DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
次回更新は3/8となります、ご了承ください。
ちょっと短いけど切りが良いところまでで。
同時にあんまり場面が進まなかったよ、な第六話です。
本来はるーちゃん救出まで行くはずだったんだけどなぁ……。
では、どうぞ。
透子が所有しているキャンピングカーで一夜を過ごした晴明たちは、透子の運転で彼女が昨日言っていた秘密基地へと出発するために、ラジオ局を後にする。
──チリィ……ン。チリィ……ィ……ン。
晴明たちが去った後のラジオ局に鈴の音が響き渡る。もの悲しげな鈴の音が、何かを見送るように鳴り続ける。いつまでも、いつまでも……。
ラジオ局を出発した後、晴明たちの大凡順調と言えるものだった。むしろ
透子と昨日の罰として、キャンピングカーの天井の上から敵性存在の狙撃を命じられているカーマ以外は、皆一様に首を捻っていた。
その中で一番最初に晴明が話し出す。
「しかし、昨日に比べると数が減ってきているみたいだな」
その言葉にジャンヌが同意する。
「そうですね、昨日なるべく倒しながら移動してたのが効いたんでしょうか?」
ジャンヌの言葉を聞いた透子は驚きながら二人に話かける。
「はぁ?! 皆そんなことしてたの?!」
「ん? あぁ。生存者の安全を確保するために、一応な」
晴明の言葉を聞いた透子はちょっと、いやかなり引いていた。この男、自分が死に物狂いで逃げ回っていた時に、他の生存者を助けるために化け物を間引きつつ、自身の救助に来たと言ったのだ。有り体に言ってこいつら化け物だ、と透子は思った。
もっとも、それは透子の勘違いで、実際には超特急で助けに来たわけだが、その時の晴明たちの走っていた時速が約50km/hを出していたという真実を透子が知った場合、そこまで認識は変わらないか、より酷くなりそうな気もするが。
ともかく、そんな事を話しながらもたまに見えるゾンビは、カーマの弓の餌食になりつつ旅路は進み、正午の時間帯には目的地である透子曰く秘密基地へと到着する。
その外見は住宅と言うには殺風景で、見た目的にはガレージか何かのように見える。
「これが、秘密基地なのか……?」
「えぇ、こっちよ」
キャンピングカーを秘密基地に横付けにして止めた透子は、側面の壁に敷設されている梯子を登り天井に移動する。
晴明たちも彼女に続き天井に移動すると、そこには各所に太陽光発電機と中央に丸い金庫扉が設置されており、透子はそれを回していたが……。
「これ、すっごく硬いんだけど!」
一向に回らないのか、顔を歪ませながら力を込めている透子。
その横に晴明が移動すると、彼もまた扉を回すために力を貸す。
「よっ、と」
そんな彼の軽い掛け声と共に少し力を込めて回すと、扉のハンドルはギィ、という重苦しい音とともに少しづつ回りだす。そんな彼の姿を透子は真横で驚愕した顔で見ていた。
それから程なくして扉は開き、晴明が中の安全を確認した後に全員で侵入する。
中に入ると、そこはほんのちょっとの大きさの小部屋が有り、その先には先ほどの金庫扉よりも堅牢そうな扉があった。尤もその扉は施錠されていなかったようで、簡単に開く。
晴明たちはそのまま中に侵入すると、そこには放送用の機器が設置されている部屋と、別の部屋に繋がる扉、そして奥にはなにか広大なスペースが確保されているようだった。
その全容を見た晴明は思わず呟く。
「なるほど、確かにこれは秘密基地、だな」
その言葉に透子はそうでしょう、そうでしょう、と言わんばかりに笑いながら何度も頷く。そして透子はそのまま案内を始める。
「父さんの話ではここで緊急放送を、そしてそっちの──」
と、言いつつ扉を見る透子。
「扉が生活スペース、寝室やキッチンね。それで最後にあそこ」
そして今度はこの部屋の先にあるスペースを見る透子。
「あそこには色々な物資が集積されているらしいわ」
「……らしい、ですか?」
最後だけ、確定情報じゃなかったことに疑問を持つジャンヌは、透子にそう質問する。すると、透子はどこか罰が悪そうにしながら答える。
「…………だって、前にここに来た時は子供だったんですもの。あそこに入りはしたけどすぐにつまみ出されて、ここは色々なものがあるから触っちゃだめだよ、なんて言われたのよ」
透子の言葉を聞いたジャンヌは納得したように頷きつつ提案する。
「それなら、その集積所を捜索してみましょう」
「レティシアさん?」
ジャンヌの提案に訝しがる透子。しかし晴明はジャンヌの提案に乗る。
「そうだな、透子さんが物資の内訳を知らない以上、今から把握するしか無い。今後必要になった時に物がありませんでした、では困るからな」
「……それは、確かにそうね。なら、探索しましょうか」
晴明が言うことに納得がいったのか、透子もまた賛成する。
「ああ、それと──」
晴明はそう言いながら、寝室があるという扉の方を向く。そこには皆に隠れて中に移動しようとしていたカーマの姿があった。
「さくらとジャックはそっちの部屋を見て、なにか異常がないかを確認してくれ」
「えぇ~……」
「はぁーい!」
晴明の指示に、カーマは面倒くさそうに、ジャックは元気よく、まるで正反対の返事をする。
「ぶ~ぶ~、少しは休憩してもいいじゃないですか。私、今回はすごく頑張ったんだし」
「? でも、ほとんどゾンビいなかったよ?」
ぶーたれるカーマと、彼女に対して悪意のない口撃をを仕掛けるジャック。
ジャックの口撃がクリティカルヒットしたのか、カーマは膝から崩れ落ちそうになるが既のところで耐える。が、しかし──。
「あ、でも、さくらちゃん、この頃、歳のせいか身体がキツイって言ってたよねっ。わたしたちが見てくるから、休んでて良いよっ」
ジャックのさらなる追撃にとうとう崩れ落ちるカーマ。他の三人は、そんなカーマを不憫そうな目で見る。
「……子供って、怖いね」
晴明が呟いたその言葉にウンウン、と頷く女性二人。特に女性としては、年齢関連で口撃されたことに戦々恐々としているようだ。
「とりあえずジャック一人だと心配だから、俺は向こうに行くよ。物資の確認はレティシアと透子さんの二人でお願い。……特に荒らされた形跡もないから問題はないとは思うけど、念の為、二人一緒に行動してくれ。万が一があると怖いからな」
晴明の言葉に真剣な表情で二人は頷くとそれぞれ調べる場所へ移動する。……そして、この場所には、しくしく、と泣き崩れているカーマのみが残された。
秘密基地の探索開始から数時間後、全員が再び放送用の機器があった場所──便宜上放送室と呼称する──に集まった。
そして探索の結果を発表する。その結果はまず秘密基地内にゾンビを始めとする敵性存在は発見できず、そして物資に関しては保存食などの食料品や、医療品に衣服、生活用品など、この人数であれば約二ヶ月は暮らせるであろう物資が集積されていた。
「……なぁ、透子さん」
「なに、かしら?」
その物資を確認した面々、特に透子の顔には影が差している。これでは、まるで──。
「いや、顔色が悪いから──」
晴明が透子を慰めようとしたのだろうが、その時ガントレットからアラームが鳴り出す。
何があったのかと晴明と、そして珍しさからか透子もまた覗き込む。
「晴明さん、これは一体?」
そしてガントレットが何かわからなかった透子が晴明に質問する。
「ああ、これは俺の商売道具だよ。変な形だと思うだろうが、色々と高性能だから重宝してるんだよ」
晴明が透子に説明した後を見計らって通信が開始される。
《ハァイ、マスター、元気かしら? あら、そこの人は?》
その通信の主はバロウズだった。彼女は昨日はバレないように黙っていたが、今回火急な要件があったようでこういった形で連絡をしてきたようだ。
「彼女は昨日保護した民間人だよ、あっと、透子さん、紹介しておくよ。彼女はバロウズ、俺達の仕事をサポートしてくれている」
《はじめまして、お嬢さん。バロウズよ、よろしくね》
「あ、はい。よろしくお願いします。赤坂透子です」
そう言って自己紹介をする二人。そして自己紹介を終わった後に晴明は。
「済まない透子さん。こっちの仕事の件かもしれないから、席を外すよ」
「えっ、あ、うん……」
どこか寂しそうに透子が頷くと、晴明は席を外し入口近くの小部屋に移動する。
小部屋に移動した晴明はバロウズから報告を受ける。
《それで、マスター朗報よ。生存者の反応があったわ》
「なにっ!」
バロウズの報告に驚く晴明。その晴明にさらに驚く報告を入れるバロウズ。
《マスターは、数日前に交通事故から助けた姉妹のことは覚えているかしら?》
「確か小学生の妹さんと、高校生くらいの子、若狭、だったか? ……まさか!」
そこまで呟きながら彼はあの二人にお守りを渡していたことを思い出す。
──晴明自身を、この世界に転生させた高位悪魔『魔神-ヴィローシャナ』、その一つの側面である大日如来の力を内包されていたお守りを、だ。
晴明の考えを肯定するようにバロウズは言葉を続ける。
《えぇ、マスターの考えてる通りよ。あの子たちに渡した物の反応があるわ》
そのことを聞き安堵する晴明。あのお守りが起動しているということは、少なくとも本人たちは死亡していないということだからだ。と、言うのもあのお守りは人間のMAGでしか起動できず、ゾンビたちは悪魔でこそ無いが、多少MAGが変質しているためにゾンビ化していた場合、そもそも起動されることはない。
そしてその効果は、低級の悪魔程度であれば寄せ付けないことが出来る空間を生み出すものだから、一度発動さえしてしまえば問題ないはずだ。
「そうか! ならその反応と辿れば救出は可能だな。詳しい場所は分かるか?」
《えぇ、一つは……、これは、鞣河小学校ね》
「と、言うことは妹さんの方か。もう一つは?」
《もう一つは、巡ヶ丘学院高校、みたいね》
「ふむ、……バロウズ、地図を表示できるか?」
《出来るわよ、マスター》
晴明の要望に答えて地図を表示するバロウズ。晴明はその表示された地図を見て考え始める。地図に表示されている二つの目的地は、現在地を中心とするとそれぞれ真逆の方向を示していた。
「…………これなら、妹さんの救出を優先したほうが良さそうだな」
その晴明の言葉にバロウズも同意する。
《ええ、そうね。この距離ではお守りの反応しか検知できないから、生存者が居るかもわからないし、いないことを前提とするとより幼い子を優先すべきね》
それに、高校生ならある程度は自分で考えて生き延びれる可能性も高いでしょうし。とバロウズは告げる。晴明もそう思っていたようで。
「ああ、俺もそう思う。それでメンバーだが、保護した民間人を連れて行くわけにもいかないから、ここの防衛にジャンヌ、カーマ。救出にジャック、それと戦力が足りなそうなら他にも召喚する、ってのが妥当かな?」
《了解、いつでも召喚できるように準備しておくわ》
一通りの作戦会議を終わらせた二人は、全員がいる放送室へと戻る。
放送室に戻った晴明は、バロウズからの報告や、それに関してのこれからの行動について告げる。それを聞いて、いの一番に反対したのは昨日と同じく透子だった。
「いくら貴方が強いと言っても危ないわよ! それなら全員で──」
なおも詰め寄り抗議しようする透子だったが、それをジャンヌが宥める。
「まぁまぁ、透子さん落ち着いて。……それで、晴明さん。そこまで急ぐ理由はなんですか?」
ジャンヌ自身は、何らかの急がなければいけない理由があることは理解しているが、恐らく透子はその理由を言わなければ納得しないと思った彼女は、わざと晴明に理由を尋ねる。
「理由か、それは簡単だ。……今回の救出相手は、完全な子供だ。だから既に一刻を争う状態になっている可能性がある。だから今回は少数で、なおかつ一番速く移動できる俺が行ったほうが良いという結論を出した」
「それなら、なおのことキャンピングカーで──」
「それは無理だな」
透子がキャンピングカーでの移動を提案しようとするが即座に却下する晴明。
「今日キャンピングカーでここに来るまで何時間かかった? 約五時間かかっているだろう? 俺単独であれば、道さえ知っていれば
その言葉を聞いた透子は驚きながら流石にそれは、と否定する。
「いやいやいや、晴明さん? ラジオ局からここまで、平和なときであっても徒歩だと大体一時間半位かかるんだけど……」
「……あはは、まぁ、晴明さんですから」
透子のツッコミに乾いた笑いを浮かべるジャンヌ。なお実際にはここに居るメンバーでは透子以外では全員問題なく可能だったりする。
「ふむ? 透子さんには、俺が普通の人間に見えた、と? 確か、昨日は死神に間違われたはずだが?」
晴明が不敵な笑顔を浮かべながら透子に告げると、彼女は顔を真赤にして抗議する。
「……それは、ごめんなさいって昨日謝ったじゃない! 普通は、あの状態で颯爽と助けが現れるなんて思わないわよ!」
そのまま透子は憤った声でさらに詰める。
「それに、それならなんでジャックちゃんは連れて行くの!」
「一人、二人程度なら運んで移動するのには、何ら問題は無いからな。それならばジャックを連れていけば生存者が警戒しても、この子が説得できる可能性がある。それにこの子もある程度の自衛手段を持っているから大丈夫だ」
実際には自衛どころか、単独での殲滅も可能なのだが透子がそれを知る由も無い。
その後、透子は観念したように溜息をついた後に、晴明に言葉をかける。
「私だって、自分が足手まといだということは分かっているわ。でも、これだけは言わせて?」
「…………どうした?」
晴明の問に透子は意を決したように彼に縋り付いて囁く。
「他の誰かはどうなっても良いから、貴方は、貴方だけは絶対に無事に帰ってきて。約束よ?」
まるで恋人にかける声のような甘ったるい声色で晴明に告げる透子。事実、彼女は昨日の絶体絶命の危機を彼に助けられたことによる吊り橋効果と、それ以上に彼なら自分を絶対に守り通してくれるだろうという打算が複雑に混じり合い、特殊な精神状態になっていた。
透子自身には自覚がないのだが、晴明の単独救出に反対したことも、彼が危険というよりも、彼と離れたことで自分自身が危険な状態に陥る可能性が高いと思ったからだった。
彼自身は
透子に縋り付かれた晴明は彼女の華奢な、柔らかい体を押し付けられたことで一瞬動揺するが、彼女の両肩を掴むと、優しく支えながら少しづつ、自身の体から引き剥がしつつ、透子を安心させるように笑いかけながら彼女に話かける。
「大丈夫、ちゃんと帰ってくるよ」
「……本当に、無事に帰ってきてね?」
そう言いながら晴明から離れる透子。
そして晴明は、ジャンヌに透子のことを任せると、ジャックを連れて陽が沈む中、秘密基地を出発するのだった。