DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
こんな自分のある意味欲望ぶっ込みの本作ではありますが楽しんでいただけたら幸いです。
そして今回は幕間、主人公が本編で動いている合間に高校で起きた出来事についてです。
さらに今回も本来の世界線で死亡したキャラなどが出てきます。ではどうぞ。
巡ヶ丘市内にある公立高校、巡ヶ丘学院高等学校の二階、図書室にて勉学に励む一人の少女の姿があった。
黒色の長い髪にアイスブルーの瞳、そして日本人にしては色白の肌の彼女は、自身が所属する二年B組ではロシアンハーフで、文武両道を地で行くと皆から評判の生徒だった。
その彼女であるが、本人は自衛官であると同時に組織内で一目置かれる父と、ロシア人であり類まれなる知能を持ち科学者として働く母を幼少のときから見てきた結果、今の状態でもまだ足りぬ、と、自身にとって誇り高い両親に少しでも追いつくために、今日もまた励んでいる。
勉学に励んでいる少女であったが、彼女自身が机に置いていたスマートフォンからアラームが鳴る。そのアラームを止めて時刻を見た少女は、これ以上ここで勉強をしていると帰宅時間が遅くなると思い、荷物をまとめ帰宅の準備をするが、その時。
──悲鳴、そして絶叫。
校庭から聞こえてきたその声に彼女は何事か、と図書室の窓へと向かう。そこで彼女が目にしたものは──。
「……なによ、アレ」
人が人を喰らい、そしてパニックに陥った人々が逃げ惑う光景だった。
そしてさらには喰われたはずの人が起き上がり、逃げ惑う人々に襲いかかる有様まで見える。
まるでパニック映画のワンシーンを見せられていると感じた少女だったが、自身に頬を軽くつねって痛みが走り、これが現実だと理解する。内心、夢であることを願った少女であったが、これが現実である以上一時も無駄にするべきではない、と考える。
「まずは、避難すべきね」
そう呟く少女だったが、まずは、どこに避難するべきかを考える。
──自宅。却下、校庭に移動する以上、いま人々を襲っている「かれら」と相対する可能性が増えるし、何よりこの異常事態がここだけとは限らない。
──体育館。却下、校庭と近すぎる以上、次に「かれら」が襲う可能性が高い。
──ここで籠城。却下、物資がない以上長時間の籠城に適さない上に、二階という中間位置にある以上、いざという時に脱出することが難しくなる。
──屋上、確かあそこには園芸部の家庭菜園があったはず。それに入り口も一箇所だから、そこを固めてしまえばある程度の安全性は確保できる。ここなら問題ない、はず。
そうして避難場所に見当をつけた彼女は、次に武器になりそうなものを探すと……。
「あった。これなら使えそうね」
恐らく図書室の掃除用であろう、スチール製のモップが置いてあった。
彼女はそれを手に取り、軽く振って感触を確かめる。
「うん、大丈夫そう」
当座の武器も手に入り、いよいよ移動のために図書室の扉に手をかけた、その時。
「きゃあァァァあ!!」
絹を裂くような悲鳴が廊下に響き渡る。
少女は慌てて廊下に飛び出し、その悲鳴が聞こえた方角を見ると、そこには。
かれらに喰われて痙攣を繰り返す女子生徒と、その奥に喰われた生徒と同じ制服、あの色からして上級生か、が恐怖のせいで動けないでいる。
このままでは、あの首元にチョーカーを巻いている上級生はかれらに喰われてしまうだろう。
自身の安全だけを考えるなら彼女を囮にして、今のうちに三階へ向かうのが上策だろう。しかし──。
「それでは、父さんに顔向けできないわね……」
彼女が考えるように、今の異常事態に父や、父が所属する部隊が動かないとは思えない。そして彼女自身、人々を守る父とその仕事に誇りを持っている以上、端から見捨てるという選択肢はない。
「はァァァァっ!」
彼女は自身に気合を入れるように気炎を上げると走り出して、未だに女子生徒を喰らっているかれらに対してモップを勢いよく振るう。
彼女の振りの威力が凄まじかったのか、女子生徒を喰らっていたかれらは吹き飛ばされると同時に廊下の窓に叩きつけられ、そのまま突き破りながら外へと落下していった。
それを見た少女は、急ぎチョーカーを付けた上級生の元へと向かう。
「大丈夫ですか、先輩!」
「あ、あぁ……」
少女が語りかけてきたことにより、その上級生の震えは幾分か収まったようだが、それでもまだ動けないようだ。
その時、少女は後ろに微かな気配を感じて振り返る。そこには先ほどまで喰われていた女子生徒が起き上がろうとしていた。しかし、その顔に生気は全く見えない。かれら化してしまったのだろう。
そして今度は後ろからドサリ、と音がする。おそらくチョーカーの先輩が腰を抜かして尻餅をついたのだろう。だが今はそちらに構っている暇はない。
少女はモップをキュ、と握りしめていつでも攻撃できるように構える。
起き上がった女子生徒はこちらを目指してくるが、その動きはおぼつかないものであり、なおかつ緩慢だった。
これならばすぐに処理できる、と判断した少女は、片足を少し下げると同時に胴体もひねり、モップを持つ腕も後ろに目一杯下げて、勢いよく突きを繰り出せる体勢にする。
そしてかれらと化した女子生徒が少女の間合いに踏み込こんだ時、全身のバネを使って渾身の突きを放つ。その目標は女子生徒の頸!
風切り音とともに女子生徒の頸を狙ったモップの芯は、見事に命中し、ぐしゃり、という骨を砕く手応えを少女に残して、女子生徒は吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた女子生徒は、ビクビク、と痙攣していたがすぐに活動を停止した。
そのことを確認した少女はチョーカーを付けた先輩の方に振り返るが、彼女は吹き飛ばされた女性生徒だったものを見つめている。もしかしたら、仲の良い友人だったのかもしれない。
しかし、彼女はもう既に手遅れだったし、このままでは二人共仲良く喰われてしまう可能性があったのだから、そこは理解してもらうしか無い。たとえそれが難しいことであっても。
そう思いながら少女は先輩に近付くが、当の先輩は彼女が近づいてきた時に恐怖からか、か細い悲鳴を上げる。
「ひっ」
少女はそれを気にせずに先輩に話しかけるが。
「先輩、もう大丈夫です。立てますか?」
少女に対する拒絶なのか、もしくはただ単に否定だけなのか、彼女は顔をこわばらせながら、ゆっくりと首を横に振る。
先輩の恐怖に縮こまった姿を見た少女は、彼女の横へ行くとそのまま肩を貸す。
少女に触れられた当初は、ビクッ、と怖がった反応を見せた先輩だったが、少女が自分に危害を加えないと分かると、そのまま少女に身を任せる。
その先輩の反応を見た少女は彼女へ声をかける。
「先輩、まずは三階へ行きますよ。その後は屋上へ、そこなら多分安全です」
その後も、ことあるごとに、大丈夫です、助かりますよ、と先輩を励ましながら少女は屋上を目指し、かれらが近くにいる時は、先輩を下ろして、かれらを処理して先へと急ぐ。だが──。
後少しというところで、後ろからこちらに、おそらくは同じく屋上に向かおうとしている男性の怪我人を背負う、ツインテールの髪型の女子生徒、制服から彼女もまた先輩であろう生存者と、その後から大量のかれらの姿があった。
「あと、少しなんだけど、見捨てるわけにもいかないか……」
自身の心情的にも、という個人的な理由もあるが、それ以上に彼女を見捨てた場合取り返しのつかない事態になると、直感的に思った少女は、先輩を下ろすと今までとは違い、彼女に先に屋上へ行くように促す。
「先輩、ここから先は、一人で屋上に行ってください」
その言葉に彼女のことを信頼、むしろ依存し始めている先輩は驚いて彼女を見る。
「お、おい! そんなこと出来るわけ無いだろっ! お前はどうするんだよ!」
その先輩の質問に少女は簡潔に答える。
「あの男の人を背負っている先輩が屋上に入るまで、ここで足止めします。大丈夫、終わったらすぐに行きますから」
先輩を安心させるように、薄く笑いながら告げる少女。その少女の姿を見た先輩は、一瞬躊躇するものの、彼女の言う通り屋上へと向かっていく。しかし屋上に入る直前に少女の方に振り返ると。
「おい、お前! 絶対に来いよ! まだ、名前も聞いてないんだからな! あと、私の名前は柚村貴依だ!」
一方的にそれだけを言うと、屋上へと消えていく。
貴依の空元気を見た少女は、苦笑しながら、そういえば励ますこと優先で自己紹介もしてなかったな、と思う。
いや、今はそれよりも目の前に走ってきている、もう一人の先輩を救うためにも行動を起こさないと、と頭を切り替えて彼女の元へと駆ける。
あの先輩も男の人をずっと背負ってここまで来たのだろう、額に汗を流し、何よりも息が上がってきている。このままでは、いくら彼らの足が遅いと言っても追いつかれる可能性がある。だから──。
恵飛須沢胡桃は負傷した憧れの先輩を背負い、なんとかここまで来ていたが正直限界が近かった。本来であれば多少危険があったとしても問題なく、この訳のわからない連中から逃げおおせることは出来ていただろうが、今回は言うなれば少し間が悪かった。
憧れ、否、恋心故に、彼に少しでも良いところを見せようと、本来既に引退していた陸上の走りを先輩とともに指導し、そして実演していた。
確かに彼女は引退する前までは陸上部のエースとして部を牽引していたし、体力も他の部員よりはあるが、人の域を出るわけではないし、膂力にしても今まで運動をしていたこともあり、一般的な女性よりあるのは確かだが、それでも成人男性と力比べをした場合、勝つのは難しいだろう。あくまでも、常識の範囲内に収まっている。
胡桃は先輩と同じ大学に進学を希望し、引退後は勉強一筋だったために運動から離れた状態で、今回の部活を終わらせた後に、この異常事態に遭遇し、さらに負傷した男性を抱えた状態でここまで逃げてきたのだ。正直、途中で捕まらなかったことが奇跡に等しい。
「くそっ! 先輩、あと少しだから頑張ってくれよ!」
胡桃は背負っている先輩に話しかけるが、当の本人は荒い息をして、胡桃の言葉には反応しない。
その時、前方から声が聞こえてくる。
「あと少し頑張って!」
そう言いながら、黒髪の女子生徒が胡桃の後ろに走っていく。
「あ、おい!」
「先に行って! 足止めします!」
「……ごめん!」
胡桃は一言女子生徒に謝ると先を急ぎ、そのまま屋上に駆け込むと、そこには、お互い抱き合って無事を喜んでいる女子生徒や、それをどこかオロオロと見ている女子生徒、それにめぐねえ、国語科教師の佐倉慈の姿があった。
ツインテールの先輩と居場所を入れ替えるように前に躍り出た少女は、まずは手近なかれらにモップで足払いを仕掛ける。それで先頭のかれらが倒れるとそれに躓くように後続たちも引っかかって倒れていく。
だが、それで全てを足止めできるわけでもなく、その横をすり抜けるように数体はこちらへと向かってくる。
最も、彼女自身そのことは予測済みだったようで、後方にかれらがいないか確認しながら、隙きの小さい刺突で前方を牽制しつつ、屋上の階段へとじりじりと後退している。
そして、屋上の階段まであと少しのところまで来ると、彼女はもう一度、今度は倒れる位置を調整するように手近なかれらに足払いを仕掛け転倒させると同時に、モップを投槍のように投擲。
一時的にかれらの前進が完全に不可能になったことを確認すると、少女は踵を返し全力で屋上へと駆け出す。
無論かれら自身もそんな少女を逃すまいと追いかけようとはするのだが、前方が詰まっていることと、何よりも元々の足が遅い所為でまともに追いかけることが出来るわけもなく、少女はそのまま無事に屋上へとたどり着く。
親友である丈槍由紀との再会をお互い涙ながらに喜んでいた貴依だったか、屋上の扉が開いたのを確認して、そちらを見るとそこには先ほどの男性を背負った女子生徒──確か元陸上部の恵飛須沢とかいう名前だったはず──が、避難してきた。
正直、自分を助けてくれた後輩ではなかったことに落胆しながらその姿を見ていた貴依だったが、後輩は彼女を助けるために足止めをすると言った以上、その彼女が先に来るのは当然か、と思いながら、あの頼もしい後輩の無事を祈る。
その祈りが通じたのかは分からないが、今度は扉がバン、と勢いよく開け放たれ、その音に全員の視線が入り口に注がれる中、自分を助けてくれた後輩が姿を現す。
多少息が乱れているものの、無事な姿を見た貴依は安堵していたが、その後輩はめぐねえに対して大声で呼びかける。
「先生! 何か、ここを塞げるものを、バリケードを作らないと!」
その言葉を聞いた貴依は周りを見渡すと、園芸部用のロッカーが見えた。
貴依は由紀から離れると、そのロッカーがある場所まで行って、オロオロしている同級生とめぐねえに声をかける。
「そこの貴女とめぐねえ手伝って! これをあそこまで運ぶよ!」
貴依の言葉に最初は驚いていた二人だったが、後輩が塞いでいた扉から、バン、バン、と叩く、と言うよりもむしろ殴るような音と、呻き声が聞こえてきたことにより、顔を青ざめながら慌ててこちらに来る。
そしてその後は、ロッカーを扉の前に運び、四人で即席のバリケードを作っていたのだが……。
「うぁぁ!」
「……今度は何!」
後輩が苛立ったように、声がした方向に向くと、そこには恵飛須沢が一緒につれてきたはずの男性に襲われていた。まさか……!
「先輩、なんで……!」
「その人は、もう手遅れよ!」
そう言いつつ後輩は、恵飛須沢を助けるために走り出そうとするが、その前に。
「うわあぁあぁぁ!」
恵飛須沢が、近くに落ちていたシャベルで、男の人の頸を……。
その後、男性に馬乗りになって、何度も、何度も……。
しかし、途中で由紀が恵飛須沢に飛びついて必死に止める。
「もうだめ! そんな、顔しちゃだめだよ!」
泣きながら必死に止める由紀。それに感化されたのか恵飛須沢も手を止めて、そして由紀を抱きしめてあいつも泣き始めた。きっとあいつにとって、あの男の人は大切な人だったんだろうな……。
私はそう思いながら、帰ってきた後輩やめぐねえたちとバリケードを作り続けた。
バリケードを作り終え、胡桃先輩も落ち着いた頃に私たちは全員、自己紹介をしようという話になった。とは言っても私以外の紹介は全員三年で同学年なのと、そして三年の教師だったから早く終わってしまったけど。
そしてこの中では唯一の大人で、三年の教師である佐倉先生が私に話しかけてくる。
「でも、唯野さんも無事で良かったわ」
「めぐねえ、この後輩のこと知ってるのか?」
貴依先輩が佐倉先生に聞くと、先生は、めぐねえじゃなくて、佐倉先生! と、怒りながらも質問に答える。
「ええ、学年は違うけど優等生として職員室でも有名だったから。流石に下の名前までは、先生も知らないんだけど……」
確かに、先生たちからの印象は良かったとは思ってたけど、有名になるほどだったのか、と思いながらも、私も話す。
「私も先生の間で有名だとは知りませんでした……。私の名前も出たので改めて自己紹介しますね」
私のその言葉に、貴依先輩と由紀先輩が、お~、と興味津々そうにこちらを見てくる。
他の佐倉先生や、胡桃先輩、悠里先輩もこちらを見てきたので自己紹介を開始する。
「それでは、改めて。2年B組所属、【唯野=アレクサンドラ】、親しい友人からは【アレックス】と呼ばれています。今後ともよろしく、です」
そう私は自己紹介したのだった。
今話で登場したアレックス、一応補足しておきますと、がっこうくらし! のキャラクターでも、オリキャラでもなく、出典はメガテンシリーズの「真・女神転生 Deep Strange Journey」からとなります。
念の為の補足でした。……最も彼女に関しては一部、独自設定も入れられていることは確かですが。