DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
戦闘態勢に入ったカルダモン。彼女から発せられる重圧、俗に言う鬼気とでも言うべき気配を感じ取った胡桃たち学園生活部の面々は無意識の内に恐怖によって身震いする。
そんな彼女たちを見たカルダモンは、にぃ、と微笑を浮かべ、体を先ほどよりもさらに沈ませる。そして──。
「なっ、はや──!」
胡桃が驚いたように、カルダモン自身の脚力や体の柔軟性を行使して、まるで縮地の如く、まさに目にも止まらぬ速さで地面を這うように駆ける。
そして、その速さのまま胡桃たちに突撃し、両の手に握る短剣を振り──かぶろうとして、すぐさま彼女は自身の相棒を胸の前に交差、何かから自分の身を守るための防壁とする。
その直後、ガキン! という金属同士がぶつかる音が響き渡ると同時にカルダモンは吹き飛ばされ、否、自らの脚力にものを言わせて、無理矢理、方向転換とともに驚異から逃れるように後ろへと飛んで衝撃を逃す。
そしてカルダモンは飛んだ衝撃を利用して空中でくるり、と一回転。
そのまま何事もなかったかのように着地すると、楽し気な笑みを浮かべて、自身の邪魔をした存在を舌なめずりしながら見る。
「へぇ……」
彼女の視線の先、そこには──。
「あ、あんた……」
そこには、胡桃と悠里を庇うように前に出る晴明の、自身の愛刀である倶利伽羅剣で空間をなぎ払った姿があった。
そして晴明は油断しないようにカルダモンを見据えながら背後にいる二人に声をかける。
「二人とも無事だな?」
「あ、あぁ」
「え、えぇ。大丈夫です……」
二人の返事を聞いた晴明は小さく頷くと、バロウズに話しかける。
「──バロウズ」
《だめ、マスター。なにかに阻害されてるのかわからないけど反応が不安定。悪魔召喚プログラムだけが使用不可能よ》
「そうか……。しかし──」
一体誰が妨害しているのか? と考える晴明。
基本、GUNPやCOMPに搭載されている悪魔召喚プログラムは、あの化け物的な天才『STEVEN』の作品なのだ。
それ故に、本気で妨害しようとするならば、高位悪魔たちのように事象や因果に干渉するか、物理的に破壊するぐらいしか方法がない。
もしくは、ここが完全に異なる世界、あるいは法則が違う宇宙で、その結果、異物である悪魔召喚プログラムに干渉する何かが存在する可能性くらいだろう。
そこまで考えた晴明は一つの可能性に思い当たり、まさか、と言いながら呟く。
「ここは、アマラ宇宙の外にある世界なのか……?」
──アマラ宇宙。
それは、一つの概念。ペルソナ世界やデビルサマナー世界、そして女神転生世界は一つの並行世界として繋がっている、というものである。
初出は真・女神転生3となるが、同時に同作内に於いてアマラ宇宙の外にも別の宇宙が存在することを示唆されている。
そして、アマラ宇宙では大いなる意思と呼ばれる概念存在が君臨し、かの存在の端末が唯一神や、ボルテクス界のカグツチであるとも言われている。
その中で晴明は、このエトワリアもまたアマラ宇宙の一部だと思っていた。しかし──。
「──このあたし相手に考え事とは余裕だね?」
晴明は急に聞こえてきたカルダモンの声を聞いて、ハッと正気に戻る。
その時にカルダモンは既に晴明の目の前まで迫っており、首筋めがけてハイキックを放つ。
「ちぃっ! ナメるなぁ!」
晴明は彼女のハイキックを左手──ガントレットで防ぐと手首を回転させて彼女の足首を掴み、力任せに洞窟の壁めがけて投げ飛ばす。
しかし、彼女はまるで猫のようなしなやかさでひらりと体勢を立て直すと、
「ァァァッ」
「ギギギッ」
晴明とカルダモンの間、そこにヒトガタのなにかが落下してくる。そこにいたのは。
「……なんか、ディフォルメされてないか?」
晴明が呆然と呟いたように、そこには晴明たちの世界にもいたかれらが、大きさ自体は同じものの、なぜか五頭身くらいの顔色の悪い人形のような姿になって存在していた。
現れたかれらモドキは晴明に狙いを定めると、猛然と突撃してくる。……但し、その歩みは亀の如き遅さだったが。
「きゃぁぁあっ!!」
その時、後ろから由紀の悲鳴が聞こえてくる。
近づいてきたかれらモドキを一刀のもと斬り捨てた晴明は悲鳴が聞こえてきた方向を見る。
そこには、洞窟の奥からかれらモドキが十体程度学園生活部めがけて移動していた。
それを見た胡桃はあり得ないと言いたげに叫ぶ。
「なんでっ! ここは奥まで探索済みだったのに!」
そこで晴明は、はじめてここが洞窟特有のじめじめと湿った空気ではなく、さらさらとした屋外と同じような空気であることに気付く。
「これは、ここはどこかで外と繋がっていたのか……!」
だが、今はそのようなことを考えている場合ではない、と判断した晴明は、しかし、現状カルダモンを自由にさせておくリスクを考えて圭に話しかける。
「──圭!」
「はっ、はい!」
「……やれるな?」
その言葉を聞いた圭は、先ほどまでの不安そうな顔から真剣な表情になって、こくり、と頷く。
その圭の様子に晴明は小さく微笑むとそのままカルダモンと対峙する。
晴明に任された、頼られたことを理解した圭は、すぐさまGUNPを引き抜くと起動。
そのまま操作を続けてストラディバリを取り出して構える。
もっとも、聖典世界の学園生活部の面々は、圭が銃型の機械を操作したと思ったら、次にヴァイオリンをどこからともなく取り出して演奏の準備をしはじめた。という意味不明な行動をしているように見えたことから、一体何をしているのか、と不安そうな顔をしている。
そして、胡桃はあたしが頑張らないと、と愛用のショベルをきゅ、と握り気合いを入れるが、それを見た圭は。
「先輩、大丈夫! 私に任せてくださいっ!」
ふんす、と気合いを入れるように胡桃に告げると、精神を集中させる。
そして、心の赴くままに、頭の中で流れる旋律をそのまま奏でていく。
圭が奏でる美しい旋律になにも知らない学園生活部は聞き惚れるが──。
「あれ……、なに?」
その中で由紀は、圭の背後に現れた円形の五線譜、そこから音符が湧き出てくると、それがかれらモドキに殺到する。
その音符がかれらモドキに近付いた瞬間!
「うぉわっ! ……まじかよっ」
一部始終を見ていた胡桃は、あまりの非常識さに呆然としたようすで声をあげる。
それもそのはず、近付いた音符が次々と爆発し、かれらモドキを物理的に解体しているのだからそうも言いたくなるだろう。
現に悠里も同じ感想を抱いたのか、乾いた笑いを見せるも額に一筋の汗を流す。
だが、由紀に関しては純粋に興奮しているのか、目を輝かせて、おおー! と歓声をあげている。
そして由紀は興奮冷めやらぬ様子で圭に声をかける。
「すごい! すごいよっ!
由紀の称賛と疑問を聞いた圭はふふん、と得意気になりながら質問に答えようとして、彼女が、由紀が発した言葉に疑問を抱く。
「ふふんっ! 当然ですよ、なんてったって──、って、
聖典世界の由紀と、自身の世界の由紀の呼び方が違うことに首を傾げる圭。
もっとも、聖典世界の由紀はそのことを知らないことから、ただ単になぜくん呼びなのかを疑問に感じているのだと思い、その説明をする。
「だって、みーくんの親友なんだよね? だから、お揃いのけーくん!」
自信満々に答える由紀の姿を見た圭は、どこか曖昧に笑うと。
「あ、あはは……。そ、そうなんですね……?」
と、答えていた。
そんな二人、特に圭を興味深そうに見ていたカルダモンは、楽し気に笑うと、圭にとって、そして学園生活部にとっても聞き捨てならないことを言う。
「本当に面白いね、君たち。クリエメイトは戦いとは無縁の存在だと思ってたんだけど、美紀といい、君たちといい」
「みきっ! お前、みきになにかしたのかっ!」
カルダモンの言葉に不穏なものを感じたのか、胡桃は激昂して彼女に叫ぶ。
胡桃の様子に薄く笑うと、彼女の叫びにカルダモンは飄々とした様子で答える。
「ふふっ、そんなに心配しなくても、美紀は無事だよ。……ただ、拘束はさせてもらってるけど、ね」
「……てめぇッ!」
カルダモンの言葉に冷静さを失った胡桃は晴明の横を通って彼女に突撃しようとするが、彼の横を通ったときに腕を掴まれて制止させられる。
晴明に急に腕を掴まれ自身の行動を邪魔されたことから、胡桃は晴明に対しても苛立ちをぶつける。
「何すんだっ! 離せよっ!」
「……まったく、冷静になれ!」
「──っ!」
まさか、晴明に怒鳴られると思っていなかった胡桃は驚きと恐怖で肩をびくつかせるが、同時にその事で頭が多少は冷えたのか先ほどのように突撃しようとはしていない。
そのことにカルダモンはどこか残念そうに、そして挑発するように話しかけてくる。
「あらら、残念。そのまま突撃してきてくれてたら美紀のおみやげになってたのに。……まぁ、いいや」
そう言うとカルダモンは戦闘の構えをやめると、バックステップ。そのまま晴明たちに今は帰ることを告げる。
「ちょっと分が悪いようだし、ここは引かせてもらうよ。じゃあねっ!」
そう言って彼女は身を翻らせると、あっという間に走り去っていく。
それを見た胡桃、そして圭は彼女を追いかけようとする。
「まてっ!」
「ま、まちなさいっ!」
そう言って後を追おうとする二人だったが、すぐに晴明に止められる。
「二人とも深追いはするな」
「でもっ!」
いくら別世界、自身の知る美紀ではないとは言え、囚われているとわかっていながらみすみす逃すのは我慢ならないのか、圭は晴明に反論しようとする。
だが、晴明も流石に自ら罠に掛かりにいこうとするのを見過ごす気はないようで、圭を諭すように話しかける。
「なにも助けにいかないとは言っていない。しかし、な。この状態で追いかけても分断されて各個撃破されるのがオチだ」
「……~~~~!」
晴明の言葉に納得いってはいないが、理解はできたのか圭は悔しそうな顔をして唸る。
しかし、胡桃はそれでもやはり救出に向かいたいようで晴明に反論する。
「……それでも、後輩が助けを待ってるのに、見過ごせるわけないだろっ!」
「それで? 土地勘のない、だだっ広い砂漠を宛もなく彷徨うつもりか?」
「ぐっ……!」
「蘆屋さんっ!」
胡桃の反論にも晴明は苦言を呈する。彼の言葉を聞いた胡桃もまた、圭と同じように呻くが、流石に見かねたのか慈が晴明に話しかける。
「この子たちはたった四人でここまで生き残ってきたんですよ? だからこそ、彼女たちの絆の深さを考えてあげてくれませんか?」
「これでも考えてるつもりだよ。それにさっきも言ったけど、助けにいかない、とは言ってないよ」
「では、どうするつもりなんですか?」
慈にそう問われた晴明は、少しだけ考える素振りを見せると、自身の考えを述べる。
「そもそも、彼女。カルダモン、だったか? なぜ彼女はここが分かったのか?」
そこまで言うと、晴明は皆を見渡してさらに言葉を続ける。
「それと、もう一つ。かれらモドキが現れた時、恵飛須沢さんが『この洞窟は奥まで探索した』と言ったのにも関わらず、なぜ、いったいどこから現れたのか? 不思議に思わなかったか?」
「それは、たしかに……」
晴明の言葉を聞いた悠里も、なにかがおかしいと感じたのか、彼の疑問を肯定する。
それを聞いた晴明は、次にランプへ声をかける。
「それで、次にランプちゃんに聞きたいことがあるんだが、いいかな?」
突然晴明に話しかけられたランプは、緊張した様子で背筋をぴん、と伸ばして返事をする。
「はっ、はい! なんでしょうっ!」
「そんなに緊張しなくていいよ。……君に確認したいこと、それは、あのかれらモドキ、あれはもともと、この世界に存在してたのかな?」
晴明の質問にランプは首を横に振って否定する。
「いえ、あのタイプのモンスターは、今まで確認されていません」
「……それって、やっぱりあたしたちがここにきちゃったから」
ランプの答えを聞いた胡桃が暗い表情を浮かべ、思い詰めた様子で独りごちるが、晴明はそんな彼女に宥めるように声をかけると、さらに話を続ける。
「恵飛須沢さん、今はそれを言っても仕方がないよ。それよりも、疑問には思わなかったかい?」
「……えっ?」
「ほら、あのカルダモンという子だよ」
「えっ、と……?」
晴明にカルダモンのことを問われる胡桃だったが、心当たり、思い付くことがないのか首を傾げている。
そんな彼女を見た晴明は苦笑しながら答えを告げる。
「ほら、彼女。かれらモドキを見ても驚いてなかっただろう?」
「え、あ、あぁっ!」
晴明に言われたことでようやく合点がいったのか、胡桃は驚きの声をあげるとともに、なるほど、と納得していた。
そんな彼女を尻目に、晴明は再びランプに確認をとる。
「なあ、ランプちゃん。彼女、カルダモンが学園生活部についての記述がある聖典を知らない、という可能性はあるのかい?」
その晴明の質問に、ランプは強い口調であり得ないと告げる。
「そんなのあり得ませんっ! 七賢者は神殿の中でもアルシーヴの、ソラ様の懐刀の側近中の側近なんです! それに、カルダモンも自身が武闘派、紛争の調停者ということもあって、皆様の、
「がっこうぐらし? ……それが、彼女たちの、学園生活部の活躍が描かれた聖典の題名でいいのか?」
ランプの口から出た【がっこうぐらし!】という言葉に反応した晴明はランプに質問し、そしてランプもその質問を肯定する。
そのことで考え込む晴明だったが、そんな彼の様子に不安を覚えたのか、慈がおずおずと心配そうに訪ねてくる。
「あの、蘆屋さん? どうかなされたんですか?」
慈の心配そうな声を聞いたことで、晴明は自分が考え込んでいたことに気付き、そして、彼女の心配を察して、あえておどけるような言い方で、心配を払拭するように答える。
「あ、ああ。学校の教師と生徒が、学園で生活する部活を立ち上げるとともに暮らしている物語の名前ががっこうぐらし。というのも、安直、というか分かりやすい、というか、と思ってね」
冗談交じりに告げてくる晴明を見た慈も、くすり、と笑うと彼の意見に同意する。
「ふふっ、たしかにそうですねっ」
慈の安心した表情を見た晴明は、なんとか誤魔化せたか、と内心安堵する。
そして、本当の意味で先ほどまで考えていたことを再度考える。
(がっこうぐらし、か。……聞いたことは、ある)
晴明はそう思って、前世の、かつての自身の記憶を辿る。
(たしか……、可愛らしい絵柄と、それに似つかわしくないゾンビパニックもので話題になった作品、だったはず)
しかし、と内心で晴明は頭を抱えそうになりながら独りごちる。
(そして、主人公は丈槍由紀、彼女だったな。そう考えると、彼女があの世界でワイルドに覚醒したのは必然だったのかも知れないな)
そこまで考えたところで、晴明はその考えを頭から追い払う。
たしかにあの世界はがっこうぐらしという版権作品に極めて似た世界なのかもしれない。
だが、圭や美紀がジャックフロストのために流した涙は演技でもなんでもない本物だったし、なにより、学園生活部の、イシドロス大学の生存者たちの生きたい、という意思も、たしかなものだったのだから。
それなのに、晴明が
「な、なぁ。蘆屋、さん、だったか? 大丈夫かよ?」
そこで今度は胡桃が心配そうに話しかけてきたことに気付いた晴明は、彼女を安心させるように微笑みながら大丈夫だと返事を返す。
「ああ、大丈夫だ。話の腰を折ってすまないな。……それで、話を戻すがさっきの彼女、カルダモンだが、かれらモドキを見て驚いていなかったことを順当に考えると、以前、実際に見たことがある、と考えるのが妥当だろう」
「……まぁ、そりゃあ」
「で、俺たちやきららちゃんたち、それに君たち三人が会ったことがなかった。そして、かれらモドキは聖典世界の出身である君たちや、俺たちの近くで発生する。というのであれば、カルダモンは以前、直樹美紀を捕獲、もしくは保護かもしれないが、まぁ、その時に見たんだろう」
そこまで言った晴明はまぁ、ここまではカルダモンの証言通りとも言えるが、と述べる。
そんな晴明の遠回しな言い方に焦れったそうな様子で胡桃が話の続きを促す。
「で? それがなんだってんだよ? そこまでは分かりきってることじゃないか」
「慌てるな、慌てるな。ここからが大事なんだから」
美紀のことが心配で焦りを見せている胡桃に対して、晴明は彼女を落ち着かせるように微笑み、しかしすぐに真剣な表情になると自身の考えを話す。
「それで、さっき現れたかれらモドキ。あいつらが君たちに反応して現れていた。と、するならば、それこそ何度でも現れていただろうし、君たちもおかしいと気付くだろう?」
「たしかに、りーさんだったら、すぐに気付きそうなもんだよな」
「そうそうっ! りーさんなら気付くよねっ! なんてったてみんなのお母さんだし!」
胡桃の例え話に悠里は顔を赤らめて否定するように手をバタバタと動かしていたが、次の由紀の例え話を聞いた瞬間、悠里の表情がふっと消える。
その顔を見て、由紀は自身の失態を悟るが時既に遅し、悠里は由紀に手を伸ばすと、その柔らかくもっちりとした頬を掴んで、むにー、と引っ張る。
「そんなことを言う悪い口は、これかしら?」
「
「ふふふっ……!」
由紀は痛みを訴えながら悠里の腕をタップする。
だが、悠里はそんな由紀の訴えを無視して彼女の頬の感触を堪能している。
しかし、彼女の笑みからは、得も言われぬ凄みを感じているのか由紀、そしてとばっちりであるが胡桃は彼女の顔を見て、恐怖を感じているのかガタガタと震えていた。
晴明はそんな三人を呆れた顔で見ると、ぱんぱんと拍手で彼女たちの注目を集めて、まだ話は終わっていないよ、と語りかける。
それを聞いた悠里は、晴明に微笑みながら謝る。
「あら、そうでしたね。ごめんなさい」
口では謝罪の言葉を述べる悠里だったが、しかし、指の方は由紀に対して最後のとどめとばかりに限界まで引っ張っていた。
そして、限界まで頬が伸びきると彼女は指を離す。
そのときの痛みで由紀は悲鳴を上げる。
「はうっ!」
ようやく指を離してもらった由紀は、涙目になりながら赤く腫れた頬を優しく擦る。
それを見て悠里はようやく怒りが収まったのか、いつもの柔らかい笑顔を浮かべる。
なにもそこまで、とも思う晴明だったが、悠里にしても自身と同じ歳の由紀に
「あ~……。そろそろ話を戻してもいいかな?」
晴明の言葉に悠里はにこやかに、胡桃と由紀は戦々恐々としながら頷く。
三人の様子を見た晴明は、緊張感を削がれたようにため息を吐きながら話を再開する。
「ええと、どこまで話したんだったか……。そうそう、君たち起点でかれらモドキが発生しているなら気付かない方がおかしい、までだったな」
晴明の確認にこくり、と頷く三人。
「そして俺、佐倉先生、圭はかれらモドキの存在を知らなかったし、なにより今まで遭遇していなかったからこれを除外。……となると残り発生する可能性があるのは?」
そこまで晴明の話を聞いた悠里と慈は、彼が何を言おうとしていたのか理解する。
「残り、ってそんなの──!」
「なるほど、残りはただ一人」
「「みきさんっ!」」
「まぁ、推論の域を出ないがな。そして、もし推論の通りならばかれらモドキの足跡を辿っていけば──」
そこまで晴明が言ったことで、胡桃もようやく納得がいったのか、しきりに頷いている。
「つまり、近くにみきがいるかもしれないんだな! なら、こうしちゃいられない! すぐに行こうぜ!」
美紀の捜索についての光明が見えたことで、先ほどまでの焦りが嘘のように落ち着いた胡桃は、今度は待ってられないと言わんばかりに、早く行こう、と全員を急かす。
そんな現金な様子に苦笑をこぼす晴明だったが、同時に彼は一つの懸念について考えていた。
(しかし、さっきの視線。あれはカルダモンのものでは
そこで胡桃が晴明に声をかけてくる。
「おぉいっ! 早く行こうぜっ」
「あ、あぁ。すまないな」
そう言って晴明もまた胡桃たちとともに洞窟の奥へと進んでいく。
一つの懸念。何者かの監視は、自分たちだけではなく、カルダモンにも注がれていたということを考えながら……。