DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 こんにちは作者です。
 今話掲載に当たり、念の為あらすじに注意文を一文追加させていただきました。

 ※この物語はフィクションです。実在の人物・国家・団体とは一切関係ありません。

 というものです。
 一応のご認識のほど、よろしくお願いいたします。


幕間7  (うごめ)く者たち

 ――日本国某所。

 

 夜闇を照らすネオンの光が輝く歩道を、街道を帰宅のために、あるいはこれから仕事のため、学業のために行き交う人、ヒト、ひとの群れ。

 巡ヶ丘でバイオハザードが起きているとは、信じられないほど平和な光景が広がる中、とある二人の男女がレストランで食事に舌鼓をうっていた。

 

 その中の一人、サングラスを掛けどこか厳つい雰囲気の、道行く人に聞けば十人のうち十人が()()()の人だと判断するだろう男性は、己が食事を取ることをやめると相方の女性へ問いかける。

 

「おい、結局あれはどうなったんだ?」

 

 男の問いかけに、緑色のドレスに身を包んだ妙齢の美女は、ナイフとフォークを音もなく置くと、優雅な仕草で口元を拭いて彼の質問に答える。

 

「ええ、()()()ですわね。あれについてはそのまま放置で良い。とのことでしたわ」

 

「しかしな、マヨーネ――」

 

 そこでマヨーネと呼ばれた女性。即ち、黒崎澄子の保護者兼師匠であるファントムソサエティの幹部が一人。マヨーネはしぃ、とでも言うように人差し指を己が唇の前に立てる。

 

「こんなところで名前を出さないでくださいまし。ここはカタギの店でしてよ」

 

「あ、ああ。そうだな。すまん」

 

 そう言って頭を下げる男。彼もまたマヨーネと同じくファントムソサエティの所属であり、その中でも最強と謳われる悪魔召喚師。名をフィネガンといった。

 そんな、ある意味で裏世界の大人物と呼べる二人がこのような場所でなにをしているのか?

 それは二人の所属している組織に関係している。

 

 ――ファントムソサエティ。

 

 本来この組織の活動内容としては、各地への潜入、破壊工作など、どちらかと言えばガイア教よりの後ろ暗い活動を行っていた。

 しかし、現在はそのような活動は行っていない。それは何故か……。その理由は――。

 

「だが、お前としても今の方が良いんじゃないか? あの拾った娘の手前、大っぴらに出来ないことをする必要がなくなったんだからな」

 

「まぁ、それはそうですわね。……清い体、何て言うつもりはありませんが、それでも後ろ指指される行動をしなくてよくなった分、こうやって大手を振って歩ける訳ですし」

 

「まったくだ。それに、俺としても適度に強者との闘いに身を投じることが出来る。本当に上役様々、というやつだ」

 

「ええ、本当に……。それで――」

 

 フィネガンの感慨深そうな言葉に相槌を打ちつつ、マヨーネは流れるように手慣れた手付きで本人たちが座るテーブルの周囲に防音結界を張る。

そして、結界が機能したことを確認したマヨーネは改めてフィネガンへ話しかける。

 

「――上役の組織の名前。たしか……、()()()()でしたか? あれについてなにかわかったことは?」

 

「特には、な……。少なくとも、政府筋にパイプがあることは確かなようだが」

 

「そう、ですか……」

 

 フィネガンからの返答。芳しくない答えを聞いて顔をしかめるマヨーネ。しかし、そこで何かを思い出したようで、さらに話し始める。

 

「そういえば、政府筋で思い出しましたが、どうやら動くようですわよ」

 

「動く……?」

 

「ええ、()()が」

 

「葛葉……。まさか、ライドウか!」

 

 マヨーネの言葉に驚いたフィネガンは、思わずテーブルに手を叩きつけて前のめりになる。

 一方、マヨーネの方はと言うと、フィネガンが手を叩きつけた時に鳴ったガチャン、という皿が動く音に顔をしかめ、迷惑そうに彼を見る。

 その視線にバツの悪そうな雰囲気でおずおずと席に座り直すフィネガン。

 

「……すまん。だが、やつがかなりのブラコン気質なのは有名だろう? ……そんなあいつが、蘆屋の言いつけを破ってまで動くとは思えんのだが……」

 

 そして彼女に謝罪しつつも、フィネガンはマヨーネの情報に対して疑問の声を上げる。

 実際晴明と朱音(ライドウ)が仲睦まじいというのはある程度の情報を持つものにとっては周知の事実であった。

 マヨーネも異論はないようで、そのことに関しては首肯するが、さらに追加の情報も告げる。

 

「ええ、そうですわね。――普通なら」

 

「普通なら? ……つまり、なにかある、と?」

 

「ええ。……彼女がそんなことを考えることが出来ないほどのことが起これば話は別ですわ」

 

「……ふぅむ。しかし、今のやつは東京、というよりも()()()の守護を……。まさか……」

 

 考えを纏めるように呟いていたフィネガンだったが、そこでひとつの可能性を思い付いたようで愕然としている。

 そして、マヨーネもそんな彼の答えを肯定するように話を続ける。

 

「ええ、お察しの通り。……()()()()()()より勅を賜った。そういうことです」

 

 マヨーネの言葉を聞いて、フィネガンはへなへなと力が抜けたように背凭れにもたれ掛かる。

 それほどにマヨーネからもたらされた情報は衝撃的だった。

 確かに、十七代目葛葉ライドウは日本国における最高の対魔戦力であり、彼女に対抗しようとするならば各国の最精鋭を集める必要がある。

 だが、それでも彼女の地位で言えば、あくまでもクズノハという組織の一個人。各対魔組織の長や政府関係者に比べれば一歩も二歩も劣る。

 つまり、どう言うことかというと、本来彼女の地位ではかの()()から直々にお声を掛けられるというのはあり得ないのだ。

 そのあり得ないことが起きた。それだけでも驚愕の事態といえる。だが、それ以上に……。

 

「あのライドウを直接動かさなければいけないほどの何かが起きている、と? 一体何が――」

 

「そこまではわかりませんわ。ただ」

 

「ただ……?」

 

「どれ程の意味があるのかはわかりませんが、一言だけ伝わってきています」

 

「それは――」

 

「――()()()()()()()、と」

 

「……丈槍? なんだそれは?」

 

「さぁ? わからない、と言ったではありませんか」

 

 丈槍、というのが何かの符号なのか、と首を傾げる二人。まさか、それがたった一人の少女を意味するものだとは、夢にも思わなかったのだろう。

 フィネガンも、わからないことをいつまでも考えても仕方ない。と思考を切り替える。

 

「ふむ、だが……。いや、しかし」

 

「どうしたんですの?」

 

 急にフィネガンが考え込みはじめたことに、マヨーネは不思議そうな顔で彼を見やる。

 そんな彼女の様子に気付いたフィネガンも、今まで彼女にもたらされた情報。そして自身が手に入れた不確定情報が、実は繋がっているのではないか? という予測が浮かんでいた。

 そのことをマヨーネに告げるフィネガン。

 

「……これは、まだ完全に洗いきれていない情報なのだが」

 

「……ふむ?」

 

 珍しく言い淀むフィネガンに、マヨーネは先を促すように目線を向ける。その目線を受けて、フィネガンは意を決したように話し出す。

 

「どうやら、水面下で()()()()()()が慌ただしく動いている。という情報があった」

 

「――なっ! ……いえ。葛葉が動く以上、あり得ない。とは言いきれませんわね」

 

「……あぁ」

 

 フィネガンが告げた情報に驚きの声を上げたマヨーネ。しかし、すぐにあり得ない話じゃない。と、思考を切り替える。

 因みに、九頭竜と峰津院。この二家も葛葉や蘆屋と同じく裏の世界、対魔の名家であり、そして……。

 

「ですが、九頭竜と峰津院も、元を辿れば()()()()()()だったはずでしょう? それが動くとなると、それほどまでに蘆屋は今回のことを重く見ている。という訳ですか」

 

「まぁ、そうだろうな。あそこは根っからの忠勤の家だ。……葛葉以上のな」

 

「……そうでしたわね。つまり、蘆屋晴明があちら(巡ヶ丘)に送られたのも、そういった意を汲んで?」

 

 そうマヨーネが疑問を呈すると、フィネガンは首を横に振って否定する。

 

「いや、それはないだろうよ。……そもそも、そのような大事が最初にわかっていたのなら、その時点でもっと大々的に動いていたはずだ」

 

「それもそうですわね。となると、蘆屋晴明とライドウは幾度か通信を交わしていたようですし、その中で丈槍なるものの報告があり、それが御方の耳に入って興味を示された。というのが真相ですか」

 

「そうだとは思うのだが、な……」

 

 マヨーネの推測に対して、フィネガンもまた自信なさげではあるが肯定する。なお、彼があくまで断言しないのは、今回の推測。そのどこかに穴があり間違えてしまっているかもしれない。と、万一の可能性を考えたからだ。

 この業界、ひとつの間違い。ひとつの油断で命を落とすことも珍しくない。

 そのことを身を持って知っている彼は、こと情報に関して、とても敏感になっている。

 そのこともあって、彼は断定を避けたのだ。

 そして、今後改めて情報を洗ってみようと考えたフィネガンはテーブルに置いてあるコーヒーで喉を潤す。

 コーヒーで喉を潤したフィネガンは、これでこの話題は終わり。と言った様子で別の話題を繰り出す。

 

「それで、貴様の拾った娘のことだが――」

 

 そうして彼ら二人はさらなる話題を語り合いながら、ともに時を過ごし、夜も深まっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――南米、某所。

 

 地下深くにある仄暗い部屋の中、一人の男が部屋を照らすモニターの光。現在、彼の見ることが出来る情報をつぶさに観察していた。

 その男、軍服をまとい神経質そうな顔ながらも、どこかカリスマ性を感じさせる者は、誇らしそうに、同時に忌々しそうな、まるで相反する表情を浮かべていた。

 その時、部屋のドアが開き男と同じような服を着ていた者が現れ、彼の姿を確認すると敬礼するように手を掲げて口を開く。

 

「――失礼致します閣下、第二フェイズ完了致しました!」

 

「そうか、ご苦労」

 

「……はっ!」

 

 そう言って、報告を持ってきた男は立ち去ろうとする。だが、その前に彼に閣下と呼ばれた、最初から部屋にいた男がポツリと呟く。

 

「――早五十年、ようやくここまで漕ぎ着けたか……」

 

「……は?」

 

 閣下と呼ばれた男の呟きに間抜けな声を上げる報告者。その行動に男は特に注意することもなく声をかける。

 

「七十年前と五十年前、二度に渡って()()に邪魔されてしまったが、今回それはなかった」

 

 そして男は一息呑み込むと狂気に染まった表情を浮かべる。

 

「そう! まず手始めに、かのカエル(フランス)どもを、裏切り者のパスタ(イタリア)どもを、そして何よりも! ――腑抜けた同胞どもを粛清することが出来た!」

 

 そう言って狂ったかのように、男は哄笑を上げる。それを見た報告者の男は、自身が閣下と呼んだ男の狂態に背筋から嫌な汗が流れる。

 そんな男の心境を知ってか知らずか、哄笑を上げていた男は落ち着きを取り戻す。

 

「…………どうした? まぁ、良い。それよりも、だ。そろそろ我輩たちも向かうとしよう」

 

 その言葉に喜色の表情を浮かべる報告者。

 

「そ、それはつまり……!」

 

「うむ。これより最後の総仕上げに掛かる。皆に伝えよ。()()()()()である、と」

 

「――――ジーク(勝利)ハイル(万歳)!」

 

 哄笑を上げた男の宣言を満面の笑みで受け取った報告者。彼は男に最敬礼を捧げると指示通り、その言葉を同志たちへ伝えるために退室する。

 それを見届けた男は――。

 

「今度こそ。今度こそ、だ――――!」

 

 唇が切れ、血を滲ませるほどに歯を食いしばりながら、己が感情を吐露する。

 

「今度こそ()()()を、()使()()()の尖兵どもを駆逐する!」

 

 それはかつて、()()()であった頃より持つ、男の大望。

 

「そして、人のための。人が決断し、人の手によって立つ。神の操り人形ではない、人の世を作ってみせる――!」

 

 モニターの光に照らされる、狂気を含んだその顔は――。

 

「待っていろ、同胞たちよ。待っていろ、日本よ。そして、待っていろ、丈槍よ――!」

 

 狂喜に犯されながら男は宣言する。

 

「行くぞ、行くぞ、行くぞ。我輩は往くぞ。人の世を手に入れるために、暴虐なる神より、人の秩序を取り戻すために――!」

 

 ……男の哄笑が部屋中に響き渡った。

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