
彼女らの攻撃を避けるために晴明たちは別方向に跳んで間合いを取る。
そして晴明とカーマは、回避途中の空中でそれぞれメギドファイアと、自身の得物である弓を構えて反撃に出る。
「おぉぉぉぉぉぉ!」
「──天扇弓!」
晴明はメギドファイアに自身のMAGを込めることで散弾化させ、カーマも天扇弓による上空から矢の雨を降らせる。
縦方向と横方向からの殺し間で悪魔たちを一息に狩ろうとしたのだ。
だが、そこに──。
「────!!」
ローレライ達とデイビットの共演にて、彼女達の周囲に音の結界が張られる。
音の結界によって、ほんの一瞬であるが晴明達の攻撃が止められてしまう。
尤も、すぐに結界を突き破り凶刃がヴァルキリーやセイレーン達を貫こうとするが、ほんの一瞬、本当にタッチの差であるが彼女達の回避行動が早く攻撃は空を切る。
地面に着地しながらそれを見た晴明は、すぐさまピクシーに呼びかける。
「──ピクシー!」
「はい、は~い。──ラスタキャンディ!」
晴明に呼びかけられたピクシーは、気の抜けた返事とは裏腹に力ある言葉を唱えると同時に、彼女をはじめ晴明や仲魔達のあらゆる能力を上げる魔法、ラスタキャンディを使用する。
魔法を使用すると、彼女達の周囲に光が集まり、そのまま身体に吸い込まれていく。
ピクシーが使用した魔法、ラスタキャンディを見て、ぎょっとするローレライ達。
ローレライ達にとってピクシーとは同じ種族の中でも最下級の存在であり、そんなピクシーが全能力上昇なんて高位の、大魔法と呼ばれてもおかしくないラスタキャンディを使用できるとは露ほども思っていなかったのだ。
そして、その隙を見逃すほどクー・フーリンという悪魔は甘くない。
「はっはぁ! 隙だらけだぜぇ!」
彼は地面を踏み砕くほどの神速の移動を繰り出し、そのまま手に持つ槍、ゲイボルグを突き出して、まるで馬に乗った騎士のごとくランスチャージを繰り出す。
しかし、そんな彼の前に二体のヴァルキリーが現れ、両手に持った剣、合計四振りで彼の槍を叩き、無理矢理穂先を下に向ける。
その結果、下を向いた穂先は地面をえぐり、しかしそれだけで運動スピードがなくなるわけではない。かくしてクー・フーリンは、本人が望むわけではなく偶然ではあるが、棒高跳びのように身体がぐるんと空中に放り出される。
「っ! なろっ!」
それでも元来の戦闘センスで、空中ですぐさま体勢を立て直すクー・フーリン。
しかし、そんな彼を取り囲むようにヴァルキリー達、先ほどクー・フーリンの槍を迎撃した二体以外の九体が彼に向かって突撃してきていた。
それを見て顔を歪ませるクー・フーリン。
しかし、それは苦々しく思っているのではなく、どちらかと言えば楽しげな笑みであった。
笑みを浮かべたクー・フーリンは、それこそ平時であれば腹を抱えて笑いそうなほどに喜色に溢れた声で吠える。
「はははっ! その程度で俺を殺せるかよぉ!」
吠えた後にクー・フーリンは身体のバネを最大限に使い全身を可能な限り撚ると、そのまま開放して独楽のように回転して周囲に槍を叩きつける。
まさしく暴風、竜巻そのものと言えるようなクー・フーリンの暴威を突然受けることになったヴァルキリーたちは、成す術なく薙ぎ払われていく。
それを見たカーマは一言。
「……たーまやー。とでも言うべきですかね?」
と、呑気に言いながら突然の惨状に呆けていたセイレーンの何体かを矢で貫いていく。
カーマの攻撃に味方がやられていることに気付いたセイレーン達は慌てて羽ばたきながら回避行動を取る。
それと同時に何体かはさらに力強く羽ばたくことで突風を発生させて、カーマが放つ矢の軌道を変えて防ごうとする。
しかし、流石に妖鳥と秘神という二つの種族が持つ能力の絶対値、その違いを突破できるだけの風を引き起こせるわけもなく、抵抗を選んだセイレーン達も次々と胸に、頸に、額に矢を撃ち込まれ討ち取られていく。
次々と敵を減らしたカーマは戦果に気を良くして、さらに拡大すべく矢を番え──即座に回避行動を取る。
緊急回避を行いカーマが去った場所に音の衝撃波が撃ち込まれ、地面が爆散する。
「……あぶなっ! 洒落になってませんよっ!」
そう言いながら下手人を見るカーマ。そこにはストラディバリを弾いているデイビットの姿があった。
「ふぅむ、小手調べとは言え、この程度は回避してもらわないと面白くない」
カーマの回避を見たデイビットは、そのように感想を述べながらもストラディバリを弾き続ける。
すると、今度は衝撃波以外にも、楽譜に記載されている音符の形をしたエネルギー体が生成されてカーマに殺到する。
デイビットの攻撃を何度もステップを踏むことで躱そうとするカーマ。しかし、衝撃波自体はそれで躱せたが音符は追尾能力でもあるのか、しつこくカーマを追ってくる。
「くっ! 面倒な攻撃をっ!」
カーマは愚痴りながら音符に向かって、迎撃の矢を放っていく。
そして、デイビットが放った音符とカーマが放った矢が激突するたびに、破裂する轟音と衝撃波を周囲に撒き散らす。
カーマが音符の迎撃を終わらせたその場は、まるで爆撃を受けたかのような様相を見せていた。
仮にも神性を持つ自身が迎撃しかできなかった、という事実に戦慄するカーマ。
カーマの表情を見たデイビットは満足そうに再びストラディバリの弦に、弓を添えて演奏をしようとするが、その時。
「はぁぁぁぁ────!」
そこに倶利伽羅剣を振り上げた晴明が超スピードで迫ってくる。そしてそのままデイビットに向かって一閃!
それを感じたデイビットは、即座に弓で晴明の斬撃を受け止める!
晴明の剣とデイビットの弓が接触した瞬間、攻撃と防御の衝撃が周囲に拡散し、空間を、地面を破壊していく。
その中で鍔迫り合いを続ける二人だったが、デイビットは踊るようにステップを踏むと晴明を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた晴明だったが、インパクトの瞬間に自ら後ろに飛ぶことでダメージを軽減し、さらに吹き飛ばされながらも素早くメギドファイアを取り出してデイビットに向けて実弾で乱射する。
苦し紛れの攻撃だったが、デイビットは慌てることなくストラディバリを弾くことで、自身の周囲に即席の結界を張り防御する。
結界自体は破壊されたものの、攻撃を防ぎきったデイビットは視線を吹き飛ぶ晴明に向けるが、攻撃を防がれたはずの晴明は何故か、してやったり、と言わんばかりの笑みを浮かべていた。
その笑顔に不審なものを感じたデイビットだったが、すぐに晴明が笑みを浮かべていたか、その理由を強制的に理解させられる。
「これで────ジオダイン!」
「なっ……! ぐぉぉぉぉぉぉ!!」
デイビットが音の結界を張る一瞬の隙を付いて、ピクシーが電撃系上級魔法であるジオダインを放ったのだ。
意識の外からジオダインという強力な魔法をまともに受けてしまったデイビットは、ただダメージを負うだけではなく身体が感電する。
それを見た晴明は、吹き飛ばされながらも空中でくるりと回転して体勢を立て直すと再び突撃しようとするが、その前に先ほどクー・フーリンの邪魔をした二体のヴァルキリーが斬りかかってくる。
「ちぃっ! 邪魔だぁ!」
ヴァルキリーを確認した晴明は、自身のMAGを練ると倶利伽羅剣に纏わせて思い切り振り切って斬撃を増大、空間殺法にて敵対者を細切れにする。
ヴァルキリーを細切れにした晴明は追撃を仕掛けようとするが、既に体勢を立て直したデイビットからの音符攻撃が放たれるのを見て即座に回避、迎撃行動に移る。
晴明は再びメギドファイアにMAGを込めて散弾状態で乱射。音符を次々と破壊していく。
そうして音符をすべて破壊し終えた晴明は、仕切り直すようにデイビットから間合いを取る。
晴明の行動を好機と見たデイビットは追撃を仕掛けるためにストラディバリで演奏をしようとするが、突然足元に槍が投擲される。槍はクー・フーリンのゲイボルグだった。
足元に打ち込まれたゲイボルグを見たデイビットは驚いて周囲を確認するが、そこにはいつの間にか殲滅されてMAGに還っていく自身の召喚した軍勢の姿があった。
「なんとっ! まさか、ここまで呆気なくやられるとは……」
自身の手勢の脆さに驚くデイビットだったが、そんな彼に突撃する影があった。ゲイボルグの持ち主であるクー・フーリンだ。
デイビットに突撃したクー・フーリンは足元のゲイボルグを掴んで持ち直すと、すぐさま突きの連打をお見舞いする。
だが、デイビットは軽業師の如く華麗にステップを踏んで、神速の突きを見切って回避していく。
そして、そのままデイビットは晴明たちと間合いを取って仕切り直す。
互いに距離を取って仕切り直す形になった晴明達とデイビット。
その中でデイビットはカタカタと顎を鳴らしながら、嬉々とした様子で告げる。
「ふふふ、まずは小手調べが終わり、これから本当の意味で死の舞踏を始めましょうかっ!」
そう告げたデイビットの全身から活性化したMAGが噴き上がる。
その勢いは凄まじく、まるで駐屯地周辺が突然の災害が訪れたかのように荒れ狂う。
「ちぃ! これが、魔人-デイビットの真の力、か!」
力の奔流を感じた晴明は腕で顔を庇って、目を顰めながらデイビットが本気を出した事実を噛みしめる。
仲魔達も、それぞれデイビットを警戒しながら態勢を整える。
「では、行きますぞっ!」
MAGを全身に行き渡らせたデイビットは全力で演奏を始める。
デイビットが演奏を始めると同時に衝撃波と音符が弾幕を張るように晴明達のところに押し寄せてくる。
それを見た晴明達はギョッとするが、カーマと晴明がそれぞれ弾幕を張り対抗する。
──煌めく閃光と響き渡る轟音、そして蹂躙する衝撃波。
デイビットの手によって壊滅した駐屯地が、双方の攻撃の余波でさらに建物が土煙を上げて倒壊し、破壊されていく。
建物が倒壊した際に発生した土煙が全員の身を隠していく。
そのまま少しの時が流れるが、唐突に煙から何かが飛び出していく。
飛び出した影、それは晴明とクー・フーリン、そしてデイビットだった。
飛び出した三人、晴明は剣を振るい、クー・フーリンは槍を突き出し、デイビットはストラディバリで演奏しつつ体術、蹴撃を見舞う。
薙ぎ、突き、振るい、剣戟、蹴撃、と余人が見ればまるで三人が決められた手順の通りに華麗な舞踏を踊っているように見えただろう。
だが、これは彼らの戦闘の先読みが成した必然であり、同時に奇跡だった。
先読みでの舞踏を続ける三人、しかし、突如晴明とクー・フーリンがデイビットから距離を取る。
その直後、デイビットのもとに矢の雨が殺到する。
「いい加減、倒れなさいなっ!」
矢の雨の正体は、身を隠して準備していたカーマのスキル、天扇弓と、もう一つ。
「────刹那五月雨撃ち!」
こちらも、本来は複数の敵に多数の矢を撃ち込むスキル【刹那五月雨撃ち】を連続で発動していたのだ。
そして、矢の雨が上から、前からと殺到して必然的にデイビットがいる場所は、殺し間とも言える空間になる。
「ふん、猪口才なっ!」
そんなカーマの妙技に、デイビットは吐き捨てながら自身の魔技とも言える演奏で音の結界で防ごうとするが……。
「ぐ、むっ。まさか、これほどとは……」
しかし、流石に複数のスキル、しかも、それが多段スキルだったことから、結界でなんとか攻撃を防ぐことは出来たものの、結界はいつ崩壊してもおかしくないほどにヒビ割れ、同時にデイビット周囲の地面が矢によってハリネズミのようになっていた。
カーマの手によって結界を破壊される寸前までいったデイビットは、地面の矢の衝撃もあって体勢を崩しており、すぐさま動くことが出来ない。その好機を見逃す晴明達ではなく、さらなる追撃を掛けるためにクー・フーリンは肉薄を、晴明はメギドファイアの銃口を向ける。
そして銃口に晴明のMAGの光が集まり、極光となってデイビットに放たれる。
その一撃は、かつて巡ヶ丘学院にて、逃げようとするライジュウに向かって放たれ、ライジュウと射線上の周囲を薙ぎ払った晴明が持つ最高クラスの物理スキル。
──至高の魔弾。
メギドファイアから放たれた力の奔流、それはクー・フーリンを追い抜き、今なお体勢を崩しているデイビットに牙をむく。
晴明から放たれた至高の魔弾が自身の結界を、いくら崩壊寸前だったとはいえ飴細工のように破壊するのを見たデイビットは、己を簡単に滅ぼしうると直感的に理解したが、さりとて回避することはかなわず、しかし悪足掻きと体を捻って被害を最小限に、自身の右上腕部を吹き飛ばされるだけに留める。
そして身体との繋がりが途絶えた右手は衝撃で弓ごと遠くへと飛ばされていく。
「ぐ、ぅぅ。……!」
「おぉりゃぁぁっ!」
攻撃をまともに受けたことで呻き声を上げるデイビットだったが、そこにクー・フーリンがトドメとばかりに槍を振り下ろす。
しかし、その一撃はデイビットを両断することなく、あくまで彼の左腕、ストラディバリを持つ腕を切り放すに留まった。
カーマから続く連続攻撃で己の命とも言える音楽を奪われたデイビットは激昂する。
「おのれ……。おのれ、おのれおのれぇ!!」
しかし、激昂する彼は気付いていなかったが、自身を噛み砕く死神の鎌がすぐ側まで近寄ってきていた。
「──マハ・ジオダイン!」
その鎌とはピクシーの放った全体化された電撃系上級魔法のマハ・ジオダインだった。
放たれたマハ・ジオダインは彼自身を中心に、回避する事も出来ないように広範囲に渡って雷を降り注がせる。
「ぐ、うおぉぉぉっ!」
回避することを封じられたデイビットは、マハ・ジオダインで発生した稲光とともに落ちてくる雷の直撃を受ける。
激しく光り、同時に響き渡る落雷の轟音。そして少し遅れてバチバチと何かが焼ける音が聞こえてくる。
それはデイビットの着ていた楽師服がボロボロになっていることからも見て取れるように、服が焼けている音だった。
デイビット自身もマハ・ジオダインのダメージで限界を超えたのか、ドシャリと仰向けに倒れる。
倒れたデイビットの骨の身体から緑色の燐光が立ち上ってくる。それは、彼自身が制御できなくなって体外に放出しているMAG、即ちデイビットの命そのものだった。
立ち上って消えていく
しかし、しばらくすると、くはは、と笑いはじめる。
「我が魔技を持ってしても届かぬか。あるいはわたくし自身の傲慢が招いた必然かな……?」
そう言いながら、笑い続けるデイビット。
そんなデイビットに対して、晴明達はそれでも警戒を緩めずに戦闘態勢のままで倒れた彼を取り囲む。
晴明達の様子を見たデイビットは、なおもおかしそうに笑い続ける。そして彼は最後に幕引きと、さらに晴明たちにとって衝撃的な言葉を続ける。
「くくく、これにてわたくしの公演は終幕だが、貴方達はこんなところで呑気にしていていいのかな……? 本来の予定とは前後してしまったが、諸君を出迎えるためのエキストラは既に君等の拠点に向かってしまっているぞ?」
「エキストラ? それに拠点、だと?」
デイビットの抽象的な言葉に嫌な感覚を覚えながらも聞き返す晴明。その問いにデイビットは淡々と答える。
「貴方達の拠点、あそこは今、この地にいた出来損ないのゾンビどもに襲われていることだろう……」
「……なにっ!」
デイビットが告げた言葉に驚いた表情を浮かべる晴明。
そんな晴明の様子にデイビットは満足げな雰囲気を出すと、ボロボロと身体が崩れながらもさらに話を進める。
「本来は、貴方達をここに呼び寄せるための餌だったが、まさか紛い物どもが襲撃を加える前にここに来るとは思っていなかった。……まぁ、結果的に入れ違いになってしまった、ということですよ」
カタカタと顎を震わせるように嗤いながら告げるデイビット。
あくまでも他人事のように嗤っているデイビットを見た晴明は忌々しそうな表情を浮かべると、とどめを刺すようにメギドファイアの引き金を引く。
メギドファイアの銃口から放たれた弾丸は、そのままデイビットの頭骨を破砕し、身体も急激にMAGに分解、拡散されていく。
しかし、それでも全身が完全にMAGになるまでデイビットは嗤い続けていた。
そして、デイビットの身体が完全にMAGになった時、カランという音とともに身体があった場所に晴明とクー・フーリンによって吹き飛ばされたはずのストラディバリが
無言でデイビットが落とした戦利品を拾っていた晴明を見ていたカーマは、彼に話しかける。
「マスター、これからどうします?」
「どうするか、だと? そんなことは決まっているだろう!」
晴明は結果として、まんまと嵌められた自身に対しての激情を抑えながら、カーマに向き返って質問に答える。
「いくら高校にアレックスや大僧正達がいるとはいえ、最悪の場合ゾンビどもの中にデモニカ部隊が混じっている可能性が高いんだ。急いで戻るぞっ!」
それだけを告げると晴明は地面を踏み砕くほどの踏み込みでクレーターを創る勢いで跳躍し、巡ヶ丘駐屯地から巡ヶ丘学院への帰路を急ぐ。
そんな晴明の様子に仲魔達はさもありなん、と互いを見合わせながら晴明に続くのだった。