DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第三十五話 エトワリア

 さんさんと照らす太陽の光と、地平線の先まで満ちる砂、砂、砂の山。

 俗に言う砂漠と呼ばれる地域に於いて二人の少女と一匹の、猫にも、巨大なハムスターにも見える不思議な生物が旅をしていた。

 

 その中で不思議な生物が少女たちの一人、赤毛で小柄、色白な少女に心配そうに話しかける。

 

「ねぇ、ランプ? 本当に大丈夫かい? 無理はいけないよ?」

 

 その言葉にランプと呼ばれた少女は砂漠の熱でやられたのか、ふらふらとしながらも反論する。

 

「も、もうマッチったら! 私は大丈夫! ね、きららさん。私が、やせ我慢してるように見えますか?」

 

 そう言ってランプと呼ばれた少女はもう一人の少女、栗色の髪をツインテール、さらに正確に言うなればビッグテールと呼ばれる髪型で、魔法使い然とした格好をした少女に話しかける。

 

 そのきららと呼ばれた少女は、穏和な笑みを浮かべると、ランプに優しく語りかける。

 

「ランプ? マッチだって貴女のことが心配で確認してるんだから、そんなに邪険にしないの。ねっ?」

 

「それは……、わかってるんですが……」

 

 きららの言葉にランプは罰の悪い顔をしながら、もごもご、とどこかいじけるように独り言のようにこぼす。

 それを見たきららは、しょうがないなぁ、と微笑みながらランプを見る。そして──。

 

「ねぇ、ランプ。わたし、ちょっと疲れちゃったなぁ。だから、ね? 少し休憩しない……?」

 

 傍目には疲れているようには見えないが、きららはランプにそう提案する。

 

「そうだね。それがいいかもね」

 

 そして、そのきららの提案に乗るマッチ。

 一人と一匹の提案に、ランプは気遣われていることを改めて理解すると同時に、これ以上駄々をこねるのは、と恥ずかしそうに頬を染めると、賛成の意を示そうとする──。

 

「……そうですね! それじゃ、休憩──」

 

 しましょう。と、ランプが告げようとした瞬間。

 なにかが破裂したような轟音が響き渡る。

 そのことに驚く二人と一匹は音が響いてきた方角を向くと──。

 

「……なんだい、あれ?」

 

 マッチが思わず、といった様子で呟く。

 そこには天高く、巨大な壁と見紛うほどに舞い上がる砂塵の山があった。

 

 それを呆然と見ている二人と一匹だったが、ランプが現実に、正気に戻ると焦りを滲ませた表情で叫び声をあげる。

 

「あんなの、普通じゃ……! もしかして、あそこに()()()()()()の方々が! きららさんっ!」

 

「ちょっとまって……。たしかにあそこからパスを感じるよっ!」

 

 ランプに問いかけられたきららが自らの能力をもって、パスと呼ばれる力を感じとる。

 そしてそのことをランプに伝えると同時に駆け出していく。

 それを見たランプは、きららに向かって叫ぶ。

 

「きららさんっ!」

 

「ランプ、マッチもう少し頑張れる!? 頑張れるなら、二人とも急ごう!」

 

「はい、行きましょう。きららさんっ!」

 

 きららの問いかけにランプはそう答えると、二人と一匹は舞い上がる砂塵の中心に駆けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──時は少し遡る。

 

 何者かによって行使された召喚術式によって巡ヶ丘学院から強制的に呼び出された晴明、圭、慈の三人は現在、なぜか空中、しかも地上が霞んで見えることからかなりの上空であることがわかる。

 そんなところに意識が朦朧としている状態で放り出された晴明たち三人だったが、いち早く晴明の意識が覚醒すると、辺りを見渡して状況確認に努めようとするが、その時点で既にばたばたという風切り音とともに自分たちが自由落下をしていることを理解する。

 

「くっ! 圭! 佐倉先生! ……意識がないのかっ! だが、この距離ならば!」

 

 そこで晴明は二人、圭と慈が幸いにも手の届く距離にいたことから、彼女たち二人を手繰り寄せるときつく抱き締める。

 

「ふぁっ! ……え、あ、蘆屋先生!」

 

「きゃっ! ちょっ、あの、あし、や、さん……!」

 

 晴明に抱き締められた衝撃で意識を取り戻した二人は、目の前に晴明の顔があり、同時に自身の体が密着、特に慈に関してはその豊満な胸を押し潰すように密着していることから、驚きと同時に羞恥で顔を赤らめる。

 だが、流石に今の晴明には彼女たちの体の感触を楽しむ余裕はないのか、焦った様子で彼女たちに声をかける。

 

「二人とも! 死にたくなければ絶対にしがみついてろよ!」

 

「……へ? 死?」

 

 そこでようやく二人は今の状況を把握できたようで、甲高い悲鳴にあげる。

 

『キャ、キャアァァアァ!!』

 

 二人の悲鳴の声量に顔をしかめる晴明だったが、すぐに真顔になると二人に再び声をかける。

 

「大丈夫、心配するな! 二人とも絶対に死なせはしない! ただ──」

 

 そこまでで晴明は言葉を切ると、次に、二人にお願いという形で話しかける。

 

「二人を助けるためには、少しの間、手を離さないといけない。だから、その間、絶対に離さないように抱きついててくれ!」

 

 その言葉に二人は壊れた人形の如くかくかくと頷くと晴明の体にこれでもか、と言わんばかりの力で抱きつく。

 そのことを確認した晴明は改めて前方に、地上に向けて集中する。

 

 ──五百メートル。

 

(──まだだ)

 

 ──二百五十メートル。

 

(──まだ、あと少し……)

 

 微動だにしない晴明に不安を覚えたのか、圭と慈がさらに力を込めて抱きつく。

 その間にも三人は落下していく。

 

 ──百メートル。

 

(──ここだっ!)

 

 今までタイミングを見計らっていた晴明は、今、この距離ならば、と、自身のMAGを練り上げていく。

 そして、練り上げたMAGを衝撃魔法として、バッと地面に対して突き出した両腕から解き放つ。

 

「──マハ・ザンダイン!!」

 

 晴明から放たれたとてつもない規模の衝撃波はそのまま地表に突き進んで地面に炸裂する。

 それと同時にマハ・ザンダインを放った晴明たち自身も、まず放った際の衝撃の反射で落下速度が軽減され、さらに地面に当たった結果吹き飛ばされた砂塵のカーテンや、地面に吸収出来ず跳ね返ってきた衝撃がクッションの役割を果たしてさらに減速。

 まるで鳥の羽が抜け落ちた後のふわふわと落ちてくるような落下速度になった晴明は、そのまま苦もなく着地する。しかし──。

 

「げほっ。……二人とも大丈夫か?」

 

「うぅー……。なんか、口の中がじゃりじゃりするぅ……」

 

「あ、あはは……」

 

 怪我自体はないものの、砂塵のカーテンを突っ切った結果三人とも砂まみれになり、圭はぺっ、ぺっ、と口の中に入った砂を吐き出し、慈は苦笑いを浮かべながら晴明から離れるとぱんぱんと服から砂をはたき落としている。

 そんな二人を見ながら晴明も彼女らと同じように砂を落とすと、上空に向かって無造作に、再びマハ・ザンダインを放ち砂塵を消し飛ばす。

 そして砂塵がなくなったことを確認した晴明は改めて自身が今いる場所を観察する。

 

「ここは……、砂漠、か?」

 

「本当にどこなんでしょうか? ここ」

 

 晴明の疑問に追従するように慈も首を傾げている。

 そんな中、圭が、あ! と、なにかを思い出したかのように声をあげる。

 

「あ、あれ?! そう言えばあのヴァイオリンは……!」

 

 そのまま慌てた様子でストラディバリが入るはずのない服のポケットをまさぐったり、終いには着ているものを脱いで確認しようとする彼女を晴明は慌てて押し止める。

 

「まてまて! 圭、早まるな! いくら人がいないとはいえ、天下の往来で脱ぎ出すやつがあるかっ!」

 

晴明の慌てた様子に、多少の平静さを取り戻したのか、圭は自身がしようとしていたことを客観的に理解して頬を赤く染めると、あうあう、と声にならない声を出す。

そんなプチパニックを起こしていた圭を止めた晴明は、頭痛を堪えるように頭を抱えると、圭にとある確認をする。

 

「ふぅ、まったく……。圭、GUNPは持ってきてるな?」

 

「あ、えっ? GUNP、ですか? ……はい、それならここに」

 

 そう言って、彼女は腰に巻いていたガン・ホルスターからGUNPを引き抜くと、自身の眼前に持ってくる。

 それを確認した晴明は、続けて圭にGUNPを起動するように言う。

 

「それじゃ、GUNPを起動するんだ」

 

「えっ? あ、はい」

 

 晴明の言葉に返事をした圭は、GUNPのトリガーを引いて起動させる。

 そして、起動したことを確認した晴明は、彼女の方へ移動してとある説明を始める。

 

「画面のところにアイテムの項があるだろう。……そう、そこだ。そこを開いてみろ」

 

「これ、ですか? あっ、あった! 良かったぁ……」

 

 その項目の中にストラディバリの名前があり、圭は安堵しながら手元に呼び出す。

 但し、取り出した時に急に空中に出現したことから取り落としそうになって、わたわたと焦りながらキャッチすると、今度は違う意味で安堵のため息を漏らしていたが。

 そんな彼女の微笑ましい行動によって、周囲に弛緩した空気が漂ったが、その時バロウズが晴明に話しかけてくる。

 

《マスター、和んでいるところ申し訳ないけど、こちらに、なにか近づいてきてるわ》

 

「──なんだと? 敵対反応はあるのか?」

 

《特にそう言うものは……。人らしき反応が二つ、不明、大きさからして小動物かしら? それが一つ、かしらね?》

 

「そうか──」

 

 バロウズの報告を聞いた晴明は、もしも近づいてきている存在が敵対的だった場合の保険として、同時に砂漠の熱を遮断するために取り出した外套を圭と慈に被せる。

 そして、一応警戒を。と、晴明が呟こうとした時に、件の反応が彼らに接触を果たす。

 

「おぉーい! 貴方たち大丈夫ー!!」

 

「皆様、大丈──、へぶっ!!」

 

「ちょっ、ランプ?!」

 

もっとも、魔法使い然とした少女(きらら)のこちらを心配する様子と、神官のような服を着た小柄な少女(ランプ)の転ける様を見て、警戒する必要はないか。と、思い直していたが……。

 

 

 

 

 

 晴明たちときららたちが合流してしばらくした後、彼らはきららたちが道すがら見つけていたオアシスに移動して情報交換を行っていた。

 

「エトワリア、女神ソラ、聖典。それに、クリエメイト、か……」

 

 きららから聞いたこの世界の話、特に聖典とクリエメイトに関しての話に衝撃を受けていた。

この世界の女神による権能、見ることでこの世界の住人の活力となるクリエと呼ばれるものを与える物語(聖典)と、その登場人物(クリエメイト)たち。

 

 そして、佐倉慈と祠堂圭は間違いなく、そのクリエメイトだという。

 しかし、同時に聖典によれば二人は死ぬ運命に、特に慈に関して言えば既に死んでいるはずだとも……。

 だが、実際には慈も圭も現在まで生き残っている。

 

 そのことに驚いていたランプだったが、晴明にとっても次の彼女の話は驚嘆に値した。

 

 ──女神ソラ封印さる。下手人は筆頭神官アルシーヴ。

 

 アルシーヴはソラを封印後、オーダーと呼ばれる禁術でクリエメイトたちを召喚。

 そして、クリエメイトたちを捕縛した後に彼女らからクリエを抽出しようとしている、らしい。

 しかも、オーダーで呼び出されるクリエメイトは同意もなく強制的に呼び出されるらしく、その結果、本来そのクリエメイトのが暮らす世界にも負荷がかかり、最悪の場合、世界が崩壊する可能性すらあるらしい。それと同時にエトワリアに対しても問題がある術式らしく、クリエメイトが召喚された一帯は、クリエメイトが暮らしていた世界の法則が侵食してくる可能性がある、らしい。

 

 らしい、とはっきりしない言葉が続くのは、オーダーと呼ばれる禁術自体遥か昔の文献に載っている程度の情報しかなく、詳しい情報は筆頭神官たるアルシーヴしか知らない、とのことだった。

 

 しかし、なぜそのような情報をランプが知っているのか?

 

 それは、ランプが次代の女神の卵。女神候補生と呼ばれる存在であり、そして、彼女の師匠は筆頭神官のアルシーヴ。

 さらには、彼女はアルシーヴがソラを封印する場面を目撃した、とのことだった。

 

 その後、彼女はアルシーヴに反旗を翻そうとするものの、そもそも女神候補生とはいえ、ただの子供に筆頭神官を打倒する力があるはずもなく、そのため彼女はアルシーブを打倒しえる存在を探す旅にでた。

 

 その存在こそがきらら。

 

 彼女は伝説の召喚魔法【コール】によってクリエメイトたちを呼び出すことができる存在だった。

 そしてコールはオーダーとは違い世界に負担をかけるわけでもなく、クリエメイトに関しても、同意を経ての召喚になることから、クリエメイトの世界にも問題は発生しない、とのことだった。

 

 彼女のコールであればオーダーに対抗でき、アルシーヴの企みを阻止できる、と踏んだランプはきららに世界の危機を救いましょう、と要請。

 きらら自身もせっかく友達になったランプとマッチの頼みと言うのもあるし、何より世界の危機だというのなら放ってはおけない。と、いう理由から快諾。

 現在までにもアルシーヴ麾下の七賢者という存在のうち二人を退けてここまで着たそうだ。

 

 対するきららたちも晴明の話を聞いて、聖典にはまったく記述がない、と驚いていた。

 

「悪魔召喚師にペルソナ使い、メシア教にガイア教、ですか? それに、失礼ですが、蘆屋様や、唯野様のお名前もまったく見覚えも、聞き覚えも……」

 

 そう、彼女たち。きららたちだけではなく、圭と慈も驚くことになった原因。それは、異分子(イレギュラー)たる蘆屋晴明と唯野=アレクサンドラの二人についてだった。

 そんな人間が学園生活部に関わった、等という記述はないし、さらに言えば若狭瑠璃。

 彼女は本来、聖典が描かれる前の時点で既に死亡しているはずだった。

 それが、晴明に助けられた結果生き残り、若狭悠里の精神がある程度安定していることや、唯野=アレクサンドラ、彼女に柚村貴依が助けられたことにより、丈槍由紀が幼児退行していない、等の差異が現れているとのことだった。

 

 そこで晴明は、ふと疑問に思ったことを口に出す。

 

「そう言えば、その聖典、だったか? それにタイトルはあるのか?」

 

「そう言えばそうですね」

 

 晴明の疑問に慈も同意するように告げる。

 それを聞いたランプは目を輝かせて、聖典のタイトルを口にしようとする。

 

「そこに興味を持たれましたかっ! めぐねえ様やゆき様の活躍が描かれた聖典、その名も──」

 

『くー!』

 

 そこでランプの言葉を遮るように可愛らしい鳴き声が聞こえてくる。

 全員が聞こえてきた方向を見ると、そこにはとんがり帽子を被った紺色のふかふかしたぬいぐるみのような姿をしたなにかが数多くいた。

 そのなにかを見たランプが驚きの声をあげる。

 

「あれは……クロモン! アルシーヴ配下のモンスターですっ!」

 

『く、くー!』

 

 ランプの言葉を聞いたクロモンと呼ばれたモンスターたちは、彼女を威嚇するかの如く飛びかかるようなポーズとともに鳴き声をあげる。

 ……もっとも、彼らの鳴き声を聞いていた晴明からすると、猫がじゃれついてきているような感じを受けて、むしろ和んでいたが。

 しかし、いつまでも和んでいるわけにもいかず、晴明は倶利伽羅剣を取り出すと正眼の構えとともに軽い殺気を出す。

 すると──。

 

『く、くー?!』

 

 まさか、クリエメイト(晴明)から敵意を越えて、いきなり殺気を叩き付けられるとは思っていなかったようでクロモンたちは毛を逆立たせると、ぴゅー、と効果音がつきそうなくらいの逃げ足で四方八方に散っていく。

 それを見た晴明は──。

 

「……いや、おい。自分たちから喧嘩売っといて、そんなんありかよ?」

 

 と、呆れた声を出しながら、思わずと言った様子で突っ込みを入れる。

 そんな晴明に圭と慈は苦笑いを浮かべるが、逆にきららたちは驚きの表情を見せる。

 そのままきららは晴明に何事かを話しかけようとするが、その前に──。

 

「おいっ! あんたら、こっちだ!」

 

 晴明たち三人にとって、とても聞き覚えがある声が聞こえてくる。

 思わず、といった様子で声の主の方を向く晴明たち。そこには。

 

「あまり、ぼっーとしてないでっ! こっちに安全な場所がある!」

 

 巡ヶ丘の制服をファンタジー調にした服を着ている、巡ヶ丘学院高校にいる筈の恵飛須沢胡桃の姿があった。

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