DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第五十一話 親友(ブラザー)

 由紀の決意を聞いて哄笑していたアリス。

 後に、あまりの笑いすぎに逆に心配された彼女は、正気に戻ったあとどこか恥ずかしそうにしていた。

 その後、三人は由紀が凍り付けにした廊下の後始末を終えたのちに、当初の目的地である地下区画の入り口まで到達した。

 

「ここが、目的地……」

 

「ええ、そうみたいですね」

 

 由紀は目の前にある閉ざされたシャッターを見て呟き、アレックスもまた彼女の呟きに同意する。

 その後ろでアリスはふよふよ、と宙を漂いながらつまらなそうにしている。

 

「ねーねー、早く行こうよぉ?」

 

 可愛らしく先を促すアリスに苦笑する二人。

 そして、彼女が言ったからではないが、アレックスは閉ざされたシャッターに手を掛けた。

 そこでアレックスは違和感に気付く。

 

 ――重く、ない? 鍵が掛かっていない?

 

 疑問に思いながらもそのままシャッターを持ち上げようとするアレックス。すると、本当に鍵が掛かっておらず、簡単に上げることが出来てしまった。

 

「これは、一体?」

 

「……おかしい、ね」

 

「ええ、そうですね……。――ジョージ」

 

《ラジャー、アレックス。――広域スキャン開始》

 

 アレックスが疑問に思うのと同時に、由紀もまたおかしいと感じたようで、ぽつりと呟く。

 そのことに相槌を打ったアレックスは、ジョージを通してエリアサーチを実行する。その結果は――。

 

《……生体反応、なし。少なくとも、かれらも、そして生存者も居ないようだ》

 

「…………そん、な」

 

 ジョージの報告を聞いて言葉を詰まらせる由紀。

 そんな彼女を悼ましそうに見るアレックスに対して、アリスは興味がないと言わんばかりに先に進む。すると……。

 

「……冷たっ! むぅ~……」

 

 頭上から水滴が落ちてきたらしく、濡れてしまったことに不満げな声を出すアリス。

 由紀は、そんな彼女が心配になったようで声をかける。

 

「アリスちゃん、大丈夫?」

 

「うん、私は大丈夫。あ、でも、ユキちゃん。ユキちゃんたちは床に気を付けた方がいいかも……?」

 

「……え?」

 

 由紀に心配されたことが嬉しかったのか、にこやかに笑いながら返事をするアリス。しかし、途中でなにか気がかりなことがあったのか忠告をする。

 忠告を受けた由紀は、反射的に床を見る。

 すると、床は水道管が破裂でもしたのか、水浸しになっていた。それを見て納得した由紀は、忠告してくれたアリスに礼を言う。

 

「あっ、なるほど。うん、ありがとうアリスちゃん」

 

「えへへっ、どういたしまして」

 

 由紀に礼を言われたことが嬉しかったようで、アリスははにかみながら、礼を受けとる。

 そんな二人のやり取りをどこか複雑そうに、しかし同時に微笑ましく見守るアレックス。

 と、言うのも先ほど、地下区画の入り口に到着するまでの間、二人はお互いに対してどこかよそよそしい態度を取っていたからだ。

 

 まぁ、尤もその理由の大半はアリス自身にあったわけだが……。

 その理由と言うのもある意味単純で、先ほどまで由紀を試すためとは言え、由紀(友だち)に対して悪意のある問いかけを続けたことで、無意識のうちに彼女に引け目を感じていたこと。

 そんなアリスの心中を、感受性豊かな由紀がわからない筈もなく、そして同時にどう接して良いかがわからなくなった由紀。

 そしてその結果、双方が双方に対してよそよそしくなってしまった。というのが真相だった。

 

「まったく……。雨降って地固まる。というやつかしらね」

 

 二人の様子を見て、どこかホッとしたように独りごちるアレックス。

 そんな彼女にジョージも同意するように声をかける。

 

《そのようだな。ともあれ先に進むとしようか。相棒(バディ)?》

 

「……そうね」

 

 そう言ってアレックスは、未だにじゃれあっている二人に声をかけるべく近づくのだった。

 

 

 

 

 

 ぴちゃり、ぴちゃりと水浸しになった床を踏みしめて地下を探索する由紀たち一行。

 その中でアレックスは新型デモニカスーツを装着していることもあり、普段は解除しているマスクを着用、赤外線や熱などの各種センサーを使用し、斥候の役割を担っていた。

 だが、先ほど地下区画に生存者やかれらが居ないことを確認したのに、さらに警戒することに対して不思議に思った由紀は問いを投げ掛ける。

 

「ね、ねっ。あーちゃん、なんでそこまでしてるのか、教えてもらっても良い?」

 

 由紀の問いかけに、アレックスはマスクを解除しつつ振り向くと、彼女の目を見据えて答える。

 

「斥候をしている理由ですか? ……それは、まぁ。一言で言うなら保険のためですね」

 

「……ほけん?」

 

 アレックスが言う保険の意味がわからず、きょとんとした顔で首を傾げる由紀。

 彼女の仕草に薄く笑いながら、アレックスは補足の説明を入れる。

 

「えぇ、まぁ。……さっき確認したのは、あくまで、()()()()ではなにも反応がなかった。と言うのは良いですか?」

 

 アレックスの問いかけに頷く由紀。それを確認したアレックスはさらに言葉を続ける。

 

「ですが、今。この巡ヶ丘は結界が張られ、半異界化しています。……つまり、言い方を変えれば、いつ、どこに、悪魔が顕現してもおかしくないんです」

 

 補足説明を聞いた由紀も、彼女が何を警戒しているのか理解したのか、納得した表情で頷くと――。

 

「……あぁ、なるほど。つまり――」

 

「そうです、先ほどまでは安全だった。でも、今は? 安全だという確証がないから、こうして念には念を入れてるわけです」

 

 由紀とアレックスが、互いに答え合わせをするように口に出す。

 事実、過去にはシュバルツバース調査隊や、異界を調査する悪魔召喚師でも、何処からともなく現れた悪魔に奇襲を受けて大打撃、ないしは壊滅の憂き目に遭うことも少なくない。

 ここ(巡ヶ丘)で起きたことで言えば、魔人-デイビットによる自衛隊巡ヶ丘駐屯地の壊滅が記憶に新しいだろう。

 尤も、駐屯地壊滅自体は生存者などの証言等は一切ないため、本当に奇襲であったかは定かではない。

 しかし、本来平穏な場所に現れることのない()()という特殊すぎる悪魔が現れたこと自体が、ある意味に於いて奇襲そのものであると言っても良いだろう。

 

 そして、一度起きたことが次は起きない。などと考えるのは楽観的、あるいは人によっては危機管理、危機的意識の欠如。と言ってくる場合もあるかもしれない。

 実際、ことわざに於いても『一災起これば二災起こる』『二度あることは三度ある』などと言ったものがあることからも、古くから同じようなことがあったのは想像に難くない。

 そのことから、今回のことに関して言っても、アレックスが警戒のために行動することは至極当然と言えた。

 

 二人がそんなことを話しているとき、アリスはどこか遠くを見つめるように目を細めていた。

 そしてなにか違和感を感じたのか、二人に話しかける。

 

「ねぇ、二人とも……」

 

 アリスの様子がおかしいことに気付いた由紀は、何かあったのか。と問いかける。

 

「どうしたの、アリスちゃん?」

 

「MAGの流れがおかしいよ、これ……」

 

 アリスの言葉を聞いたアレックスは、途端に険しい顔をしてジョージに問いかける。

 

「……ジョージ!」

 

《既に検索中だ、相棒(バディ)。……これは、魔界への入り口、か? アレックス、この先だっ!》

 

 そう言いながらジョージは一つ先のエリア。そこにある小部屋を指し示す。そこに、悪魔が顕現しそうになっている。と付け加えて。

 ジョージの回答にアレックスは瞬時に戦闘態勢に移行。

 マスクを展開し、右手にレーザーブレイド。左手に光線銃をを構え、駆ける。

 由紀も反応が一瞬遅れるものの、アレックスに追従するように問題の小部屋へと移動する。

 そして、取り残されたアリスはというと……。

 

「……でも、別に殺気は感じないんだけど」

 

 と、呟いていた。

 

 

 

 

 ぱちゃぱちゃ、と濡れた床を慌ただしく駆ける二人。

 彼女ら、特に由紀にはこの場(巡ヶ丘学院高校)に悪魔が顕現したことに対しての焦燥が浮かび上がっていた。

 それもまた仕方ないだろう。

 彼女にとって悪魔、それも顕現した悪魔とは、妖獣-ヌエやライジュウなど、晴明に鎧袖一触にされたものの、それでも後の説明で一つの都市程度なら壊滅させることが出来る悪魔だった。という説明を受けていたのだから。

 

 そんな存在が足元に現れて、もし奇襲でもされたら……。

 その時、彼女の大切な人たち。学園生活部の仲間たち。そして、大好きなめぐねえが殺される可能性すらある。

 そんなことを見過ごせるわけがない。

 だからこそ彼女は駆ける。

 大切な人を守るため、危険から遠ざけるために。

 

 そして、悪魔の反応があるという場所にたどり着いた由紀たちは、間髪入れずに扉を蹴破る。

 そこには首を吊っている男性と、それを見上げる存在(モノ)

 

「ヒホ~……。おじさん、なにやってるホ……?」

 

 ()()はとんがり帽子を被ったカボチャ頭に襤褸きれのローブ。そして手にはランタンを持った悪魔。

 名をジャックランタンと言った。

 そしてランタンは急に扉を蹴破ってきた二人を驚いた様子で見る。

 

「な、なんだホ! オ、オイラをデビルバスターバスターズのランタンさまと知っての狼藉かホ!」

 

 ランタンに威嚇するように問われた由紀たちだが、彼女らには彼の言葉が聞こえていないようで、呆けた表情をしている。

 それも、そうだ。アリスとジョージに悪魔が顕現する。と言われて急いで来てみれば、まさかの光景である。

 ……本人たちとしてみれば、どんな化け物と戦闘になるか、と意気込んでいたらまさかの妖精。

 しかも彼の口ぶりからすると首を吊った男性。十中八九、首吊り自殺の人物とは無関係だということもわかる。

 特にアレックスからすれば、今までの緊張を返せ。とでも言いたくなるだろう。

 そんな空気を感じ取ったのか、ランタンは――あるかどうかわからないが――首を傾げて不思議そうにするのだった。

 

「……ヒホっ?」

 

 

 

 

 その後、遅れて合流した()()-アリスの姿を見たランタンが恐慌状態になるなど一悶着あったものの、なんとか落ち着きを取り戻し話を聞くことになった。

 因みに、彼が恐慌状態に陥っている合間に首吊り自殺の男性は降ろされてシートに包まれている。

 なお、その時に改めて男性の身体が冷たく硬直していたことから、ランタンは一切関わっていないことがはっきりとなっている。

 そして、男性を見た由紀が侮蔑の目で彼を見ていたことも付け加えておく。

 

「それで、えっと……。ランタンくん、でいいかな?」

 

「ヒホ? まぁ、それで良いホ」

 

「ん、じゃあランタンくんはどうしてここに来たの?」

 

 由紀の質問にランタンは元気良く答える。

 

「それはもちろん、ブラザーを探すためだホ!」

 

「……ブラザー?」

 

 ランタンのブラザーという言葉に、由紀は彼や、彼と同じ姿をした悪魔が大量にいる光景を思い浮かべる。

 アレックスは由紀が勘違いしていることに気付き訂正しようとするが……。

 

「あぁ、ゆきさん違います。彼が言っているブラザーとはフロストのほ――!」

 

 そこでなにかに思い至ったのか言葉を詰まらせるアレックス。

 そのことを不思議に思った由紀は彼女に呼び掛ける。

 

「あーちゃん……?」

 

 由紀の呼び掛けにハッとした表情を見せたアレックス。

 そして、すぐにランタンへと話しかける。

 

「ねぇ、一つ質問なのだけど。もしかしてブラザーが消えたのは二週間くらい前、かしら……?」

 

 アレックスの質問にランタンはビックリした様子で肯定する。

 

「ヒホっ! その通りだホ。一体どこをほっつき歩いてるのか、ホ……。」

 

「そう……」

 

 ランタンの答えを聞いたアレックスは沈痛な表情を浮かべる。彼が言うブラザー、その正体がわかったからだ。

 その正体とは、親友が、圭がヒーホーくんといって可愛がっていた()()ジャックフロストだ。

 そして、彼は既に……。

 

 そんなアレックスの表情になにか感じ取るものがあったのだろう。由紀もまたもしかして、という表情を浮かべる。

 二人の表情にランタンも彼女らがなにかを知っていることに気付き知っていることを教えてほしい、と懇願する。

 

「おねーさんたち、なにか知ってるホ? 知ってるなら些細なことでも良いから教えてほしいホ……」

 

 涙声で頼み込むランタンを見た二人は、彼がヒーホーくんを心の底から心配していることを理解して、意を決して話す。

 

「……えっと。ランタンくん、気を強く持って聞いてね。実は――」

 

 そうして由紀はフロストの軌跡。彼が圭や美紀と出会い友だちに、そして後に圭の仲魔になったこと。

 彼の親友と呼べる太郎丸と、彼を助けるために自らの身を差し出したこと全てを説明した。

 その全てを聞いたランタンは消沈した様子で声を返す。

 

「……そう、そうだったか、ホ。ブラザー、どうして……」

 

 あまりにも悲しげなランタンにいたたまれない気持ちになる由紀。

 そして彼女はとある行動に出る。

 

「ねぇ、ランタンくん」

 

「……なんだホ」

 

「実は、私ね。ヒーホーくんからとあるカードを貰ったんだ」

 

「……カードかホ?」

 

「うん。……来て、ペルソナ」

 

 彼女はそうやって一つの幻影(ヴィジョン)を具現化する。それは――。

 

「――ブラザー……」

 

 それは、ジャックフロスト。ヒーホーに貰ったペルソナカードだった。

 

「ブラザー……!」

 

 顕現したペルソナにブラザーの残滓を見たランタンは感極まった声を出す。

 

『――――』

 

 さらには、ペルソナから声なき声が聞こえてきたことで、ついには泣き崩れるランタン。

 そこには正しく、彼が大切に想っていた親友(ブラザー)が確かにいたのだった……。




9/25 こちらの方が相応しいだろう、と副題を変更。
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