DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第六十九話 巡ヶ丘学院高校 校歌

 聖イシドロスを出発した晴明たち。

 途中、周囲を徘徊しているかれらや、MAG濃度が高まったために顕現し始めた下級の木っ端悪魔の襲撃があったものの、それらをなんなく撃退。

 しかも、撃退したのは圭と美紀の二人であり、晴明や仲魔たちの出る幕すらなかった。

 さらには――。

 

「ねぇ、マスター……」

 

「どうしたの、()()()?」

 

 木っ端悪魔との戦闘時、圭にスカウトされ地霊-カハクが彼女の仲魔となっていた。

 なお、他にも何体かの悪魔をスカウト成功しているが、圭のMAG残量や、何より消費を抑えるため、最低限の数である彼女一人だけ顕現させている。

 そんな彼女たちではあるが、現在。行程としては問題なく、と言うよりもかなりのハイペースで、目的地の巡ヶ丘市役所へと歩を進めていた。

 

 事実、イシドロスを出発後の二人の活躍は目覚ましく、何だかんだで二人に対して甘いところがある晴明はもとより、声には出さないものの、クーフーリンやスカアハすら感心した様子を見せていることからも一目瞭然だろう。

 なお、現在。そのクーフーリンとスカアハは二人の様子を見て問題ない、と判断し残りのことを晴明に任せ帰還している。

 もっとも、帰還した理由は安心した。と言うだけではなく、二人がいた場合、彼らの気配を感じ取った木っ端悪魔たちが萎縮し、圭たちの前に姿を見せず、仲魔勧誘を出来ないから。という側面もあったが……。

 

 そんなことを記している合間にも、仲魔であるカハクは、恐る恐るといった様子で圭に問いかける。

 

「えっとぉ……。そこにいる、おじ――お兄さんって……」

 

 そう言いながら晴明を見るカハク。

 因みに、彼女が晴明のことをお兄さんと言い直したのは、おじさんと言いそうになった時自身のマスター()と、パートナー(美紀)から殺気が漏れだしたからだった。

 そんなことは露知らず――殺気自体も無意識のうちに出していた――圭は不思議そうに、首を傾げながら口に出す。

 

「うん? 晴明さんのこと?」

 

 彼女の晴明、という言葉を聞いて顔をひきつらせるカハク。そのままガクガクと震えるように相槌をうって、内心、とてつもなく嫌な予感。と言うよりも確証を持ちながらも、万が一、万が一。と一縷の望みを託し、さらに質問を重ねる。

 

「……あ、の。お兄さんとマスターの関係性は――」

 

「えぇ、私と晴明さんの関係性? ……実はね、あの人は私の恋び――」

 

 甘酸っぱい表情を見せながら恋人関係だ、と嘯こうとした圭。しかし、その前に彼女の頭へ、すぱぁん! と、小気味良い音を鳴らせた突っ込みが入る。

 そこにはいつの間にか、ハリセンで圭の頭に振り抜いた格好を見せる美紀の姿があった。

 

「――あ痛っあぁぁぁぁ……!!」

 

 いくらハリセンとはいえ、全力で打たれた痛みは相当なものだったようで、圭は頭を抱えながらしゃがみ込む。

 そんな彼女を心配して美紀は圭の肩を、しかしてまるで調子に乗るな。と言わんばかりに、万力のような力で、ぎりぎりと握り潰すように掴む。

 勿論、そのような力で握られた圭は堪ったものではなく、痛みに悲鳴を上げながら助けを乞う。

 

「いたたたたぁ、いたい。痛いって、みきぃ! ……い、いま、ごきぃっ! て、いったぁ! やめ、やめろぉッ! 助け――」

 

「ねえ、けい? 私たちと晴明さんの関係は、師匠と弟子。だよ、ねぇ?」

 

「――は、はいっ! ナマ言って済みませんでしたぁ! ……だから、もう離してぇ!」

 

 肩から発せられる痛みと、何より親友の恐ろしいまでの豹変ぶりから解放されるために、なかば無意識に叫ぶ圭。

 その彼女の様子に気を良くしたのか、美紀はようやく肩から手を放す。

 ようやく責め苦から解放された圭は、荒い息を吐いている。

 そんな己がマスターの姿を見たカハクは、契約は早まったかなぁ。と後悔し、黄昏ていた。

 

 

 ……なお因みに、カハクの疑問であった晴明の正体が、予想通り悪魔召喚師-蘆屋晴明だと判明し、悲鳴を上げマスターである圭を盾とするのは、もう少し先のお話。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、ぐだぐだとしながらも一行は、所々のかれらの襲撃を退け、目的地の巡ヶ丘市役所へ到着していた。

 

「ここが市役所、か……」

 

「はい、でも……」

 

 晴明の呟きに首肯する美紀。しかし、彼女らは険しい表情を見せている。その理由は――。

 

「バロウズ、エリアサーチの結果は?」

 

《残念ながら通常の生体反応は無し、ね……》

 

「そうか……」

 

 目の前の高層ビルとも言える建物。巡ヶ丘市役所の入り口は、巡ヶ丘学院高校と同じようにバリケードを構築されているにも関わらず、生存者の反応は無し。即ち、内部はもぬけの殻か、あるいは通常の、もしくは空気感染で感染したかれらの巣窟になっている可能性が高い、ということだ。

 その証拠に、市役所の窓は幾つか割れており、割れていない窓にも内側から返り血のような赤黒い色の何かが付着していた。

 

 それを発見した美紀と圭は息を呑む。

 しかし、すぐに表情を引き締めると、己の武器を身構え、いつでも戦闘に入れるように準備する。

 そんな二人の様子を見た晴明は、少しは見られるようになった。と内心喜びながら、その感情を圧し殺して二人へ声を掛ける。

 

「よしっ、行くぞ二人とも。――覚悟は良いな」

 

『はいっ!』

 

 晴明の声掛けに二人は元気良く返事すると、全員で市役所へと侵入を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

「……ふっ! やぁっ!」

 

 市役所に侵入したあと、早速とばかりにかれらから熱烈な歓迎を受けた面々。

 その中で美紀は近づいてくるかれらにシールドバッシュ。殴り付け、たたらを踏んだかれらに追撃の斬擊を与え、一刀両断する!

 そのあと、すぐに事切れたかれらを蹴飛ばし、動ける場所を確保すると、今度は手早くMAGを練り込み――。

 

「マハ・ザン――!」

 

 次には魔力による鎌鼬(カマイタチ)により、近場のかれらを切り刻んで撃退していく。

 それと同じように圭もまた――。

 

「カハク!」

 

「うんっ! ――アギ!」

 

 仲魔を指揮し、時にはストラディバリを奏でることで付近のかれらを蹴散らしていく。さらには――。

 

「っ……! よっ、と! ――召喚!」

 

 まるで曲芸のようにストラディバリを空中に放り投げ、手早くGUNPを引き抜くと操作。召喚シークエンスに入り、仲魔にした一体。地霊-コボルトを顕現させる。

 

「アオォォォォォォォン! 俺サマ、マスターノ敵、ミンナヤッツケル!」

 

 そう言いながらかれらに向かって突撃するコボルト。

 そんな彼を援護するように、圭はGUNPをふたたび腰に掛けると、先ほど空中に放り投げ、落ちてきているストラディバリをキャッチ!

 ふたたび演奏と指揮に専念する。

 

 そのまま、付近のかれらは圭と美紀、二人の手で掃除されることになる。

 

 

 

 その後も順調に進んでいた一行。しかし、エレベーターなどの電気設備は死んでいるらしく、多少の時間は掛かっていた。

 それでも最上階にある市長室へ到着した三人。

 晴明は市長室のドアノブを握る。しかし――。

 

「うん……? これは――」

 

 そこで違和感に気付き、そのままノブを回す。すると――。

 

 ――ぎぃ、という音とともにドアノブが()()()()()()。それは即ち。

 

「鍵が、かかっていない?」

 

「……え?」

 

 そのことに驚く美紀。

 少なくとも、最上階付近にかれらの姿はなく、その状態でなら鍵をかけておけば、安全性を確保できる筈なのに。と驚いていたのだ。

 しかし、現実には鍵がかかっていなかった。

 そのことに嫌な予感を覚えながらも晴明は扉を開け――。

 

「――! 二人とも見るなっ!」

 

 部屋の中を確認した瞬間、二人に向かって叫ぶ。

 急変した晴明の様子に驚く二人。しかし、そう言われた二人は反射的に中を覗いてしまう。

 

「――ひっ」

 

「……うっ」

 

 中の様子を確認してしまった美紀はくぐもった悲鳴を上げ、圭は吐き気を催したのか口に手を当てる。

 

 ……部屋の中、そこには市長用の執務机にうつ伏せに倒れている男性。そして部屋には腐臭が充満していた。

 その時、晴明は倒れている男性。恐らく巡ヶ丘市長が手元に何かを握っていることに気付く。それは――。

 

「……そうか、これで自殺を――」

 

 市長の手元、そこにあるのは一丁の拳銃だった。

 そして、死体に近付き、状態を確認する晴明。

 その結果、腐敗してわかりづらくなっているが、彼のこめかみにはマズルフラッシュによる火傷痕と風穴が。机には完全に乾いてしまった血が付着していた。

 

「くそがっ……!」

 

 この部屋の惨状、そして市長の遺体を見て晴明は当たってほしくなかった可能性の一つが見事的中していたことを確認し、思わず悪態を吐いた。

 それは、この巡ヶ丘市長もまたグル、あるいは何らかの情報を知っていた。ということだ。

 

「――死ぬくらいなら、最後まで足掻いてみせろよな……。それが、市民に選ばれた者の責任だろうに」

 

 苦々しげに吐き捨てながら、市長らしき死体を移動させる晴明。

 彼の肉体を掴んだ時に、ぐちゃり、と肉が崩れる感触に顔をしかめながら机から退かすと、机の物色を始めた。

 

 もしかしたら、何らかの情報を得られるかも知れない。そう思って。

 

「……あ、の。晴明、さん?」

 

 そんな晴明の様子に、美紀たちも顔を青くしながらも近付いてくる。しかし、流石に死体に近付くのは憚られるのか、微妙に距離をとっていたが。

 そして、そのまま晴明の手元に視線を送る二人。

 そこには、丁度何かを発見したようで、ファイルのようなものがあった。

 

「これは……?」

 

「……わからん、見てみるか」

 

 そう言ってファイルを開く晴明。そこには新聞のスクラップ記事、それもかつて美紀と圭が老婆から聞いた話のさらに詳しい内容が記されているものが保管されていた。

 それを食い入るように見る晴明たち。

 そして、ページを捲るとまた別のもの。今度は昔話のようなものが貼られていた。

 

「――これは?」

 

 疑問に思った晴明は、知っているか? と聞くように美紀と圭、二人の顔を見る。

 その二人も心当たりがないようで首を横に振る。

 

「那酒沼のおしゃべり魚、か……」

 

 そう銘打たれた昔話を読む晴明。

 その物語の内容はこうだ。

 

 ――かつて飢饉があった年。とある漁師が那酒沼に糊口を凌ぐため船を出した。そうして沼で網を打つと大きな魚が取れたが、その魚は悲鳴を上げ、食ってくれるなと叫んだ。

 しかし、漁師は家族のためだ。と魚の頼みを拒むと打ち殺し、持って帰って家族と食った。

 翌朝、その漁師と家族は皆死んでおり、魚の腹からは人の指が出たという。

 それから、那酒沼に船を出すと祟りが起きると噂され、船が出なくなったそうな。

 

 ――そして、それは現代にも続いている。

 

「これは、人食い魚の伝承か? ……それにしては言葉遊びが少しおかしいが――」

 

 無意識にそう呟き考え込む晴明。

 そんな時、隣から同じく思案している声が響く。

 

「那酒沼、たしか朽那川の源流の……?」

 

 その声の主は美紀だった。

 彼女の呟きに何かあるのか。と晴明は問いかける。

 

「美紀、その朽那川とは? 何かわかったのか?」

 

「いえ、そういう訳では……」

 

 そう言いながらふたたび考え込む美紀。

 しかし、その時――。

 

「へぇ、朽那川。なつかしいねっ!」

 

 どこか無理をして明るく振る舞いながら、同時に懐かしむように圭は弾んだ声を上げる。

 そのことに美紀は訝しみながら圭に問いかける。

 

「なつかしい……? 朽那川って何かあった?」

 

「何言ってるの、みき! 校歌だよ、校歌! うちの学校の!」

 

「……なんだと?」

 

 二人の会話、特に圭の校歌。という言葉に眉をひそめる晴明。

 晴明の様子に、そう言えば、と彼は校歌を知らないことに気付く圭。

 

「えっと、うちの学校の校歌に朽那川のことが入ってるんです!」

 

 そう言って圭は校歌を(そらん)じる。

 

 ――七つの丘に冠たるは天に煌めく剣の(ひじり)。朽那の川に渦巻くは九頭(くず)の大蛇の毒の息。

 

 ――七日七夜の争いに天より降るは血の涙。大地に深く刻まれし炎の跡こそ物恐ろし。

 

 ――七つの丘に日は巡り今や聖はおらねども。我ら希なる聖の子、心に剣を捧げ持ち。

 

 ――勇気を胸にいざゆかん。巡ヶ丘の民いざゆかん。

 

「と、まぁこんな感じです!」

 

 と、自信満々に胸を張る圭。美紀はそんな圭に、良く校歌を覚えていたね。と軽口を叩いている。

 その軽口に、圭は怒ったふうに美紀へじゃれつく。

 そんな二人のじゃれ合いを横目に、晴明は何事かを考える。

 

(那酒沼、おしゃべり魚、朽那川、源流、そして毒……!)

 

「まさか――!」

 

『ひゃ、ひゃい!』

 

 急に晴明が叫んだことに驚く二人。

 しかし、晴明は二人を気遣う余裕すら失っているのか、手元にある資料を調べていく。そして――。

 

「なんて、なんてことだ……。まさか、本当に、だなんて」

 

 晴明のあまりの様子に美紀は恐る恐る声を掛ける。

 

「あの、晴明さん? なにかわかったんですか?」

 

「あぁ、あぁ、わかった、わかったともさ!」

 

 そう言って晴明は、歯が砕けそうになるほど噛み締める。

 その尋常ならざる様子に口を開こうとする二人。その前に晴明の口から出た言葉に絶句することになる。

 

「これが、バイオハザードだ広まった理由はまだ不明だが、しかし。原因は――」

 

 生物兵器なんかじゃない。もともとこの土地固有の風土病だったんだ――――!!

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