DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
今回、タグの整理、追加を行いました。
今後もタグの追加は行う可能性があります。
今後ともよろしくおねがいします。
ここは巡ヶ丘で数少ない生存者が集まっているコミュニティである聖イシドロス大学の一室、生存者のうち男性陣が集まる会議室。
そしてその中では原作においては武闘派のリーダーであり、この世界では大学生き残りのうち男性陣のまとめ役である頭護貴人が座していた。
だが、以前までは彼なりに男性陣をまとめていた貴人だったが、今の表情はまるで過労死寸前のように疲れ果てていた。
はたから見るとそのような様子だったが、当の本人は気にする素振りも、否、気にするだけの余裕すらないのか、俯いて何事かブツブツと呟いていた。
「なぜ……、俺は、選ばれたはずなのに……」
その様に呟いている貴人の脳裏に浮かぶのは、以前に自分たちを襲った異形、妖鬼-オニと、その化け物を討伐せしめた女性陣のリーダー的立場にいる神持朱夏の戦いの光景だった。
自分たちが命からがら、なんとか生き延びた相手を歯牙にかけることなく一蹴してみせた彼女を見た貴人は自身のプライド、何よりもこの地獄に変わった世界で生き延びたのは自身が選ばれた存在だから。
そして、選ばれた自分が他の生存者たちを導かねばならない、という使命感を図らずも朱夏自身に全否定されたことによる虚脱感の結果、何も知らない人間が見れば感染したのか、と思われかねないほどに消耗していた。
その様に思い悩む貴人だったが、部屋のドアがノックされていることに気づく。
「……鍵なら開いている」
本来の彼であれば、来訪者が誰かという確認くらいは取っただろうが、今の消耗した状態ではそこまで頭がまわらないのか、おざなりに鍵が開いていることを告げる。
その返答を聞いた人物はガチャリとドアを開けると部屋に入ってくる。
「あら、本当に高上が言うように重症なようね?」
部屋に入ってきた人物のあんまりといえばあんまりな言い草に顔をあげる貴人。
しかし、貴人が顔を上げた理由は何も
それ以上に彼にとってある意味において彼女は特別だからだ。
「なぜ、お前が……」
「あら? 友人の想い人が貴方の心配してたから様子を見に、というのはおかしいかしら?」
そう言って妖艶に微笑む女性。
彼女の名は神持朱夏、今の貴人にとっては頭痛の種とも言える人物だった。
朱夏の言葉を聞いた貴人はポツリと言葉をこぼす。
「高上、か……」
「ええ、そういうことよ」
貴人の言葉を肯定する朱夏。
その後、二人は言葉を発することなくしばしの時が流れるが、不意に貴人は嫉妬、羨望に濡れた視線を向けて彼女に問いかける。
「何故だ」
貴人の言いたい意味がわからずに首を傾げる朱夏。
そんな朱夏を見た貴人は激昂するように彼女に詰め寄る。
「何故お前が! 俺じゃなくてお前が選ばれたんだっ!」
「……はぁ?」
貴人が激昂した意味も、自身に詰め寄られる理由もわからずに困惑する朱夏。
彼女のそんな様子に毒気を抜かれたのか貴人は肩を落として、幾分か落ち着きを取り戻した様子で独りごちる。
「あの化け物を倒した力、ペルソナ、だったか」
その言葉で貴人が何を言いたいのかを理解したのか、朱夏は、ああ、そういうこと。と呟く。
だが、すぐに何かを思い出したのか、朱夏は思わず笑い出しそうになるのを堪える。
それを見た貴人は、自身が笑われていると思い怒り出すが……。
「っ! 何がおかしいっ!」
「くっ。いえ、別に貴方のことを笑ったわけじゃ……」
そう言いながら含み笑いをする朱夏。
そうしてしばらく笑いを我慢する朱夏だったが、ようやく落ち着いてきたのか普段の調子を取り戻す。
そして貴人の方を向くと申し訳無さそうにしながら、先ほど笑いをこらえた理由を説明する。
「さっき貴方は私が選ばれた、なんて言ってたけど……。別に私はそんな高尚な存在じゃないわよ」
そう言いながら朱夏は適当な席に座ると、机に肘を乗せて頬杖をつく。
そして朱夏は、何かを懐かしむような顔をしながら貴人に話しかける。
「そう、ねぇ。実際私も、初めてペルソナに覚醒した時、『私は選ばれた存在なんだっ!』って舞い上がったことはあったわ」
そう言ってどこか遠くを見るような仕草をする朱夏。
そんな朱夏に対して貴人は勿体ぶるな、と言いたげに話の続きを促す。
「なぜ、それだけの力を持ちながら、お前は選ばれていないと言えるんだ……!」
「それだけの力、ねぇ……。まぁ、それなりに力はあると思うけど……」
そう言う朱夏の脳裏には自身の戦いの師匠である晴明と、かつて
「正直私の力なんて、
引きつった笑顔を浮かべながら、そうのたまう朱夏。
そんな朱夏の言葉を聞いた貴人は訝しげな表情で彼女を見る。
「お前がそれほどまで言う人物がいるのか……?」
「ええ、本当に。葛葉の──、って、これは言っちゃいけないんだっけ。ごめんなさい、忘れて」
貴人に問われて朱夏は思わず自身の無二の親友、葛葉朱音の、十七代目葛葉ライドウのことについて口に出しそうになるが、すんでのところでそれが一般人に話してはいけないことだと思いだして、話すのを中断する。
だが、貴人はライドウの話が気になるようで、先ほどよりも生気の戻った、好奇心が刺激された表情をしている。
それを見た朱夏は嘆息しながら、自身に話せる範囲の話をする。
「以前ここに来たDr.の友人のこと、覚えてるかしら?」
「お前が、晴明さん。と呼んでいた人か?」
「そうそう、高上からもなにか聞いてるんじゃないかしら?」
「……ああ。ボウガンの矢を射った時には既に姿が消えてて、いつの間にか背後をとられていたことと、その後、アキとシノウ相手に大立ち回りを演じていた、と聞いているが」
それがどうかしたのか? と、問う貴人。
疑問というか、不思議そうな顔の貴人を見た朱夏は、くすくすと笑いながら彼にとって衝撃的な言葉を告げる。
「あの人、私の
しかも、あの人と私。戦った場合、晴明さんに対してかすり傷の一つでも与えられたら御の字でしょうね。と、彼女の知る客観的な事実を告げると、貴人は驚きの声をあげる。
「なにっ……!」
「それで、そんなあの人でも苦戦、ないしは勝てないような存在も何人かいて、その一人がさっき言った
私とそう歳が変わらないのに、晴明さんより強い、と言うより日本最強クラスの実力者なんだから、そう言った意味では、あの子の方が余程選ばれた存在よね。と、告げる朱夏。
その言葉を聞いた貴人は驚きのあまり絶句する。
そんな彼の状況は気にせず朱夏は、さぞ困りました、と言わんばかりに頬に手を当てると独り言のように話し出す。
「そんな人たちのことを知ってて、なお『私は選ばれた』何て言えるほど私は能天気じゃないし、それに──」
そう言いながら、朱夏はかつて晴明が言っていた言葉を思い出す。
──選ばれた存在なんてもの、なりたいなんて思わない方がいい。少なくともこの世界ではな。
かつて、吐き捨てるように晴明がそのようなことを言った時、同時に吐露したことがある。それは──。
──蘆屋晴明は転生者である。
裏の業界では只の知れ渡った事実でしかないが、表の世界、オカルトとまったく関係のなかった朱夏からすれば、只の妄言と切り捨ててもおかしくない発言だ。
だが、親友である
そんな彼が語った、この世界と類似した、そして彼自身が知る
かつて、透子に語ったロウヒーローのことや、人造
さらに言うのなら、生き──ているわけではないが、証人、と言うよりも当人である救国の英雄、聖女として祭り上げられながらも、その最後は女の尊厳を踏みにじられ、魔女として火炙りの刑で処刑された悲しき女性。
晴明の仲魔であり、現在、スリルの護衛としてここ、聖イシドロスにいる英雄-ジャンヌダルク。
そんな彼ら、彼女らの話をして晴明は、それでも
「────い、おい!アヤカ!」
過去の晴明との思い出に浸っていた朱夏だったが、自分の名を怒鳴るような口調で呼びかけられていることに気付き、慌てて取り繕うように声の主である貴人に返事をする。
「……え、あ、えぇ。ごめんなさい、ちょっと考えごとをしていたわ。それで、なにかしら?」
朱夏が返事をしたことでようやく話が進むと、内心の怒りが多少収まったのか、貴人は幾分か冷静になったようで先ほどの朱夏の話の続きを促す。
「それで、アヤカ。それに、の続きはなんなんだ?」
「え、えぇ。そうね……。と、言ってもね……。結局選ばれたもの、英雄になんてなるもんじゃないわ」
「……なぜだ?」
「考えてもみなさいな。有事に英雄はありがたいかもしれないけど、いざ平和になった時、人々は生きている英雄にどのような重荷を背負わせるか……」
「…………!」
「かつての、過去の悲惨な結末をたどった英雄たち。その末路を見ればわかるはずよ」
朱夏の話を聞いた貴人は驚きの表情を浮かべるが、彼女の話に思い当たる節があったのだろう。すぐに苦悶の表情に変わる。
そして、苦虫を噛み潰したような声色で独りごちる。
「それは、そうだが……」
「私としても、あの子たちがそんな未来に突き進まなくて良かった、と思ってるし……」
「……あの子たち?」
朱夏がぽつり、とこぼした独り言を聞き付けた貴人が疑問の声をあげる。
そのことに朱夏はなんでもない、と首を振る。
首を振りながらも朱夏は晴明から聞いた
もっとも、朱夏自身、あの子が本当にその道を選んだとしても。
──わたしは、こんなわたしでも、誰かの笑顔のためになれるのなら、とても嬉しいんだ。
──だから、わたしの願いを叶えてよ。■■■■■■■■!
と、あの子は自己犠牲、献身の道へひた走るだろう、と理解している。納得できるかは別ではあるが……。
そんなことを考えている朱夏だったが、そのままだとさっきの二の舞だと思い思考を打ち切る。
「まぁ、それはともかく。今はこんなくそったれた世界に選ばれなかった事実を喜びなさい。それに──」
そう言うと朱夏は席を立ち、部屋の入り口まで移動するとドアをキィ、と少し開ける。すると──。
「うひゃあぁぁぁっ!」
「うおわぁぁっ!」
開いたドアから雪崩のように人が複数人、倒れ込んでくる。
それを見た貴人は驚き、朱夏は溜め息を吐くと、倒れ込んできた人物の一人、光里晶に声をかける。
「で? 人の話を出歯亀なんていいご身分ね、アキ? それにあなたたちも」
「へっ? あ、いやぁ……」
問いかけられた晶はもとより、同じく倒れ込んだ城下隆茂、出口桐子が誤魔化すように曖昧な笑顔を浮かべている。
それを見た貴人は今までのやり取りを見られていたことを悟り、羞恥で顔を染めて文句の一つでも言おうとするが──。
「お前たち──」
「いいじゃない、見られたくらい」
「……はっ?」
朱夏の、見られても問題ないだろう。と言う言葉を聞いて呆然とする。
そんな貴人を見て朱夏は優しげな笑顔を見せながらも、真剣な声色で語りかける。
「まぁ、たしかに覗き見と言うのは趣味が悪いとは思うけど、それでも高上以外にも、これだけ貴方の心配をしている人たちがいるのよ?」
「……あっ」
朱夏の言葉に今さらながら、その事実に気付き呆けた声をあげる貴人。
そんな貴人に朱夏は微笑みながら、諭すように声をかける。
「貴方は一人じゃない。その事実に喜びなさい。そして、悩みがあるのなら、彼ら、彼女らに頼りなさい。……人は一人では生きていけないわ。特にこんな状況ならなおさら、ね」
「…………」
朱夏の言葉に貴人は気恥ずかしさからか、沈黙をもって答える。
しかし、少しの後に言うか言うまいか悩むように口をモゴモゴさせて、それでも気になったのか朱夏に問いかけをする。
「……アヤカ、お前──」
「ん?」
「お前にも、頼れる人がいるのか……?」
「ふふっ。ええ、もちろん」
貴人の質問に満面の、花開いた笑みを浮かべて自信満々に答える朱夏。
その表情はまさしく恋する乙女そのものであった。