DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第七十四話 ■■■-フォルネウス

 時間と場所は現在、朱夏たちとフォルネウスの戦いまで戻る。

 魔人-大僧正が現れたことにより、戦いは朱夏たち有利に推移するものと思われていた。しかし――。

 

「いくぜ、相棒! ――おぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「援護は任せよ! ――メギドラ!」

 

 己のヒレを強化して突撃するフォルネウスと、それを援護するように中級万能属性魔法を放つデカラビア。

 それに対し朱夏たちは。

 

「……っ、ジャンヌさん!」

 

「ええ、わかっています。()()()()()()

 

 なぜか驚異度であれば格段に高い筈のメギドラではなく、フォルネウスを防ぐために物理反射のテトラカーンを張るジャンヌ。

 その理由は単純明快、ジャンヌでは、というよりもほぼ全ての悪魔、ないし人間にデカラビアの魔法を防ぐ(すべ)を持たないからだ。

 

 時に、魔界魔法。その中で攻撃系統は主に七つに分類される。

 火炎、氷結、衝撃(疾風)、電撃、破魔、呪殺、そして万能だ。

 そのうち火炎から呪殺までには防御相性、または耐性というものがある。

 以前、朱夏と澄子が戦ったときの事を覚えているだろうか?

 あの時、邪神-アラハバキの耐性は氷結、破魔、呪殺は無効、火炎、衝撃、電撃は弱点だと記した。だが、この中にもう一つ記されなければおかしい属性がある。

 

 そう、万能属性だ。

 なのに、なぜ記されなかったのか?

 その理由もまた単純だ。

 もう一度字面を良く見て欲しい。

 万能、そう()()なのだ。

 

 この字が示す通り、万能とは基本的に文字通り何者にも防げず、またあらゆる防御相性を貫通する。

 それは本来魔法を跳ね返す筈のマカラカーンですら例外ではない。

 即ち万能属性の攻撃に関して言えば、己のフィジカルのみで耐えるか、もしくは完全に回避するくらいしかまともな対抗手段がない。

 

 ……以前、リバーシティ・トロンでの戦い。その時に、デカラビアの攻撃に晴明が慌てて回避したのはそれが理由だった。

 つまり、それほどまでに強力な攻撃だったのだ、万能属性というものは。

 因みに、最上級神魔の中には一部、この万能属性に耐性を持つ者も存在し、その中の一柱。大魔王-ルシファーに至っては、本来、上級の万能属性魔法であるメギドラオン。それを越える魔法であるメギドラダインを唯一使用することが出来る。

 これがどれほど凄まじいかと言うと、一部の実力者が放つメギドラオンは、それこそ対象となった存在を塵も残さず、文字通り原子レベルまで分解、消滅させるだけの威力を持つ。と言えば理解できるかも知れない。

 

 とにもかくにも、そのような理由からジャンヌは確実に防げる物理攻撃をテトラカーンで反射しながら、デカラビアの魔法は回避する策に出たのだ。

 もちろん、朱夏もその事は理解しており、ジャンヌに声を掛けた後、即座に回避行動へ移っている。

 

 ――その中でただ一人。大僧正だけは回避行動も取らずにいた。

 そして、そのままデカラビアのメギドラが直撃する。

 

「……! 大僧正さ――!」

 

 その行動に驚き、声を荒げる朱夏。

 しかし、彼女の心配は杞憂に終わる。

 

「……渇ぁぁぁぁつッ!!」

 

 デカラビアの万能属性魔法を浴び、それでも傷らしい傷を負っていなかった大僧正は叫びを、気炎を上げる。

 

 ――渇破。

 

 それが先ほどの叫び。彼が使った()()()の正体だった。

 その効果は、自身の精神を極限まで集中させることによる体感速度の高速化。

 ゲーム的に言ってしまえば、自身の一回に行える行動回数の増加だ。

 

「くぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 まずは一つ目、大僧正が叫ぶとともにフォルネウスの体内から光が溢れ、そのまま大僧正のもとへ飛翔し、吸収される。

 それとともにフォルネウスの覇気がほんの少しであるが萎む。

 

 彼の使ったスキルの名、それは瞑想。

 

 メギド系統と同じ万能属性であり、その効果は対象の体力と精神力を奪う、というものだ。

 つまり、大僧正はフォルネウスより体力と精神力を収奪し、自らのものとしたのだ。

 そして、大僧正は間髪いれずに次の行動へ移る。

 

「……汝ら、煩悩の炎に焼かれよ。渇ぁぁぁぁぁぁぁつ!」

 

 ――煩悩即菩薩。

 

 フォルネウスとデカラビアの周囲に光が集まるとそのまま集束。

 まるで纏わりつくように光が凝縮していき、次の瞬間には一気に弾けた!

 それと同時にフォルネウスとデカラビアは、まるで泥酔したかのように、ふらふらと漂っている。

 無論、これは二柱が本当に酒を呑んだ訳ではない。

 

 先ほど使った、大僧正のもう一つの固有スキル。煩悩即菩薩の効果だ。

 その効果は対象に精神系のバッドステータスを付与するものだ。

 今回で言えば、二柱とも混乱状態になったのだ。

 そして、その状態を見過ごすほど大僧正は甘くない。

 

「我が法力、特と堪能するが良い――!」

 

 大僧正の周囲にMAGの奔流が吹き荒ぶ。

 それと同時に、彼の容姿。木乃伊の姿から想像できないほどに清らかな気配が漂う。

 

「いざ、滅相せよ。……マハンマオン」

 

 大僧正が力ある言葉を紡ぐとともに、どこからともなく護符のようなものがフォルネウスとデカラビア。双方に降り注ぐ。

 そして降り注いだ護符は二柱の周囲に漂うと眩く発光し、その力を解放する。

 

「ぐ、ぅぉぉぉぉっ!」

 

「――なん、と!」

 

 その光を浴びた二柱の身体は、まるで融解するかのように焼き爛れていく。

 もともと二柱ともに堕天した存在ゆえに聖なる波動を放つマハンマオンは効果的だった。しかし――。

 

「な、め、る、なぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 フォルネウスは気炎を上げるように咆哮する。

 確かに大僧正のマハンマオンはフォルネウスに効果的なダメージを与えていた。

 

 だが、それがどうした?

 なめるなよ、俺を誰だと思っている!

 

 そう言わんばかりにフォルネウスは咆哮を上げる。

 そしてそのままフォルネウスは、大僧正のマハンマオン(聖なる波動)を吹き飛ばすようにMAGを練り上げ、彼を中心に暴風のようなMAGの奔流が吹き荒れる。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁあぁ! ――死門の流水!」

 

 フォルネウスの力ある言葉とともに猛吹雪と寒波が訪れる。

 瞬く間に地面が、民家が、そして事切れたゾンビや配下である筈のダイモーンすらも凍り付いていく。

 そして、それは大僧正やジャンヌ、朱夏も例外ではない。

 彼ら、彼女らの皮膚に霜が降り、息は白く、さらに霜は薄い氷に成長していく。

 

「……くっ!」

 

 朱夏は凍り付いていく自身の身体を見て悔しげな声を出す。

 それでも、ギリギリではあるがまだ抵抗できる。

 そもそも、まだ抵抗できる。というよりも一瞬で凍り付いていないこと自体がおかしいとも言えるが。

 これが英雄-ジャンヌダルクや魔人-大僧正であればまだ納得できる。

 彼らは人間よりもはるかに強靭な肉体と精神を持つ悪魔なのだから。

 

 ……しかし、朱夏は違う。

 彼女はペルソナ使いであることは確かだが、それでも肉体は只人のそれでしかない。

 それなのに今回の事が致命傷に至っていないのは何故か?

 

 それは彼女もまた数多くの死線をくぐり抜けてきた戦士だからだ。

 まず、彼女の強さをLvで表すのであれば30。

 これだけで見ると低いと思うかもしれない。が、それは勘違いだ。

 

 そもそも、この世界は局所的に大事件が起きることはあれど、女神転生シリーズのように大破壊や大洪水、東京受胎のような世界滅亡クラスの難事が起きることは早々なかった。

 とはいえ一つ間違えば滅亡にまで発展、ということがなかったわけではない。

 ある意味今回のバイオハザードが最たる例だろう。

 

 ……若干話が逸れたが、つまりこの世界は基本的に平和だったのだ。

 そんな世界でLv60を越える晴明や、それを凌駕する葛葉ライドウ(朱音)が異常なだけで、朱夏自身も戦闘能力で言えば上澄み。

 しかも、彼女の年齢。まだ二十歳を越えた程度であることを加味すれば、はっきり言って、あらゆる退魔組織が喉から手が出るほどに欲しくなる逸材だ。それこそ無理矢理拉致してでも組み込みたくなるほどに。

 実際にそれが起きていないのは、ただ単にそれを実行した場合、蘆屋晴明はもとより実質的な日本国の最高戦力である葛葉ライドウを敵に回すことになるから。

 つまり、あまりにも割に合わない事が理由だ。

 だいたい、主な退魔組織の戦闘員、その中で実働班の平均Lvが10から15程度と言えば朱夏たちが如何にずば抜けて強いか、というのが理解できるかも知れない。

 

 閑話休題。

 

 それで、朱夏がなぜフォルネウスの攻撃を防ぐことが出来たのか?

 それは彼女が自身のMAGを活性化させ、身を守るように、全身を薄い膜状でコーティングしたことが要因だった。

 もっと簡単に言ってしまえば、自身のMAGでバリアを張っていたと言えばわかりやすいか。

 つまり朱夏は、実際は直接攻撃を受けたわけではなく、あくまでもバリア越し。己のMAGを盾としてフォルネウスの攻撃を受けきったのだ。

 

 因みに、これは結構ポピュラーな方法であり、やろうと思えば美紀や圭も行える。

 ただし、実際に行ったとしても二人ではフォルネウスの攻撃を防ぎきるのは難しいが……。

 

 その理由は単純に地力の違い。

 美紀と圭、彼女たちの場合はMAGの効率的な運用を行えるだけの技量がないことや、単純にMAGの総量が少ないことが原因となる。

 対して朱夏は、先ほども言ったように数多くの死線を越えたことでより効率的に、そして多くの敵を屠ったことでMAGを収奪、成長してきた。

 それは裏の世界に関わって日の浅い美紀と圭にはない要素だ。

 

 それはともかくとして、大僧正やジャンヌならまだしも、人間である朱夏すらも耐えきると思っていなかったフォルネウスは驚く。

 

「な、なにぃっ!」

 

 フォルネウスが驚きをあらわにする中、朱夏からMAGの奔流が走り、氷の拘束を排除する。

 

「なめ、ないで――!」

 

 そして彼女はすぐさまペルソナ、ブラックマリアを顕現。

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 そして彼女の雄叫びとともにブラックマリアのもとに紫電の光が集まる。それはマハ・ジオンガの光よりも遥かに力強く、神々しかった。

 

「――ジオダイン!」

 

 その朱夏の力ある言葉とともに、フォルネウスの頭上から膨大な量の雷が降り注ぐ。

 それをもろに浴びることになったフォルネウス。

 

「ぐ、がぁ……」

 

 雷にその身を焼かれることになったフォルネウスは、くぐもった悲鳴を上げた。

 そしてそのまま地面へ倒れ付しそうになる。だが――。

 

「ぐ、ぅ。まだ、だぁ……!」

 

 己の精神力、それを極限まで高め、維持と根性のみで食いしばる。

 それは、絶対に負けてたまるものか。というフォルネウスの意思の現れだった。

 しかし、それだけ(意思だけ)で勝てるのならば苦労はしない。

 事実、既にフォルネウスは満身創痍。さらには――。

 

「ぎぃ……!」

 

 彼のそばに盟友であるデカラビアが吹き飛ばされてくる。

 彼もまた、フォルネウスと同じく満身創痍。そして、彼と戦っていた大僧正とジャンヌが追いかけてくる。

 それだけでも絶望的な状況であったが、さらに追い討ちとばかりに、フォルネウスたちにとっては事態が悪化。朱夏たちからすると、()()()()()()が現れる。

 

「――無事か、お前たち!」

 

「……晴明さん?!」

 

 彼女の、朱夏の師匠。巡ヶ丘市役所へと向かった筈の悪魔召喚師-蘆屋晴明が駆けつけたのだ。

 そして彼の背後からは――。

 

「ちょっ、晴明さん。待ってぇ~~…………」

 

「待って、ください……。けほっ、はぁ、はぁ……」

 

 恐らく晴明を全力で追いかけていたのだろう。息を切らせ、疲れた様子の美紀と圭の姿もあった。

 そんな三人の急な登場に驚く朱夏。

 

「……何で、ここに?」

 

 思わずポツリと呟く朱夏。

 そしてそれはフォルネウスとデカラビアも同様だった。

 だが、その中でデカラビアだけは晴明が現れたことに対し、何故か好機が訪れたとばかりにフォルネウスへ驚くべき提案を告げる。

 

「――盟友よ、我を()()()!」

 

「なぁっ! なに言ってやがる、デカラビア!」

 

 デカラビアの提案に驚き、声を荒げるフォルネウス。

 そんな彼を無視するようにデカラビアは話を続ける。

 

「今こそが好機なのだ! 周囲にMAGが充満し、()()()がここにいる今こそが……!」

 

 デカラビアが言う特異点。その言葉を聞いたフォルネウスは一瞬迷う素振りを見せる。

 だが、すぐに意を決した様子になると。

 

「……すまん、相棒!」

 

 そのままデカラビアへ躍りかかる。そして――。

 

 ――ぐちゃり。ぐちゃり。

 

「な、にを――」

 

 フォルネウスの突然の凶行に驚く晴明たち。

 だが、次の瞬間。今度はフォルネウスの身体に変化が訪れる。

 彼のエイに似た身体が、まるで風船のように膨れ上がる。

 そして破裂。……否、むしろかつての身体を卵に見立て、殻を破り羽化するように異形が現れる。

 その異形を見て晴明は目を見開く。

 

 その姿にとても見覚えがあったから。

 それも、今世ではなく前世で。その名前は――。

 

「魔神、柱。だと……」

 

   ――魔神柱-顕現――

 

 本来この世界にあり得ざる存在。魔神柱-フォルネウスが顕現した。

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