DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 三話時点でまだ平和ながっこうぐらし! のSSと言うのも珍しいんじゃなかろうか? と、思いつつ意外なキャラが出てくる三話をどうぞ。


第三話 神持朱夏

 政府の依頼により巡ヶ丘のランダルコーポーレーションを秘密裏に調査していた晴明であったが、正直なところ進捗は芳しくなかった。まだ調査をはじめて数日しか経っていないということも要因の一つであったが、それ以上にここ巡ヶ丘ではランダルが大地主という関係もあり、悪い噂などは一切流れてこないこと、またランダル自身も巡ヶ丘では優良企業として雇用促進をしていた関係で住人から好意的に見られていることも要因として上げられた。

 そして、調査をしていた晴明だったが、今は市内にあるカフェテラスでとある人物と待ち合わせをしていた。

 

「しっかしよぉ、いくら地理を把握することを優先していたとはいえ、ここまで何も情報が無いということはもしかして誤報なのかねぇ……?」

 

 コーヒーを飲みながら愚痴をこぼす晴明だったが、その時晴明の座っていたテラスに一人の女性が近づく。

 

「あら、師匠(せんせい)が愚痴なんて珍しいわね」

 

 そう言いながら晴明の向かい側に座る女性。

 

「ん、おぉ、来たか、朱夏。久しぶりだな」

 

「えぇ、お久しぶり、師匠(せんせい)。でも急にこっちに来るなんて珍しいわね。何かの依頼なんでしょうけど」

 

 この黒髪のロングヘアーにカチューシャを付け、全体的にスレンダーながらも余人を惹きつける何かの波動を身にまとっている女性こそが、今回晴明の待ち人であり、そしてかつて悪魔が跋扈する異界に閉じ込められた際、晴明に救助されると同時にペルソナ使いとして覚醒し、晴明に(強制的に)弟子として面倒を見られていた中学生、現在は聖イシドロス大学に通う大学生【神持朱夏(かみもちあやか)】だった。

 

「それで、師匠(せんせい)、今日はどうしたのかしら?」

 

 ニコニコ、と楽しそうに晴明に笑いかけながら問う朱夏。

 彼女が何を楽しんでいるのかわからない晴明だったが、それよりもと思い彼女の問いかけに答えようとするが、その前に。

 

「ああ、お前に聞きたいことがあるんだが、その前に、だ」

 

「何かしら?」

 

 不思議そうに首を傾げる朱夏。その朱夏に対して。

 

「その師匠(せんせい)ってのやめねぇか?」

 

「…………え?」

 

 晴明の言葉に信じられないことを聞いたとばかりに表情が削げ落ち、同時に青くなる朱夏。その朱夏の表情を見た晴明は、しまった、と焦った表情になり。

 

「いや、別にそれが嫌というわけじゃないんだがよ。お前さんはもう俺の元を巣立っている以上、俺のことを師匠(せんせい)と呼ぶのはおかしいんじゃないか、と思ってよ」

 

 その晴明の提案を聞いた朱夏はホッとした表情になりながら。

 

「な、なるほど。そういうことね」

 

 と、呟きつつ、なら呼び方はどうしようか? と、考えているようだ。

 晴明としては呼び方一つに悩むものなのか? 疑問に思うが、朱夏が楽しそうにしているから問題ないか、と思い静かにコーヒーを飲んでいる。

 そして呼び方が決まったのだろう。朱夏は花開くような笑顔を浮かべながら晴明に告げる。

 

「それじゃあ、今度から晴明さんと呼ばせてもらうわね」

 

「ああ、朱夏がそれで良いんなら構わないよ」

 

 晴明からの了承を得たことが嬉しかったのか、朱夏の頬に少しばかり赤らめている。

 晴明にとっては朱夏も妹分のような存在だが、元々の見てくれが良い分多くの人の視線を釘付けにしている。

 その中には異性だけではなく同性も含まれていたようで、驚いた表情をした者や、中には物陰からこちらを覗きつつ、直接指を指してありえない、などと言っている女性までいた。

 

「……おい、朱夏。あそこにいる女の子たちは知り合いか?」

 

「え?」

 

 晴明から別の女性に対する指摘が来たことで少し(・・)不機嫌になった朱夏であったが、その指し示された女性たちを見て一瞬驚愕の表情を浮かべると。

 

「…………っ、晴明さん、ちょっと待っててもらえる?」

 

「ん? ああ、別に構わないが……?」

 

「それじゃ、ちょっとだけ席を外すわね」

 

 それだけ言うと朱夏は忽然と姿を消し、次の瞬間には先ほど晴明が言っていた隠れていた女性二人の背後に回り込み、力強く肩を掴んでいた。

 

 

 

 

 

 

 右原篠生(みぎはらしのう)は多少引っ込み思案の気があるものの、勉学に励み、友人と交流し、自身が通う大学である聖イシドロス大学に身を置く一人の男子生徒が少しだけ気になる、普通の女学生である。

 今日もまた、日曜で大学が休校ということと、晴天に恵まれたこともあり、仲の良い友人の一人である光里晶(ひかりざとあき)と共にウィンドウ・ショッピングへと繰り出していた。そしてしばらく二人でアチラコチラをブラブラとしていたが、もうそろそろお昼に近い時間ということもあり、何処かで食事をしようかと店を見回っていた時に、二人にとって見覚えのある人物の後ろ姿を晶が見つける。

 

「ね、ねぇ、シノウ、あれ」

 

 と、晶は篠生に呼びかけつつ件の人物を指差す。

 篠生はなんだろう? と、思いつつ晶が指差した先の人物を見てほんの少しであるが驚きの声を上げる。

 

「あ! あれ、アヤカさん、だよね?」

 

 その人物とは同じ大学に通う、生徒の中では有名人となっている神持朱夏その人だった。

 だが、二人が驚いたのは何も彼女を見かけたから、というわけではない。そもそも朱夏自身も一介の学生である以上、外出することもあるだろうし、実際に直接声をかけることはないが、街で何度かその姿を見たことはある。

 ならば何故二人は朱夏を見て驚愕したのか。それは朱夏自身の雰囲気にあった。

 彼女は大学においてミスコンで一位になる、非公式のファンクラブがある、などの冗談のようなことが実際に起きているのだが、朱夏自身はいつも何処かつまらなそうな、達観したような雰囲気を見せていた。

 だが、今回の彼女の雰囲気はと言うと……。

 なんか、もう、全身から花吹雪が舞ってスキップでも始めそうなほどの雰囲気を発しながら歩いている。

 その彼女の幸せそうな姿を見た通行人たちは、皆一様に彼女に視線を釘付けにしているが、朱夏自身はまるで気にしていないようなほどにご機嫌そうだった。

 

 朱夏の普段の姿を知っている二人からすると、はっきり言うと今までの姿は一体何だったのか、と言いたくなるほどの豹変ぶりだった。

 

「一体何があれば、あんなに上機嫌になるのよ」

 

 そうまじまじと朱夏を見つめていた晶であったが、同じく朱夏を見つめていた篠生があることに気付く。

 

「あ、でも、アキちゃん。よく見てアレ」

 

「え?」

 

 篠生に言われて彼女に指摘された朱夏の服装を見る晶。すると、朱夏の服装は普段はクールよりの服装なのだが、今日の服装は心做しか可愛らしい服装を意識しているように見える。

 

「へぇ、あいつあんな服も着るのね」

 

「誰かとのお出かけでおめかししてるとかかなぁ?」

 

 篠生の呟きを聞いた晶は、それだ! と言わんばかりに篠生の方を向く。

 

「それよっ! シノウ、あんたが高上とデートしようと意気込んでる時の服装に似てるわ!」

 

 晶から突然の口撃に篠生は素っ頓狂な声を上げる。

 

「え、えぇっ! ちょっとアキちゃん! 私とれん君は、そういうのじゃ!」

 

「いやアンタ、隠してるつもりなんだろうけど、一切隠せてないから。そんなことよりも」

 

「そんなこと、ってアキちゃん……」

 

 晶からさらなる追撃を受けて悄気る篠生。

 晶はそんな篠生から視線を外すと、ランランとした好奇心旺盛な目で朱夏を見つめている。そして善は急げ、とばかりに篠生の手首を掴むと朱夏の尾行を始めようとする。最も篠生の方は晶が急に自分の手首を掴んだことに目を白黒させていたが。

 

「ちょ、ちょっとアキちゃん。急にどうしたの?」

 

「どうしたの? も何も、あいつがアレだけ上機嫌なんだよ。きっと男と会うんだよ!」

 

 晶の物言いに驚く篠生は思わず彼女へ小声で話しかける。

 

「えぇ、アキちゃん流石にまずいよ! もしアヤカさんに見つかったら怒られるよ!」

 

 篠生からの忠告にも晶は。

 

「あははっ、ダイジョブダイジョブ。現にあいつ浮かれすぎて周りのこと何も見えてないじゃん。ばれないよ。それにシノウはあいつの男に興味ないの?」

 

 その晶からの意地悪な質問に、篠生は実際に気になるという好奇心と、朱夏を尾行する罪悪感に揺れていたが、最終的に好奇心が勝ったようで。

 

「アキちゃん、流石にその質問の仕方は卑怯だと思うの。……分かった、私も行く」

 

「流石シノウ! それじゃ、いっくよー!」

 

 晶はそう言いながら篠生とともに意気揚々と朱夏の後を追っていく。

 

 

 

 二人が物陰に隠れつつ朱夏を尾行すること数分、彼女はとあるカフェテラスで周りを見渡していたが、目的の人物を見つけたのか、意を決して店内へと入っていく。そしてすぐにテラス席に姿を表し、一人の男性に話しかけつつ同席する。

 そしてその男性に対して笑みを浮かべながら話しかけている。

 

「へぇ、あの人がアヤカの彼氏ねぇ? でもなんというか……」

 

 男性の姿を見た晶は、感慨深そうに言いつつも同時に疑問に思う。

 晶と同じ疑問を持ったのか、篠生もまた不思議そうな顔をしている。

 

「なんというか、普通というか、ちょっと地味っぽい?」

 

遠目から男性の顔を覗く二人だが、顔は整ったほうだとは思うのだが、しかし本人から放たれている、くたびれたオーラのせいで、朱夏と釣り合うか、と聞かれるとどうだろう? と悩んでしまう状況だった。

 

「でも、アヤカさん、すごく楽しそうだよ?」

 

 篠生が言うように、相席の男性と話している朱夏はすごく楽しそうに終始笑顔だった。

 

「本当に大学での姿を見てると、今のあいつの姿ありえないと思うわ」

 

 晶は朱夏に対して軽く指を指しながらそうのたまう。するとその時。

 

「…………あれ?」

 

 同席している男性がこちらの方を向き、一瞬目があった気がする晶。

 そして男性が朱夏に何事かを話すと彼女もまたこちらを向く。

 

「やばっ、もしかしてバレた?」

 

 その言葉に驚く篠生。

 

「え、えぇっ! どうするのアキちゃん」

 

「そりゃ、勿論──」

 

 逃げよう、と言おうとした瞬間、晶は自身の肩が痛いほどの握力で握られる。篠生が怖がって掴んできたのだろうと思い彼女の方を向くが、その彼女自身も肩を捕まれ、更にガタガタ震えながら後ろの方を見ている。

 篠生が震えて怖がるほどの何かがあるのかと、晶は後ろを見て後悔する。そこには──。

 

「貴女たち、ちょっと話を聞かせてもらっていいかしら?」

 

 先ほどまで男性とテラス席に座っていたはずの朱夏が、満面の笑みを浮かべて晶たちの肩を掴んで立っていた。

 

 

 

 

 朱夏は、どことなく見覚えのある覗き魔たち──確か同じ大学の学生だったはず──の肩を掴んで逃げられないようにした後に、なるべく、なるべく優しい口調で二人に話しかける。が、茶髪のポニーテール()は呆然として、サイドポニー(篠生)にしている方はガタガタ震えながら挙動不審になっている。

 すると挙動不審になっていた篠生がなにかに気付いたのか震えた声で朱夏に話しかける。

 

「あ、あのぅ。あそこの、男の人が、なにか言ってます……」

 

「え?」

 

「ひぅっ」

 

 疑問の声を出して篠生の方を向く朱夏だったが、彼女は小さく悲鳴を上げて縮こまってしまう。仕方がないので篠生が言ったように晴明の方を向く朱夏。

 すると晴明と視線が合い、彼は苦笑しながら口を動かす。流石にこの距離では聞こえないので以前彼に習った読唇術で口の動きを探る朱夏。

 その結果晴明はこんな事を言っていた。

 

 ──あんまりいじめてやるなよ?

 

 それを見た朱夏は短く嘆息すると、呆れた表情で二人の方を見て。

 

「…………しょうがないから、二人とも来てもらうわよ?」

 

 と、言いながら二人を引っ張って先ほどのカフェテラスへと戻るのだった。

 

 

 

 

 ──弟子兼妹分と久々に会っていたと思ったら、いつの間にか女の子二人が増えて微妙な空気が漂っている件について──。

 

 そうやって晴明が現実逃避したくなるほどの空気が彼の座るテラス付近に漂っていた。

 主な原因は二つ。一つは朱夏が連れてきた女性二人、片方は何処かきまりの悪そうな顔を、もう片方は申し訳無さそうにテーブルを見るように俯いている。そしてもう一つはその二人を面白くなさそうに見つめる朱夏自身だった。

 流石にその空気に耐えられなくなったのか、晴明は朱夏に声をかける。

 

「それで朱夏、このお二人はお前の友達なのか?」

 

「いえ、全く知らないわ。大学で見た覚えがあるから、私と同じ学生だとは思うけど」

 

 朱夏の物言いに晴明は、だったらなんで連れてきたん? と、思う。そんな晴明の考えが顔に出ていたのだろう。朱夏は面白くなさそうな顔をしながら二人を連れてきた理由を言う。

 

「私はそのつもりはなかったけど、晴明さんがいじめるな、と言ったんでしょう? だからここに連れてきて話を聞こうと思ったのよ」

 

「…………あぁ、そういう。しかしこの状態ではなぁ……」

 

 実際にポニーテールの子()は気まずげにしてるし、サイドポニーの子(篠生)に至っては、まるで小動物のようにビクビクと震えている。まだこれが人前で朱夏が連れてきたという事実があったから良かったものの、もし人目のつかない場所や、朱夏が連れてきたことを認知されていなかった場合、最悪警察に通報されかねないような酷い絵面だった。

 正直ただでさえ面倒事を抱える身としては、更なる面倒事は御免被りたかった晴明であったが、現実として目の前に面倒事が転がっている以上無視するわけにもいかず、とりあえず女性たちに声をかける。

 

「あぁ、ちょっといいかな、お二人さん?」

 

 その言葉にビクッ、と過剰に反応する篠生と。

 

「ハ、ハイッ! ななな、なんでしょう」

 

 こちらも晴明を、と言うよりも彼女たちを見つめている朱夏を怖がっている晶。

 正直この時点で帰りたい、と思ってしまった晴明だったがそんなわけにもいかず、己を奮い立たせて更に声をかける。

 

「まずは自己紹介でもしようか。俺の名前は蘆屋晴明、お二人の名前は? それと朱夏、お前が不満に思っていることは分かるが、あまり睨んでやるな。話が進まん」

 

晴明が二人に気を使いつつ朱夏を咎めると、朱夏は不機嫌そうな顔をしながらも言う通りにする。彼女からの圧が減ったのが分かった二人はおずおずと自己紹介をする。

 

「えっと、光里晶です」

 

「……右原篠生です」

 

 多少なりとも二人が話せるようになったことに気を良くした晴明はさらに二人へ質問する。

 

「それでお二人はなんで朱夏を物陰から見てたんだい?」

 

「えっと、それは……」

 

 晴明の質問に答えづらそうにしている篠生を見て咄嗟に晶が答える。

 

「すみません! アタシが誘ったんです!」

 

「ふむ?」

 

 晶の急な告白に困惑する晴明。そんな彼に矢継早にこれまでの経緯などを話す晶。その話を聞くうちに晴明は面白いと感じたのか、目が笑ってきている。

 そして全ての話を聞き終えた晴明は朱夏の方を向きからかうように話しかける。

 

「しっかし、朱夏よぉ。そんなに俺と会えるのが嬉しかったのか?」

 

 晴明に問われた朱夏は頬を紅く染めながら文句を言う。

 

「だって、久しぶりなんだから良いじゃないですか! 晴明さんはいつも仕事でいろいろな場所に飛び回って会えないんだから!」

 

「はは、すまんすまん」

 

 いつもすました顔をしている朱夏が表情豊かに話していることに、改めて驚く二人。そして晶は晴明に対して声をかける。

 

「葦屋さん、本当にそいつと仲がいいんですね。もしかして付き合ってたりするんですか?」

 

「んなっ?!」

 

 晶がした質問を聞いた朱夏は驚きのあまり変な声を出すが、晴明自身は否定する。

 

「ん、あぁ、違う違う。一時期ちょっとした理由で朱夏を預かっててな。妹分みたいなもんだよ」

 

 晴明の否定を受けて朱夏は消沈している。そしてそれを気の毒そうに見ている篠生。そして地雷を踏んだのか、とばかりに冷や汗を流しながら朱夏を見る晶。

 晴明は、その女性三人の動向をあえて無視して本来の目的を口にする。

 

「それはそれとして、だ。三人に聞きたいんだが、ランダルコーポーレーションって、今何かやってるのか?」

 

 晴明の質問の意図がわからないのか三人とも首を傾げている。

 首を傾げている三人に質問の意図を説明するために、まず晴明は朱夏に声をかける。

 

「あ~、朱夏は俺の仕事についてある程度は知ってるよな?」

 

「え、えぇ、ある程度は。探偵みたいなことをしてるはず、よね?」

 

 朱夏は自信なさげに言うが、晴明はその通りと首肯する。

 そして、今回のランダルコーポーレーションのことに関する表向きの理由を説明する。

 

「で、今回うちの所にランダルに何らかの不利益がある行動が起きる可能性があるからそれを調べてくれって依頼が来たんだよ」

 

「はぁ、そんな事が……」

 

 晶が気の抜けた返事をする。

 

「まぁ、だからそんなに気にしなくていいよ。無いなら無いで越したことはないからね」

 

「確かにそうですね」

 

 篠生が晴明の言葉に相槌を打つ。そしてそのまま三人は自身が持つランダルに関しての情報を話していくが、それは晴明が今まで収集した情報と大差ないものだった。

 その情報を聞いた晴明は三人に礼を言う。

 

「三人とも助かったよ、ありがとう。礼代わりと言ったら何だがここの会計は持たせてくれ」

 

 その言葉に晶は目を輝かせて言う。

 

「えっ! 本当に良いんですか?」

 

 篠生は申し訳無さそうな顔をして断ろうとするが、

 

「あ、えっと、流石にそれは……」

 

「シノウ、だったわよね」

 

「あ、はい。何でしょうか、アヤカさん?」

 

 朱夏に疑問の声をかける篠生だったが、朱夏は苦笑しながら受けるように言う。

 

「晴明さんは一度決めたらてこでも動かないから、諦めて奢られなさい」

 

「……えぇ?」

 

 篠生の困惑した声に今度は晴明が苦笑しつつ篠生を説得する。

 

「俺の男の面子を立てると思って受けてくれないか? 頼むよ」

 

「は、はぁ……」

 

 晴明のお願いに気の抜けた返事をする篠生。

 その姿を見て晶は笑いながら篠生に話しかける。

 

「まぁまぁシノウ、良いじゃない。せっかく奢ってくれるんだから、素直に奢ってもらおうよ」

 

「……良いのかなぁ?」

 

「良いんだよ!」

 

 晶からの説得に迷う篠生だったが、さらなる晶の強引な押しに最終的に折れることになる。

 その後は四人で色々と他愛のない話、特に晴明が聞きたがった朱夏の大学での活動などを肴にして盛り上がることとなる。そしてそこで晶と篠生の二人は、朱夏が意外と表情豊かで人が良いことを知り、結果として三人はこの後も行動をともにしようという話になる。

 

 

 

 昼食が終わり、カフェテラスの会計が終わった晴明は三人のもとへ向かう。

 

「いやぁ、待たせて済まないね。三人とも今日はありがとう」

 

 晴明の姿を見た晶は、快活な笑みを見せるとハキハキとした礼を告げる。

 

「アタシらこそ今日はありがとうございました! おかげで、アヤカとも友だちになれましたし。ねっ! シノウ、アヤカ!」

 

 言いながら二人の方を向く晶。その二人、篠生は温和な笑みを浮かべ首肯し、朱夏は何処か照れくさそうに自身の髪をいじっていた。

 その姿を見た晴明は、何処か嬉しそうに笑いながら。

 

「俺としても、君のような子たちが朱夏と友だちになってよかったと思っているよ」

 

 そう述べた後に一息つくと更に晶に話しかける。

 

「それで三人はこれから遊びに行くんだったね?」

 

「えぇ、これからカラオケにでも行こうかな、って。蘆屋さんも一緒に来ます?」

 

 楽しみだと言わんばかりに声を弾ませながら告げる晶。

 

「ハハハッ、流石にこれ以上女の子たちの邪魔をするのも忍びないし、それに俺もこれからやることがあるから遠慮させてもらうよ」

 

 晴明がその誘いを断ると、晶は残念そうな顔をする。その顔を見て晴明はちょっと悪いことをしたかな? と、思いつつも朱夏に話しかける。

 

「それはそうと、朱夏はちょっと話があるから残ってもらっていいか? 二人にもすまないが少し朱夏を借りるよ」

 

 晴明の真剣な物言いに、なにかがあると感じた晶と篠生は。

 

「わっかりました! それじゃアヤカ、先に行ってるからね!」

 

「アヤカさん、また後で」

 

 朱夏にそう告げると二人は先に目的の場所へ移動する。

 その二人を見送った朱夏は晴明に話しかける。

 

「それで、晴明さん。話というのは……」

 

 朱夏の問いに答える前に、晴明は彼女を抱きしめられそうな所まで近づくと、顔を耳元まで寄せて小声で話しかける。

 

「ランダルが政府に目をつけられてる」

 

 急な晴明の接近に顔を赤らめる朱夏だったが、話の内容が頭に入ると一転して険しい表情になる。

 

「それは、晴明さんが出張るほどの何かをやっている、と?」

 

「いや、元々は俺に対しての息抜きにあてがわれた任務だったんだが、どうにも、そんな生易しい感じでは済みそうになくてな」

 

 晴明の言葉に顔をひきつらせる朱夏。ペルソナが覚醒した当初、私は選ばれた存在だ、と驕り高ぶった自身の鼻っ柱をへし折るために修行という名の地獄に叩き落とした彼が、それだけのことを言うということはかなりの難事の可能性が高いからだ。

 

「勿論杞憂であれば良いが、万が一という可能性もあり得る。だから──」

 

 そこで一息ためて朱夏に告げる晴明。

 

「もしもの時は、その力(ペルソナ)を使うことを戸惑うな。その力で友達を守るんだ、良いな」

 

 晴明の言葉に力強く頷く朱夏。

 そんな朱夏を見ながら晴明はもう一つの目的を告げる。

 

「それと、だ。もし何も問題が無かったら、朱音のやつがお前に久しぶりに会いたいって言ってたから、予定を開けといてくれ」

 

 晴明の言葉に喜びと驚きの感情が半々の状態で朱夏は声を上げる。

 

「朱音が! わかりました、行きます!」

 

「そうか、よろしく頼む。それじゃ、俺の話は終わりだからさ。引き止めて済まなかったな」

 

「えぇ、それじゃ。晴明さんも気を付けて」

 

 そう言って朱夏は走り去っていく。

 それを見た晴明もまた別方向に情報収集をするために向かうのだった。

 




 9/22 光里晶のルビを間違えていたため修正。
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