DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第四十五話 外の世界 その1

 ガントレットの整備途中に朱夏たちに連絡した晴明は、連絡終了後に全員で集まった時、由紀がアルノー・鳩錦(聖霊)を連れてきたことで一悶着あったものの、今は平穏を取り戻していた。

 しかし、それでも空気が少し悪くなっていたこともあり、その空気を払拭するように貴依がアレックスに話しかけていた。

 

「なぁ、アレックス。そういえばさ、お前、ジョージさんと一緒に職員室のパソコンとかネットの修理やってたろ? あれ、直ったのか?」

 

 突然話しかけられたアレックスは吃りながらも彼女の質問に答える。

 

「え、えっ、あ、はい。なんとか──」

 

《取り敢えず、最低限ネットに繋がる程度には復旧しているよタカエ》

 

 アレックスの答えに追従するようにジョージがネット環境が復旧したことを告げると顔を輝かせる貴依。

 

「それじゃあ動画とかも見れるんだな!」

 

「ええ、まぁ……」

 

 そう言いながら視線はアルノー・鳩錦に釘付けになっているアレックス。

 彼女としても胡桃が気に入っていた鳩が、まさかメシア教の首領とは思わず困惑しているようだった。

 貴依自身もそんなアレックスの様子には気付いていたが、敢えてそれに触れることはせず、それでも彼女を元気付けるためにテンションをあげて話しかける。

 尤も、それ以上に彼女自身もこれからする提案に興奮していた、という事実もあるのだが。

 

「ならさ! 早速見てみようよ! 上手くいけば巡ヶ丘の外の、外の世界の状況が分かるかもなんだからさ!」

 

 その提案に思わずといった様子でざわめく晴明を除く他の面々たち。

 特に、以前晴明に結界関連の話を聞いて、外の、少なくとも日本が無事であることを知る元秘密基地のメンバーたちは、今、政府がどのような対応を取ろうとしているのか気になるようでそわそわしている。

 晴明自身もライドウ(朱音)経由で外の情報を仕入れること自体は可能であるが、彼女自身が重要人物であるため、そうそう連絡を取るわけにもいかない──但し、朱音本人としてはもうちょっと頻繁に連絡をしてほしいと思っている──ということもあり、そういった情報収集もアリだとは思っていた。

 

「なら、まずは皆で職員室に移動だねっ! ごーごー!」

 

 貴依の提案に反対意見がないと判断した由紀は明るい調子でそう告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 貴依の提案で職員室に移動した由紀たち。

 だが、ここで晴明がふと疑問に思ったことを口にする。

 

「そういえば、こういった職場にあるパソコンってインターネットに対しての閲覧制限とかが掛かってると思うんだが、そこら辺は大丈夫なのか?」

 

「えっ、そうなの? はーさん」

 

「無論、全ての職場がそうとは限らないけど、こういうのも経費が掛かるからな。だから私用で使わないように閲覧制限を、ってところは多いと思うぞ」

 

 その晴明の答えを聞いた由紀は、ショックを受けたように目が点になる。

 そして頭を抱えるとどうしよう、と唸りだしてしまった。

 そんな由紀の肩をアレックスがぽんぽん、と叩く。

 叩かれた由紀はアレックスを見るが、そのアレックスは苦笑して。

 

「その点なら大丈夫ですよ、ゆきさん。取り敢えず一台だけですけど、状態の良いパソコンの制限は解除してありますから。……したのはジョージですけど」

 

「おおーー!! すごい、あーちゃん、ジョーさんお手柄っ!」

 

「あ、あはは……」

 

《ジョーさん、とは私のことか……?》

 

「まぁ、俺もはーさんって呼ばれてるし、そういうことなんだろうなぁ」

 

《別に異論がある、という訳ではないのだが。AIにまで渾名をつけるとは、ユキは変わっているな》

 

「そう? ジョーさんだって、あーちゃんと同じく学園生活部の仲間なんだから。私は皆で楽しくやれた方が良いと思うんだよっ! ──学園生活部心得、第四条。部員はいついかなる時も互いに助けあい支えあい楽しい学園生活を送るべしってね」

 

《そうか。私も仲間、か……》

 

 由紀が笑顔で告げた言葉を聞いたジョージほ感慨深げに呟く。

 彼に、否、彼とアレックスにとって仲間と呼べる存在は、ほぼ、それこそかつてシュバルツバースに逆行転移する前の地獄のような未来世界にしかいなかったのだから仕方ないだろう。

 その仲間たちにしても、二人がシュバルツバースに転移する前に全滅してしまったが……。

 

《──どうやら我らは良き仲間を得たようだなアレックス》

 

「ふふ、そうね。ジョージ」

 

 感慨深げに喋りかけるジョージに対して、アレックスもまた嬉しそうにはにかみながら答える。

 彼女にとっても、心許せる友がいるということは、やはり嬉しいのだろう。

 だが、いや、だからこそアレックスの中で去っていった胡桃の存在がしこりとして残っている。

 

 ──もしも、先輩が【覚醒人-ヒメネス】と同じような存在になっていたら、私は……。

 

 彼女を()()()だろうか、と。

 いや、そうではない。討たなければならないのだ。恩人である由紀に、親友である圭や美紀に、かつての仲間を殺させないように、そして、戦友であった胡桃に仲間たちを殺させないために……。

 

 ──彼女たち(学園生活部)に咎を背負わせるくらいなら、私が、彼女(胡桃)を殺す。それが、血塗られた自身に出来る唯一のことだから。

 

 そんな悲壮な決意を固めているアレックスだったが、突然額に衝撃が奔る。

 突然の衝撃に目を白黒させて額を押さえるアレックス。

 そして目の前には、いつの間にか背伸びをした由紀が腕を自身の方向に伸ばしていた。

 

 その時点になって彼女は、由紀にデコピンをされたのだと気付く。

 

「ゆきさん……?」

 

「あーちゃん、めっ、だよ」

 

「えっ……?」

 

「なにか怖いこと考えてたでしょ。顔が強張ってた」

 

「えっ、あ…………」

 

 由紀が少し怒りながら告げたことで、アレックスは自身が思考の渦に囚われていたことに気付く。

 そして、無意識の内に考えが顔に出たのだろう。それを由紀に見咎められたのだ。

 そう理解したアレックスは、先ほどと同じように温和な笑みを浮かべると、咄嗟に嘘をつく。

 

「あはは、違いますよゆきさん。もしかしたら、父さんと母さんのことが分かるかも、と思ったからで……」

 

「あーちゃんのお父さんとお母さん?」

 

「ええ、二人ともそれなりに有名人なので。もしかしたら顔ぐらい写るかな、って」

 

 先ほどとは違い、儚い笑顔で告げるアレックスを見た由紀は二の句が継げなくなる。

 なぜなら彼女の父、唯野仁成は今回のアウトブレイク発生時に巡ヶ丘基地に配属されており、そして、現在基地は壊滅。彼自身も生死不明だということを聞いていたからだ。

 

 無論、彼はデモニカスーツの第一人者であり、さらに言えば彼の妻、アレックスの母親である【ゼレーニン】はスーツ開発者の内の一人である。

 そのことからも分かるように、彼以上にスーツを使いこなせる人材はおらず、それ故に死地を突破して生き残っている可能性は僅かなりとも存在するだろう。

 だが、それでもかつてのSTRANGE JOURNEYの世界線とは違い、そこまでの死線を潜り抜けていないため、戦力として心許ないのも事実なのだが……。

 

 それでもアレックスを励ますため、なにか言葉を掛けようとする由紀だったが、何をどう掛けて良いのか分からず口ごもる。

 そんな由紀に笑いかけるアレックス。

 

「大丈夫ですよ、ゆきさん。母さんが現場に出ることはありませんし、父さんだってそうそう死ぬような人じゃないですから」

 

《そうだな、彼ならどんな死地からでも生還してみせるだろう》

 

 そう両親の、唯野仁成の生存を断言するアレックス。

 そこには両親に対する信頼は元より、かつての世界(STRANGE JOURNEY)で生き残ってみせた英雄の、彼に未来を託した者としての信頼が見て取れた。

 

 なぜアレックスだけならまだしも、ジョージまでがアレックスの父親(唯野仁成)に絶大な信頼をおくのか由紀には分からなかった。

 しかし、二人がそれほどまでに信頼するのなら、きっと大丈夫なのだろう、そう思った由紀は破顔する。

 

「……うん、そうだね! あーちゃんのお父さんなんだもん。きっと無事だよね!」

 

「ええ、そうですよ。だから、今は私たちに出来ることから一つずつやっていきましょう。さて、使えるパソコンはこれですよ」

 

 アレックスはそう言いつつ、比較的きれいなパソコンの前に移動すると、そのまま電源を入れる。

 電源を入れたパソコンは問題なく起動すると、恐らく誰か教員の物だったのだろう。生徒の成績表などのフォルダがあるデスクトップ画面が表示される。

 そこで慈が呆然とした声をあげる。

 

「これ、神山先生の……」

 

 それは、慈にとって親身になってくれた先輩の女性教員の名前だった。

 それを見て慈はアウトブレイクが起きた初日、アレックスが避難してくる前、彼女が自身のスマホに電話してきたことを思い出す。

 その中で彼女は、慈が屋上にいることを知るとそこから動かないように指示した直後、彼女のスマホ越しに何かが破壊される音が聞こえると同時に通話が切れてしまったことを。

 

 その時に恐らく、彼女も……。

 

 もし、彼女が生きていてくれていたら……。

 そんなことを思う慈。だが、すぐにそんなことを考えても仕方ない、と思い直す。

 それに、言い方は悪いかもしれないが、仮に生き残っていたとしても、それこそ、この地獄を生き抜かねばならないのだ。

 それを思うと、死んだことが救いなのかもしれない……。

 そう考えて慈は頭を振る。

 

「どうしたの、めぐねえ?」

 

 そんな慈の様子を心配した由紀が声をかけてくる。

 不安そうな由紀の様子を見て、心配をかけてしまった、と理解した慈はふんわりと柔らかく微笑むと彼女に大丈夫だと告げる。

 

「なんでもないの、ゆきさん。ただ、このパソコン。神山先生が使ってたものだから、先生のこと思い出しちゃって」

 

「かみやませんせい……? ああっ、あの眼鏡かけてた先生?」

 

「ええ、そうよ。先生、昔から先輩にずっとお世話になってばっかりで……。て、ゆきさん? めぐねえ、じゃなくて佐倉先生、ね?」

 

 由紀の彼女を思い出したかのような物言いに慈は思出話を話し出すが、その前に彼女が自身のことをめぐねえ、と呼んでいたため凄みを見せながら注意する。

 普段見せない慈の凄みを見た由紀は、冷や汗を流しながら敬礼する。

 

「は、はいっ! 佐倉先生っ!」

 

 大仰な由紀に慈は苦笑いを浮かべると一言よろしい、と告げる。

 それを聞いた由紀は胸をホッと撫で下ろす。

 貴依は二人のやり取りを呆れた様子で見ていたが、そのやり取りが終わったのを確認すると。

 

「それで、二人とも。もうそろそろはじめても良いか?」

 

「えっ……? あっ!」

 

「えへへ……ごみん」

 

 貴依の確認に二人は恥ずかしそうにしているのだった。

 

 

 

 

 

 由紀、慈の二人をはじめ、他の面々も落ち着いてきた頃、改めてパソコンからインターネットに繋ぐ。

 そして関連のワードを適当に検索している時、晴明が驚きの声をあげる。

 

「はぁっ……! ちょっと待ってくれ! 今のところ見せてくれ!」

 

「えっ? 今のところ?」

 

「これのことじゃないですか、先輩?」

 

 晴明の急な大声に驚く貴依であったが、美紀は貴依からマウスを受けとると冷静に画面をスクロールさせて晴明に確認をとる。

 

「ここですか、晴明さん?」

 

「ああ、そこだ。……見間違いじゃなかったのか」

 

「へっ? 見間違い、ですか?」

 

 晴明の見間違い、という言葉に反応した美紀は画面を注視する。

 そこには『日本政府、今回の災害に対してアメリカとの協力を強調』という題名とともに、自衛隊の高官と白人、恐らくはアメリカ政府の人間と握手をしている画像が貼り出されていた。

 

「この記事がどうかしたんですか?」

 

 どうにも晴明が声を荒げるような記事に思えなかった美紀は質問する。

 だが、次に晴明から放たれた言葉で彼女も驚くことになる。

 

「この記事の写真に写っている自衛隊の高官。彼の名前は五島公夫(ごとうきみお)。ここ、巡ヶ丘に展開していたデモニカ部隊の実質的な総司令官、つまり、アレックスのお父さんである唯野仁成の上司に当たる人物だ」

 

「…………は?」

 

「もともと彼は自衛隊の対悪魔関連の対策を一手に引き受けてたこともあって、その縁での抜擢になったんだろうな。それよりも──」

 

 そう言いながら晴明は美紀のマウスを握っている手に自らの手を添える。

 急に手を添えられた美紀は顔を赤らめるが、晴明はそんな美紀のことは気にせずに、そのまま記事のリンクをクリックする。

 すると、記事の詳細が表示され、それを軽く流し読みする。

 そして、記事の中で彼にとって目的の人物の名前が書いてあることを確認すると……。

 

「まさか、と思っていたが、マジかよ……。一体どうなってやがる」

 

 まるであり得ないものを見たかのように、晴明は頭痛がしはじめた頭を抱える。

 そんな晴明と同じように記事を読んでいた美紀は、晴明が頭を抱える原因になった人物にあたりをつけて質問する。

 

「この()()()()()とかいう人が、どうかしたんですか?」

 

 その質問に晴明は頭を抱えながら絞り出すように答える。

 

「……昨日、高位の悪魔は人間の姿に擬態出来る、と話したよな」

 

「ええ、まぁ。──まさか?」

 

「そのまさか、だ。やつの正体は北欧神話に出てくる戦と農耕、そして雷の神。【鬼神-トール】だ。だが……」

 

「まさか、まだ他にも問題が……?」

 

 美紀は、正直もうお腹一杯だ、と思いつつも、それでも確認しなかった場合、後悔するかもしれない、と考えて晴明に問いかける。

 晴明はその問いに答えるように、あるいは自身の考えをまとめるように声を絞り出す。

 

「やつは仮にもメシア教の関係者なんだぞ。それなのに立場的には、宿敵とも言えるガイア寄りの五島さんと、にこやかに握手だと?なんの冗談だ……」

 

「ガイア? それにメシア教って、今回の災害の元凶って目されてた……」

 

「ああ、そうだ。それに──いや、なんでもない」

 

 アルノー・鳩錦こそがメシア教の首魁、聖四文字である。という情報を与えて、わざわざ彼女たちを不安にさせる必要はない。

 そう考えた晴明は敢えて情報を伏せることにする。それに──。

 

 ──そもそも唯一神が分霊を使って現世に降りてくる、なんてこと自体が妙だ。それに、やつの指示で今回の災害が起きたのなら、行動がちぐはぐ過ぎる。

 

 事実、晴明が考えているように今回の災害が唯一神の指示で起きる、所謂マッチポンプを狙っているのだとしたら行動がお粗末なのは確かだ。

 そも、人々を助けるにしても唯一神が、聖四文字が降臨しなくとも天使たちを派遣した方がビジュアル的にも神の奇跡として分かりやすい。

 さらに言うなれば、聖四文字が直接降臨するのならば、その前に四大天使、特にミカエルが動いていない、というのがおかしい。

 

 無論、ミカエルの動きが察知されていない可能性というのも僅かながらに存在するが、それでもミカエル程の大物が動くならそれなりの騒ぎになるので、察知されないこと自体が不自然だ。

 そのことを考えるに、もしかしたら今メシア教は一枚岩ではないのかもしれない、と晴明は思っている。

 そうすれば一応、かなり苦しくはあるが聖霊が、聖四文字が単独で行動している説明がつく。

 そして、その理由がミカエルの暴走だとしたら?

 

 ──やつ(聖四文字)は真・女神転生Ⅱの世界で、暴走したミカエル、ラファエル、ウリエルを実際に切り捨てていた。そして、その時はガブリエルを、そして()()()を使ってことを成そうとしていた。今回もその可能性は十分にあり得る。

 

 そこまで考えた晴明だったが、頭を振って思考を振り切る。考えたところで意味がない、と悟ったからだ。それよりも今は──。

 

「今は、なんにしても情報が少なすぎる。他にもなにか情報がないか探してみよう」

 

 そう皆に提案するのだった。

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