DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第四十四話 相談

 赤伯爵や黒男爵との会談が終わった翌日。晴明は自身に宛がわれた部屋でガントレットを操作しながらバロウズと話し込んでいた。

 

「それでバロウズ。悪魔召喚プログラムの方に異常はないか?」

 

《ええ、大丈夫よマスター。修理も終わったし、今のところ問題なく稼働してるわ》

 

「それは良かった」

 

 そう言って安堵のため息を吐く晴明。

 そんな晴明を見て笑うバロウズだったが、ふと気になったことを晴明に話す。

 

《そういえばマスター? まだジャンヌに連絡していなかったわよね?》

 

「ん? あぁ、そういえばそうだな」

 

《今からでも連絡した方が良いんじゃないかしら? ほら、多分あの子から朱夏ちゃんに行方知れずになった連絡がいってるだろうし……》

 

 バロウズからの提案を聞いた晴明は、確かにと頷く。そしてそのままバロウズにジャンヌと通信を繋ぐように告げる。

 

《オーライ、それじゃ繋ぐわね》

 

 バロウズの返事の後、すぐに通信がはじまるがそれと同時にジャンヌの大声が部屋に響き渡る。

 

[マスター、ご無事ですか!!]

 

 彼女の声の大きさに思わず耳を塞ぐ晴明。

 しかし、今回の通信が映像を写すタイプのものではなかったためにジャンヌは晴明の行動を把握しておらず、彼の返事がないことから何か問題があったのか、と心配してさらに声を張り上げる。

 

[マスター! ……マスター?! 返事をしてください!]

 

「そんなに叫ばなくても聞こえている。というよりも耳が痛いから声量を下げてくれ」

 

[あっ、すみません……。でも無事で良かった]

 

 晴明の声を聞いたジャンヌは、彼の苦言に最初恥ずかしそうに、しかし、声を聞いたことで無事だと分かったようで安心しているようだった。

 そして、安心した雰囲気を発しているジャンヌの声を聞いた晴明もまた、彼女に謝罪の言葉を述べつつも自身の無事を伝える。

 

「済まないな、心配をかけたようだ。だが、こちらは五体満足なのでな、安心してくれ」

 

 そういうと晴明は自身に何が起きたのかを説明していった。それを聞いたジャンヌは。

 

[……正直、驚きました。まさか、異世界に召喚されて、その場所に聖典世界、でしたか。その世界の美紀さんたちがいたなんて]

 

「ああ、それには俺も驚いたよ」

 

[しかも、マスターは聖典世界のことも、私たちの、メガテン世界と同じようにご存じだった、と?]

 

「ご存じ、と言えるほど詳しくはないんだがな。精々、名前と触り程度を知っていたくらいで」

 

 その言葉を吐いた後、晴明はため息を吐いて、それに、とさらに言葉を続ける。

 

「もし、すべてを知ってたのなら、こんなことになる前に手を打ってたさ。……まぁ、ただでさえゾンビパンデミック物にメガテン要素までぶっこんであるこの世界で、どこまで効果があるかは分からないが、ね」

 

 晴明の言葉とともに部屋の中に重苦しい沈黙が落ちる。

 そして、その沈黙を破るように晴明はジャンヌに話しかける。

 

「そういえば朱夏のやつは大丈夫なのか?」

 

 晴明の言葉で、朱夏に対して晴明が行方不明になったことを報告していたのを思い出したジャンヌは、ハッと息を呑み、そして。

 

[確かに、あの娘に伝えないと! すぐに戻りますね!]

 

 その後、慌ただしく扉を閉める音が聞こえる。朱夏を呼びに行ったのだろう。

 そんなジャンヌの様子に晴明は。

 

「……いや、そこまで慌てなくとも」

 

 と、呆れたようにこぼすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

[それで、晴明さんたちは無事に帰ってこれた、と]

 

「まあ、そう言うことだな」

 

[……とにかく無事で良かった]

 

 ジャンヌが慌てて呼びに行ってから、そう時を待たずに二人は部屋に着いたようで、朱夏の緊迫した声を聞いた晴明は彼女を安心させるために事情を説明していた。

 それを聞いた朱夏はようやく安心できたようでホッとした声色を滲ませている。

 そうして一安心していた朱夏だったが、そうなると今度は彼の説明に出てきた聖典について多少の好奇心が湧いてきたのか、そのことについて質問する。

 

[そういえば、さっき言ってた聖典なのだけど]

 

「うん? それがどうかしたのか?」

 

[それに私や晴明さんは出てきてたのかしら?]

 

「あ~、それなぁ……」

 

 朱夏の質問を聞いた晴明は、面倒な質問が来た。と言わんばかりに頭をがしがしと掻く。

 そして本当に話すべきが悩む晴明だったが、この色んな意味で勘の良い一番弟子なら、言わなくてもいずれ自力で真実に辿り着く可能性が高いと思い、それでショックを受ける前にこちらで種明かしをすべきと考えると、そのまま彼女の望み通りに答えを言うことにした。

 

「まぁ、まず結論から言うと俺やライドウ(朱音)は存在しなかったようだが朱夏、お前は聖典に記述されてたみたいだぞ」

 

[そ、そう……]

 

 晴明の答えを聞いた朱夏は想い人(晴明)親友(朱音)が存在していなかったことに残念そうな声で返事をする。

 だが、そこで二人が存在しないのに自身が存在する、という事実に彼女は不思議そうな声をあげる。

 

[晴明さんや朱音がいないのに、私はいるの……?]

 

「あぁ、あの子。ランプという子だったけど、あの子の反応だと少なくとも朱夏は確実に存在してたみたいだぞ。……まぁ、お前の名前を聞いた時に、思い切り顔を引きつらせていたが」

 

[……え?]

 

「まぁ、理由を予測できるといえば予測できるが、な」

 

[そう、なの?]

 

 ランプが朱夏の名前を聞いた時、()()で顔を引きつらせていた理由を予測できると言った晴明に、疑問の声をあげる朱夏。

 だが彼女は晴明からその理由を聞いて後悔することになる。

 

「俺たちとお前が出会わなかったということは、お前の性格の矯正がされなかった、ということでもあるわけで──」

 

[え゛……]

 

「まぁ、なんだ。色々と調子に乗ってやらかしたんだろうなぁ……」

 

[──あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁあ゛っ!!]

 

 晴明が遠い目をしながら告げた言葉を聞いた朱夏は、トラウマを刺激されたのか、奇声をあげる。

 そして直後に何かが倒れる音と、ごろごろと転がる音が聞こえてきたことから彼女がのたうち回っていることを予測した晴明は深々とため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 そうして暫く発狂していた朱夏だったが、さらにもう少しの時間が経った後に正気を──いい加減焦れたジャンヌにぶん殴られたことで──取り戻していた。

 因みに、通信越しなので晴明たちに見えていないため気付いていないが、手甲を着けたジャンヌにそのまま殴られたことから、今彼女の頭には立派なたんこぶが出来ていた。

 まぁ、仮にそれに気付いたとして、晴明がそのことを指摘すると再び朱夏が発狂して元の木阿弥となってしまうために、敢えて指摘はしなかっただろうが……。

 

 それはともかくとして、晴明は自身がエトワリアに召喚されていた間、彼女たちに何かあったか情報交換しようとするが、その前に朱夏から質問が飛んでくる。

 

[そういえば晴明さん、めぐねえは無事だったの?]

 

 その質問を聞いた晴明は、そういえば彼女に報告するのを忘れていたことに気付いて、謝罪しながら彼女が無事であることを告げる。

 

「あぁ、そういえばここに来てからも忙しくて報告するのを忘れていたな、すまん。佐倉慈教諭は無事だったよ。……まぁ、今回のエトワリア召喚騒動にも巻き込まれたんだが、そちらでも怪我は負っていない。五体満足というやつだ」

 

 それを聞いた朱夏はホッとした感情を声に乗せて呟く。

 

[そう、なんだ。良かった。()()()()無事だったのね……]

 

「……やっぱり?」

 

[ええ、実は……]

 

 そうして朱夏は、なぜ自身が慈の無事を知っていたのか、晴明がいない間に来訪した聖霊と大天使-ガブリエルについて説明していく。

 そのことを聞いた晴明は、あまりの驚きに暫く絶句していたが、なんとか精神を再構築させると言葉を絞り出す。

 

「…………それは、本当に聖霊、あの唯一神だったのか?」

 

[ええ、間違いありません。あの力、あの輝き、あの神聖さ。間違いなく主の、主に連なるものでした]

 

 晴明の出来れば間違っていてほしい。という望みを掛けた問い掛けに、しかし、ジャンヌが彼の心に絶望をもたらすように否定する。

 それを聞いた晴明は、急激に痛くなる頭を押さえながらぽつり、と呟く。

 

「あの子たちの前に現れたルシファーだけじゃなくて、今度はあの聖四文字が、しかも現世に降臨だって? …………本当にどうなってやがる」

 

 下手すれば真・女神転生の東京沈没や、真・女神転生Ⅱのメギドアーク以上の事態が起きるのではないか、と考えて、晴明はさらに頭を抱える。

 そして、晴明が頭を抱えるもう一つの要因。

 

「さらにいえば朱夏たちのもとへ向かう前にあの子たちに接触していた? 恵飛須沢さんはルシファーだけじゃなくて、聖四文字にも見初められてた可能性があるってこと、なのか?」

 

 どんだけ才能に溢れてたんだよ。と、思わず毒づく晴明。

 だが、晴明はすぐに頭を振って、嫉妬にも似た感情を追い出すとジャンヌに話しかける。

 

「それで? その後、聖四文字はどうしたんだ?」

 

[それが、そちらの学園生活部、でしたか。彼女たちの手紙を渡し終えると役目は終わったとばかりに飛び去ってしまって……]

 

「現在、行方不明、と……。出来ればそのまま魔界か、やつ自身の世界に帰ってるとありがたいんだがな……」

 

[あはは…………]

 

 晴明の疲れたような物言いに力ない笑い声をあげるジャンヌ。

 しかし、晴明のそんな願いも空しく、後に由紀が嬉々として『アルノー・鳩錦が帰ってきたんだよっ!』と、聖霊を連れてきて度肝を抜かされる羽目になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、屋上では悠里が家庭菜園に新たに植えた野菜たちの世話に精を出していた。

 そして一通りの世話が終わったのか、彼女は額の汗を袖で拭いながら眩しそうに快晴の空を見る。

 そんな彼女の耳にぎぃ、と校舎へと繋がる扉が開く音が聞こえてくる。

 

 誰か来たのかな? と、入り口を見る悠里。

 そこには、いつもは天真爛漫な、しかし今はそれを感じさせない真剣な表情を浮かべる一人の少女の姿があった。

 その姿に違和感を覚えたのか、悠里は思わずと言った様子で彼女の名前を口走る。

 

「……ゆき、ちゃん?」

 

 悠里に名前を呼ばれた由紀は、真剣な表情を崩さないまま彼女に話しかける。

 

「りーさん、ううん、若狭副部長。ちょっと良いかな?」

 

 由紀の真剣な様子に、悠里もまた背筋を正して返答する。

 

「どうかされましたか、丈槍部長」

 

「野菜の世話をしてるとこ悪いんだけど、少し付き合ってほしいんだ」

 

「……付き合う?」

 

「うん」

 

 そう言いながら悠里の後ろ、屋上のプールの近くの()()()()()()()を見据える由紀。

 そんな由紀を悠里は不思議そうに見つめるのだった。

 

 

 

 

 悠里に少し付き合ってほしい。と約束を取り付けた由紀は、彼女の手をきゅ、と軽く握ると悠里には()()()()()()()()()()()()()、しかし、彼女には蒼く輝き、同じく輝く蝶が屯する扉の前に移動する。

 そして彼女は徐にスカートのポケットをまさぐると以前イゴールに貰った『契約者の鍵』を──但し悠里にはポケットをまさぐったにも関わらず、なにも手に持っていない、と不思議な行動をしているように見える──取り出して軽く念じる。

 すると、二人は一瞬意識が遠退くとともに次の瞬間。

 

「……えっ! こ、ここは? ゆきちゃん?!」

 

 そう言って驚き辺りを見渡す悠里。

 彼女たちが立つ場所は、先ほどまでのさんさんと照らす太陽の光を浴びていた屋上ではなく、辺り一面が蒼く染まった教室、即ちベルベットルームであった。

 すると、二人の耳に、由紀には何度か聞いた馴染みのある、悠里には甲高い、どこか威厳を感じつつも愛嬌のある声が聞こえてくる。

 

「これはこれは。よくぞお越しいただきました由紀さま。本日は、ご友人もご一緒ですかな?」

 

 その声が聞こえてきた方向を向いた悠里は思わずくぐもった悲鳴をあげる。

 

「……ひっ!」

 

「ふふふ、これはこれは。失礼いたしました。ワタクシの姿は刺激が強すぎましたかな?」

 

 そこにはがっしりとした体格ながらも枯れ木のような腕をして、鷲鼻に血走りギョロリと目を見開いた異形──。

 

「ワタクシの名はイゴール。精神と物質、夢と現実との狭間にある場所。『ベルベットルーム』の主をしております。以降も会うかは存じ上げませんが、コンゴトモヨロシク」

 

 部屋の主たるイゴールの姿があった。

 茶目っ気のある挨拶をしたイゴールであったが、そこで彼を嗜めるように、第三者の声が響く。

 

「──主、女の子を驚かせるようなことをするのは、あまり感心できませんよ?」

 

「ふふふ、永く生きていると、こういったことでしか楽しみを見いだせないものでして、ご容赦頂きたい」

 

 そんなやり取りをするイゴールと第三者。

 その第三者を見た悠里は、声に聞き覚えもあったこともあり驚きの声をあげる。

 

「……! め、めぐねえ?!」

 

 その驚きの声を聞いた第三者、佐倉慈と瓜二つの姿をした女教師はまたか、と嘆息する。そして──。

 

「私はめぐねえ様ではなく、お客様。丈槍由紀さまの案内役を勤めるリディア、と申します。コンゴトモヨロシク」

 

 と、悠里に対して名乗りをあげる。

 それを聞いた悠里は、彼女こそが以前、由紀が寝惚けた時にめぐねえと間違えた人物であると知る。

 そして、由紀が間違えたことに納得しつつも驚きの表情を浮かべつつリディアと由紀を交互に見る悠里。

 そんな悠里を見て苦笑する由紀だったが、すぐに真剣な表情を浮かべると彼女に話しかける。

 

「今回、りーさんをここに連れてきたのはこの場所と二人を紹介したかったのと、もう一つ」

 

「もう一つ……?」

 

「今後も私はちょくちょくここに来ることになるから、その時に外の方のフォローをしてほしかったからなんだ」

 

「フォロー? ……ゆきちゃん?」

 

 由紀のフォローという言葉に不思議そうに首を傾げる悠里。

 そこでイゴールから説明が入る。

 

「ここは先ほども言ったように、精神と物質、夢と現実との狭間にある異空間なのです。そしてこの空間にはお客様がたには()()のみでお越しいただいているため、現実でのお客様がたは、傍目には放心しているように見えるのです」

 

 尤も、この空間と現実とでは時間の流れが違うために、どんなに長くとも一分程度で正気に戻っているように見えるはずですが、とさらに告げるイゴール。

 その説明で由紀が自身に何をさせたいのか、朧気ながら理解した悠里は一言。

 

「つまり、私にゆきちゃんがここにきている合間、邪魔されそうになったら、それとなく邪魔されないように誘導しろ、ということで良いのかしら?」

 

「うんっ! そう言うことになるよねっ」

 

 そこではじめて由紀がいつものように天真爛漫な笑顔を見せる。

 それを見た悠里はホッとしたような、同時にどこか疲れたような笑顔を見せると一言。

 

「その代わり約束してゆきちゃん」

 

「どうしたの、りーさん?」

 

「絶対に無茶はしないこと!」

 

 人差し指を立てながら真剣な表情で詰め寄る悠里に対して、由紀はおどけるように敬礼で返す。

 

「らじゃっ!」

 

 そんな二人をくすくすと笑いながら見ていたリディアは、悠里を安心させるように話しかける。

 

「ふふっ、安心なさってください、りーさん様。これでも私や主は()()()()腕が立つと自負しております故、ここであればゆきさまの身に危険が及ぶことはない、と断言いたします」

 

 そんなことを言うリディアに対して、自身が自己紹介をしていないことに気付いた悠里は最後に一言。

 

「あぁ、えっと、挨拶が遅れました、私は若狭悠里と言います……」

 

 と、恥ずかしげに告げるのだった。










 ()()()()腕が立つ。

 超越者-イゴール Lv180
 力の管理者-リディア Lv99



 蘆屋晴明 Lv75
 唯野=アレクサンドラ Lv68

 神持朱夏 Lv30
 丈槍由紀 Lv19
 祠堂圭 Lv13
 直樹美紀 Lv10
 柚村貴依 Lv4


 恵飛須沢胡桃 Lv??
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