DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 お久しぶりです、作者です。

 今回は幕間の物語。
 しかも、がっこうぐらし! のキャラたちは登場しない、即ちメガテン色の強いお話となっています。
 ……では、どの存在(アクマ)が出るか、幕間の物語をお楽しみください。





幕間4 神々(アクマたち)の胎動

 何処までも続く蒼穹と、そして地平線が存在しないかの如くひたすらに広がる空間の中、一人の、否、一柱の存在が目を瞑り瞑想をしていた。

 人としてはあり得ない紫色の肌に青色の袈裟をまとい、背後に後光を背負った黒髪の美丈夫。

 

 そして、その存在からは只人であれば何も考えずにそのまま膝を付き(こうべ)を垂れそうになるほどの神性、神々しさを放っていた。

 

 ──其は光、其は戦神、其は宇宙。

 

 ──其の名は魔神-ヴィローシャナ。

 

 自らの修練、力を高めるために瞑想を続けるヴィローシャナだったが、自身の近くに何かの気配を感じたのか薄く目を開くと何者かを威圧するように神威を放ちながら問いかける。

 

「……何者ぞ」

 

『おお、怖い怖い。そんなに僕を威圧しないでくれよ。仲間だろう?』

 

 そう言いながら何者かがヴィローシャナのもとへ転移してくる。

 その者、褐色の肌に緑色の髪をした、全体的にカジュアルな服装をした男は、横笛を持った手を掲げると、どこかおどけるように言いながらヴィローシャナに語り掛ける。

 

「単に君が何をしているのか気になって顔を出しただけなんだから、さ」

 

「……クリシュナ、か。何用か」

 

 ヴィローシャナの言葉を聞いたクリシュナと呼ばれた存在。

 彼もまたヴィローシャナと同じく魔神と呼ばれる種族の悪魔であり、彼の同志として同じ組織に身を置くものだった。

 その組織の名は──。

 

「それはそれとして、()()()()の長として何かないのかい? 君のお気に入りの人間(蘆屋晴明)について、とかさ」

 

 クリシュナがからかう様に晴明のことを口にすると、当のヴィローシャナは言っている意味がわからないと言いたげに訝しげな表情を見せる。

 そのことにクリシュナも、おや? と、言いたげな不思議そうな顔を見せるが、そんなクリシュナの疑問に答えるようにヴィローシャナは、彼からすると驚愕の言葉を告げる。

 

「あれは別にお気に入りでも何でもない。単に都合が良かった故、手を差し伸べたに過ぎん」

 

「へぇ! そうなんだ。てっきり僕は、彼を君の神殺しとして使うものだと思ってたんだけど」

 

 クリシュナの言葉を聞いたヴィローシャナは失笑すると、何かを口にしようとするが、その前に彼の言葉を遮るように威厳のある声が聞こえてくる。

 

『ぐわはははは! ワシもそう思っておったのだがなぁ!』

 

 突如聞こえてきた声にヴィローシャナがうんざりした様子で名を告げる。

 

「六天魔王、か」

 

 そんなヴィローシャナの声を聞いた、六天魔王と呼ばれた存在は喜色の籠った声を出す。

 

『そう! ワシこそが天魔-波旬よぉ!』

 

 威厳のある声は大声を張り上げる。

 その声を直接聞かされたヴィローシャナとクリシュナは顔をしかめて抗議するような視線を虚空に向ける。

 そして、さらにヴィローシャナは威厳ある声に語りかける。

 

「……貴殿、何を企んでいる?」

 

 ヴィローシャナの言葉を聞いた威厳ある声は、可笑しそうに声を振るわせて楽しそうな音色ではしゃぐように告げる。

 

『くく、いや、なに。お主がやっておる実験にワシも絡ませてもらおうと思っての』

 

「へぇ……」

 

 威厳ある声が言った【実験】という言葉に警戒の色を滲ませるクリシュナ。

 それもそうだろう。何故ならば、彼が発した実験。それは、秘中の秘として、その事実を知るものは実験の当事者であるヴィローシャナと人間界に赴いているフォルネウス、デカラビア。それに、側近である自身と、そして【ミロク菩薩】のみのはずだったのだから。

 

 それが別派閥の、しかもガイア教団の重鎮に知られているともなれば警戒するのは当然といえるだろう。

 そんなクリシュナの警戒をよそに、あるいは警戒を笑い飛ばすように威厳のある声は話を進める。

 

『がははっ! そう警戒するでない、クリシュナよ! 何もワシはお主らの邪魔をしたいわけではない』

 

「それじゃあ、何をしたいんだい?」

 

 彼の言葉に嘘がない、ということは理解したクリシュナは、ならば何が目的なのか、と端的に訪ねる。

 クリシュナの疑問に威厳ある声は愉しげに答える。

 

『それは勿論、お主らが入れ込んでいる人間(蘆屋晴明)の力量が知りたいのと、それ以上に重要なこととして──』

 

 そこで威厳ある声は一度言葉を区切ると、気迫の籠った声を張り上げる。

 

『あの場には男と女がいると言うに、まぐあいが一切ない! それはいかん、ホンにいかんの!』

 

 それだけ言うと再び、がははっ! と、笑いはじめる。

 それを聞いたクリシュナは肩透かしを食らったように緊張感を霧散させて一言。

 

「あぁ、そうかい」

 

 と、呆れた表情を浮かべながら告げる。

 そんな様子のクリシュナを気にすることなく威厳ある声は一言。

 

『まぁ、そういうわけでの。言うべきことは言った故、ここいらで失礼させてもらうぞい!』

 

 それだけを告げると気配が消え去る。どうやらこの場から去っていったようだった。

 

「いや、本当にどういうわけだい……?」

 

 困惑した様子で、そうこぼすクリシュナ。

 だか、当然のことながら当の本人は既に立ち去っているために答えが返ってくることはない。

 しばし困惑していたクリシュナだったが、いつまでも考えていても仕方がないと思って気を取り直すとヴィローシャナに話しかける。

 

「……まぁ、いいや。それじゃあ、僕も聞きたいことは聞けたし、これでお暇させてもらうよ」

 

 そう言うとクリシュナはこの空間に現れた時と同じように転移をして去っていった。

 それを見送ったヴィローシャナは再び瞑想を行おうとするが、その前に一言だけ言葉をこぼす。

 

「しかし【()()】か……。人の子は面白いことを考える」

 

 ヴィローシャナはその様に独りごちると、再び瞑想に入るのだった。

 

 

 

 

 

 ここは巡ヶ丘の建物の一角、学園生活部や聖イシドロスとはまた違う場所で、一羽の()()()が屋上に留まり微睡んでいた。

 

 だが、鳩の睡眠を邪魔するように空間に亀裂──かつて、フォルネウスやデカラビアが現れた時と同じ現象──が起きると、孔からとある存在が顕現する。

 

 その存在は顕現すると直ぐ様膝を付き目の前の鳩に対して恭しく頭を垂れる。

 そしてその存在、天使の羽と黄色い鎧を身にまとい、両手にそれぞれ剣と薔薇を一輪持った緑色の肌をした女性は、まるで鳩が自身よりも高位の存在であるがの如く名乗りを上げる。

 

「大天使-()()()()()、御身の前に」

 

 その言葉を受けた鳩は満足そうに頷くと、徐に口を開く。

 

「よくぞ来た、我が忠臣」

 

 鳩の言葉を受けたガブリエルは感動に身を振るわせると感謝の言葉を告げる。

 

「とんでもございません、()()()()()。このガブリエル、主の勅命とならば、いつ如何なる時も馳せ参じる所存にございます」

 

 鳩はガブリエルの言葉を聞くと、深く頷いた後に彼女に声を掛ける。

 

「よくぞ言った。まことに貴様は忠義者よ。……それに引き換え、あの者どもめ。今まで散々目をかけてやったというに、よもや我に反旗を翻すとは」

 

 鳩は憎々しげに吐き捨てると、さらに自身に反旗を翻した者たちの名前を上げると軽く怒りを示す。

 

「ウリエル、ラファエル。……それにミカエルまでもが我に歯向かう、どころか本来の我を傀儡にしようとは、傲慢不遜の極みよ! いずれ奴らには神罰を与えねばならん!」

 

 鳩の激昂を感じ取ったガブリエルは、自らの主人の感情を(おもんばか)り、はらはらと涙を流しながら鳩に向かって、おいたわしや、と口にする。

 彼女の涙を見た鳩は、そのことで大分溜飲が下がったのか、先ほどよりも語気を弱めて話しかける。

 

「だが、我には貴様のような忠臣がおる。それだけでも僥倖(ぎょうこう)というものよ」

 

 そもそも、なぜ大天使、熾天使とも呼ばれるガブリエル相手に鳩が尊大な態度を取っているのか?

 それは、この鳩自体が彼女を上回る、彼女自身にとっても崇め奉る存在だからだ。

 

 ──世界最大の宗教であるキリスト教。かの宗教に於いて()()()という存在は、特別な意味を持つ。

 

 例えばノアの方舟、これに登場した白い鳩は大洪水が終わったことを方舟に乗ったものたちに知らせた。

 

 例えばイエス・キリストのもとに神の使い、言葉を伝えるものとして白い鳩が遣わさせている。

 

 そして、例えば聖母マリア。

 彼女の処女懐胎を告げる使者として大天使-ガブリエルが降臨した際に、彼女を身籠らせた聖霊が白い鳩の姿をしていたと伝えられている。

 

 そう、聖霊である。

 

 そも、聖霊とは何なのか?

 これはかなり乱暴な言い方となるが、聖霊とは唯一神の側面の一つ、あるいは分霊(わけみたま)のようなものだ。

 もっとも、分霊のように──そもそも分霊という概念自体、多神教という多くの神々がいる信仰形態であったからこそ発展した概念であるが──ぽんぽんと増やせるわけではない。

 

 ……ともかく聖霊とは三位一体と呼ばれる唯一神の側面、(唯一神)(イエス・キリスト)に続く神と同等──もしくは多少格が落ちるとされる──という存在なのだ。

 

 即ちこの白い鳩もまた唯一神であり、それゆえに唯一神の臣下であるガブリエルが頭を垂れていた、ということになる。

 

「しかし、主。なぜ、あの三人が貴方様に反旗を翻したのでしょうか? それだけ、わたくしも分かりかねるのですが……」

 

 その言葉を聞いた鳩は一瞬口ごもるが、すぐに吐き捨てるように言う。

 

「ふん! 謀反者どもの考えなど分かるはずもあるまい! そんなことよりも──」

 

 そうして鳩は話題を変える、反らすように以前自身が見たことを彼女に話す。

 

「この地に、ガブリエル。貴様の力の一部を降霊する人の子を見たが、まさか、貴様の差し金か?」

 

「は?! ……いえ、わたくしは()()()()()()()。ですが……」

 

「ですが、なんだ?」

 

「はっ。ですが以前、わたくしの意識に語りかけてきた存在がいたような気がします。もしかしたら、それが主の仰る人の子、だったのかもしれませんが……」

 

「……そうか」

 

 ガブリエルの返答を聞いた鳩はジロリ、と彼女を疑わしそうな目で見るが、すぐに彼女の言葉に納得したのか、あるいは興味を失ったのか遠くを見ながら、誰に聞かせるわけでもなく独り言のように言葉をこぼす。

 

「しかし、あの人の子からは貴様よりも──、……まぁいい」

 

 一瞬昔を懐かしむような雰囲気を出した鳩だったが、今はそれどころではない、と考えたのか再びガブリエルを見据えると、彼女に語りかける。

 

「ガブリエルよ。貴様がここに来たということは、多少なりとも目処が立った、ということか?」

 

「はっ!しかし、まだ準備は万全ではなく、今暫く猶予を頂けれぱと……」

 

「構わぬ」

 

「……は?」

 

「構わぬ、と言った」

 

 鳩の声を聞いて呆けた声を出したガブリエルに対して、言い聞かせるように、鳩はもう一度同じ言葉を告げた。

 そして──。

 

「今の我には有効な手だてがないのだ。それ故に貴様にことの一切を委ねる」

 

「は、はっ!」

 

「……励めよ」

 

「委細承知いたしました。それでは、失礼いたします!」

 

 鳩から激励の言葉を受けたガブリエルは、感動に身を震わせると舞い上がりそうになる自身を押さえながら飛び去っていく。

 それを見送った鳩は、自身に言い聞かせるように独りごちる。

 

「……そうだ。ガブリエル、ほんに励めよ。あの三人のように狂信に墜ちることなく」

 

「我は唯一無二の神。故に我が悪魔に墜ちるなどと、あってはならぬ。ならぬのだ……」

 

 そう言って鳩は、自身を安心させるため譫言のように呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 赤、朱、赫、全体的に真っ赤な、まるで血管の中にいるような感覚に陥りそうな妖しい空間の中。

 そんな中、キィキィ、と幕が上がる音が聞こえてくる。

 すると、空間の中に存在していた劇場の舞台に設置してあるカーテンが取り払われていく。

 そしてカーテンを取り払われた空間の先、そこには豪華な、本当に豪華な書斎のような空間が姿を表す。

 

 そこに佇む一人の青年。

 金髪をオールバックにしてスーツを着た、百人がいたら九十九人が振り向くような白人の美丈夫。

 その彼が徐に書斎に設置してあるソファに腰掛けると彼の視線の先、何もなかったはずの空間に映像が映し出される。

 それを興味深げに見る青年。

 

「……ふむ」

 

 どんどんと映像が進んでいき、その映像を見るたびに口角が釣り上がっていく青年。

 その映像にはとある人物たちが映し出されていた。

 その人物たち、()()()は自らをこう名乗っている。

 

 

 ()()()()()、と。

 

 

 その中で、特に二人の少女たちを興味深げに見る青年は、徐に立ち上がると。

 

「ヴィローシャナのお気に入りがいると聞いて見てみたら、まったくもって興味深いね」

 

 と、好奇心旺盛な声を上げる。その時──。

 

「そうでございますか、それはよろしゅうございました」

 

 いつの間にか青年の背後には、喪服の、スラリとしたスタイルの女性が立っていた。

 女性を一瞥すると青年はいいことを思いついた、とばかりに声を上げる。

 

「そうだ、どうせだから会いに行ってみるか。ヴィローシャナのお気に入りでも、彼女らでも楽しいことになりそうだ」

 

 名案だ。とばかりに笑いながら告げる青年に喪服の女性は嘆息しながらも止めるだけ無駄だ、と諦めた雰囲気を出している。

 彼女にとって青年、自身の主人がかなりの自由人であることは、永い、本当に永い年月を共に過ごしていたことから、嫌というほどに理解している。

 それ故に、彼女の口からは青年を送る言葉が紡がれる。

 

「それでは行ってらっしゃいませ。ルシ──」

 

 そこで青年が振り返って、茶目っ気のある表情で彼女の言葉を遮るように語りかける。

 

「今の私はルイ、ルイ・サイファーだよ。ゆりこ」

 

「……失礼いたしました。ルイ・サイファー様。お早い帰還を願っております」

 

「それじゃ、行ってくるよ」

 

 そう言いながら青年、ルイ・サイファーは後ろ手に手を振りながら、この空間【アマラ深界】より旅立っていく。

 それを見送ったゆりこ、と呼ばれた喪服の女性も再び深く、深ぁく嘆息しながらその姿を霞ませていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無人となった書斎。

 

 

 そこに先ほどルイ・サイファーが見ていた時と同じように一つの映像、彼が特に興味深そうに見ていた二人の少女の姿が映し出される。

 一人はピンク色の髪に猫耳型の帽子を被った小柄な少女、名を丈槍由紀。

 

 そして、もう一人。

 

 濃紺色の髪を赤いリボンでツインテールにした、勝ち気な表情を浮かべる少女──。

 

 

 

 

              ──恵飛須沢胡桃、という名であった。

 

 

 

 







 読了お疲れさまでした。

 今回、作中で語られている聖母マリアや聖霊関連は本作独自の設定、とさせてください。
 ……ぶっちゃけ、三位一体の下りの辺り、現実の方でも『考えるな、感じろ』な状態なので、作者でもどう表現していいものかわからないので……。
 いや、調べても難解過ぎましたよ、本当に……。
 三体別々の存在でもないし、かと言ってもともと一体で別の側面を()()()()()()()()()()()って、どういうことだってばよ。

 だけど一つの神であることは間違いない、となるとまるでなぞなぞの様相を呈して、作者の頭では理解不能でした……。
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