DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 お久しぶりです、作者です。
 今話も色々とあってなかなか書く暇がありませんでしたが、なんとか書き終えたので投稿いたします。
 正直な話、文字数が多い割には場面が進まなかった……。
 今後は、場面も執筆速度も早くなってくれると良いのだけど……。




第三十三話 意志

 その後、由紀たちと軽い雑談を交えた晴明は、由紀に一言断りを入れて席を辞そうとする。

 

「すまない、色々と邪魔をしたね。俺の方でも何か出来ることがないか探してみるから、由紀さんも何かあったら遠慮なく言ってくれ」

 

「うんっ! はーさんも気をつけてね」

 

 由紀も、そんな晴明をにこやかな笑みを浮かべて見送ろうとする。

 そこで圭がおずおずと晴明に話しかける。

 

「あ、あのっ! 蘆屋先生……」

 

 そんな圭を訝しげに見ながら晴明は彼女に語りかける。

 

「……どうした、圭?」

 

 晴明に話しかけられた圭は、しばし周りを見て逡巡するが、意を決したように口を開く。

 

「えっ、と……。蘆屋先生に聞きたいことと、話したいことが……」

 

 圭の様子に何かを感じた晴明は、彼女を安心させるように笑いかけながら提案をする。

 

「……そうか、そうだな。どうにもここじゃ話し辛そうだし、場所を変えて話すか?」

 

 晴明の提案に、こくりと頷くことで肯定する圭。

 彼女の仕草を見た晴明は、苦笑を浮かべながら再び由紀に話しかける。

 

「すまない由紀さん。そういうことだから圭を──」

 

 そこで今度は美紀が割り込んでくる。

 

「すみません、私も……」

 

 そのことに嘆息した晴明は改めて由紀に告げる。

 

「圭と美紀、二人を連れて行くよ」

 

 晴明の様子に由紀も苦笑を浮かべて口を開く。

 

「うん、わかったよ。……はーさんも大変だね?」

 

 由紀の言葉に晴明は軽く手を上げることで答えると、二人を引き連れて部屋を出ていくのであった。

 

 

 

 

 

 ここは学園生活部が制圧し、しかし現在使用されていない宿直室。そこで晴明たち三人が集まっていた。

 そこで三人は適当に辺りの整理をして座る場所を確保すると、それぞれ近場に円を描くようにして座る。

 そうして会話するための準備が整ったは良いものの、圭と美紀は何かを話したい、しかし何を話せばいいのかわからない。と、いった状態で口を噤んでいる。

 このままでは会話ができないのではないか。と、思った晴明は透子に聞いた太郎丸のことについて話す。

 

「……太郎丸のことは聞いたよ」

 

 晴明の言葉にビクリと肩を震わせる二人。

 その中でも圭はどこか晴明に対して怯えるような、悔恨の視線を浮かべている。

 そして圭はぽつりぽつり、と話し出す。

 

「私が、いけなかったんです……」

 

「けいっ……!」

 

 自責の念に駆られる圭の口から出た言葉を聞いて、思わず咎めるように彼女の名を呼ぶ美紀。

 圭は自身の名を呼ぶ美紀を一度弱りきった瞳で横目で見ると、何かを否定するかのように首を横に振って言葉を続ける。

 

「私が、私がもっとちゃんと考えていれば……、そうすればヒーホーくんだって……!」

 

 話していく途中で自身が許せなくなってきているのか、声を荒げる圭。

 そんな圭を見た美紀は肩を掴むと軽く揺さぶる。

 そのことで美紀を見る圭。

 

「けい、感情的になっちゃだめだよ」

 

「……でもっ!」

 

「でも、じゃない。落ち着いて? そうじゃないと、きっと──」

 

 また、繰り返すことになってしまうから。と、告げる美紀。

 美紀の言葉を聞いた圭は瞳に怯えの色を宿す。

 それを見た美紀は罪悪感を感じるが、それでも、またあんなことを繰り返すよりはマシなはず。と思い、心を鬼にして彼女に語りかける。

 

「だからこそ、私も、圭も、落ち着いて、感情的にならずに冷静にならないといけないの。そうしなければ、今度は、きっとヒーホーくんの、そして太郎丸の思いを踏みにじることになるから」

 

「…………うん」

 

 美紀の言葉が堪えたのか、圭は思い悩む様子だったが、言葉少なく肯定する。

 そんな彼女たちの様子を見た晴明は、二人を安心させるためにもなるべく優しげに二人に問いかける。

 

「圭、美紀。辛いことを聞くことになるが、話してくれるか?」

 

 晴明の問いかけに二人は頷くと、代表して圭が、俯きながらぽつり、ぽつり、と防衛戦の出来事について話す。

 それを聞いた晴明は、そうか、と一言呟くと圭に対して声をかける。

 

「……よく、頑張ったな」

 

 そう言いながら圭の頭をくしゃりと撫でる晴明。

 そのことに驚いて晴明を見上げる圭。

 そんな彼女を安心させるように、彼は柔らかい表情を浮かべると謝罪の言葉を告げる。

 

「すまないな……。俺がもっと早く気付いていれば、あるいは調査を後回しにしていれば、そんな思いをさせずに済んだのに……」

 

 その晴明から放たれた悔恨の詰まった言葉を聞いた圭は、見上げたまま目尻に涙をためると、どんっ、と彼に勢いよく抱きついて泣きはじめる。

 

「あぁ、うあぁ……。ひーほーくん。ひーほーくんっ! あぁぁあぁぁぁぁぁっ────!!」

 

 号泣する圭を心配そうに見つめる美紀。

 

「──圭、やっぱり辛かったんだよね……」

 

 そんな彼女の呟きを聞きながら、晴明は圭を慰めるように背中を擦るのだった。

 

 

 

 

 

 そのまま圭が泣き止むまで待っていた晴明と美紀。

 しばらく泣き続けて精神を落ち着かせられたのか、圭も少しづつ泣き声が小さくなっていき、完全に泣き止むと流石に恥ずかしくなったのか、晴明からそろりそろりと離れる。

 そして誤魔化すように、少し照れくさそうに笑みを浮かべる圭。

 そんな彼女を見て心配そうに声をかける美紀。

 

「圭、本当にもう大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよっ! ふふっ、美紀は本当に心配性なんだから」

 

 自身の心配をする美紀を見て、系は心配をかけないように、とおおらかに笑いながら大丈夫だと告げる。

 そのことに一瞬不満げな表情を見せる美紀だったが、すぐにぷっ、と吹き出すと二人で笑いだす。

 美紀も圭が安心させるために、あえて冗談めかして答えていることに気付いていたからだ。

 それでも一瞬不満げな表情を見せたのは、ただ単に彼女に対する一種の異種返し、という側面が強かった。

 もっとも、美紀も圭も、お互いともにそういう心持ちでやっていたということに気付き、可笑しくなって吹き出したのだが。

 

 二人の笑い合う姿を見て安心した、と言わんばかりの表情を浮かべる晴明。

 しかし、すぐに圭が話してくれた内容の一部に気になる部分があったのか思案顔になる。

 そして、そのことを確認するために圭に話しかける晴明。

 

「圭、少し良いか? さっきの話で一つ確認したいんだが……」

 

「あ、はい。なんでしょう?」

 

 先ほどとは別種の涙を浮かべて笑い合っていた圭は、晴明に話しかけられたことで目尻の涙を指で拭いながら晴明を見る。

 

「ああ、さっき話に出ていた車椅子の紳士。──本当に、STEVENと名乗っていたのか?」

 

「えっ? はい、そうですけど……。やっぱり蘆屋先生のお知り合いなんですか?」

 

「なに? どういう意味だ?」

 

「いえ、STEVENさんが『彼に僕のことを聞いてみると良い』と、言われてたので……」

 

「そう、か。あの人がそんなことを……」

 

 晴明が告げた言葉に首を傾げる圭。彼が発した言葉が、どことなく他人行儀に聞こえたためだった。

 そんな圭を見た晴明は、先ほど圭が発した質問について答える。

 

「彼と、STEVENと知り合いか、だったな。一言で言えば直接会ったことはないが、彼がどのような人物かはある程度知っている。と、いったところだな」

 

「はぁ……」

 

 晴明の煮え切らない答えに呆けた返事を上げる圭。

 そんな彼女を横目に見ながら美紀は、先ほど圭が言っていた車椅子の紳士が彼女の妄想や見間違いの類ではなかったことに驚きを顕にする。

 そしてそのまま彼女は自身が疑問に思ったことを口にする。

 

「それじゃ、本当に居たっていうの……? でも、それじゃその人どうやって三階まで上がってきたの? エレベーターは破壊されているっていうのに……」

 

 彼女の疑問、というよりも聞こえるか、聞こえないかの小声だったので半ば独り言だったのだろうが、兎にも角にもその呟きが聞こえた晴明は頭をガシガシと掻きながら疑問を持っても無駄だと告げる。

 

「ああ、美紀? 彼に関しては考えるだけ無駄だぞ。現実世界だけじゃなくて異界や、果てには電脳世界にまで現れるからな。……うん、自分で言ってなんだが、あの人本当に何なんだろうな……?」

 

『はぁ……』

 

 晴明の言葉を聞いた美紀と、ついでに圭は呆けた声を上げる。

 彼女たちの表情にはありありと『私たちにそんなこと言われても……』という感情が浮かんでいた。

 それを見た晴明は、微妙な空気が流れはじめた現状を変えるために、んんっ、と咳払いをすると再び話し出す。

 

「それはそれとして、一応あの人に関してのことで、知ってることについて、話しておこうか」

 

 その言葉を聞いた美紀と圭は、それで謎の人物についてやっと分かるということもあり、興味津々といった様子で身を乗り出す。

 その彼女たちの様子、なんだかんだで二人とも美少女であり、そんな二人が目と鼻の先まで急に来たということもあって、思わず身を仰け反らせる晴明だったが、再び咳払いをする。

 そのことで、ようやく自分たちが晴明に近付き過ぎていることに気付いた二人はそれぞれ体制をもとに戻すと、圭は両手を後ろ手に組んで頬を染めながら、えへへ、と笑って誤魔化すように、そして美紀は思わずと言った様子で俯いているが、恥ずかしかったのか耳が真っ赤に染まっていた。

 

 それを見た晴明はこのままでは二人、特に美紀が気まずいだろうと思い、空気を払拭するためにも、努めて普段の調子で話しはじめる。

 

「それじゃ改めてあの人、STEVENについて話すぞ。まず最初に言っておくことは、あの人はDr.スリルに並ぶ、いや、彼をも超える天才だってことだ」

 

 晴明がSTEVENのことについて話しはじめたことで、ようやく二人も先ほどまでの恥ずかしがっていた様子から、真剣な面持ちへと気持ちを切り替える。

 そんな二人の様子に晴明は内心でなんとかなったか、と頷きながらも話をすすめる。

 

「彼の功績の一つとしては()()()()()()()()()を開発したことだ」

 

 まぁ、もっとも純粋な功績と思うには、負の側面が大きすぎるけどな。と、内心思う晴明。

 そんな晴明が言ったターミナルシステムという言葉を聞いて、美紀はどんなものなんだろう? と、疑問に思い首を傾げると質問があるとばかりに挙手して晴明に問いかける。

 

「……ターミナル、ですか? それは一体どういうものなんですか?」

 

 美紀の質問に晴明は、良い質問だ。と言わんばかりに頷くと答えを口にする。

 

「ある意味夢みたいな、あるいはSFみたいな話だが、ターミナルシステムはそれぞれ別の場所に設置された端末、仮に端末A、端末Bとするか。遠くに設置された端末AからBに、あるいは逆でもいいが瞬時に移動できる、簡単に行ってしまえば局地的なワープシステムだ」

 

 晴明の答えを聞いた美紀と圭は、聞き間違いかな? と、圭は自身の耳を指で穿ったり、あるいは先ほど晴明が言ったように夢なのか、と美紀は自身の頬を抓る。

 そして美紀は抓った頬から痛みが走ったことからこれが夢ではないと理解して、圭もまた聞き間違いでもなんでもなかったということがわかり、彼女たち、特に圭が驚愕の表情を浮かべて声を上げる。

 

「わ、ワープシステムぅ?!」

 

 そこでふと、さらに疑問ができたのか、美紀が訝しげな表情を見せながら声を出す。

 

「……でも、そんな画期的なものが出来た、なんてことは聞いたことがありませんけど……?」

 

 美紀の疑問に晴明は、それはそうだろうな、と言いつつ頷く。

 そして晴明は話をすすめるためにも彼女の疑問に答える。

 

「ああ、美紀の疑問ももっともだろう。そんな画期的なものが出来たのなら評判にならないのはおかしいからな。……もちろんそれにも理由がある。簡単に言えば、ターミナルシステムの起動実験時に、とある事故が起きたんだ」

 

「事故、ですか……?」

 

 晴明の言いように美紀は良くないものを感じて、無意識のうちに冷や汗を流しながら疑問を口にする。

 

「……ターミナルシステムの初の起動時に、本来は別の端末に繋がるはずが全く別の場所に繋がってしまったんだ。そしてよりにもよって、繋がった場所が最悪だった」

 

 勿体つけるような晴明の言葉を聞いた二人は、緊張してゴクリと唾を飲んで彼が話すのを見守っている。

 彼女たち二人が真剣な表情で聞いていることを確認した晴明は、二人の度肝を抜くような事実を告げる。

 

「繋がった場所、というのがよりにもよって魔界で、そこから悪魔たちが溢れ出してきてしまったんだ。そして、その時に彼も負傷して、それから車椅子に乗っていたはずだな」

 

『……はぁっ?!』

 

 晴明が告げた真実が予想外過ぎたのか二人ともが驚愕で目を見開いて大声を上げる。

 そして美紀が手をぱたぱたを振りながら晴明にツッコミを入れる。

 

「いやいやいやっ! 待ってくださいよ蘆屋先生! それだと功績じゃなくて、むしろ戦犯じゃないですかっ!」

 

 そのツッコミに圭も苦笑いを浮かべながらも、でも、と自分の正直な思いを口にする。

 

「それはそうなんだ、とは思うけど、でもね、美紀。私は、ヒーホーくんと出会えたし、それに蘆屋先生とも会えたから、一概に悪い、とは言えない、かなぁ……?」

 

「……圭」

 

 圭の物言いに呆れた表情を見せる美紀。そして話題に上がった晴明はと言うと、圭に厳しい表情を見せながら、彼女に対して一つ注意をする。

 

「圭、お前がそう思うのは勝手だが、間違っても、人がいる前でそのことは口にするなよ」

 

「……あ、えっと」

 

 晴明の厳しい口調に思わず目を泳がせる圭。

 そのことに晴明は嘆息をすると、彼女に何故言ってはいけないのか、その理由について説明するために口を開く。

 

「以前に悪魔召喚師になる方法として、現役の悪魔召喚師に弟子入りする、というのを話したのは覚えているな?」

 

「は、はい」

 

 そうして晴明の口から出た問いかけに、圭はおっかなびっくりな様子で返事をする。

 圭の返事を聞いた晴明はさらに確認のための問いかけをする。

 

「その時に才能があれば弟子にして育成するとも話したな? じゃあ、その才能というのは、どういうものか分かるか?」

 

 晴明の問いかけを受けた圭は頭を捻りながらしばらく思案するが、答えが出なかったのか、分からないと言いたげに首を横に振る。

 それを見た晴明は、今度は美紀に対して問いかける。

 

「そうか、では美紀。お前は分かるか?」

 

 その問いかけに彼女は。

 

「……いえ、私も。えっとMAGをうまく扱えるか。……というわけではないんですよ、ね?」

 

 わからないと言いつつも、自信なさげに自分が考えた答えを口にする。

 美紀の答えを聞いた晴明も、彼女自身が感じ取ったように答えが不正解であることを告げる。

 

「そうだな。MAGの扱いに関しては技術の問題になるから、最悪、修練でどうにかなる」

 

 晴明の答えを聞いた美紀は、やっぱり、と不正解だったことに、どこか残念そうにしていた。

 そんな美紀を慰めるように晴明は彼女に声をかける。

 

「まぁ、不正解であったが、それでも自身で考え答えを出す。ということが出来ただけ上等だ。人は、人間は、何よりも知性というものを武器として、自身よりも強大な存在(悪魔)に打ち勝ってきたんだからな」

 

 それに、美紀の答えも見方を変えれば間違いではないとも言えるしな、と呟く晴明。

 その呟きが聞こえた二人は不思議そうな顔をして晴明に問いかける。

 

「それって、どういう意味なんですか?」

 

「ん? ああ、二人は以前にMAGが怒りなどの感情で増幅される、と言ったことを覚えているか?」

 

 晴明の質問に、こくこくと首肯することで答える二人。

 

「つまり、MAGとは人の生命力であり、感情エネルギー。即ち人自身の意志によって強力になっていく。ここまではいいな?」

 

「ええ、まぁ……」

 

 晴明の言葉に曖昧な表情を浮かべながらも肯定する圭。

 そんな圭を見ながら晴明は、ここからが本題だ、と言った様子を見せる。

 そのことと、何より晴明の今までの話から何を言いたいのかを察した美紀は愕然とした様子でポツリと呟く。

 

「まさか……。才能って、意志って、そういう……!」

 

「どうしたの、美紀?」

 

 そんな美紀を不思議そうに見る圭だったが、美紀が今までの話から導き出した可能性を聞く。

 

「蘆屋先生が言った圭への注意、怒りなどの感情によるMAGの増幅方法。それに、あえて先生が使った意志と言う言葉。それらを考えるなら、才能とは、悪魔と戦う、または殺したいという願い(意志)。あるいは絶対に消えないほどの復讐心……!」

 

 美紀の可能性を聞いた圭は、衝撃で体をふらつかせながら晴明を見る。

 そして、晴明も美紀の答えを肯定するかのように、真剣な面持ちで首を縦に振ると口を開く。

 

「そうだ。今の現代社会に於いて、民間からこの業界に入ろうという者たちの理由は、美紀が言ったように復讐心からが大半だ。ある者は家族を悪魔に喰われたから、またある者は、恋人の人としての尊厳を踏みにじるように嫐られて殺された。など、な」

 

 晴明の言葉を聞いた圭は、恋人を嫐るという意味を、どういった意図で使われたのかを理解して、思わず吐き気を催して手で口を塞ぐ。

 そして同時に、先ほどなぜ晴明が自分に厳しく注意したのかも理解する。

 さらには、もし自身が今回のことを知らずに口にした場合の最悪の事態も想像してしまい、その凄惨さに胃の中のものがこみ上げてくるが、それを無理矢理飲み込むと荒く息をする。

 なんとか深呼吸をすることで落ち着かせようとしている圭を見ながら、晴明は彼女に声をかける。

 

「これで、俺が何故厳しく言ったのか理解できただろう? だが──」

 

 そこまで言って晴明は圭に腕を伸ばす。

 晴明の行動に圭は殴られるとでも思ったのか、身を縮こませる。

 だが、晴明は彼女を殴るようなことはせず、むしろ安心させるように、彼女の頭を軽く撫でるようにぽんぽん、と触る。

 そのことに驚いた圭は晴明に顔を向けるが、彼は圭の緊張をほぐすように柔らかく微笑むと、優しく声をかける。

 

「圭、お前のその考え、俺はとても尊いものだと思うし、出来れば捨ててほしくない」

 

『……え?』

 

 晴明の口から出た言葉がまたもや予想外だったのか、優しく声をかけられた圭はもとより、話を聞いていた美紀も困惑した表情を見せる。

 そんな二人の様子が可笑しかったのか、晴明は笑うのをこらえる仕草をしながら彼女たちに自分の考えを告げる。

 

「確かにMAGを活性化させるには感情を爆発、特に負の感情であれば、爆発させやすいだろう。それは間違いないさ。」

 

 そこまで言うと、晴明は二人を見つめながらさらに言葉を続ける。

 

「でもな、その感情をぶつけられる彼らはどうだろうな」

 

「ですが、実際に身内に被害が出ているというのであれば、仕方がないことなんじゃないですか?」

 

「確かにな。悪魔に喰われた肉親を持つ彼らのことは哀れに思うし、憤りも理解できる」

 

「それなら──」

 

なおも言い募ろうとする美紀の言葉を遮るように、晴明は彼女に一つの言葉を投げかける。

 

「だが、大多数の悪魔は子どもの悪戯のような悪事を働くことはあっても、人喰いなどはしないんだ。それらの存在も含めて、すべてを仇討ちとして殺す必要があるのか?」

 

「────あっ」

 

 晴明の問いかけに想像もしていなかったとばかりに、間の抜けた声を出す美紀。

 そして、圭もまた晴明の問いかけを聞いて悲しげな表情を見せる。

 もし、美紀が言うように仕方がないことだというのなら、彼女の友であり、そして友を助けるために命を張ったジャックフロスト(ヒーホーくん)も、その助けた相手であり悪魔となった太郎丸(ケルベロス)も、今すぐその命を断つことが正しいことになってしまうのだから……。

 

「私、そんなのやだよ……」

 

「けい……」

 

 自身の友人を、そして家族を手に掛けることを想像してしまったのか、圭は今にも泣き出しそうの表情で悲痛な声を上げる。

 そんな彼女の姿を見た美紀もまた悲しげな表情を浮かべて話しかけようとするが、なんと声をかけていいか分からず、口を開いては閉じてを繰り返す。

 二人の雰囲気がどんよりとしたものに変わっていくのを見ながら晴明は、だからこそ圭のような考え方が必要なんだ。と、告げる。

 

「殺したから殺されて、殺されたから殺して、そんなことを続けていけば後に残るのは、人と悪魔の種族間闘争。言うなれば際限のない殺し合いだ」

 

 そこで一息付くと、晴明は自身の懸念を語る。

 

「そして、人と悪魔では肉体のポテンシャルが違う。無論俺たちのような悪魔に対抗出来る存在もいることはいるが、それでも絶対数は少ない。だから──」

 

 先に力尽きるのは人類の方になる。と、晴明は結論を述べる。

 その言葉で美紀は、人類の凄惨な最後を想像できてしまったのか、顔を青くする。

 そしてすぐに、その想像を思考から追い払うように(かぶり)を振る。

 

「もちろん俺たちも、そんな未来を座して待つつもりはないけどな」

 

 美紀が顔を青くしたのを見た春秋は、彼女を安心させるようにあえて戯けた様子で語りだす。

 そのために、自身やヤタガラス、クズノハ一族のオカルト方面の力。そして、大天才たるDr.スリルたちと協力して再現したデモニカスーツを用意したのだと。

 その言葉を聞いて一先ずホッとしたのか、美紀の顔色は先程よりは大分マシになる。

 

「ま、デモニカスーツもSTEVENがいなければ、そもそも完成しなかった面が強いけどな」

 

「え? そうなんですか?」

 

 晴明がポツリと零した言葉に頭に疑問符を浮かべる圭。

 そんな圭相手に、晴明は、そう言えばそちらをまだ説明していなかったな。と、言いつつSTEVENのもう一つの功績について話し出す。

 

「ターミナルシステムの他に彼が生み出したもの、それが人類にとって武器であり、そして悪魔たちとの対話を容易にしたシステム。それが今、俺が持つガントレットや、圭に譲渡したGUMPの基幹システムとして搭載されている、有り体に言ってしまえば悪魔召喚プログラムだ」

 

 晴明の悪魔召喚プログラム、ということ話を聞いた圭はハッとした表情を浮かべると、彼が言ったように自身の譲渡された銃型のデバイス、GUMPを見る。

 そしてGUMPを起動させるとそれをまじまじと見て一言。

 

「これに、あの人が関わっていたんだ……」

 

 と、半ば呆然としながらも感慨深そうに独りごちる。

 

「ああ、そうだ。……時に二人は悪魔召喚と聞くと何を思い浮かべる?」

 

 晴明の問いかけに正気に戻った圭と、じっと二人の話を聞いていた美紀は急に話を振られたことに驚きながらも自身の思いついたことを述べる。

 

「悪魔の召喚というと、やっぱり何かの魔法陣を描いてのエロイムエッサイム~、とか?」

 

「あとは、生贄を用いた儀式でしょうか?」

 

 二人の意見にそうだな、と晴明は頷きつつ話を進める。

 

「あるいは現世に現れた悪魔を調伏して式神や使い魔にする、などだな。……まぁ、一つ言えるのは、どの方法にしてもすぐに行動を起こすのは難しいってことだ。……悪魔召喚プログラムが現れる前は、な」

 

「そう、なんですか……?」

 

 彼の言葉に純粋に疑問に思った美紀は、そう問いかける。そのことに晴明は、うむ、と肯定するように頷くと悪魔召喚プログラムの利点を語っていく。

 

「簡単に言えば、本来悪魔召喚には大規模な儀式などが必要なわけだが、悪魔召喚プログラムはその儀式を完全なプログラミング化して、必要なリソース、MAGなんかの管理も一手に引き受けてくれるから、今までのような長い時間をかけた修行なども必要なく、悪魔召喚師としての力を行使できるようになったんだ」

 

 もっとも、そのおかげでダークサマナーが増える、なんて弊害や、素人が使用して大規模な霊障が起きた。なんて負の側面もあるがな。と、告げる晴明。

 彼の言葉に、結局それでは意味ないのでは? と、思う美紀。

 そんな美紀の想いを知ってか知らずか、晴明は話を続ける。

 

「まぁ、弊害があるのは確かだが、それでも、武器があるのとないのでは大違いだ」

 

 と、そこまで話すと晴明は一息つく。そして。

 

「とまぁ、以上が、俺が知っているSTEVENという人物についてだ」

 

 そこまで話して話を締めくくり二人の反応を見る。

 二人はなるほどと納得しているようだった。

 

「それで、二人の話ってのはSTEVENのことについて。で、良かったのかな?」

 

 STEVENの話が終わった晴明の苦笑交じりの言葉を聞いた圭は、それで本来、自分が彼に言おうとしていたことを、まだ言ってないことに気付いて、慌てて違うことを告げる。

 

「……あっ! えっと、違うんですっ! その、STEVENさんのことじゃなくて──」

 

 そこまで言って圭は、自身を落ち着かせるように深呼吸をする。その中で彼女の中には太郎丸を守るために逝ったジャックフロストの最後の言葉と、太郎丸の、ケルベロスが自身に言った言葉を思い出す。

 

 

 ──オイラは皆と会えて幸せだったホ。だから、ありがとうだホ。

 ──我ヲ従エルニ相応シイ力ヲ身ニ付ケヨ。……期待シテイルゾ、ケイ。

 

 

 聞こえてきた(願ってきた)彼らの言葉に、圭自身も覚悟を決めた表情になると、晴明に一つのことを願い出る。

 

「私は、もうヒーホーくんのことを繰り返したくない。太郎丸の期待に応えたい……。だから! 私は力が、あの子たちに誇れる、守れるだけの力がほしいんですっ!」

 

 だから、私を本当に意味で鍛えてください! と、頭を下げて願い出る圭。

 そんな圭と同じように美紀もまた──。

 

「私も、圭を、誰かを守れるだけの力を、一朝一夕で得られるとは思ってないけど、それでも、一刻も早く手に入れたいんです! もう、悲劇を繰り返さないためにも……!」

 

『お願いしますっ!』

 

 そう言って二人は頭を深々と下げながらも、覚悟の、気迫の籠もった決意と願いの言葉を晴明にぶつける。

 言葉をぶつけられた側の晴明は、彼女たちの急な言葉に呆然とするものの、すぐに気を取り直して二人に問いかける。

 

「……ああ、いや。二人とも? 本当に覚悟は出来ているのか?」

 

「出来てますっ! もう、あんな思いをするのは嫌なんです!」

 

「私も、圭を、親友を支えたいんですっ!」

 

 二人の答えを聞いた晴明は困惑した様子で、頭を掻きながらさらに年を押すように問いかける。

 

「今のままでも、いずれは力を得られるのに生き急ぐ必要はないし、何より本当にすぐに力を得たいというのなら、それこそ肉体的、精神的に危ない橋を渡る必要性が出てくるぞ。──それで本当に良いのか?」

 

『はい!』

 

 そんな晴明の念押しの確認にも二人は、まるで迷いがないと言いたげに即答で答える。

 そんな二人を見た晴明は深々と溜息をつくと。

 

「…………分かった、良いだろう」

 

 観念したような声色の晴明の言葉に、美紀と圭、二人はお互いに見つめ合うとお互い抱き合って喜びを分かち合う。

 そんな二人を見ながら晴明は。

 

「まずは佐倉先生にこの部屋をしばらく借りる許可と、誰も近付けないようにお願いをしてくるから少し待っててくれ」

 

 と、一人部屋を後にするのだった。

 

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