DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第三十八話 美紀を探して

 胡桃たちと洞窟の奥に進んでいた晴明は、途中途中に現れるかれらモドキを蹴散らしながら、どんどんと先に進んでいた。しかし──。

 

「行き止まり、か?」

 

「そんな──!」

 

 晴明の言葉通り洞窟の最奥まで到達したようで、完全な行き止まりになっていた。

 しかし、胡桃は、そんなはずはない。と、言いたげに、あるいは隠し通路があるはず、と一縷の望みを託して洞窟の壁を調べている。

 その時、晴明の側で、ひゅぅ、と僅かながら空気の流れを感じ取った。

 その風が吹いてきた方向を見た晴明は、ただ一言。

 

「そうか。天井、いや、上か」

 

 と、言って上を見上げる晴明。

 そこには巨大な吹き抜け、というには形が乱雑な、恐らくは岩盤が崩落した時にできた大穴が口を開いていた。

 もっとも、それにしては付近が綺麗に整地されていたが。

 

 それを確認した晴明は思案顔になる。

 が、考えていても仕方がないと思ったのか、晴明は考えるのをやめてバロウズに話しかける。

 

「バロウズ、この縦穴の先をサーチできるか?」

 

《ちょっと待ってちょうだい。──サーチ完了。結構広い空間があるみたい。それと、敵性反応はないわ》

 

「了解した。……さて、となるとどうしたものか。俺が担いで上まで移動する、という手もあるにはあるが……」

 

 そう思案している晴明にマッチがとある提案をしてくる。

 

これ(ロープ)があるから、僕が上まで持っていって、皆はこれを伝って昇ってくる。というのはどうかな?」

 

「そうさな……。いや、俺も共に行こう。いくら彼女たちが軽いとはいっても、流石にきみ一人でロープを支えるのは負担になるだろう」

 

「それはありがたいけど、いいのかい?」

 

 マッチの質問に問題ないとばかりに頷く晴明。

 しかし、そんな彼に待ったをかける人物が現れる。

 

「あの、蘆屋先生……。先生は後からの方がいいのでは……?」

 

 その人物とは圭だった。

 

「その、こう言ってはなんですけど、この中では先生が最高戦力なわけですし、もしも、モドキやクロモン、それにカルダモンが現れた時のためにも……」

 

 そんな圭の提案に、慈もうんうんと頷く。

 他の子たち、学園生活部やきらら、ランプも多少思うところがあるのか、少なくとも否定はしていなかった。

 それを見た晴明は頭が痛むのか、頭を抑えて、ため息を吐きながら彼女たちにとある質問をする。

 

「……ふぅ。よぉし、圭に、皆も。とりあえず自分の格好を確認してみようか?」

 

 そんな晴明の言葉に、彼女らは慌てて自身の格好を確認するが、結果は普段の──学園生活部のみファンタジー調になっているが──服装なので何が問題なのか、と首を傾げている。

 そんな彼女らに晴明は、決定的な一言を告げる。

 

「もし、皆が昇っている時に、悲鳴でも聞こえてきたら反射的に上を見る可能性が高いわけだが──」

 

 そこまで聞こえた時点で彼女らは再び自分の格好を、普段通りの()()()()()()()()()を着ていることを確認し、各々が反射的に顔を赤くしてワンピースの裾や、スカートを抑える。

 つまり、可能性の話ではあるが、彼女たちは晴明に、男性に自身の大事な場所、秘密の花園(ワンピースやスカートの奥)を見せつける可能性が大いにあったことを、ようやく気付いたのだった。

 そこで、晴明はとどめの一撃とでも言える言葉を告げる。

 

「──そこでもう一度確認だが、本当に、()()()が後からで良いんだな?」

 

 その言葉に、圭は混乱したように、目をぐるぐると回しながら早口で答える。

 

「や、やっぱり、蘆屋先生は一番最初でお願いしますっ!」

 

 圭の錯乱した様子に同意するように、他の女性陣も必死な様子でこくこく、と頷いている。

 そんな彼女たちを見た晴明は苦笑している。

 そして晴明は真剣な表情を浮かべるとマッチに話しかける。

 

「では、行こうか」

 

 しかし、マッチは何か懸念があるのか、晴明に問いかける。

 

「行くのは良いんだけど……。どうやって行くんだい?」

 

『……あっ』

 

 マッチの質問に今気付いたとばかりに間の抜けた声をあげる女性陣。

 そんな彼女たちを尻目に、晴明は何の問題もないとばかりに軽く笑うと行動して見せる。

 屈むと同時に自身のMAGを活性化させると、軽い調子で跳躍。

 しかし、その軽い調子とは裏腹に凄まじい跳躍力を見せ、ぐんぐんと空中を駆け上がると縦穴の中へ消えていく。

 

「──はっ? はぁぁぁぁっ?!」

 

 あまりの異常事態に驚きの声を上げた胡桃は慌てて縦穴の真下まで行って上を見上げるが、そこには、さらに縦穴の壁を三角飛びの要領で上に昇っていく晴明の姿があった。

 それを見た胡桃は、驚きのあまり声が出ないのか、喘ぐように口をぱくぱくと開きながら、仲間たち(悠里と由紀)と昇っていく晴明を交互に見ていた。

 

「…………なんというか、悪魔召喚師というのはなんでもありなんだね」

 

 胡桃と同じように晴明の非常識な行動を見ていたマッチもまた、呆けたようにのたまう。そして──。

 

「そう言えば、けい。きみも悪魔召喚師、だったよね……?」

 

 というマッチの言葉により、今度は彼女に畏怖の視線が集中する。

 その視線に晒された圭は、自身が晴明と同じ非常識な行動ができる。と、勘違いされていることに気付き、慌てて誤解を解くように否定する。もっとも、今の晴明の行動に加えて、圭のストラディバリの攻撃方法のこともあって、全く信用されていなかったが。

 

 それでも圭は晴明(非常識の塊)と一緒くたにされたくなかったのか、学園生活部の面々や、きららたち相手に懸命に説明を行っていた。

 そんなこんなで残ったものたちがわいわい、きゃいきゃい騒いでいる時に、()()()から彼女たちに向かって声がかけられる。

 

「おーい! こっちの安全は確保したから、マッチも、皆も早く昇ってこい……? どうした?」

 

『えっ? ……あっ』

 

 そこで彼女たちは晴明がなぜ縦穴を昇っていったのかを思い出したようで、内心申し訳なく思いながら、いつの間にか上まで移動していたマッチのロープを使って、粛々と上へと昇っていくのであった。

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、最後に殿(しんがり)役として残っていた圭も無事に縦穴の上まで昇ってくることができた。

 そして、昇ってきた圭はキョロキョロと見渡して周りを確認すると、先ほどの洞窟とそこまで代わり映えのしない、しかし同時に先ほどよりは心なしか綺麗に見える壁面が見えた。だが──。

 

「えっ……?!」

 

 目を凝らして先を見た圭は絶句する。そこには、夥しい数の、白骨化した、かつて()()()()だったものが転がっていた。

 

「よし、圭。無事に昇ってこれたようだな」

 

 そこで圭の耳に晴明のなんでもないかのような声が聞こえてくる。

 圭にとっては、そんな場違いな声を出す晴明を、あり得ないものを見たような視線を向ける。

 そんな圭の態度に晴明は苦笑しながら、ここにある朽ち果てた骸たちについて告げる。

 

「はぁ、圭。別に俺がおかしくなったとかじゃねぇから……。ここは、地下墓所(カタコンベ)だよ」

 

「……カタコンベ?」

 

「そうだ」

 

 圭がおうむ返しに発した言葉に晴明は頷く。

 

「どうにも、あの洞窟はカタコンベ、というよりもここの上にある教会に繋がってたらしい。で、良いんだよなランプちゃん?」

 

「はいっ!」

 

 晴明の簡単な説明のあと、確認するようにランプに話しかけると、彼女は元気よく肯定の返事をした。

 そして、晴明の説明を引き継ぐように、今度は彼女が話しはじめる。

 

「私が以前、先生、えっと、アルシーヴに連れられてここに来たことがありまして……」

 

「そうなんだ……」

 

「ええ、ですので覚えがあったんです」

 

 そう言うとランプは、こちらです。と皆に告げて道案内を始める。

 勝手知ったるとばかりに自信満々に歩を進めるランプを尻目に、彼女以外の女性陣はおっかなびっくりといった様子でランプの後をついて行き、そしてその後を晴明が殿をつとめるように、念のため警戒をするように辺りを索敵しながら後に続く。

 

 ランプの先導で歩を進める晴明たち一行。

 しばらく進んだところで一行の目の前に昇り階段が見えてくる。しかし──。

 

「なんだ……? 何か上が騒がしいな」

 

「そうですね、宴でもやってるんでしょうか?」

 

「……っ! いや、違う。これは……。戦闘音だっ!」

 

 上の騒がしい様子に疑問をもった胡桃ときららは首を傾げていたが、耳を澄ませていた晴明は上から聞こえてくる音が剣撃や拳による殴打の音だと気付く。

 

「ちぃっ、皆急ぐぞ!」

 

「お、おいっ! 急にどうしたんだよっ!」

 

 急に上の階を目指して走り出す晴明の焦りように驚いた胡桃は、一体どうしたのか、と問いかける。

 その問いかけに晴明は簡潔に、素早く説明する。

 

「もし、教会に美紀──、直樹さんが捕らえられているとしたら、最悪、巻き込まれている可能性がある!」

 

「な、なんだって!」

 

 晴明の説明に大声を上げる胡桃。

 彼女の顔にも焦りが見え始め、慌てて彼の後を追う。

 そして他の面々もそんな二人を追いかける。

 

 急ぎ上の階を目指した晴明たちだったが、移動している最中急にバロウズが話しかけてくる。

 

《マスター!》

 

「どうしたバロウズ!」

 

《移動先にエネミー反応! 悪魔がいるわ!》

 

 バロウズの報告に晴明は、彼女に悪魔召喚プログラムの修復状況の確認を取る。

 

「っ! そうか……。悪魔召喚プログラムの解析、ならびに修復状態はっ!」

 

《完全には……。でも、一人だけなら、なんとか召喚できるわっ!》

 

 バロウズの悪魔召喚プログラムに関しての報告を受けた晴明は、朗報には程遠いものの、それでも最悪の状態よりはましだと安堵する。

 

「召喚できるだけ上出来だ。もしもの時は頼む!」

 

《オーライ、マスター》

 

「それじゃ、行くぞ!」

 

 そう言って晴明は戦闘が起きている場所へ突入する。

 晴明たちが突入した部屋、そこは礼拝堂のようになっており、そこには傷だらけになりながらも抵抗を続けているクロモンたちと、そして──。

 

「マグネタイトヲ、人間ノ女ヲヨコセェェェェッ!!」

 

「く、く~……!」

 

 クロモンたちに、彼らが守っている奥の部屋に向かって叫ぶ悪魔、邪鬼-オーガが戦っていた。

 それを見た晴明は、反射的にMAGを練り上げると床を踏みしめ、破砕しながら突撃。

 

「うわぁっ!」

 

「きゃっ!」

 

 後ろにいた胡桃や圭が飛んできた破片に驚きの声をあげる中、晴明はオーガに一瞬で近づくと。

 

「疾ィ!」

 

 そのままパァン! と、空気の壁を破る音を響かせながらオーガに蹴撃を浴びせる。

 意識外から蹴撃を浴びたオーガは踏ん張ることもできずに吹き飛ばされ、礼拝堂の壁に激突する。

 そして激突した衝撃で壁にめり込み、さらには老朽化していたのか瓦礫が、がらがらと落ちてくる。

 

 それを見ていたクロモンたちは、自身らを苦しめていた見たこともない化け物がなす術もなく吹き飛ばされる様子を見て、驚きに体を震わせている。

 クロモンたちと同じように驚いた様子で吹き飛んで瓦礫の中に埋もれたオーガを見ていた学園生活部だったが、彼女たちの見ている前で瓦礫が崩れると中に埋もれていたオーガが怒り心頭の様子で咆哮をあげる。

 

『ガアァァァッ!』

 

 オーガの咆哮を聞いたクロモンたちを含む全員はあまりの煩さに平衡感覚を奪われ、さらに音の衝撃波を受けた面々はたたらを踏む。

 その中で晴明だけが警戒していたのか、顔をしかめるだけに留め、油断なくオーガを見ていた。

 そんな晴明を見たオーガは、彼の左腕に装着されているガントレットを目敏く見つけると。

 

「デビル、サマナァァァァァ!」

 

 怒り冷めやらぬ様子で彼に突進してくる。そのオーガの様子に晴明も呼応するように突撃。

 オーガは手に持つこん棒を振り下ろし、晴明もまたそれを防ぎ、切り払うように倶利伽羅剣を逆袈裟に走らせる。

 

 そして、互いの得物が接触!

 轟音を響かせると、動画のコマ戻しのように腕が、得物が打ち据える前の位置に戻っていく。が、晴明はその衝撃を利用して体を一回転!

 続けざまに、今度は胴への薙ぎ払いに移行する。

 そのまま剣撃はオーガの胴へ吸い込まれ、切り裂く。が──。

 

「っ!」

 

 オーガの体を完全に切り裂くことはなく途中で止められる。

 それを見て血を吐きながらニヤリ、と笑うオーガ。

 何てことはない。ただ単に自身が持つ筋肉を鋼鉄のように凝固させ無理やり晴明の剣撃を止めたのだ。

 

 そして、自身の勝利を確信したのか、オーガはこん棒を天高く掲げるとそのまま振り下ろそうとする。しかし──。

 

「破、ぁぁあっ!」

 

 晴明は気炎を上げて、倶利伽羅剣を一閃!

 自身の能力にものを言わせて刃を無理やり押し進め、結果的にオーガを一刀両断する。

 

 そのままオーガの上半身と下半身は泣き別れ、上半身は地響きを上げながら倒れ伏し、下半身は仁王立ちのまま切断面から勢いよく血飛沫が飛ぶ。

 そして血飛沫が収まると、下半身もまた思い出したかのように、上半身とは逆方向に倒れるのだった。

 

 倒れ伏したオーガは信じられないとばかりに目を白黒させて、うわ言のように呟く。

 

「ハ、話ガ違ウ……。オレハタダ、女ガ喰エルト──」

 

 そこまで発した時点で限界だったのか、オーガは体を構成するMAGを撒き散らして魔界に送還される。

 それを見届けた晴明は倶利伽羅剣に付着したオーガの血を払うように幾度か振る。

 

「これで、終わりか?」

 

「──なにが、終わりだって」

 

 オーガを倒した晴明は、そう言って辺りを警戒するが、その時どこからともなく聞こえてきた声に嫌なものを感じて倶利伽羅剣で防御する。と、同時に倶利伽羅剣に()()かが当たり()()を散らす。

 

「晴明、さん……!」

 

 その一連の攻防を見た圭は、思わずと言った様子で声を荒らげてストラディバリを構える。

 圭の行動を確認した人影は、直ぐに晴明に蹴撃を浴びせるついでにその場から離脱する。

 なお、蹴撃自体は晴明に防御されて明確なダメージを与えることはできていなかったが……。

 

 そして、圭は晴明を攻撃した人影、さらに言えば()()()()()()()()自分の親友を監禁している、という()()相手に憎々しげに叫ぶ。

 

「──カルダモン!」

 

「やれやれ、とは言え──」

 

 圭に叫ばれたカルダモンも、ホンの一瞬困ったような顔をするが、クロモンの方を向くとどこか怒りを湛えた表情を見せる。

 

「これでも、あたしも怒ってるんだよ?」

 

「なにをっ!」

 

「クリエメイトだからって大目に見てたら、ここまで好き勝手する。なんてね」

 

 そこでカルダモンは満身創痍のクロモンたちを見る。

 そして、軽く見渡しただけだが、死んだクロモンがいないことを確認したカルダモンは晴明たちに気取られぬように軽く息を吐いたあと、苛立たしげに吐き捨てる。

 

「流石にここまでクロモンたちを痛め付けられて笑って許してあげるほどあたしは優しくないよっ」

 

 そう言いながら殺気の籠った視線を向けてくるカルダモン。

 その彼女の言葉で、全員とも彼女が勘違いしていることに気付いたが、その勘違いを訂正する前にカルダモンが襲い掛かってくる。

 

「今度は、手加減しないよっ!」

 

「──まったく!」

 

 再び、否、三度激突する晴明とカルダモン。

 目まぐるしく立ち回り、動き周りながら時に斬撃を、拳打、蹴撃を交えながら、まるで踊るように闘い続ける。

 

「シャァッ!」

 

「ちぃっ!」

 

 カルダモンの猛攻に防戦一方になる晴明。

 その理由は、カルダモンの気迫に多少なりとも圧されているのも原因だが、それ以上に──。

 

()()あの視線が現れた、だと! 一体どこに──)

 

 先ほど洞窟でも受けた、どこからともなく注がれる監視の視線。それが再び現れたことにより晴明の集中力が削られているのも要因の一つだった。

 その時、二人の闘いを止めるように、力のない鳴き声が二人の耳に聞こえてくる。

 

「く~……」

 

「クロモン、なにをっ!」

 

 晴明の前に躍り出た一匹のクロモン。

 そのクロモンはカルダモンの前に立つと、晴明を庇うように腕を広げて体をふるふる、と振らせる。

 そんな彼らの姿にカルダモンだけではなく、晴明たちも困惑するが、それでも晴明はこれがチャンスだと思い、バロウズに仲魔召喚の準備をさせる。

 

「バロウズ、召喚プログラム起動。対象はジャック!」

 

《了解! DDSプログラム起動!》

 

「なにを──!」

 

 急に晴明たちが行い始めた行動を警戒したカルダモンは、阻止するために行動を起こそうとするが、その前に彼らの前に魔法陣が描かれ、その中から人影が、外道-ジャック・リパーが現れる。

 

 魔法陣の中から正体不明の、しかも、コールでもオーダーでもない新たなる召喚法で現れたジャックを見て面食らうカルダモン、ときららたち。

 

「な、なん──」

 

「おねえちゃんたちをいじめるの、わたしたちが許さないよ!」

 

 狼狽えた声をあげるカルダモンに対して、ジャックは自身たちの仲のよい、特に友達である瑠璃の姉である悠里を傷つけようとしたカルダモンに敵愾心をもって突貫する。

 だが、そんなジャックに晴明は待ったの声をかける。

 

「待て、ジャック!」

 

「──おかあさんっ?!」

 

「あくまでも足止めだ! ……殺すなよ」

 

「……うぅ~! わかったよっ」

 

 晴明に念を押されたジャックは不満そうな声を上げながらも、彼の指示に従い行動を開始する。

 そのジャックを尻目に、晴明は先ほどからずっとこちらを監視している、鬱陶しい存在を探す。

 

(どこだ、どこにいる……)

 

 その間にもカルダモンとジャックの応酬、さらには急に現れたジャックを見て混乱している学園生活部に、それを諫めている圭と慈などの気配が感じ取れる。

 そして、その中に今まで感じ取れなかった違和感が──。

 

 それを感じた晴明は、その気配がいる場、カルダモンの後方に向けて突進する。

 その晴明の行動にカルダモンを虚を付かれて、防御体勢を取るが、晴明が自身を通りすぎたことで間の抜けた声をあげる。

 

「……えっ?」

 

 その隙を見逃すジャックではなく、さらなる功勢のために突撃する。

 

「──切り刻んであげるっ!」

 

「くっ──!」

 

 そんな二人を尻目に、晴明は何もない空間に倶利伽羅剣を振り下ろす。

 だが、振り下ろされた倶利伽羅剣は何もない()()の空間で火花を散らして、何かに受け止められる。

 

「BINGOだっ! はぁぁぁぁっ!!」

 

 そのまま晴明は気合いをいれて、受け止めた何者かを吹き飛ばそうとする。しかし──。

 

 ──ヌンッ!

 

 何者かの声が聞こえると同時に鍔迫り合いをしていた晴明は倶利伽羅剣ごと逆に吹き飛ばされる。

 

「なにっ!」

 

 そのことに驚く晴明だったが、すぐさま体勢を立て直すと着地し、自身を吹き飛ばした相手を見る。

 また、晴明が吹き飛ばされたことに驚いたカルダモンとジャックも、同じように彼を吹き飛ばした存在を見る。

 そこには──。

 

「クハハッ、流石は音に聞こえし悪魔召喚師-蘆屋晴明、楽しませてくれる。だがっ!」

 

 ──恐ろしい死の気配がする。

 

 それと同時にとあるモノが忽然と現れる。

 華美な装飾を施された騎士風の服に同様の帽子を被り、そして何よりも()の代名詞とも言える()()()()()()とエストックを構えた闘牛士に見える存在。しかし、ただの闘牛士とは違い、彼は──。

 

「ひっ!」

 

「が、骸骨っ!」

 

 そう、由紀と悠里が悲鳴を上げたように華美な衣装に身を包んだ異形。その名は。

 

「ふふふ、お初にお目にかかるお嬢様方! ──我が名は、魔人-マタドール! 血と喝采に彩られし最強の剣士! どうぞ、よしなに……」

 

 そう言って由紀たちに華麗に一礼するマタドール。

 そして、彼は挨拶を終えると再びカポーテとエストックを構えて、喜色を孕んだ声をあげる。

 

「偶然迷いこんだこの地で、これ程の猛者たちと出会えようとは! 貴公ら全員を討ち果たし、我が戦歴にさらなる彩りを加えるとしよう!」

 

 それだけを一方的に告げるとマタドールは、晴明たち全員に敵愾心を剥き出しにする。

 

 ──魔人-マタドールが襲い掛かってきた!

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