DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 こんにちは、作者です。
 今日は予約投稿で二話更新致しますので、二話楽しんでいただけたら、と思っております。
 二話目は今環投稿より五分後を予定しております。よろしくお願いいたします。


第六十三話 いつわり

 部屋の中に芳香なる料理の匂いが漂うと同時に、ばりばりと食べ物を咀嚼する音。ずず、と汁物を啜る音が響き渡る。

 ここは学園生活部の部室となっている生徒会室。

 そこで一人の少女が、がつがつと、一心不乱に食べ物を食べ散らかしている。

 

「んぅ~~。うめぇ……!!」

 

 今も手に持ったフライドチキンを食い千切りながら、満面の笑みを浮かべる少女。それは先ほどまで意識を失っていた恵飛須沢胡桃だった。

 そんな彼女の姿を見て、悠里は頬に手を当て優しく微笑みつつも、やんわりと注意する。

 

「もう、くるみ。そんなに急いで食べちゃだめよ? 胃がびっくりしちゃうから」

 

「あっ……。えっとぉ、あはは……」

 

 悠里の注意に、ようやく皆が見ていることを思い出した胡桃は恥ずかしさを覚えたようで、頭を掻きながら照れ臭そうに笑っている。

 そんな胡桃の様子に、やっと彼女が、愛する生徒が帰ってきたことを実感した慈も、心底ホッとしたように微笑みを浮かべている。

 そして、あの時胡桃を止めることが出来ず、目の前から去っていくことを見送ることしか出来なかった由紀に至っては――。

 

「くるみ、ちゃ……。くるみちゃぁぁぁぁん!!」

 

 無事な胡桃の姿を見て号泣し、彼女へ抱きつく。

 由紀の急な行動に驚いた胡桃は、なんとか彼女を抱き止めると――。

 

「お、おおっ……! どうしたんだよ、ゆき?」

 

 由紀をあやすように頭を撫でる胡桃。そんな胡桃に由紀は頭をぐりぐりと押し付けて文句を言う。

 

「……どうした、じゃないよ! 心配、したんだからね……」

 

 そう涙声で弱々しく告げる由紀に、胡桃はバツの悪そうな表情を一瞬浮かべるが、すぐにそれを覆い隠すように笑顔を見せて彼女へ話しかける。

 

「ごめん、ごめんて。……心配かけちゃったな」

 

 そう言って再び由紀の頭を撫でる胡桃。そして彼女は皆を見回してふわり、と優しく笑うと――。

 

「――ただいま」

 

 感慨深そうに一言告げる。

 そんな胡桃に仲間たちは――。

 

『――おかえりっ!』

 

 満面の笑みを浮かべ、声を弾ませて告げるのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ、食った食ったぁ……」

 

 お腹が満腹になったのだろう。胡桃は満足げな様子で自身のお腹を擦っていた。

 そんな彼女を見て苦笑していた貴依だったが、すぐに気を取り直すと、どこか申し訳なさげな様子で話しかける。

 

「な、なぁ。くるみ」

 

「あん? どうしたんだよ、()()

 

「いや、あの……」

 

 胡桃に名字呼びされたことで、やっぱり怒っているのか、と思いながら貴依は遠慮がちに用件を言う。

 

「えっと……、これ、ちゃんと洗ったから返そうと思って」

 

 そう言って貴依は、胡桃を救出する時に使用した彼女愛用のシャベルを差し出す。すると胡桃は。

 

「ああ、なんだ。()()()()()か。別に柚村が使っても良いんじゃないか?」

 

 と、他のメンバーにとって思ってもみないことを口にする。無論、それは貴依にも当てはまるわけで、彼女は思わず呆けた声を上げる。

 

「……は?」

 

「……え? くるみ、ちゃん?」

 

 由紀もまた信じられないものを見たように、胡桃へ話しかけていた。

 そんな二人の様子に、胡桃は()()()()()()()()()()()()()()? と、キョトンとする。

 そして胡桃は、きっとこちらを心配してるんだな。と、考えると二人を安心させるように語り掛ける。

 

「おいおい、()()()があの()()()のところに行って、力をつけたのは知ってるだろ? だから、()()()()()()の柚村が持ってるべきだって。なっ?」

 

「あ、あぁ。そう、かな?」

 

「そうだって!」

 

 不安そうにしている貴依に対して、胡桃はニカっと、人好きのする笑みを浮かべて肯定する。

 胡桃の自信満々な様子に気圧された貴依は、曖昧な様子で同意する。

 

「そ、そっか。なら、私が預かっておくよ」

 

「おう! 頼んだぜ!」

 

 貴依との話が終わると、胡桃は食卓から立ち上がって大きく延びをする。

 

「ん、ん~~……っと」

 

 そして、肩を揉んだり、腕を回したりといった身体を軽くほぐす仕草をすると。

 

「それじゃ、腹ごなしに見回りにでも行きますかぁ!」

 

 そのまま彼女は元気良く部屋を出ていく。

 そんな彼女を、悠里は心配そうに声を掛け、慌てて追いかける。

 

「ちょっ、ちょっとくるみ! 貴女、まだ病み上がりなんだから――!」

 

 そのまま悠里もまた部屋を出ていくと、流石に二人だけでは危ない。と他の面々も追いかけていく。

 そして、部屋には呆然とした貴依と由紀が残される。

 二人は、しばし呆然としていたが……。

 

「なぁ、ゆき……」

 

 不意に貴依が由紀へ話し掛ける。そこにはどこか信じたくない。といわんばかりの感情が籠っていて……。

 

「……うん、たかえちゃん」

 

 貴依が持つ懸念。それを由紀も理解しているのか、真剣な、悲壮的とも言える表情を浮かべ、彼女を見つめる。

 そのまま二人は目配せをすると、なにも言わず、部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

 その後、なにか問題が起こるわけでもなく――ただ、あちこち移動したり屋上にある()()()()()で首を傾げる胡桃に、皆して振り回されていたが――平和に時間が過ぎていった。

 そして、その日の夜……。

 

 貴依は一人、胡桃を空き教室へ呼び出していた。

 

「――で、どうしたんだよ。柚村?」

 

 肩をすくめて、不思議そうに彼女を見る胡桃。

 そんな胡桃に対して、貴依はあり得ないほどに()()()()を出し、シャベルを胡桃に突き付けながら問いかける。

 

「――なぁ」

 

「……おいおい? 何の冗談――」

 

()()()()()?」

 

 貴依の底冷えするような冷たい言葉に、一瞬とは言え絶句する胡桃。

 しかし、流石に冗談だと思ったのか、上擦りながらもなんとか声を絞り出す。

 

「お、おいおい。なに言ってんだよ。()()()は胡桃だよ、恵飛須沢胡桃。それ以外の何に見えるんだよ……?」

 

 困惑しながらも自分はここにいる、とでも言いたげな様子で胸に手を置き答える胡桃。

 だが、それでも貴依の、まるで裏切り者を見るかのごとき絶対零度の視線に曝される。

 そのことに困惑を隠せない胡桃。

 そんな彼女に、貴依はさらに問いかける。

 

「お前が本当にくるみだとして……。なんで、()()()()にある()()()()()()()()()()()()?」

 

「……え? ……だって、あんなところに十字架があったって、()()()()()()()?」

 

 胡桃の返答を聞いた貴依は、これで答えが決まった。と言わんばかりに吐き捨てる。

 

「――ダウト」

 

「……え?」

 

 貴依の吐き捨てた言葉に困惑する()()()()()()()

 だが、貴依はそれに取り合わず、彼女が、目の前の人物が言った決定的な言葉を口にする。

 

「残念だな、お前がくるみじゃないってはっきりしたよ」

 

「な、なに言ってんだよ。()()()は――」

 

「――まず始めにあいつは、くるみは自分のことをわたしって言わない。()()()って言うんだよ」

 

「な、なんだ。そんなことか。そんなの気分だよ、気分――」

 

 貴依の指摘に、胡桃らしき人物はほんの少しとはいえ動揺したのか、声を震わせながら反論する。

 しかし、貴依の、彼女の主張はここからが本番だった。

 

「それに、屋上の十字架が邪魔? ……その言葉、お前が、他の誰でもない。お前だけは口にしちゃいけない言葉だろうが……!」

 

「へ……?」

 

 貴依のこれでもか、と熱が籠った言葉に間の抜けた声を上げる胡桃らしき人物。

 そんな彼女に、貴依はその理由を説明する。

 

「あれは、あの十字架は! お前の先輩の、お前が大好きだった、愛していた葛城さんの墓だろうが……!」

 

「……っ!」

 

 その貴依の説明で、ようやく自身がとんでもない失態を演じていた事実に気付き、胡桃らしき人物は言葉をつまらせる。

 そして、貴依は彼女へ最後のトドメとばかりに言葉を投げ掛ける。

 

「それにあの時、くるみがルイ=サイファーに着いていった時、私たちも、何よりあいつもあの男が大魔王なんて知らなかった! ……もう一度聞くぞ、お前は誰だっ!」

 

 ここまで言われたら、もう誤魔化せないと理解したのだろう。彼女は俯くと肩を震わせながら嗤う。

 

「……ふふ、はっはははははぁ! はぁ、いやぁ参った参った」

 

 そして頭をあげた彼女の顔には、皮肉げな笑顔が浮かび――。

 

「まさか、ここまで早くバレるなんて、なぁ!」

 

 突き付けられていたシャベルを腕の力で払い除け、さらに――。

 

 ――如何なる異能か。腕がゴムのように伸びていき、そのまま貴依の首を鷲掴みにしようとする。

 

「……ぐ、ぇ」

 

 胡桃らしき人物の突然の攻撃に反応できなかった貴依は、躱すことすら出来ず首を絞め上げられてしまう。

 しかも、彼女の腕はそれだけでは終わらず貴依の身体が宙に浮く。

 腕が伸びた、という非常識なことを除けば、それはまるでネックハンギングツリーもかくや、と言う様相だった。

 

「まったく、そこまでわかっていて、なんで一人で会おうとするかねぇ?」

 

 本当、馬鹿なんじゃないか? と、嘲るように告げる胡桃らしき人物は、今度は伸ばした腕を元の長さへ戻していく。

 そして目の前に来た貴依を見て嘲笑う。

 

「ははっ、無様なもんだ」

 

「う、ぐ……!」

 

 自身を嘲笑う者に対してなにかを言おうとする貴依だったが、首を絞められている関係で声がでない。

 絞めている本人自身もそのことを理解しているのもあって、胡桃の顔には似合わない卑下た笑みを浮かべると、貴依へ話し掛ける。

 

「まぁ、安心しろよ。例えお前が死んでも()()()()()()()からさぁ……」

 

 その言葉とともに胡桃の顔が文字通りぐにゃりと歪む。

 そして、顔の歪みが直るとそこには……。

 

「ほぉら、こんな風に、さぁ」

 

 そこには、目の前にいる貴依とまったく同じ顔になっていた。

 ……そう、彼女の、この異形の正体。それは――。

 

 ――外道-ドッペルゲンガー。

 

 それがこの異形(悪魔)の正体。つまり、悪魔が胡桃の姿に擬態していたのだ。

 そのことを理解した貴依は、今も苦しんでいるのは確かなのに、それでも憤怒の表情でドッペルゲンガーを睨み付ける。

 その視線にドッペルゲンガーはおどけるように口を開く。

 

「おぉ、怖い怖い。……怖いからさっさと終わらせないとなぁ」

 

 そう言いながらドッペルゲンガーは腕に、手に、指に力を込めていく。

 その結果、貴依の首からみしみし、と骨の軋む音が響く。

 貴依はそれに足掻くようにシャベルを腕に叩きつけたり、指を離させるために己の指を絡ませようとする。

 

「…………!!」

 

「あっはははは! 無駄無駄、ヒトザルごときが悪魔との力比べに勝てるものかよ」

 

 貴依の無駄な抵抗に、ドッペルゲンガーは馬鹿にするように嗤う。

 そして、彼女へ最後の言葉を投げ掛ける。

 

「まぁ、なんだ。お前を喰った後に他の奴らも喰ってやるから、寂しくはならねぇよ。あの世で仲良くお仲間ごっこを続けるが良いさ。じゃあな、本物(たかえ)

 

 それだけを告げるとドッペルゲンガーは指にさらなる力を込める。

 

 

 

 

 

 ――直後、部屋に()()()が砕ける音が響き渡った。

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