DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第六十七話 悪魔と仮面(ペルソナ)

「あっ! そういえば――」

 

 シャドウ-悠里がペルソナ-イシスとなり、悠里のもとへ還ったことで安心した由紀だったが、なにか心配ごとを感じ取ったのか、辺りをキョロキョロと見渡す。

 

「……ゆきちゃん、どうしたの?」

 

 そんな由紀の奇行に、悠里は疑問符を浮かべつつ問いかける。

 慌てた様子で辺りを見渡していた由紀は、悠里に話し掛けられたことで、ようやく彼女も、ともにいることを思い出したようで、情けない表情を浮かべて、彼女の問いに答える。

 

「うぅ……。りーさん、どうしよう……。さっき思い切り猛吹雪を辺りに振り撒いちゃったから、お野菜大丈夫かなぁ……」

 

「…………あっ」

 

 由紀の答えを聞いて、悠里もまた彼女の危惧するところが理解できたのか、顔を少し引きつらせた。

 そして悠里も慌てた様子で屋上菜園の作物の状況を確認するのだった。

 

 

 

 

 

「良かった、とりあえず今のところは大丈夫みたいね」

 

「……本当に良かったぁ」

 

 その後、屋上菜園の状況を確認した悠里と由紀。

 その結果、屋上の気温が多少下がっているものの、それでも作物が枯れるほどの被害が出ていないことは確認できた。

 悠里と由紀は、現状問題ない。と確認できたことで胸を撫で下ろす。

 その時、由紀はふと、さらに気になることが出来たのか、悠里に話し掛ける。

 

「ねぇ、りーさん」

 

「……? ゆきちゃん、どうしたの?」

 

「そういえば身体のだるさとかない? 大丈夫?」

 

「え? ええ、とくにそう言ったことはないけど……。あぁ、そう言うことね」

 

 由紀の急な心配に不思議に思う悠里だったが、すぐにその心配の意味が理解できた。

 彼女の心配、それはかつて由紀自身が経験したことだったからだ。

 それは、由紀が初めてペルソナに覚醒(神話覚醒)した時、急なMAGの消耗で気絶したからだ。

 そのことが悠里にも起きるかもしれないと思い心配していた。

 そのことを理解した悠里は由紀を安心させるように微笑むと、優しい音色で大丈夫だと告げる。

 

「ええ、大丈夫よ。……ほら、こんなにピンピンしてる」

 

 そう言って彼女は元気であることを示すように、力こぶを作るような仕草をする。

 そんな悠里を見た由紀はくすくす、と笑う。

 

「ふふ、なら良かった。……ふぁ、なんだか安心したら……」

 

 悠里の行動を見た由紀は安心したように微笑んでいたが、同時に気が抜けたのか欠伸をする。そして、眠気を覚ますため、目を擦るが……。

 

「きゃっ。……ゆき、ちゃん?」

 

 そのままぽふり、と悠里の胸に倒れ込む。

 そのことに驚いた悠里は彼女の様子をうかがう。

 

「ちょっと、ゆきちゃん……?」

 

「すぅ、すぅ……」

 

 そして、その結果。由紀が眠りこけていることに気付いた悠里。

 先ほどのシャドウとの戦闘でやはり多少なりとも消耗していたのだろう、ということを理解した彼女は、由紀を起こさないように彼女の頭を膝に、いわゆる膝枕をする。

 

「ゆっくり休んでね、ゆきちゃん。……でも、私もなんだか、眠、く――」

 

 だが、由紀の眠気が悠里にも移ったのか、彼女の瞳がとろん、とすると船を漕ぎはじめる。

 そして、そのまま俯くと悠里もまた寝息を立てはじめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 すぅ、すぅ、と寝息を立てていた由紀。

 そして良い夢でも見ているのか、にへら、と笑っていた彼女。しかし――。

 

「……はっ!」

 

 なにか衝撃的なものでも見たのか、突如として目を覚ますと()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、辺りを見渡す由紀。が、そこは先ほどまでいた筈の巡ヶ丘学院高校の屋上ではなかった。

 だが、同時にその場所は彼女がよく知る場所――。

 

「……ベルベットルーム?」

 

 そう、ここは精神と物質、夢と現実の狭間にある空間。ベルベットルームだった。

 その時、由紀の耳に聞き慣れた甲高い老人の声が聞こえてきた。

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ。……とは言え、今回はこのようなお呼び立てをして申し訳ありません」

 

 そう言って声の主、イゴールは由紀に向かって頭を下げる。そして、それに続くように側に控えていたリディアもまた頭を下げた。

 彼らの態度にきょとんとしていた由紀だが、ようやく頭の中で理解が追い付いたのか、慌てた様子で頭を上げるようにお願いする。

 

「ちょ……! そんなことしないで、頭を上げてイゴールさん。めぐね――、じゃなかったリディアさんも!」

 

「――ううん、どうしたのゆきちゃん……?」

 

 その時、由紀の隣から聞き慣れた、そして()()()()()()()()()悠里の声が聞こえてきた。

 

「えっ? りーさん、なんで……?」

 

「もうっ、騒がしくしちゃ――! ここ、は……」

 

 悠里もまた、ここが屋上菜園ではないことに気付き、辺りを見渡す。

 そんな中、リディアは混乱している二人へ声を掛ける。

 

「お二方とも、どうか落ち着いてください」

 

「えっ、あっ! めぐ、リディアさん!」

 

 彼女から声を掛けられたことで、悠里はようやく事態を飲み込みはじめる。

 そんな悠里を見て、由紀と、そしてリディアもまた人知れず安心した様子でほっ、と息を吐いていた。

 

 三人の間で少しほほえましい空気が流れる中、イゴールが話し始めることで弛緩した空気がにわかに引き締められる。

 

「それでは改めまして、丈槍さま、そして若狭さま。よくぞおいでいただきました」

 

 そう言いながら深々と頭を下げるイゴール。

 その言葉を聞いた悠里は先ほどの由紀のように慌てているが、それだけだとそれこそ先ほどの二の舞になってしまうため、イゴールは話を続ける。

 

「この度お二方をお呼びしたのは他でもありません。――まずは若狭さま、ペルソナの覚醒おめでとうございます」

 

「……! え、えぇ。ありがとう、ございます?」

 

 まさかイゴールから祝われると思ってもみなかった悠里は、目を白黒させながら礼を言う。もっとも、唐突すぎたこともあって疑問系になっていたが。

 そんな彼女を見てくすり、と笑うイゴール。

 そして彼はさらに話を続ける。

 

「ですが、此度貴女さまが覚醒した力は、丈槍さまとは別の力となります」

 

「……え? でも、ペルソナ、なんですよね?」

 

「左様、丈槍もペルソナ使い、そして貴女さまもペルソナ使い。それに相違ありません。ですが――」

 

 そこでイゴールは一息溜めて言の葉を紡ぐ。

 

「丈槍さまは【ワイルド】という違いがあります」

 

「……あ」

 

 ワイルド、という言葉を聞いて悠里は、かつて晴明が話していた内容を思い出す。

 

 ――ワイルドとは人と人との絆を力に変える、そんな存在だ。

 

 そして、そんな悠里の表情を見て、イゴールもまた心当たりがあったのだ、と感づき話を進める。

 

「どうやら、若狭さまもなにやら心当たりがおありのご様子ですな。では、ワイルドと一般的なペルソナ使いの違いについてご説明いたしましょう」

 

「まって、イゴールさん」

 

 そこでなぜか悠里ではなく由紀が待ったを掛ける。

 そのことに不思議そうな顔をするイゴール。

 

「おや? どうなされましたかな、丈槍さま?」

 

「わたしもりーさんもペルソナ使い、なんだよね? それなのに違いがあるの?」

 

 由紀の疑問に、イゴールは少しだけおかしそうに笑うと答えを返す。

 

「ふふふ、ええ、そうです丈槍さま。丈槍さまと若狭さまでは明確に違いがあります。それを今から説明いたしますが、よろしいですかな?」

 

 再度、確認するように告げるイゴールに対して、由紀と悠里は肯定するようにこくり、と頷く。

 それを見たイゴールは満足そうに笑みを浮かべると改めて説明をはじめる。

 

「それでは、まずワイルドについてですが……。以前丈槍さまはトランプのワイルドカードのようなもの、と例えたことを覚えていらっしゃいますかな?」

 

「え? ……えっと、たしか。ジョーカーのように何者にでも成れる、だったよね?」

 

「ええ、そうです」

 

 由紀の答えに満足した様子で肯定するイゴール。

 そして彼は例え話をするように語り出す。

 

「現に丈槍さまは、ご本人のペルソナであるガブリエル以外にも様々なペルソナを降臨されておられますな。……もっとも、ペルソナ合体まで行われたのは、我らとしても驚嘆いたしましたが」

 

「……ペルソナがったい?」

 

 イゴールの口から出た聞きなれない単語に首を傾げる由紀。

 そんな彼女を見て、イゴールはペルソナ合体の説明をする。

 

「先ほどの戦いの中で由紀さまがしたトライアングルスプレッド、あれこそがペルソナ合体なのです」

 

「……あれが?」

 

「えぇ、二つ以上のカードを用い、新たな仮面(ペルソナ)を降魔させる儀式。それこそがペルソナ合体」

 

 イゴールの説明を聞いた由紀。彼女はその説明に、とある既視感を覚える。それは――。

 

「――まるで、悪魔合体みたい」

 

 かつて圭が、そしてジャックフロストが太郎丸を救うためにした外法、悪魔合体。それとどこか似ている、と感じた由紀は、ぽつりと独りごちる。

 由紀の独り言にも似た呟きにイゴールは感心したように声を上げる。

 

「ほう、丈槍さまは悪魔合体を、【()()】をご存じでしたか」

 

「イゴールさん?」

 

 まさかイゴールから悪魔という言葉が出ると思ってもみなかった由紀は、驚きながらも疑問の声を上げた。

 そのことがおかしかったのか、イゴールはくすくす、と笑いつつも彼女へ語り掛ける。

 

「ふふ、わたくしが悪魔を知っていることに驚かれましたかな?」

 

「う、うん……。だって――」

 

 ペルソナと悪魔は別物だよね? と、問いかける由紀。

 そんな彼女に対して、イゴールは首を横に振って否定する。

 

「いえいえ、一概にそうとも言えないのです」

 

「えっ……?」

 

「そもそも、悪魔とは何か? ……丈槍さまはきちんとご理解頂けていますかな?」

 

 イゴールの質問に、由紀は悩みながらかつて晴明に聞いたことを、即ち悪魔とは、世界各地にある神話、伝承、都市伝説に語られる人智を超えた生命体たちのことだと話す。

 彼女の答えを聞いたイゴールは、薄く笑いながら語った話について、半分正解だと告げる。

 

「ふむふむ、正解。……と、言いたいところですが、それだけだと五十点。と言ったところですかな」

 

「ふぇ……? でも……」

 

 はーさんの説明ではそうだったよ? と、告げようとする由紀。

 しかし由紀がその言葉を吐く前に、イゴールは話を続ける。

 

「確かに丈槍さまの言うとおり、悪魔とは超常の存在です。しかし、それと同時にとある欠陥を抱えているのですよ」

 

「……欠陥?」

 

「左様でございます。その欠陥とは……。人、という種族が存在しない限り、彼らもまた存在し得ないのです」

 

「……え?」

 

 イゴールの発した言葉に驚きで目を見開く由紀。

 そんな彼女に構わずイゴールはさらに言葉を続ける。

 

「俗に、よく例え話に出される卵が先か、鶏が先か。というものとほぼ同じ考えです。悪魔がいるからこそ人という種族が生まれたのか、人がいるからこそ悪魔が顕現したのか」

 

 由紀はイゴールの言葉に困惑しながらも反論する。

 

「え? ええ? で、でも。神話では神様が世界を作ったんだよ、ね? それなら――」

 

「では、その神話を語った(作った)のは? それは人という種族ではありませんでしたかな?」

 

「あっ……」

 

 しかし、彼のさらなる言葉に二の句が告げなくなった由紀。事実、それは彼女が見落としていた点だったからだ。

 そしてイゴールはさらに畳み掛けるように言の葉を紡ぐ。

 

「そも、悪魔も仮面(ペルソナ)も起源は同じ。即ち、人の信仰によって産み出された存在なのです。違いがあるとすれば――」

 

「あるとすれば……?」

 

「直接、己の肉体で現世に降臨したのが悪魔で、心の海、と呼ぶ、人が持つ深層無意識。【観測の力】とも呼ばれる人のみが持つ特殊な力を介在して顕現したのがペルソナ、なのです」

 

「――心の海、観測の力」

 

 イゴールの口から出た言葉。その言葉を反芻する由紀。

 

「ときに丈槍さま、若狭さま。おかしい、と感じたことはございませんでしたかな?」

 

「……?」

 

 由紀だけではなく、悠里もイゴールに急に語り掛けられたことで困惑している。しかし、次の言葉を聞いたとき、彼女らは揃って絶句することになる。

 

「貴女方の後輩たちがヒーホーくん、と呼んでいたジャックフロストと、丈槍さまが降魔させたジャックフロストがまったく、寸分違わず同じ姿だったことに」

 

「――!」

 

「……そう、いえば!」

 

 イゴールから問いかけられた言葉に、驚きで顔を見合わせる二人。

 

「無論、悪魔自身の意思で、あるいは人の意思で制御する。という違いはありますが、これで納得いかれましたかな?」

 

 その言葉に二人はこくこくと頷いている。

 そのことに気を良くしていたイゴールだったが、本題から乖離し始めていたことに気付き、こほんと、咳払いを一つ。

 

「少し、話題がずれてしまっていましたな。それでは改めて、今回お二方をお呼びいたしましたのは――」

 

 そうして、イゴールは改めて説明をはじめるのだった。

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