DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
本来この世界に存在する筈のない異物、Fate/Grand Orderという作品で語られた化生、魔神柱。
それが目の前で顕現したことに驚き、目を見開く晴明。
しかし、彼はすぐに頭を振って驚きの意識を振り払い、冷静さを取り戻そうとする。
なぜなら戦場に於いて実力のないもの。そして冷静さを欠いた者から死ぬことを理解しているからだ。
だが、晴明一人が冷静さを取り戻したとしても他の者、特に朱夏はそうはいかない。
そもそも、晴明は転生者という特殊な環境にあって魔神柱の存在を知っていただけであり、朱夏にはそのような知識はないのだから。
実際、朱夏は不安と恐怖に顔をひきつらせながら晴明に問いかける。
「は、晴明さん……?! あの悪魔らしきものを知ってるの?」
「あぁ、多少なりとも、といったところだが……」
「なら、なんなの。あれ!」
朱夏の問いかけに、晴明はフォルネウスから目を離さないようにしながら答える。
「あれは
「旅路の果て……?」
「ああ、そうだ。人々の旅路の果て。滅亡という未来を憂う人類への
「……人類、悪?」
「ああ、あれこそが人が乗り越え、淘汰するべきもの」
「……一体なにを――」
――言ってるの?
思わずそう言いたくなる朱夏。
しかし、その前に魔神柱が、変異したフォルネウスが動き出す。
「オ、オォォォォォォォオォッ――――!!」
どこに口があるのか不明だが、雄叫びが聞こえるとともに、肉の柱と化したフォルネウスの身体中に数珠のように連なる瞳が点滅する。
そして次の瞬間――。
「――っ! あぶな――」
「きゃあっ! は、はるあきさ――」
咄嗟に近くに寄ってきていた朱夏を抱き締め、その場から飛び退く晴明。
そして飛び退いた瞬間に、彼がいた場所を一条の光が薙ぎ払っていく。
――轟音、そして爆発。
光が過ぎ去った場所に連鎖的にあらゆるものが蒸発、崩壊していく。
――それはまさに神の裁き。
命あるもの、亡きもの、あらゆるものを無慈悲に断罪する光。
その名は焼却式-フォルネウス。
その攻撃の爪痕を見て青ざめる朱夏。
そこには、たしかに地獄と言える光景が広がっていた。
「ひ、ひどい……」
彼女が見た光景、それは彼女がかつて社会の勉強で見た写真。
空襲で灰塵と化した都市部と同じような光景だった。
「――あ、あぁぁ……」
そこで震えた、怯え、そして呆然とした声が聞こえてくる。
それは、彼女の妹弟子、祠堂圭の声だった。
「……そん、な。おとう、さん。おかぁさ、ん――」
呆然と呟く圭。
朱夏は知らないことだったが、フォルネウスの光が薙ぎ払った地区には、彼女の家が、もはや終わってしまったとは言え、日常の象徴があったのだ。
しかし、それも全てが灰塵と化した。
――両親がまだ生きていたかもしれない、そんな淡い希望も含めて。
そして、それは彼女の親友である美紀にしても同じことだった。
美紀もまた全てを吹き飛ばしたフォルネウスを憤怒の表情で睨み付ける。
その瞳には力のない己を、圧倒的な
一方、そんな憎しみをもって睨まれていたフォルネウスは、知ったことではない。と言わんばかりに淡々と口を開く。
「標的、未だ健在。――消滅を提案する」
その言葉とともに、彼の瞳はふたたび輝き出す。
「観測所、起動。清浄であれ。其の痕跡を消す。――焼却式-フォルネウス」
フォルネウスが発した言葉に、ふたたびあの攻撃が来ると確信した晴明は大僧正に命令する。
「大僧正! ――俺とやつを
――自身とフォルネウス、二人を閉じ込めろ、と。
それを命じられてからの大僧正の動きは素早かった。
晴明と魔神柱、双方がいる地面の周辺。そこに孔が、空間の渦が開き呑み込んでいく。
「――晴明さんっ!」
それを見た朱夏は反射的に手を伸ばす。しかし――。
「……来るなっ!」
自身を助けようと伸ばされた手を払い除ける晴明。まさか、そんなことをされると思わなかった朱夏は呆然とする。
その合間にも孔に呑み込まれる晴明。
そして、彼は最後に彼女たちへ告げる。
「お前たちは巡ヶ丘高校へ向かえ! いいなっ!」
その言葉を最後に、晴明と魔神柱は孔へと消えていった。
――落ちる、墜ちる、堕ちる。
どことも知れない空間を落下する晴明たち。
だが、その落下もすぐに終わる。
次の瞬間には、まるで何事もなかったかのように双方ともに地に足をつけていたのだから。
そこは、かつてドッペルゲンガーが取り込まれ粛清された空間、決闘結界。
結界の制作者である大僧正が死ぬか、取り込まれた両者のうち、片方が死に勝者が決まるまで脱出することが出来ない、まさしく決闘のためのフィールドだ。
そして、さらに言えばこの世界はもとの空間と隔離されているため、いくら暴れようとも現実世界には影響がでない。
謂わばそれは
その事を理解している晴明は、ガントレットを操作して仲魔たちを次々に召喚していく。
「――来い、お前ら!」
その掛け声とともに彼の眼前に複数の魔法陣が展開。次の瞬間にはクーフーリンが、スカアハが、ジャックリパーが、じゃあくフロストが、そしてカーマが顕現する。
「はっ、おもしれぇことになってんな。マスター?」
「やれやれ、本当にお主と居ると刺激に事欠かんの」
「おかぁさん、あれをバラバラにすればいいの?」
「ヒィィホォォォォォッ! 魔神だろうがなんだろうがオイラの敵じゃないホォ!」
「……本っ当に最近面倒事多すぎません?!」
召喚され、魔神柱を見た仲魔たちは思い思いに発言する。
彼ら、彼女らの言葉を聞いて苦笑する晴明。
明らかに通常とは違う状況なのに戦意が下がっていないことに対して安堵と、逆に好戦的すぎることに対する不安。
唯一やる気がなさそうな発言をしていたカーマですら、顔を見ると油断なく魔神柱を見据えていることに頼もしさを覚えたからだ。
「軽口はそこまでだ! ――どうやら、
晴明の号令とともに仲魔たちはその場から退く。
それと同時に今の今までフォルネウスの中で蓄えられていたエネルギーが解放され、ふたたび焼却式-フォルネウスが放たれる。
それを危なげなく回避した晴明たち。
そして、お返しとばかりに攻勢に移ることになる。
「まずはわたしたちから――!」
初手はジャックによるナイフの投擲。それは寸分違わずフォルネウスの瞳へと吸い込まれていく。が、それは牽制にもならなかった。なぜなら――。
「ふぇっ……。弾かれちゃった」
ジャックが言うように、彼女のナイフ。それ自体は問題なく瞳の一つへ着弾した。ただし、それは瞳に張られた薄い膜を破ることすら出来ず、全てが明後日の方向へ飛び散っていく。
だが、弾き飛ばされていくナイフの合間を縫うように二つの閃光が奔る。
「バカ弟子、併せよ!」
「あいよ、お師匠!」
――ジャベリンレイン!
二つの閃光。
その正体は、スカアハとクーフーリンの師弟コンビ。
彼らは一気に間合いまで詰め寄ると、かつてクーフーリンが鞣河小学校で見せたスキル。ジャベリンレインを放つ。
彼らが放った槍の雨が次々とフォルネウスへ殺到!
魔神柱の身体を僅かといえ傷付けていく。
しかし、それはまだ致命傷にはほど遠い傷だった。その事を告げるようにフォルネウスは呟く。
「……無意味なり、……無意味なり」
「無意味かどうかは、俺らが決めるさ。――逝けよやぁ!」
フォルネウスの呟きに反論するように声をだした晴明は、直後に跳躍しフォルネウスの頭上へ躍り出る!
そのまま練り上げたMAGを倶利伽羅剣に籠めると、地表へ落ちる落下エネルギーすら加えてフォルネウスへ突撃する。
「……八相発破ぁ!」
そして倶利伽羅剣をフォルネウスへ突き立てると、MAGを解放!
攻撃的なエネルギーがフォルネウスを内部からズタズタにしていく。
だが、やられたままで終わるフォルネウスではなかった。
「……――!」
ダメージを負いながらも、フォルネウスは各所にある瞳を輝かせる。
すると周囲に暴風とともに煙が発生、晴明たちを吹き飛ばす。
「な、にぃ……!」
特に悲惨だったのが晴明だ。
もともと魔神柱の身体の上、という不安定な足場にいたことが災いし、完全に弾き飛ばされ隙をさらすことになる。
そして、そのような好機を逃すほどフォルネウスは楽天的ではなかった。
「消滅せよ、崩壊せよ――」
三度、フォルネウスは自身の最大火力である焼却式-フォルネウスを放つ。
そして晴明は今空中に投げ出され、回避できる状態ではない。
即ち、まともに回避することも許されず直撃。肉を、骨を、灰すらも焼却される――筈だった。
――直撃する直前、晴明の前に黒い影が躍り出る。
「……やらせねぇっホォ!」
黒い影の正体、それはじゃあくフロストだった。彼がマスターである晴明をかばうように前へ出たのだ。
そして彼に、じゃあくフロストに焼却式-フォルネウスが直撃する。
攻撃自体はじゃあくフロストが引き受けたが、衝撃自体はいかんともし難く、晴明はさらに吹き飛ばされる。
「う、ぉぉぉぉぉっ――!」
さらに吹き飛ばされた晴明は地面へ落下すると何度かバウンドして転がって停止する。
「……ぐぅ、っ!」
呻き声を上げる晴明だが、身体から発する痛みを無視してすぐさま立ち上がると、自身をかばったじゃあくフロストの無事を祈りながら探す晴明。
そして、彼の探し人はすぐに見つかった――。
「ムダムダだホォ――!」
そこには傷一つ負っていないじゃあくフロストの姿が――。
さらにはお返しとばかりにMAGを練っていたじゃあくフロストはフォルネウスへ己が持つ最大級の攻撃を叩きつける――!
「――マハ・ブフダイン、だっホ!」
じゃあくフロストの力ある言葉とともに、辺り一帯が氷塊に覆われる。
それはまさしくこの世あらざる暴威だった。しかも――。
――魔神柱-フォルネウスが凍り漬けになっている。というおまけ付きで、だ。
「……理解不能、理解、不能」
フォルネウスがそういうのも、むべなるかな。なぜなら
それなのに現実ではどうだ?
吸収どころかダメージが通り、しかも身体が凍りついている。
……端的に言ってあり得ない状況だった。
それ故にフォルネウスが狼狽えるのも無理はない。
しかし、じゃあくフロストはそんなフォルネウスを見て嘲笑う。
「ヒホホ、そんなの当然だホ。――悪魔ですらなくなったお前に、そんな加護があるわけないホ」
そう、目の前にいるのは悪魔。堕天使-フォルネウスではなく、魔神柱。言い方を変えれば魔術王ソロモンによって生み出された魔術式。
即ち、悪魔とはまた別の理で動く存在なのだ。
それなのに悪魔としての常識が通用するわけがない。
つまりフォルネウスは、
それがフォルネウスに対して氷結魔法が効いてしまった理由だ。
――これがもっと別の形、ヴィローシャナの実験がさらに進み、人理に対する理解度がさらに進んでいた場合、また別の結果が待っていただろう。
――即ち、魔術式の理と悪魔の理の融合。という形で。
とにもかくにも、これは晴明たちにとって朗報だった。
つまり言い方を変えれば、魔神柱-フォルネウスに、晴明たちの攻撃を無効化する手段は持ち合わせていない。ということを意味するのだから。
その事に気付いた晴明は気炎を上げる。
「――ならば、ここから反撃だ!」
そういって晴明たちの反転攻勢が始まるのだった。