DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

61 / 129
第五十二話 しばしの別れと、新たなる旅立ち

 親友(ブラザー)のペルソナを見て泣き崩れていたランタン。

 だが、しばらくすると少しずつ泣き声が小さくなっていく。

 別に悲しみが収まったとか、乗り越えたとかそういうわけじゃない。ただ、このまま泣いているだけじゃ、目の前のペルソナ(ブラザー)に笑われる。それどころか心配してくるかもしれない。それが嫌だったから、泣き止んで前を見よう。そう思っただけだ。

 だから、彼は元気良く(空元気で)由紀に話しかける。

 

「……ヒホっ! おねーさん、ありがとうだホ!」

 

 由紀に礼を言って頭を下げたランタンは襤褸きれのローブをまさぐると、由紀にとって見覚えがある()()を差し出してくる。

 

「これ、あげるホ!」

 

「……これは、ペルソナカード?」

 

 ランタンからカードを受け取った由紀。

 しかし、彼女は本当に良いの? と彼に視線で問いかける。

 彼女の視線に気付いたランタンは小さく頷くと。

 

「おねーさんは親友(ブラザー)が信用したニンゲンさんだホ。だから、オイラも信じることにしたホ」

 

「……そう、そうなんだ。うん、ありがとねっ!」

 

 ランタンの言葉を噛み締めた由紀は、カードを大切そうに抱きしめると、はにかみながら礼を言う。

 そんな由紀の笑う姿をみて、ランタンもまた照れ臭そうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 その後、ランタンはそのまま魔界に帰り――一応、アレックスがフロストのその後を話し、改めて仲魔にならないか。と誘ったが、親友(ブラザー)には親友(ブラザー)の、オイラにはオイラの道があるんだホ。と断っている――それを見送った由紀たちは、再び地下探索を開始した。

 そして、しばらく探索すると――。

 

「ねぇ、あーちゃん。ここってなんだか、他の場所と雰囲気が違わない?」

 

「ええ、確かに……。これは、一体」

 

 もし、ここに晴明や透子がいたら、まるであそこ(秘密基地)みたいだ。と感想を残しそうなほどに、かつての避難場所と瓜二つの区画を発見した。

 しかも、その場所は校舎(うえ)と同じように電気が通っているらしく蛍光灯で明るく照らされている。

 そして、空調も入れられているのか、由紀は少し肌寒く感じて身を縮ませながら辺りを見回す。

 なお、アレックスに関してはデモニカスーツが体温などを含めて、ありとあらゆるものを調節してくれているため、実は快適な状態だったりする。

 そんな対照的な二人が周りを探索していたところ、由紀がなにかを見つける。

 

「ねぇ、あーちゃんにアリスちゃん。あれ……」

 

 そう言いながらとあるものを指差す由紀。

 その先を見た二人は、思わずといった様子で由紀が指差した場所の名前を告げる。

 

「「……冷蔵室?」」

 

 そこには巨大な、一部屋を丸々使った冷蔵室が、設置されていた。

 学校にあるには――あまりに大きすぎるために――不釣り合いなものを見た由紀とアリスは小首を傾げる。

 ただし、アレックスだけはここがどういった意味合いの場所なのか、即座に理解する。

 なぜなら、未来世界でも似たような施設――尤も、既に壊滅していた場合が殆んどだったが――を見たことがあったからだ。

 

「……開けてみましょう」

 

 不意にアレックスの口から出た言葉に頷いた由紀たちは、冷蔵室の扉を開ける。

 そして、中をおそるおそる覗いた由紀だったが、中の光景を見て満面の笑みが花開く。そこには――。

 

 

 

 

 

 

『いったっだきまーすっ!』

 

 ところ変わって、ここは学園生活部の部室。

 地下探索を終え、意気揚々と帰って来た由紀たちは、皆に()()()を見せると、それを使った昼食に舌鼓を打っていた。

 そして、戦利品を一切れ咀嚼した貴依は感慨深げに声を出す。

 

「しっかし、また()()を食べられるなんてなぁ……。しかも、新鮮な生肉だったし」

 

 貴依の感想に、悠里も頬に手を当てて、綻んだ笑顔を浮かべながら同意する。

 

「ええ、ほんとに。……るーちゃん、美味しい?」

 

「うんっ! りーねえ、美味しいよっ!」

 

 悠里に話しかけられた瑠璃もニコニコと笑顔を浮かべて同意していた。

 そんな学園生活部の微笑ましい姿を見て、晴明はホッとため息を吐くと、今回の成果に驚きながら独りごちていた。

 

「……まさか、な。ここまで上手くいくとは……」

 

「予想外だった?」

 

 そこで晴明の前に少女が腰かけると声をかけてきた。それは、地下探索に赴いた片割れ、アレックスだった。

 彼女のからかうような物言いに仏頂面になる晴明。そんな彼を見てくすくす、とアレックスは笑う。

 そんな彼女を見てため息を吐くと、晴明は自身の考えを述べた。

 

「正直、今回の探索では由紀さんに戦いの空気を感じてもらえれば、それで良かったんだが……。まさかここまで戦利品を持って帰ってくるとは……」

 

 そう言いながら晴明はテーブルに並べられた数々の料理を見る。

 そこには牛肉だけではなく、豚や鶏肉。魚介類に新鮮な生野菜などの生鮮食品が調理された状態で並べられている。

 そして肉にしても、魚にしてもここにある分だけではなく、15人程度なら2ヶ月は保つであろう量が貯蓄されていた。

 それだけでも既に驚きなのだが、実はもう一つ。しかも、重要性で言えば食材よりもさらに重要であろう物を持って帰ってきていた。それは……。

 

「……抗ウイルス剤。ゾン――――いや、かれら化に対しての特効薬。その試作品、か」

 

 晴明は、部屋の片隅に安置されているアタッシュケースを見て呟く。

 それが本当に効くのかわからない。だが、少なくとも()()()()の息がかかった場所に存在していた以上、まったくの眉唾というわけでもないだろう。

 つまり、あれを調べれば何らかの情報が、今回のアウトブレイクの謎が解き明かされる可能性がある。ということだ。

 そして、晴明はそれを行えるであろう()()()を知っている。

 

「それで? ()()()な保護者さんには、何か考えがあるのかしら?」

 

 抗ウイルス剤を見ていた晴明の表情に、アレックスは何かあると察して問いかける。

 その彼女の()()()という部分に反応した晴明は惚けようとする。

 

「……過保護? 何のことだ?」

 

 晴明の惚けた様子に、彼女はくすくす、と笑うと自身がなぜそう言ったのか、理由を説明する。

 

「あら、惚けるつもり? 地下探索の時、あんなにわかりやすく尾行してた癖に」

 

「……む」

 

 アレックスの指摘に、図星とばかりに思わず黙り込む晴明。

 さもありなん。アレックスが言ったように晴明は万が一のために、と彼女たちの後をつけていたのだが、ジョージという相棒(バディ)がいたアレックスにはすぐにバレていた。尤も、バレていた。というよりはわざとバラしていたというのが正確だが……。

 

 その理由は簡単。先ほど晴明自身が話したように、由紀に実戦の空気を感じさせるためだった。

 そのことを朧気ながら察していたアレックスは探索時の戦闘時、なるべく参加しないようにしていたし、アリスに至っては由紀の活躍を見て、晴明の心配は杞憂だ。と断じていた。

 

 しかし、なぜ晴明がそんな迂遠なことをしたのか興味が出たアレックスは再び、今度は歪曲されないように彼に問いかける。

 

「で? さっきの質問なのだけど、そんなに抗ウイルス剤のケースを熱心に見てたのはどうして? それに、ゆきさんを戦わせるような真似までして」

 

 アレックスの詰問に、これ以上誤魔化せないと判断した晴明は深呼吸してため息を吐く。

 そうして気を落ち着かせると、自身の真意を語り始めた。

 

「ああ、そうだな。あれ(抗ウイルス剤)を見てたことに関しては、あれを解析出来そうな人を知ってるから、その人に回せば何らかの進展が望めそうだ。と思ったんだよ」

 

「……え?」

 

 晴明の言葉を聞いたアレックスは呆然とした様子で、彼女の口から声が漏れる。

 そして、二人のやり取りが聞こえていたのか、他の、学園生活部の面々も黙って晴明を見つめていた。

 彼女たちの視線にさらされた晴明は、自身とともに行動していた秘密基地組――瑠璃を除く――を、呆れたように半目で睨むと話しかける。

 

「あのなぁ、お前たち……。圭に美紀、透子さんもちょっと前に会ってるからな?」

 

「……えぇ?」

 

「ふぇ……?」

 

 晴明の言葉に二人はうんうんと唸りながら件の人物を思い出そうとしている。

 その中で美紀だけは思い当たる節があったのか、掌を顔に当て考え込みながら()の名前を口にする。

 

「私たちが会ったことがある? ……そうか! Dr.スリル!」

 

 美紀が思い出したのは、全体的にひょろっとして、おかっぱ頭に大きな――流石にイゴールほどではないが――鼻と出っ歯がトレードマークとも言えるロシア人男性。世紀の大天才、Dr.スリルその人であった。

 その美紀の答えを聞いた晴明は鷹揚に頷くと、彼女に続くように話し始める。

 

「そう、Dr.スリル。……彼はどちらかというと機械工学や悪魔関連が専門ではあるが、専門以外でもそれなり以上に知識がある。――それが、彼が大天才と呼ばれる所以だ」

 

 晴明の説明を聞いた学園生活部、Dr.スリルを知らない面々は、おおー、と感嘆の声をあげながら頷いている。

 そんな中、慈がなにか疑問を抱いたのか、挙手して質問を口にする。

 

「あの、すみません。蘆屋さん」

 

「ん? どうかしたのかい、佐倉先生?」

 

「その、Dr.スリル、という方を私は寡聞にして知らなくて……。どういった方なんでしょうか……?」

 

 おずおずと自身なさげに問いかけてくる慈に対して晴明は、ああ、それはなぁ……。と納得半分、申し訳なさ半分の表情を見せ、慈たちが彼の名前を知らないのも無理がない理由を告げる。

 

「元々彼は不法入国に、さらに反社会的組織の違法研究者、という肩書きの人物でね……。捕まった後は、司法取引の名目で色々研究を手伝った結果。この度、晴れて恩赦を受けて外に出てきたから、皆が知らなくても無理はないんだよ」

 

「………………はぁ?!」

 

 晴明の説明を聞いて、聞き間違いかと思った美紀だったが、周囲の反応から聞き間違いでも、冗談でもないと気付き、思わず席を立って驚きの声をあげた。

 実際、彼女がスリルと会ったときに感じたのは、どことなく似非っぽい関西弁を放つノリの良い、圭と気が合いそうなおじさんだっただけに、晴明の口から出た彼が元犯罪者。しかも晴明の懐かしそうな顔から察するに、彼自身が組織の捜査に関与、つまりそれ程の大事になる犯罪に関与していた、という事実が信じられなかったのだ。

 とにもかくにも、美紀は一度落ち着こうと深呼吸をしたのちに、手近にあったコップのお茶を飲む。

 そこに晴明から、彼女にとって。と言うよりも全員にとって驚くべき情報が告げられる。

 

「そういえば圭たちには話してなかったな。スリルはガントレットとバロウズ、彼女の一部を解析して自衛隊などで使用しているデモニカスーツ。それを開発したメンバーの一人なんだよ」

 

「ぶふぅっ――――! ……ごほっ、ごふ!」

 

「きゃあっ! ……ちょっ、みき。大丈夫っ?!」

 

 お茶を飲んでいる途中にとんでもない情報を聞いた美紀は、驚いた時にお茶が気管に入ったのか盛大に吹き出して噎せていた。

 親友(美紀)が急に吹き出した――その時、咄嗟に下を向いたため、お茶が他の人にかかることはなかった――ことで吃驚した圭だったが、直後に今度は噎せはじめたため、彼女の背中を懸命に擦りながら、心配そうに声をかけている。

 その声掛けに美紀は安心させるように、しかし、未だに気管に入ったことが苦しいのか声を出せず、涙目でこくこくと頷いている。

 そんな二人の様子を見て晴明は、どこかバツの悪そうな顔をして美紀に話しかける。

 

「あぁ、その……。大丈夫か、美紀?」

 

「……は、はぃぃ」

 

 晴明の問いかけに、ようやく落ち着いてきた美紀は情けない声をあげる。

 美紀の返事を聞いて晴明は苦笑。

 しかし、すぐに真面目な表情になると全員に提案のような形で問いかける。

 

「それで、だ。さっき俺が抗ウイルス剤を見ていた話に戻るんだが、二つあるうちの一つを譲ってくれないか?」

 

「その、今話してたDr.スリルさん? に渡すんだね」

 

「ああ、そういうことだ」

 

 晴明が話した提案。それに対して由紀は念のための確認、といった様子で言葉を発し、彼もまたそれに同意する。

 それを聞いた由紀は仲間たちを軽く見渡すが、否定する様子がなかったことで、大丈夫だと結論付ける。

 そして、晴明に大丈夫だと告げようとする由紀だったが――。

 

「皆も問題ないみたいだし、だ――」

 

「ちょっと待って、蘆屋さん。ゆきさんの件がまだよ」

 

 そうアレックスに遮られる。

 由紀も、そういえばそれに関してはまだだったな。と今さら気付き、手をポン、と叩いている。

 アレックスの詰問に再び苦笑を浮かべると晴明は彼女を宥めるように話し出す。

 

「まぁ、慌てなさんな。それは今から話すから、な?」

 

 そう言って彼は、晴明は自身が前々から考えていたことについて告げる。

 

「ん、まぁ、結論から言っちまうと、ここ(学園生活部)もある程度落ち着いてきたから、俺としても本来のお仕事、ランダルの調査と生存者の探索をそろそろ再開しようと思ってな」

 

『……え?』

 

 晴明の、簡単に言えばここを出ていく。という言葉を聞いた面々はあまりの驚きに、理解できないといった様子で不思議そうな声をあげる。

 だが、晴明はそんな面々をおいてけぼりにするようにさらなる言葉を紡いでいく。

 

「ある程度の物資は持ち込めたし、防衛戦力としてもアレックスさんに、大僧正やアリスも置いていくつもりだったし、今回のことで由紀さんも戦えるとわかったから不安要素はなくなったし、な」

 

「あなた、そのつもりで…………!」

 

 だから敢えて由紀を危険にさらすような真似をしたのか。と驚愕するアレックス。

 そんな中、透子はいそいそ、と自身の荷物を纏めている。本人としては晴明についていく気満々だったのだろうが――。

 

「透子さん、何をしてるんだ?」

 

「何って、出発するんでしょう? だから――」

 

「何を言ってるんだ? 出発するのは()()()()

 

「…………は?」

 

 晴明の言葉が理解できない、むしろ理解したくなかったのか、透子は呆けた声をあげる。

 そしてすぐさま晴明に詰め寄ろうとするが……。

 

「ちょっと、晴明さん! それって――――ひぅっ!」

 

 いつの間にか背後に回っていた晴明に抱きしめられ、素っ頓狂な声をあげることになる。

 ただでさえ、自身が内心想い慕っているヒトに抱きしめられ、心臓に悪い状況で顔を赤くしている透子。

 しかし、晴明はさらにだめ押しとばかりに彼女に顔を、キスを出来るほどに近づけると耳元で囁き出す。

 

「ここで俺と一緒に、透子さんまで出ていったら佐倉先生が独りになっちまうだろ? だから、透子さんには彼女を支えて欲しいんだよ。良いかな……?」

 

「わかった、わかったから! とりあえず離れてぇ……」

 

「……ありがとう」

 

 そう言いながら透子から離れる晴明。

 彼が離れたことがわかった透子は、胸に押し付けるように両手を組んでいる。

 その両手越しにバクバクとした心臓の鼓動を感じた透子は、はっ、はっ、と酸素を求めるように荒い呼吸を繰り返している。

 そんな透子をどこか不満げに見ていた美紀は、隣にいる圭を見る。彼女も晴明を慕っていることから不満に思っているかも、と考えたからだ。

 

 しかし、当の圭本人は、なにか思い詰めた様子で俯いている。

 そのことになにか良くないものを感じたのか、美紀は彼女の肩を揺すって声掛けをする。

 

「ね、ねぇ。けい……?」

 

「え? ……うん」

 

 そのことで、ようやく美紀が自身のことを見ていることに気付いた圭が見つめ返す。

 だが、彼女の表情はどこか怯えた様子を見せていた。

 そんな彼女を見て、流石におかしいと感じた美紀。

 

「……本当にどうしたの? どこか具合が悪いの?」

 

 心配して声をかける美紀に対して、圭は力なく首を横に振って否定する。

 

「ちが、ちがうの。……わたしは」

 

 そう言ってまた黙り込む圭。彼女の脳裏にはかつての、エトワリアで出会った親友(美紀)の、彼女の絶望と歓喜の姿が写し出されていた。

 

 ――もし、もしも、このまま名乗りあげなかったら、晴明さんは確実に独りでここを出ていく。つまり、私と晴明さんは離れ離れに……。

 

 それは嫌だ。そう思う圭だが、それと同時に――。

 

 ――でも、私が名乗り出たらみきをここ(学園生活部)に残すことに……。それじゃ、あの(聖典)世界の私と変わらないことに……!

 

 それじゃあの世界と同じように美紀に心の傷を背負わせるかもしれない。それでは、何のために自身が聖典世界に行ったのかわからない。と、そう思う圭。それに――。

 

 ――それに、もしみきが着いていくと言ったら、あの子を危険な目に遇わせることになっちゃうかも。そして、それでみきが怪我をしたり、最悪死ぬことになったら……。

 

 そんなの嫌だ、と思う圭。

 

 つまり、彼女は偶然にも(未来)のことを、あり得たかもしれない世界を知ったが故に、思考の袋小路に嵌まっていた。

 

 ――私が我慢すれば……。

 それで、もし晴明さんと今生の別れ(死別)になったら?

 

 ――みきに我慢してもらって……。

 それで、自分が死んであの(聖典)世界のゆき先輩みたく親友(美紀)を壊すのか?

 

 ――みきに着いてきてもらえば……。

 そうして関係ない親友(美紀)に、渡る必要もない危険な橋を渡らせるのか?

 

 そう益体のない考えがぐるぐると回っていく。

 そうして顔を青染める圭を見た美紀は――。

 

「晴明さん――!」

 

「どうした、美紀?」

 

「私と――! 私と、圭も連れて行ってください!」

 

「……え? みき、何を言って……」

 

 美紀の叫ぶような言葉に、晴明以上に驚きをあらわにする圭。

 そして、すぐさま彼女は考え直すように言う。

 

「みき、そんなの……! 危ないんだよ?! 遊びじゃ――」

 

 そこまで言って言葉を詰まらせる圭。

 自身を見つめる美紀の視線。それが、任せて欲しいと告げているのがわかったから……。

 だが、晴明は圭の言葉を引き継ぐかのように美紀に話しかける。

 

「そうだぞ、美紀。圭が言うように外に出るなら、今後は今以上の危険が――」

 

 美紀を諭すように声をかける晴明だったが、美紀はそんな彼の言葉を遮るように叫ぶ。

 

「私はっ! 私たちは貴方の、悪魔召喚師(デビルサマナー)-蘆屋晴明の弟子です! それに、まだ貴方から色々と教えてもらってないことが多いのに、私たちを置いていくのは無責任なんじゃないですか?!」

 

「……ぐ、むぅ」

 

 美紀の指摘に、内心思うところがあったようで、難しい顔をして黙り込む晴明。

 そして、美紀はそんな晴明を畳み掛けるように語りかける。

 

「それに私たちだって、悪魔相手にはまだ力不足かもしれないけど、かれら相手なら十分以上に戦えます! 足手まといにはならないはずです。だから――!」

 

 お願いします――! と、頭を下げる美紀。

 そんな美紀を見て、困ったように頭をがしかし掻く晴明。

 そして、深く、深ぁくため息を吐くと……。

 

「……美紀。そこまで覚悟があるなら、俺はもうなにも言わん。だが、本当に良いんだな?」

 

 晴明の言葉に美紀はがばり、と頭を上げると元気良く返事をする。

 

「――はいっ!」

 

 その返事を聞いた晴明は次に圭に問いかける。

 

「……と、言うことだが、圭もそれで良いのか?」

 

 晴明の確認に圭は思わず美紀を見る。

 美紀は真剣な、覚悟のこもった瞳で圭を見つめ返す。

 それで、美紀の決意が固いことを知った圭は、迷いを振り切るように声を張り上げる。

 

「はいっ! ――私も、私も一緒に行きたいです!」

 

 その返事を聞いた晴明はため息を吐く。そして、透子を見ると彼女に謝る。

 

「済まない、透子さん。貧乏クジを引かせたようだ」

 

 そんな晴明に透子はくすくす、と笑うと大丈夫だと告げる。

 

「大丈夫よ、晴明さん。……めぐみが心配なのは確かだし、ね」

 

 と、晴明を安心させるように茶目っ気のある返事をする。

 その答えに晴明は安堵のため息を吐くと、再び美紀と圭に話しかける。

 

「それじゃ二人とも、すぐに準備を始めろ! 終わり次第出発するぞ!」

 

「「――はいっ!」」

 

 晴明の言葉に二人は、元気良く返事をするのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。