DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
晴明たちの前に現れた魔人-マタドール。
彼は、まずは小手調べと言わんばかりに、疾風のような速さでカルダモンへ攻撃を仕掛けようとする。だが、その前に彼の邪魔をするように割り込む影が一つ。
その影、晴明は倶利伽羅剣でマタドールのエストックを跳ね上げる。
自身の邪魔をされたマタドールは、どこか忌々しげに、そしてどこか楽しげに晴明に話しかける。
「ククッ。今の私の相手は貴公ではなく、そこなお嬢さんだ。邪魔しないでもらおうか」
そのマタドールの様子を見た晴明は皮肉げに笑うと、彼の言葉を拒否する。
「はっ、残念ながらな。俺は悪魔召喚師でお前は悪魔。そして、互いに同じ世界の者たちがいる状態で、他の者たちに、己の世界の闘いを押し付けるほど、俺は耄碌はしてないんだよっ!」
そう晴明はマタドールに対して啖呵を切る。それをマタドールは自身に対する挑戦状と受け取ったのか、マタドールは楽しげにカタカタと髑髏を震わせながら笑い、ならば、と晴明に告げる。
「先に貴公を片付けて、その後ゆるりと楽しむとしよう!」
「はっ! お楽しみの前に終わらせてやるよっ!」
互いが互いを挑発するように煽ると、二人の姿が、ふっ、と消えて、次の瞬間には激突!
二人ともが剣閃を走らせ、火花を散らしていく。
次にマタドールが現れた時、左手に持つ『赤のカポーテ』を翻して高らかに声を発する。
「貴公にこの私の魂、触れることすら能うまい!」
そう言いながらマタドールはカポーテを盾のように前に構えると、カポーテから風がマタドールに纏わりつき、先ほどの動きがまるで児戯であったかのような掴み所のない、そして素早い動きをはじめる。
それはまるで、晴明を闘牛に見立て、マタドールは今から貴公を殺すぞ。と宣言しているようにも見えた。
晴明はそのマタドールの行動──恐らくスキルだろうが──に心当たりがあった。
──赤のカポーテ。
魔人-マタドールの代名詞とも言えるスキルの一つで、その効果は自身に命中・回避補正の
即ち、今のマタドールには生半可な攻撃はそもそも当てることも、そしてマタドールの攻撃を回避することも難しくなった、ということだ。
……無論、このまま何も対策をとらなければ、という前提であるが。
「早々やらせるかよ! バロウズ!」
《オーケー、マスター。いつでも出せるわよ!》
二人のやり取りの後、晴明の手にはいつの間にか一つの石らしきものが握られていた。
「そぅら、プレゼントだ!」
「なにっ、ぐおぉっ!」
晴明がマタドールに投擲した石が砕けると眩く発光し、そして、マタドールに纏わりついていた風が霧散する。
晴明が投げた石。それはデカジャの石と呼ばれ、その効果は対象のバフをすべて解除する、というものだった。
さらに晴明は畳み掛けるように一つの魔法を行使する。
「もう一つおまけだっ! アンティクトン!」
晴明が力ある言葉を唱えると同時にマタドールの頭上に禍々しい光が集まっていき、その光がマタドールに降り注ぐ。
「ぐ、ぎぃっ! ……なん、だ。体が重く!」
──アンティクトン。
それは、敵対者を攻撃すると同時にあらゆる能力に対して
それをまともに食らってしまったマタドールは、ダメージを負うと同時に弱体化にもかかってしまったのだった。
「な、めるなぁっ!」
晴明によるデバフを食らったマタドールだったが、気炎を吐くと彼もまた魔法を行使する。
「デクンダぁ!」
マタドールが魔法を唱えると、彼の眼前に光の幕が形成され、そして弾ける。
マタドールが唱えた魔法【デクンダ】はデバフを解除する魔法であり、それを使って弱体化を消したマタドールは、これ以上晴明に余計な行動をとらせないために即座に突撃する。
「雄ォォォォォォォ!」
マタドールは雄叫びを上げながら、晴明に対して神速の突きを繰り出す。
晴明はその突きに対して倶利伽羅剣の刃をあわせて、火花を散らしながら攻撃を反らす。
「疾ィ!」
今度は晴明がお返しとばかりに、マタドールの攻撃を反らした衝撃を利用して逆袈裟で斬りかかる。が、マタドールは晴明が斬りかかるより前にバックステップで攻撃の間合いより離れる。
二人の間合いが離れたことにより、闘いは必然的に仕切り直しとなる。
そして、そのタイミングで晴明は圭に語りかける。
「圭、皆を連れて逃げろっ!」
「えっ……?! でも、蘆屋先生!」
「いいからっ! ……いや、待て」
晴明は、そのまま圭と押し問答をしそうになるが、その最中、先ほどの光景、クロモンとオーガのやり取りを思い出す。
その中で、オーガはクロモンに対して、女を寄越せ、と言っていた。それはつまり──。
「クロモンたちが守っている部屋の中へ避難しろ!恐らくそこに、美紀がいるはずだっ!」
「……えっ?」
「……っ!」
晴明の言葉を聞いた圭は、急な言葉に呆然とするが、近くにいるカルダモンの反応でそれが事実だと理解する。
しかし、カルダモンはそれを是とはせず、妨害しようとするが。
「流石にそれを許すわけには──」
「今は、そんなことを言っている場合じゃない!」
カルダモンが最後まで言う前に、晴明に一喝される。
そのことに驚くカルダモンだったが、晴明はそんな彼女を無視してジャックに声をかける。
「ジャック! 他にも悪魔がいる可能性があるから、お前は皆の護衛にあたれ!」
「うんっ! わかった!」
ジャックは晴明の指示に元気よく返事をすると、すぐ近くにいる敵対していたはずのカルダモンの手を引っ張っていく。
まさか、ジャックがそんな行動をすると思っていなかったカルダモンは驚きに目を白黒させる。
「ちょっ?! ちょっとまち──」
「ほらほら、早くっ!」
驚きながらも文句を言おうとしていたカルダモンだが、ジャックはそんなことはお構いなしに彼女を引っ張ってクロモンたちが守っていた部屋へ行く。
クロモンたちも、ジャックの妨害をするべきか悩んだようだか、上司であるカルダモンがいることと、何よりジャックと敵対しても勝てないと本能的に悟ったのか妨害するどころか、逆に部屋へと招き入れていた。
全員──カルダモンも含めて──の避難を確認した晴明は、なぜか静かに待っていたマタドールと改めて相対する。
「まさか、ちょっかいを出さずに待っているとはな」
「よくも言う。貴公を無視して動こうものなら、これ幸いと横槍をいれる気であったろうに」
晴明のどこか嘲る言葉に、マタドールは忌々しげに吐き捨てる。
それを聞いて晴明は、バレていたか。と薄く笑う。
「流石に、そこまで甘くはないか」
「当然であろう? それに、ここからは私も容赦せんぞ!」
「それはこちらも同じだ!往くぞぉ!」
そのまま二人は再び激突するのだった。
一方その頃、クロモンたちが守っていた部屋に入った圭たちが見たものは、特殊な檻に入れられていた美紀と、その周囲で守りを固めていた、先ほどとはまた別のクロモンたちであった。
美紀は特殊な檻、クリエメイトを隔離するための専用のものであるクリエケージの中から仲間である学園生活部の姿を確認して安堵のため息を付く。が、次の瞬間には驚きで目を見開く。
彼女の視線の先、そこには──。
「け、い……?」
──生きていれば、それで良いの?
そう言って美紀の前から姿を消した圭がいたからだ。
そして、美紀は無意識のうちにはらはらと涙を流す。親友が生きていたことに、再び再会できたことに。
「美紀……」
涙を流す美紀を見て、言葉を詰まらせるカルダモン。
彼女も聖典で圭に関する美紀の悔恨、慟哭を知っているからこそ言葉に出せないのだろう。
その間にも美紀は己を閉じ込める檻の柵をガシャガシャと鳴らしながら、圭に、そしてカルダモンに懇願する。
「けいっ! ──カルダモンさん、ここから出してっ! 私、わたしはっ……!」
「みーくん……」
普段の美紀の冷静沈着さからはまるで想像できない醜態に、由紀は驚きと、そしてどこか悲しげな表情を見せて呟く。
カルダモンは彼女の切羽詰まった様子を見て、ほんの少し悩む素振りを見せるが、すぐにため息を吐いてクロモンに話しかける。
「クロモン、開けてあげて」
「く~……?」
「いいから」
カルダモンの言葉に、本当にいいの?とでも言うように小首に傾げるクロモンたちに対し、カルダモンは問題ないとでも言いたげに再度開けるように急かす。
カルダモンの言葉を聞いたクロモンは、ラジャとでも言うように飛び上がると檻の鍵を開ける。
扉が開け放たれると美紀は足を縺れさせるように駆け出し、圭の胸元に抱きつく。
そして、美紀は圭にぎゅ、と抱きついたまま、涙で声を震わせながら彼女に話しかける。
「けいっ、ぶじで、よかった。……わたし、ね。いきてて、いいことあった、よっ」
圭はそんな美紀の声を聞きながら、慈しみの表情を浮かべて彼女の頭を優しく撫でる。
今、美紀が抱きついている圭は、並行世界の祠堂圭であり、彼女の本当の意味での親友ではない。
そして、彼女の本当の親友は、ランプの話ではもう……。
だが、それでも、圭の口から本当のことを言うのは憚られた。
真実が必ずしもその人のためになる、というわけではないし、世の中には知らなくて良い、知らない方が良い、といったことは往々にしてある。
例えそれがすぐにバレることであっても、それでも──。
「きっと、私は間違ってるんだろうけど、でも──」
「……け、い?」
例え泡沫の夢であろうとも、圭は彼女を傷つけたくなかった。だって、彼女は、美紀は、世界が違うとは言え自身の親友であることに、かわりはなかったのだから。
そう思い、未だに涙を流す親友を慰めるために、ぎゅ、と抱きしめる圭。
彼女に抱きしめられ、彼女の体温を、彼女が確かにここにいる、ということを感じられた美紀は、心の中にあたたかい気持ち、安心感を感じて少しずつ精神を落ち着かせる。
しばらく抱き合っていた二人だが、美紀が落ち着いてきたこともあり、どちらからともなく離れる。
そして、美紀がなにごとかを圭に話しかけようとするが。
「ねぇ、けい──」
そこで美紀の唇に圭の指が止まる。そのことに驚いて話すのをやめる美紀。
そんな彼女に圭は微笑みかけながら話しかける。
「みき、ちょっと待って、ね? ……今は、まだしないといけないことがあるから」
美紀にそう告げると同時に彼女から視線を外し、真剣な表情で礼拝堂に続く扉を見る圭。
そして、次に圭はカルダモンを見ると、彼女に問いかける。
「カルダモンさん。あの扉以外に、ここから脱出する経路はありますか?」
「けい……?」
圭の質問に不思議そうな顔で彼女を見やる美紀。
それとは対照的にカルダモンは真剣な表情で、彼女の質問の真意を問う。
「圭、きみはここが、まだ危険だと思ってるんだね?」
「……はい」
「それは、あの骸骨がいるから?」
カルダモンの質問に、圭は言葉を発することなく、首肯することで答える。
そして、圭はカルダモンを急かすように先ほどの質問の答えを求める。
「あの骸骨の、魔人については道すがらでも話します。だから、今は脱出経路があるのか、ないのかを──」
「ないよ」
「えっ……」
「残念ながら、ここは別に軍事施設というわけじゃないから、隠し通路なんてものは、ね……」
カルダモンは言いづらそうな顔をしながら問いに答える。
「そう、ですか」
カルダモンの答えを聞いた圭は残念そうにそう呟く。
そして銃型の機械、GUNPを引き抜くとそれを見つめて意味ありげに小さく呟く。
「……もしもの時は、力を貸してね。太郎丸」
そんな圭の様子を、美紀は不思議そうに見つめていた。
銀閃が幾重にも煌めき、 交差する度に火花が散る。
銀閃の、剣閃の主である晴明とマタドールは、まるできめられたかのように舞踏を舞う。
今でこそ観客がいないが、もしいたとするならば、美しい。芸術的だ。と、評したかもしれない。
それほどまでに二人の闘いは洗練され、互いに息のあった、否、必殺の意志をもって繰り出される攻撃と、それを防ぐ防御の連続は美しかった。
マタドールが晴明の心臓目掛けて突きを繰り出す。それを晴明は弾く。
弾いたことで体勢を崩したマタドールに向かって、晴明はメギドファイアの引き金を引く。
発射された弾丸をマタドールは仰け反ることで躱し、そして、それと同時に躱した勢いそのままに、コマのように廻りながら足払いを仕掛ける。
その足払いを跳躍して躱すと、連動して晴明は落下するエネルギーすら利用した唐竹割りを放つ。
しかし、マタドールは晴明が踏ん張りの効かない空中にいることをこれ幸いとして、悪魔の、魔人の膂力にものをいわせて防ぐと同時に吹き飛ばす。
だが、吹き飛ばされたとしてもダメージはないのか、晴明は軽やかに身を翻すと着地する。
尤も、ダメージはなくとも衝撃は凄まじかったのか、着地した後も減速できずに、滑るように後退していたが。
そして二人の距離が離れたことで何度目かの仕切り直しになる。
そう、何度目かの、だ。
先ほどから晴明とマタドールは何度かの競り合いの後に、片方を吹き飛ばしての仕切り直し、それを何度も繰り返していた。
そのことに焦れたのか、マタドールは晴明に対してとある提案をする。
「このままでは埒があかんな。……なぁ、蘆屋晴明よ。このままでは千日手にしかなるまい? だから、ここはお互いの最も得意とする一手で決着を付けないか?」
マタドールの提案にしばし悩む晴明だったが、決心がついたのかマタドールの提案に乗ることにする。
「良いだろう、後悔するなよ……?」
そう言うと晴明は倶利伽羅剣を腰だめに構えて、気合を入れる。
マタドールもそれに応えるようにエスパーダの切っ先を晴明に向けると自身のMAGを練り上げる。
そして、互いが互いに対して、突撃体制に入る。
「空間──」
「血の──」
技名を口に出すと同時に両者突撃を開始する!
「──殺法っ!」
「──アンダルシア!」
晴明の得意技である、数多の斬撃を走らせる物理スキル【空間殺法】と、マタドールのもう一つの代名詞たる神速の突きを幾度となく繰り返す物理スキル【血のアンダルシア】が激突する!
二人のスキルがぶつかるとあちこちで衝突の衝撃が、空間が破裂する音が響く。
そして、その衝撃はもちろん、放った本人たちをも飲み込み、吹き飛ばされていくのだった。