DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第六十一話 寄り道と休息

 絶斗が去って暫くしたのち、ようやく精神的に落ち着いてきたのか圭たちは泣き止んで、抱きついていた晴明から離れた。

 特に圭は、先ほどの精神的負荷もあって顔を青くしていたが、それでも気丈に微笑みながら晴明に礼を言う。

 

「あ、ははは……。晴明さん、ありがとうございます」

 

 そんな圭の様子に、晴明は心配そうに話しかける。

 

「圭、大丈夫か? ……無理するんじゃないぞ?」

 

 晴明の心配を受けた圭は、想い人の心配が心地よかったのか、はにかみながら大丈夫だと告げる。

 

「えへへ……。大丈夫ですよ。うん、大丈夫……」

 

 そう言いながらも、圭の体は小刻みに震えていた。先ほどまで迫っていた命の脅威(高城絶斗)。その恐怖は完全に拭えていないのだろう。

 そのことを理解した晴明は再び圭を抱き締める。

 晴明の行動に、圭は目をぱちくりと瞬かせる。

 

「……はるあき、さん?」

 

「圭、すまない……。怖い思いをさせた」

 

 晴明の口から出た謝罪の言葉。それを聞いた圭は――。

 

「だい、じょうぶですから……。だ、いじょう、うぅ……」

 

 やはり、無理をしていたのだろう。大丈夫、とうわ言のように繰り返してはいるが、それでも顔は再び涙で濡れはじめていた。

 そんな彼女を安心させるように、晴明は彼女の頭を優しく撫でる。赤子をあやすように。自身は、そしてお前はここにいる。そう告げるように……。

 

「けい……。はるあきさん……」

 

 そんな二人を、美紀はどこか複雑そうに見つめていた。

 親友()のことは心配だけど、でも私もここにいるのに……。と言いたげに。

 しかし、そこで後ろから唐突に声が聞こえてきたことで、美紀は体をビクつかせる。

 

「――あらあら、いけない人たちですねぇ」

 

「――え?!」

 

 その声に驚き振り返る美紀。そこには全体的にぼろぼろに、普段以上に肌が露出してかなり際どい格好となった秘神-カーマの姿があった。

 声の主が味方であることを理解してほっ、とため息をつく美紀。

 だが、すぐにカーマのぼろぼろな姿に違和感を感じ、素っ頓狂な声を上げる。

 

「……って、大丈夫なんですか?! どうしたんですか、カーマさん!」

 

 美紀の大声に、ようやく晴明たちも異変に、カーマが現れたことに気づく。

 そして、晴明はカーマが無事だったことに喜び、声をかける。

 

「カーマ! 無事だったか!」

 

「……この姿が無事に見えるんですか、貴方は――!」

 

 晴明の言葉に、カーマから渾身の突っ込みが辺り一帯に響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後、傷を負った身体を癒した晴明たち。そんな彼らは今後どうするかを話し合うためにも、安全地帯を確保する必要が出てきたこともあり、手近にある住宅を――屋内にいたかれらを排除して――確保していた。

 そして人心地つくために軽い飲み物を飲んだ晴明は、改めて指針をどうするかを相談するために面々を見渡して話し出す。

 

「……さて、じゃあこれからどうするかな」

 

「どうするか、ですか? ……イシドロスには向かうんですよね?」

 

 晴明の言葉に疑問を覚えた美紀は、確認するように問いを投げ掛けた。

 そのことに晴明は首肯すると、自身が懸念していることを話す。

 

「ああ、それはもちろんそうなんだか……。ただ、さっきの戦いでこちらもかなり消耗してしまったからなぁ……。流石にこの状況で強行軍をするわけにもな」

 

 彼の物言いになにを懸念しているのか、朧気に理解した美紀は、なるほど。と相槌を打つ。

 

「――つまり、今日はここで休憩するか。もしくはさらに進むか決めかねている訳ですね?」

 

「まぁ、端的に言うとそうだな」

 

「それの何が問題なんですか?」

 

 二人の会話についていけなかった圭は、疑問顔で首を傾げている。

 そんな彼女に美紀は苦笑すると、何が問題なのか解説する。

 

「あのね、けい? 私たちの取り敢えずの目的地として朱夏さんたちのいる聖イシドロス大学に向かってるのはわかるよね」

 

「それは流石にわかってるよ!」

 

 美紀の確認するような口調に、流石にそこまで馬鹿じゃない。と憤慨する圭。

 そんな彼女をなだめながら美紀は話を続ける。

 

「けい、落ち着いて。……それで、本来。晴明さんの口ぶりからすると今日中にイシドロスに着くつもりだったの。……ですよね、晴明さん?」

 

「ああ、その通りだ」

 

 美紀の問いかけに首肯する晴明。

 そんな彼に、圭はいくらなんでも無茶な。とでも言いたげな顔をする。

 そして晴明自身も、圭がその考えに至ったことを察して、どこか呆れたような顔をして彼女を見る。

 晴明から呆れた顔で見られた圭は憤慨するが……。

 

「あのなぁ、圭……。お前、あの屋根上からここまで、どうやってきたよ?」

 

「そんなの! あそこからぴょん、って飛び降り、て……? あっ……」

 

 そこで何故晴明から呆れた表情で見られたのか察した圭は言葉を失う。

 それもそのはず、まずはじめにいくらある程度の高さしかないと言っても、二階部分から躊躇なく飛び降りたが、以前までの圭であればどんなに運が良くても受け身をとっての軽症。最悪の場合は足の骨を骨折していただろう。

 

 次に、その後何事もなくここまで移動したが、どうやって移動したか?

 ……そう、普通に走って、だ。そしてあの民家からここまで約1㎞あった訳だが。

 そこまでの区間を、彼女は一分もかからずに駆けている。

 ……因みに、一般的なマラソン選手。彼らが1㎞を駆けるのにかかる時間は、約二分三十秒から三分と言われている。

 そのことからも、圭が如何に常人離れしてきたかが理解できるだろう。

 なお、さらに蛇足だが、美紀に至ってはサーベルと盾を装備した。即ち、約5㎏から10㎏の重りを着けた状態で圭に追い付いている。原作(聖典世界)ではシャベルを背負っていたとはいえ、胡桃相手に短距離走で接戦を繰り広げた彼女の面目躍如と言えるだろう。

 

 ……それはともかくとして、ここまで言えば理解していただけると思うが、今回のような邪魔が入らない限り、巡ヶ丘学院高校から聖イシドロス大学まで一日で駆け抜けることは、今の彼女たちなら決して不可能ではないのだ。

 まぁ、未だに自分たちが一般人である。と思っていた二人からすると、認めがたいことではあるのだが……。

 事実、そのことを認識してしまった圭は、ほんの少しであるが顔を引きつらせている。逆に美紀は、どこかで確信があったのか。やっぱり、と事実として認めたくないが、現実としてそうなってしまった。とでも言いたげに諦めたかのような顔をしていた。

 

 そんな、どこか重苦しい雰囲気を醸し出す二人を見て、晴明は苦笑を浮かべる。

 彼としても二人の感覚は痛いほど理解できる。なぜなら、かつて自身も通った道なのだから……。

 とはいえ、いつまでもそのままというわけにもいかない。

 遥か彼方に旅立った彼女たちの意識を呼び戻すために、晴明は、ぱんぱんと手を叩く。

 その音で二人は正気に戻ったようで、晴明に方へ顔を向ける。

 晴明はそんな二人に、優しい、本当に優しい笑顔を浮かべると話しかける。

 

「ほら、二人とも。あんまり考え込むな。今はこれから先どうするか、だろう?」

 

「あ、はい。そうですね……」

 

 晴明の慰めとも聞こえる言葉に、比較的ショックが少なかった美紀が答える。そして、圭もまた数回深呼吸を繰り返して、精神を落ち着かせると彼の声に耳を傾ける。

 二人がこちらに対して耳を傾けたのを確認した晴明は、自身が考えた今後のことについて話し始める。

 

「それで今後の行動についてだが……。まず、イシドロスに直接向かうのは無しだな。今からでは良くて夜中、場合によっては日を跨ぐ可能性すらある」

 

 そう言いながら晴明は部屋の窓から空を見る。

 時間としては午後三時頃だろうか? そこには中天よりもほんの少し日が傾いている光景があった。

 これからさらに日が傾くと、どんどんと辺りが暗くなってくる。

 そうなってくると、今度は視認性の悪さから奇襲を受ける可能性が増えるだろう。

 さらに言えば、夕方は逢魔が時とも呼ばれ古来より魔物と、悪魔との遭遇が多くなる。つまりことさら危険性が高くなる、ということだ。

 無論、晴明だけならそこまで問題にならないだろう。高城絶斗(深淵魔王-ゼブル)クラスの大悪魔が現れない限りの話であるが……。

 

 だが、今ここには圭と美紀もいる。

 確かに二人ともある程度の力は得ているが、それでもまともに戦えるのは、中の下、今まで現れた悪魔で言えば妖獣-ライジュウ辺りが精一杯だろう。

 それでも、覚醒してまだ一月も経っていないことを考えれば、破格と言って良い成長スピードだ。

 もっとも、一部には覚醒して一週間程度で、魔王や大天使をも殴り殺せるようになる規格外(デビルサバイバー主人公)などもいる。

 まぁ、そのような規格外は本当に、本当にほんの一部のみなので気にしても仕方ないのだが……。

 

 ……少し話が脱線してしまったが、つまり何が言いたいかというと、この状態で無理に旅路を急ぐと悪魔の――しかも現在の巡ヶ丘はことさら悪魔が顕現しやすい土壌になっている――奇襲を受ける可能性が極めて高くなる。

 かといって、ここに止まるのも悪手だ。

 なぜなら、今晴明たちがいる民家にはろくな防衛設備など存在しない。

 これが巡ヶ丘学院高校であれば、最低限足止め用のバリケードなどの設備があった。

 しかし、だからと言って今から作るとなっても資材集めから始めないといけないため、はっきり言って完全な状態にするのは不可能だ。

 

 行くも悪手、止まるも悪手。ならばどうするか?

 その答えは晴明のこれまでの旅路。彼が訪れた場所にあった。そして、その場所は二人も知っている。それは――。

 

「だから、今は少し目指す場所を変えようと思う」

 

「……? えっと、どこへ行くんですか?」

 

 美紀は場所の見当がつかないようで、頭に疑問符を浮かべながら、晴明へ問いかける。

 美紀の質問に、晴明はなんでもないように、かつて訪れた。今は巡ヶ丘学院高校にいる()()()()によって案内された場所を告げる。

 

「――秘密基地だ。学園生活部と合流する前にいたあの場所を目指そうと思う」

 

『――あぁ!!』

 

 晴明の言葉に美紀と圭、二人ともが納得とともに、その手があったか! と言わんばかりに声を上げる。

 事実、あの場所は避難所として、シェルターとして機能する場所として、短い間だが彼女たちも生活していた。

 出入口に関しても、金庫室もかくや、と言えるほどの堅牢さを誇っており、そうそうのことでは破られる心配もない。

 そして何よりも、あの場所は巡ヶ丘学院高校と聖イシドロス大学の中間地点に位置し、移動という意味でもほぼ無駄がない。

 まさに、色々な意味でうってつけの場所と言えた。

 旅路を急ぎつつも安全地帯へ避難する。そのことを理解できた二人は一も二もなく同意する。

 

「そっかぁ、あそこなら安全だね!」

 

「うん、そうだね。けい。……晴明さん、今からでも移動を開始しますか?」

 

「あぁ、二人が大丈夫ならすぐにでも移動しよう。時は金なりともいうしな」

 

『はいっ!』

 

 晴明の確認に、二人もなにも問題ない。と言うように元気よく返事を返す。

 その二人の様子に晴明は、ほっ、と安心した表情を浮かべると移動を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 そうして移動を開始した晴明たち。

 念のため、悪魔の奇襲やかれらの襲撃を警戒しながらの移動であったが、驚くほどに何事もなく目的地である秘密基地へ到達することが出来た。

 ただ、かれらの襲撃がなかったことについてはそれなりの理由があった。

 

 端的に、わかりやすく言えば、付近のかれらは軒並み絶斗に、そして彼を一般人として誤認し救出に向かった美紀、圭らによって既に駆除されていた。

 即ち、知らず知らずのうちに彼女たち二人は、結果的に自身らの利になる行動を取っていたということになる。

 そのことに気づいていない二人は、ホッとした表情を浮かべながら秘密基地へ到着したことを喜んでいた。

 

「みき、ついたよぉ……」

 

「うん、良かったね。けい……」

 

 そんな緊張感が途切れた二人に対して、晴明は即座に声をかける。

 

「ほら、二人とも。まだ到着しただけで中には入ってないんだ。気を抜くのはまだ早いぞ」

 

 晴明から苦笑とともに注意を受けた二人はバツの悪そうな顔をして。

 

『……はぁい』

 

 しょんぼりとした返事をする。

 そんな二人の様子に、晴明はぷっ、と吹き出す。

 その晴明の反応に二人、特に圭はムッとした表情でまるでハムスターのごとく頬を膨らませる。

 その顔を見た晴明と、そして横にいた美紀もまた彼女の可愛らしい様子に笑い始める。

 そして、そんな二人につられるように圭も笑う。

 そうして一頻り笑った三人は今度こそ秘密基地の中へと入っていく。

 

 中へ入った晴明は感慨深そうに呟く。

 

「……留守にしたのは一、二週間程度のはずなんだけどな。なのに、本当に久々に訪れた気分だ」

 

「そうですねぇ」

 

「うんうん」

 

 晴明の呟きに美紀と圭も同意するように頷く。

 そして晴明は固くなった身体を解すように伸びをすると二人に声をかける。

 

「それじゃあ、今日のところは休むとしよう。二人もいいな?」

 

「はい」

 

「うんっ!」

 

 その言葉を最後に其々がかつて使っていた部屋へ移動する。

 そして、全員ともに身体を休めるために休息を取るのだった。

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