DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 前書きではお久しぶりです、作者です。
 今話では一部、残酷な、グロテスクな表現があります、ご注意ください。


第七十一話 襲撃

 晴明が巡ヶ丘市役所で朱音と通信を行っていた頃、聖イシドロス大学において一つの、好ましくない動きがあった。それは――。

 

「……くっ、マハ・ジオンガ――!」

 

 朱夏が苦悶の表情を浮かべながら己のペルソナ、ブラックマリアを顕現し、広範囲化された電撃を放つ。

 それを受けて感電し、消し炭となる異形のモノたち。

 その回りには消し炭となった異形たちと同じ姿形をしたモノ。鋼色の肌を持ち、赤髪の中に角が見え隠れしている悪魔、【妖鬼-ダイモーン】がいた。

 つまりは、聖イシドロス大学は現在悪魔による襲撃を受けていた。

 

 その証拠に今の大学周辺は黒々とした煙が立ち上ぼり、建物の一部は損壊し、そこかしこから人々、大学にいた生存者たちの悲鳴が木霊している。

 その中で朱夏は一人でも多く生き残らせようと奮闘していた。

 

「……っ、まだまだ。はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 まるで自身が喧嘩独楽にでもなったかのごとく、朱夏は次々とダイモーンに踊りかかり、サバイバルナイフで、拳で、蹴撃で文字通り蹴散らしていく。

 ダイモーンたちの返り血で深紅に染まった朱夏の姿は、まさに鬼神のごとく。

 彼女の勇ましさ、万夫不当の様相に本来の強者悪魔であるダイモーンたちが、本来は弱者である人間。神持朱夏に対して恐怖を抱いていた。

 だが、それでも――。

 

「た、たすけ……。――あぁぁぁぁぁっっ…………」

 

「いやだっ! やだっ! ――ぎぃやぁぁぁぁぁ……!」

 

 それでも多勢に無勢。いくら朱夏が一騎当千の働きをしようとも、彼女の手が届く範囲には限度がある。

 そして、彼女の手の届く範囲の外にいる者たちの末路は。

 

 ――ぐちゃり、ぐちゃり。

 

 (人間)をこねくり、咀嚼する音が聞こえる。

 それは命を蹂躙し、陵辱する音。

 その発生源となったダイモーンは口から()()()()()を滴らせ、次なる獲物を物色する。しかし――。

 

 ――斬!

 

 次の瞬間、ダイモーンの(くび)は突如として振り下ろされた長剣によって絶ち斬られ、ごろん。と地に堕ちる。

 突如として屍を晒すこととなったダイモーンに、仲間たちは慌てて周囲を確認しようとして――。

 

 ――そのまま旗槍をもって串刺しにされる。

 

 その持ち主は……。

 

「ジャンヌさん……!!」

 

「無事ですか、朱夏?」

 

 そう、彼女の名はジャンヌ。英雄-ジャンヌダルク。

 彼女は戦闘時の鎧を身に纏い、そしてその鎧には数多の返り血を浴びていた。

 彼女も、ジャンヌも朱夏と同じように戦えない者たちを護るため、()()()ために奮戦していたのだ。

 事実、彼女たち二人の奮闘によって多少なりとも大学の外へ脱出できていた。

 そのことに安堵を覚えた朱夏は内心、胸を撫で下ろす。

 そして、彼女は確認のため、ジャンヌに質問するために口を開く。

 

「ジャンヌさん、向こうは大丈夫なの?」

 

 朱夏の質問に、ジャンヌは想定していた。と言わんばかりに即答する。

 

「向こうには――ガルガンゼロがいますから」

 

 ――ガルガンゼロ。

 

 正式名称はガルガンチュア・ゼロという名であり、世紀の大天才Dr.スリルが生み出した造魔の一体。

 そして造魔の名前の通り、ガルガンゼロは英雄-ジャンヌダルクのもととなった造魔より先に生み出されたこともあり、ある意味彼女の姉とも言える存在だった。

 その彼女の力は中級神魔に匹敵し、なおかつ造魔という特性上、術者。この場合は生みの親であるDr.スリルに従順。

 彼の護衛という観点で言えば、これほど相応しい存在もいなかった。

 

 そのことを理解した朱夏は、安心したようにホッと息を吐く。

 なぜなら、今彼の近くには自堕落同好会のメンバーである桐子をはじめ、友人となった女性陣。それにその護衛として頭護貴人や城下隆茂、高上聯弥がともに行動していたからだ。

 しかし、だからといって楽観視できる状況でもない。

 こうしている合間にもダイモーンの数は増えているのだから……。

 まるで一つの軍隊が攻め込んできたように。

 

 ――その時、朱夏の背筋にヒヤリとした悍ましさを感じる。

 

 彼女は自身が感じた直感を信じ、その場を飛び退く。

 するとそこに大量の氷の礫が、ダイモーンたちをも巻き込んで殺到する。

 それを見て顔を青くする朱夏。

 あと一歩でも遅ければ、自身もまたダイモーンと同じように氷の彫像か、もしくはズタズタに引き裂かれて骸を晒していたのだから。

 

「――ヒト猿の癖に、やるじゃねぇか」

 

 間一髪、危機から脱してホッとしていた朱夏の頭上から、そんな尊大な声が聞こえてくる。

 その声を聞いて、思わず顔を上げる朱夏。そこには――。

 

「……! 堕、天使-フォルネウス、ですって?!」

 

 そこには、かつて晴明がリバーシティ・トロンで戦い、あと一歩のところで取り逃がした悪魔、堕天使-フォルネウスの姿。そして、さらに……。

 

「友よ、今はそんな小物に構っている暇はないぞ」

 

「わかってるって、心配性だなぁ()()()()()はよぉ」

 

 フォルネウスと同じくソロモン王が使役した七十二柱の魔神。その中の一柱、堕天使-デカラビアの姿があった。

 

 

 

 

 その二柱の悪魔が現れたことで朱夏は何故こんなにもダイモーンが溢れかえってきたのかを悟る。

 そもそもソロモン王の魔神たちは地獄において爵位を持つ貴族たちだ。

 そして、フォルネウスとデカラビア。この二柱はともに大侯爵の位に位置し、それぞれ二十九の軍団と三十の軍団を指揮するとされている。

 即ち、このダイモーンたちは彼らの配下の軍団。その雑兵だったのだ。

 

 しかし待って欲しい。

 ここは地獄に形容はできようが、あくまで人間界だ。

 それなのに彼らの配下、いくら雑兵とは言え悪魔を無尽蔵に顕現させることは可能なのか?

 否、そんなことは不可能だ。

 

 ……本来ならば。

 

 たが、今回に関して言えば、かなり特殊な事例だった。それは――。

 

「……まったく、こいつらを呼び出すためとは言え、あんなくそ不味いヒト猿擬きを食う必要があるなんてなぁ」

 

「そう文句ばかりいうな、友よ」

 

「しかしよぉ……」

 

 そう言いながら愚痴をこぼすフォルネウスと、それを諌めるデカラビア。

 二柱の言葉を聞いたジャンヌは、まさか。とでも言いたげに目を見開く。

 

「……まさか、この被害に対して明らかにゾンビが少なかった理由は――!」

 

 そう、二柱が言ったヒト猿擬き。その正体は今回のバイオハザードでゾンビとなってしまった元人間たち。

 かれらを片端から食うことで、フォルネウスとデカラビアはMAGを吸収し強大化。

 そして吸収できなかった余剰MAGを用いることで、自身の配下を召喚していたのだ。

 

 ――実際、気付こうと思えば気付けるだけの兆候はあった。

 

 どちらもフォルネウスたちが現れる前の話であるが、一つはかつて晴明が透子を救出し秘密基地へ向かう際、かれらの数が少なくなっていたこと。

 そして、もう一つはここ、イシドロス大学にて墓場と呼ばれるゾンビの隔離区画から数が少なくなっている。と隆茂が貴人に報告し、それが朱夏たちにもたらされた時。

 そのどちらともが、顕現した野良悪魔に食い散らかされた故の数の減少だったのだ。

 もっとも、そのどちらともが双方にとって悪魔を確認する前の出来事だったために、予測するのは難しかったかもしれないが……。

 

 だが、今さらそんなことに気付いても既に手遅れだった。

 なぜなら、今、現実として目の前に強大化した、それこそ大悪魔と言っても過言ではないほどに力を増した二柱の堕天使(魔神)がいるのだから。

 事実、朱夏は目の前にいる魔神たちからビリビリとした、肌がひりつくようなプレッシャーを感じている。

 

 そして彼女の直感は正しい。なぜなら、本来であれば朱夏とフォルネウス、デカラビアはかろうじて互角――それでも朱夏がやや不利――であるが、現在は二柱は完全に格上の存在へと成り上がっている。

 それこそ、朱夏とジャンヌ。そしてガルガンゼロの総力をもって対抗してようやく足留めが可能。と言えるほどに力の差が出来ている。

 

 そのことを理解した朱夏。

 彼女は背中に冷や汗を流しながら、現状を打破するために考えを巡らせる。しかし――。

 

「……これ以上、手間は掛けられねぇんでなぁ。ここで、死んどけやぁっ!」

 

 ……相手が考えがまとまるまで待ってくれるなどという保証があるわけがない。

 フォルネウスは後がつかえているとばかりに、さっさと片付けるためにMAGを練り上げ、マハ・ブフーラを放つ。

 それを驚きの目で見つめる朱夏。

 

 

 

 

 

 瞬間、直撃――。しかし……。

 

「うん……? ――!」

 

 何故か直撃した筈のマハ・ブフーラが術者のフォルネウスと、ついでとばかりにデカラビアへ殺到する。

 それを慌てて回避するデカラビアと、逆に甘んじて受けるフォルネウス。

 

「……そういや、そうだったなぁ――!」

 

 自らの氷結魔法を吸収しながら、フォルネウスは忌々しげに呟く。

 彼の視線の先、そこには。

 

「――マカラ、カーン……!」

 

 万能属性以外のあらゆる魔法を跳ね返す、絶対的な防御魔法マカラカーンを唱え朱夏を守るジャンヌの姿があった。

 それはまるでかつての再現。

 そう、かつてリバーシティ・トロンで美紀と圭を守る時の再現。

 

 そのことを思い出したフォルネウスは、またもや邪魔をされたことに憤慨する。

 

「……忌々しい元ヒト猿がぁ!」

 

 フォルネウスは叫びながらジャンヌへと突貫する。

 彼のエイに似た身体。そのヒレの部分がまるで鋭利な刃物のような鈍い光を放つ。

 そのまま彼女を斬り裂き、ついでとばかりに朱夏をも仕留める腹積もりなのだろう。

 だが、それは無理な相談だった。なぜなら――。

 

「テトラカーン……!」

 

 ジャンヌの前に先ほどのマカラカーンと似た光の膜が展開される。

 その膜に突っ込んだフォルネウスは見えない力場に弾かれるように吹き飛ばされる。

 彼女、ジャンヌが使ったテトラカーン。それはマカラカーンの物理防御版だった。

 

 結果としてジャンヌに良いようにあしらわれたフォルネウスは激怒。

 

「お、おのれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 頭に血が昇ったようで、身体全体から暴風のようにMAGが吹き荒れている。

 そんな相方を見たデカラビアは盛大にため息を吐く。

 

「おい、フォルネウス!」

 

 そして、一喝。

 友の急な大声に多少頭が冷えたのか、フォルネウスは驚いた様子でデカラビアを見る。

 そこで流石に暴走していたことを理解したのか、済まなそうに謝る。

 

「お、おぉ。済まねぇ、デカラビア」

 

 そんなフォルネウスの様子に、内心舌打ちをしたい気分の朱夏とジャンヌ。

 そのまま冷静さを失っていれば、多少どうにかなる可能性もあったからだ。

 しかし、それもデカラビアの一喝で泡沫に消えてしまった。

 しかも――。

 

「ここからは、我もやるぞ」

 

「お、おい。デカラビア――」

 

「これ以上、時間は掛けられんのだ」

 

 今まで静観していたデカラビアの参戦。

 これにより、さらに朱夏たちは苦戦を強いられることになってしまう、筈だった。

 だが――。

 

 ――ちりぃ……ん。ちりぃぃぃぃん。

 

 どこからともなく聞こえる鈴の音。

 それに気を取られて辺りを見渡す全員。

 そんな全員の視線にとあるものが飛び込んでくる。

 

 ――札、札、札の山。

 

 まるで紙吹雪のように札の山が縦横無尽に空間を駆け抜ける。そして――。

 

 その札たちはダイモーンたちに取り付くと……。

 

 目を開けていられない程の発光。それとともに聖なる雰囲気が辺りを包み込んでいく。

 

「これは……!」

 

 この光景に何か覚えがあるのか、ジャンヌは驚きの声を上げる。

 それもそうだ。彼女にはこの光景を、()()を知っている。

 この魔法は破魔属性の最高クラスの魔界魔法。その名も――。

 

 ――マハンマオン。

 

 その神聖な光によって悪魔たちは軒並み浄化。MAGだけの存在となって消滅していく。

 

 己の配下たちを虐殺されたフォルネウスとデカラビアは信じられないものを見た、といった様子で辺りを見ている。

 事実、彼らにとってこの光景は信じ難い光景だった。それも二つの意味で。

 一つは配下たちがなす術もなく殺られたこと。

 もう一つは――。

 

「なぜ貴様が邪魔をする――!」

 

 ――ちりぃ……ん。ちりぃ…………ん。

 

「――大僧正ぉぉぉぉぉぉ!」

 

 フォルネウスが怒りの矛先を向ける場所。そこには全身が木乃伊のように干からびた僧侶。

 晴明の仲魔の一人である魔人-大僧正の姿があった。

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