DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 お久しぶりです、作者です。

 今回、きららファンタジアで開催されていたイベント『歩き続ける君のために』に於いて、りーさんの妹である『るーちゃん』の本名が『若狭るう』であることが判明しました。

(イベントシナリオを原作者の海法紀光氏が担当したため、公式設定と判断できます)

 しかし、本作では長く若狭瑠璃で通してきたこともあり、今更変えるのも違和感が出ると思うので、そのまま『若狭瑠璃』で通そうと思います。
 ご了承いただけたら幸いです。


第五十五話 絶斗

 しばし時を巻き戻す。

 

 ちょうど晴明たちが先の戦闘についての反省会を行っていた頃、一人の少年が崩壊した巡ヶ丘の地を鼻歌交じりに闊歩していた。

 その少年、年頃は若狭瑠璃よりも少し年上。小学校高学年に見える背丈に緑色の髪。そして全体的に蒼色の服とヘルメット型の帽子を被った彼は、最初こそ楽しげだったものの、すぐにため息をついて愚痴をこぼす。

 

「……はぁ、まったく。()()もヒト使いが荒いよね。せっかく、()()()()()()()()()()()と遊ぶ予定だったのに」

 

 愚痴をこぼしながらアンニュイな表情を浮かべる少年。

 そんな少年の愚痴が聞こえたのか、どこからともなくかれらが獲物を求めて、少年を包囲するように姿を現す。

 それを見た少年は心底つまらなそうに――。

 

「……しかも、こんな薄汚いゾンビ擬きどもの相手なんて。あぁ、やだやだ」

 

 少年はズボンのポケットに手を突っ込んだまま首を横に振る。

 それを挑発ととらえたのかは定かではないが、かれらは少年に襲いかかるために前進する。

 そんなかれらの()()()()()を見て、少年は小馬鹿にするようにアルカイックスマイルを浮かべた。

 

「……まぁ、暇潰しぐらいにはなるかな?」

 

 そう言うと少年は軽く跳躍。

 しかし、少年の行動とは裏腹に、彼の体は軽々とかれらの身長を飛び越え、そして――。

 

「おっと、ごめんよ」

 

 かれらのうち、一体の頭を踏み潰して、()()すると、それを足場としてさらに跳躍!

 かれらの包囲網から脱出する。

 包囲網から脱出した少年は、かれらを見下した視線で見て、一言。

 

「それじゃ、オニごっこと行こうか。――オニさん、こちら。手の鳴る方へ、ってね」

 

 かれらを小馬鹿にするように手を叩くと、そのまま駆け出す。

 それを追ってかれらも歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

 

「よっ、はっ、ほっ、と!」

 

 少年はまるで軽業師のごとく、民家の塀を、電柱を、そして屋根を跳び移って移動し、時にはわざと道に降りてかれらを挑発するように拍手をしたり、その場で踊ったりしている。

 そうして再びかれらが近づいてくると、先ほどの焼き直しのようにかれらを踏みつけつつ脱出。それを繰り返していた。

 その中で()()()を探すように辺りを見回す少年。

 その時、少年は複数の人の気配を感じてそちらを見る。

 そこで彼は、自身にとって少しばかり遠い民家の屋根の上で話し込む男女と悪魔たち。即ち晴明たちを見つけた。

 晴明たちに気付いた少年は、楽しそうな表情で舌を出してぺろりと唇を舐めて湿らせると、独りごちる。

 

「あれが閣下の言ってた――」

 

 彼が独りごちている最中に、晴明たちのところで動きがあった。

 圭が少年のことに気付き、こちらに向かってきたのだ。

 そのことに感心したように声を上げる少年。

 

「――へぇ、話ではあのお姉さんたちは素人だって話だったけど」

 

 そして、圭を追いかけるように武器を装備した美紀も移動をしてくることを確認した少年。

 二人の行動を見た少年は、楽しそうに笑う。そして――。

 

「少し、からかってみるかなぁ?」

 

 そう言うと彼は、美紀と圭。二人から離れるように移動を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 圭は駆ける。偶然とはいえ、見つけることが出来た生存者がかれらに囲まれていることを知って――。

 今ならまだ間に合うかもしれない。

 かつて、晴明が透子を助けることが出来たように。そして、自身らが彼に助けられたように。

 何より、これ以上誰かが死ぬ姿を、悲しむ姿を見たくなかったから。

 

「――けいっ!」

 

 その時、彼女の後ろから美紀が声を掛けるとそのまま前に飛び出し、剣を一閃!

 近場にいたかれらの頸を斬り跳ばす。

 そして即座にMAGを練ると――。

 

「――マハ・ラギ!」

 

 火炎弾を複数顕現させると、かれらに向かって放つ。

 美紀が放った火炎弾はかれらに直撃し、パチパチと肉が焼ける音とともにかれらを火葬する。

 かれらが、ヒトだったモノが焼ける匂いに顔をしかめる圭だったが、雑念を振り払うとストラディバリを展開する。

 ストラディバリを構える圭だが、頭の中では先ほどの晴明とのやり取りを思い返していた。

 

 ――音がかれらを集める。なら……!

 

 ……そも、音とはなにか?

 音とは言い換えれば空気の振動であり、その中でも波打った振動が周囲に拡散されることで音と認識される。

 それは、つまり考え方を変えるなら、一つの衝撃波とも考えられるのではないだろうか?

 そして、衝撃波。即ち魔界魔法のザンやガルと同じような運用が出来るのであれば……!

 

 ――一点集中で吹き飛ばす……!

 

 圭は自身の考えを実証するようにストラディバリの弦を引き、(衝撃波)()()()()()()にのみ届くように制御する。

 本来であれば、そのような常識の欄外。魔技とでも呼ぶべき音撃は出来ないだろう。

 だが、今圭が引いているストラディバリは魔人-デイビットが所持していた逸品。まさしく妖刀や魔剣と呼ばれる物と同等の品であり、さらには圭。彼女自身も、幸か不幸か、音に、音楽に特化した才能の持ち主であった。

 

 そも、なぜ巡ヶ丘学院高校での劣勢時に晴明が加勢しなかったか。

 先に話した戦いの雰囲気を感じさせる。というのももちろん嘘ではない。ないが、あの戦いにはそれ以外にも複数の思惑があったのだ。

 まず始めに、晴明が圭に指摘した音がかれらを集めるという習性。それを利用して付近にいるかれらをそのまま校庭に集めようとしていたのだ。

 しかし、それだけだと圭が習性を覚えていて集まらないかもしれない。

 

 ――そこで晴明は一計を案じた。即ち、自身が戦闘に参加しないことによって彼女たちを精神的に追い詰め、パニックに陥らせる。という手を。

 

 なぜ、晴明はそんな弟子たちを危険に陥らせるような行動に出たのか?

 それこそが晴明の目的に合致したからだ。

 

 即ち二つ目の思惑である、数多くのかれらを彼女たちの手で葬らせるということ。

 なぜ彼女たちにそんなことをさせる必要があったのか?

 それはかれらを倒し、そのMAGを取り込ませることで、人としての位階を、簡単に言えばレベルアップさせることが目的であった。

 

 ――以前、アレックスが怒りに呑まれた胡桃を取り押さえるのに苦戦していたのを覚えているだろうか?

 本来であれば、そのようなことはあり得ないのだ。

 

 というのも、現在の、新型デモニカスーツとジョージのサポートを受けたアレックスの位階で言えば超人クラス。晴明より多少劣る程度でしかない。

 そして、胡桃に関して言えば、ついこの間。このバイオハザードが起きる前までは愚者、わかりやすく言えば異能に覚醒する前の一般人でしかなかった。

 それなのに現実にはあの時、アレックスは何とか胡桃を取り押さえることが出来た。という力関係だった。

 先程も言ったように、本来であればこのようなことはあり得ない。

 なぜなら超人と愚者には隔絶とした差、それも大人と子供などという生易しいことは言わず、像とアリほどの差があるのだ。

 これで良い勝負が出来るなどと考える方が愚かだろう。

 だが、現実には出来てしまっていた。

 その理由が、先程も言ったMAGによる位階の上昇、レベルアップだ。

 

 彼女、恵飛須沢胡桃はアウトブレイク発生翌日から、貴依やアレックスと一緒に安全圏を確保するために、日夜かれらと戦っていた。

 討伐数こそ、無意識のうちにシュバルツバースの地獄を覚えていたアレックスが持つ卓越した戦闘技術の差で劣っていたものの、それでも一般人としては破格の戦果を誇っている。

 これは、聖典世界(がっこうぐらし!)での彼女の活躍からも一目瞭然だろう。

 そして、それほどのかれらを屠っているのならばそれ相応のMAGを獲得しているのは道理であり、さらに言えば――。

 この世界に限って言えば、以前ジョージが言ったように、彼女は破格と言っても良いデビルバスターとしての才覚を持っていた。

 

 これはもしも、ifの話になるが――。

 もし、彼女が学園生活部を去ることなく、人としてデビルバスターとしての道を歩んだのであれば、いずれ彼女は一廉(ひとかど)の、それどころか、流石に葛葉ライドウには劣るが、それでも他の退魔組織の長や、エリートたちにも引けを取らない実力者になっていただろう。

 それほどの才能の持ち主だったのだ。恵飛須沢胡桃という少女は。

 

 そして、あの時点。胡桃が学園生活部を去ることになった邪鬼-アマノサクガミとの戦いの時点でその片鱗は既に見せていた。

 それがアレックスが彼女を止めるのに苦労していた理由であり、だからこそジョージが驚愕していたのだ。

 まぁ、今回の胡桃の例はかなり特殊なもの――MAGの獲得はもとより、彼女自身の才覚が大きかった――となるが、それでも裏の界隈からしたら鎧袖一触の雑魚でしかないかれらを屠るだけで、それなりの稼ぎになるのであれば、これを放っておく手はないだろう。

 

 ……時に、少し話は変わるが『パワーレベリング』という言葉をご存知だろうか?

 

 ――パワーレベリング。

 

 主にMMORPGなどの複数人でプレイするゲームにおいて、初心者や低レベルのプレイヤーが、高レベルのプレイヤーにレベリングの手伝いをしてもらうことだ。

 尤も、この行為は初心者などのプレイヤースキルが育たないこともあり、あまり推奨されないのだが……。

 唐突になにを言っているのか。と思われるかもしれないが、よくよく思い返して欲しい。どこかで見た構図ではないだろうか?

 ……そう、蘆屋晴明(高レベルプレイヤー)祠堂圭、直樹美紀(初心者並びに低レベルプレイヤー)の関係性だ。

 

 これこそが三つ目の思惑、もし彼女たちの戦果が心もとない場合の保険。彼女たちを救助するのと並行して晴明主導のパワーレベリングを行うものだった。

 但し、こちらに関しては二人が予想以上に健闘したことにより、本当に保険のまま終わったが。

 それがあの時、晴明が下した及第点。という評価の真相だった。

 

 そして、最後の四つ目。というよりも、これは一つ目のかれらを意図的に集める理由の最たるものとなるのだが、以前デイビットによるかれらを誘導したことによる襲撃。

 これを退けた後、一時的に付近からかれらが一掃されて、ほんの一時ではあるが巡ヶ丘学院高校に平穏が戻っていたのだ。

 ただ、次第に遠方のかれらが再び付近に現れたことでサバイバル生活を余儀なくされたが、それでも一時的であっても平穏があるのとないのでは雲泥の差だろう。

 なおかつ、最大戦力となる晴明自身が別行動をとる、となると尚更だ。

 ……つまり、晴明は自身がここ(巡ヶ丘学院高校)を離れるにあたって、意図的に襲撃を再現し、つかの間とはいえ再びの平穏を取り戻そうとしたのだ。

 

 それら複数の思惑により行われた晴明主催、美紀、圭実行の狩りによって彼女たち自身は自覚していないが、大幅なレベルアップを遂げており、その結果――。

 彼女たち自身、疑問にも思っていなかったようだが、一戸建てとはいえ屋根上から飛び降りて怪我一つなく、圭に至っては1km先の音を聞き分け、そして今回の魔技を会得したのだった。

 無論、圭だけではなく美紀にも成長の兆しがあるのだが、それについては本人が自覚しなければ会得した、と気付かないだろう……。

 

 とにもかくにも、そういった理由での戦力強化によって、先の戦いよりも効率的、かつ合理的にかれらを殲滅する美紀と圭。

 只人であったはずの二人の殲滅劇に、かれらを歯牙にもかけていなかった少年は、その活躍ぶりに手放しで称賛する。

 

「へぇ! お姉さんたち強いんだねぇ!」

 

「えへへ、そう? って、それよりも大丈夫だった、きみ」

 

 少年に称賛されたことで気を良くした圭だったが、すぐに少年に駆け寄ろうとする。

 少年もまた、彼女の心配に大丈夫だと返答しようとするが――。

 

「うん、ボクは大丈――。あらら、もう来ちゃったかぁ……」

 

「――え?」

 

 その少年の呟きに不思議そうな顔をする圭。その時――。

 

「圭、美紀! ()()()から離れろ!」

 

 晴明が二人を守るように前に躍り出ると、生存者である筈の少年に向けて倶利伽羅剣を構える。

 そのことに抗議の声を上げようとする圭。しかし――。

 

「ちょっ、はるあ――」

 

「なぜ、なぜ貴様がここに居る!」

 

「……え?」

 

 抗議の声を上げようとした圭だったが、晴明の切羽詰まった怒鳴り声にかき消され困惑する。

 それに構わず晴明は()()の名を、本来ここにいる筈のない彼の名を口にする。

 

「――高城(タカジョー)絶斗(ゼット)!」

 

 晴明の、彼の警戒したような怒鳴り声を聞いた高城絶斗と呼ばれた少年。

 『真・女神転生デビルチルドレン』に於いて、デビルと称される悪魔たち。その中で深淵魔王-ゼブルと呼ばれた大悪魔の人間体にして、この世界に於いては『高き館の主』『蝿の王』とも呼ばれる大魔王-ルシファーの側近、魔王-ベルゼブブ。その分霊(わけみたま)であり、化身(アバター)たる少年は、愉しげに、皮肉げに笑みを浮かべるのであった。

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