DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第七十六話 魔人-■■■■■■

「それじゃあ、まずは私から――!」

 

 弓を引き絞り、魔神柱を見据えながらカーマが告げる。

 そして彼女は次々と矢を放っていく。

 

「――刹那五月雨撃ち!」

 

 カーマのスキル、刹那五月雨撃ち。その文字通りに夥しい量の矢が魔神柱へ向かっていく。しかし――。

 

 魔神柱に殺到する矢であったが、そのほとんどが効力射にならず、弾かれていく。

 その事に呆然とするカーマ。

 

「……冗談でしょう?」

 

 彼女がそういうのも無理はない。

 いくら彼女が他の悪魔に比べて非力とはいっても、それはあくまでも相対的な話。

 そもそも、カーマ自体高位悪魔なのだから弱いなどというのはあり得ないのだ。

 それなのに、魔神柱に対して有効打を与えることが出来なかったことには理由がある。

 

 まず、始めに魔神柱は決してカーマたち仲魔に劣る存在ではない、ということだ。

 ……確かに魔神柱は女神転生シリーズの耐性は持っていない。が、そもそも地力で言えば大悪魔クラスの力を持っている。

 そうでなければ七十二柱もいたとはいえ、人理焼却などという大偉業をこなすことは不可能だ。

 もっとも、その大偉業も最終的にカルデアの、人類最後のマスターの手によって頓挫したが。

 

 次に選択したスキルが悪かった、ということ。

 刹那五月雨撃ちは次々と矢を打ち出す多段スキル――かつてエトワリアで戦ったマタドールが使った血のアンダルシア、これの射撃版に当たる――になるが、この系統のスキルは総じて一撃の威力が甘くなる。という特性を持っている。

 それと、カーマが比較的力が弱いという欠点の相乗効果によって、魔神柱の防御を貫けなかったというのが主な理由だ。

 

 ……もしも、の話になるが。

 もしも、魔神柱と戦っていたのがマタドールで、同じような状況で血のアンダルシアを放った場合。そちらの場合は魔神柱の防御を貫けていただろう。

 これはカーマが弱い、というわけではなく、マタドールが、魔人が規格外と言うべきだろう。

 

 ……そもそも魔人とは、かの大魔王-ルシファーに目を掛けられているものたちでもあるのだ。

 事実、魔人の中には黙示録の四騎士やバビロンの大淫婦、黙示録のラッパ吹きなどといった、単体で世界を滅ぼせる存在たちがいることからも理解できるだろう。

 その特記戦力とでも言うべきものたちと、高位悪魔とは言え、もともと戦闘者ではないカーマを比較するのは、流石に酷だと言える。

 

 とにもかくにもカーマの一撃では魔神柱に有効打を与えることは難しいというのは事実。

 しかし、晴明の仲魔はカーマだけではない。

 

「はっ――!」

 

「シィッ――!」

 

 魔神柱目掛けて三つの槍閃が奔る――。

 それはクーフーリンとスカアハが放った神速の突きであった。

 それらはカーマの攻撃を防いだ防御を易々と貫き、魔神柱の肉体を穿つ。

 

「…………――!」

 

 不意に訪れた痛みに声なき悲鳴を上げる魔神柱。

 そこには理解不能、とでも言いたいような困惑の意思が見え隠れしていた。

 

 ――悪魔をも越える上位存在へと昇華した筈なのに。

 

 確かに魔神柱は、人類悪は場合によっては神霊すらも超越した存在だ。

 こことは別の世界、人類最後のマスターが相対した魔神柱たちの主たる憐憫の獣しかり、第七特異点で世界を滅ぼす一歩手前までいった回帰の獣しかり、だ。

 

 だが忘れてはならない。

 いくらクーフーリンやスカアハがかの世界の英霊の姿を象っているとは言っても、彼らは悪魔、サーヴァントではないのだ。

 

 ……そもそもサーヴァントとはなにか?

 彼ら、彼女らは生前の功績により英霊の座と呼ばれる場所に召し上げられ、現界する際にはある程度型にはめられ、それに特化した能力で現れる。

 騎士王であればセイバーとして現界する際はエクスカリバーを持ち込めるが、その代わり槍や騎乗馬は持ち込めない、といった具合に、だ。

 言い換えれば制約を掛けられている、と言ってもいいだろう。

 

 だが、悪魔にそれはない。

 事実、クーフーリンは槍も使えるし、魔法だって使おうと思えば使える。なんなら剣なども使ってもいい。本人としては槍の方が得意だから使わないだけで。

 つまり、サーヴァントが全盛期の力を限定的に行使できるのに対し、悪魔はそのまま全部使えるということだ。

 もちろん悪魔も悪魔で、MAGが足りなければ肉体が構築できずスライム化する。というデメリットがなくもないが、それを考慮しても微々たる問題だと言える。

 

 即ち、魔神柱。変態したフォルネウスにとって最大の誤算。それは魔神柱に変態した際に悪魔としての特性を失ったこと。それにより自らの力に枠を嵌めてしまったことにつきる。

 いくら地力が悪魔たちよりも大きくても、それを全力で奮えないのなら、存在しないのと同義なのだから。

 

「――これでぇ……!」

 

 そして、動きが鈍くなった魔神柱に対し、晴明は追撃を掛けるべくMAGを練り上げる。

 それと同時にメギトファイアを構え、狙いを付ける。至高の魔弾で一気にけりをつけようとしているのだ。

 

 実際に、メギトファイアの銃口には晴明のMAGが渦巻いており、すぐにでも発射できる態勢になっていた。

 晴明が攻撃態勢に入っていることに気付いた魔神柱だったが、だからといって回避行動に移れるわけではなく――。

 

 ――閃光、そして着弾。

 

 メギトファイアから撃ち出された魔弾は光の帯を描きながら魔神柱へ到達。防御膜を紙切れのように引き裂いて、穿ち抜いていく。

 

「――――!!」

 

 己の肉体を裂いていく攻撃に悲鳴を上げる魔神柱。

 それでも、今までの攻撃の蓄積もあるのだろうが、まだ耐えていること自体が驚異的だと言える。

 しかし、いくら耐久力が優れていようとも、限度がある。

 事実、魔神柱の肉体は度重なる攻撃で傷だらけになっており、まさしく満身創痍というべき状況になっていた。

 つまり、それはもう少しで魔神柱を、フォルネウスを仕留めることが出来る。という意味でもあった。

 そして、その好機を逃す晴明ではない。

 

「今だッ! 一気に方を付ける!」

 

 その晴明の号令とともに、仲魔たちは思い思いにMAGを練り上げる。自身の最大攻撃を叩き込むために。

 

「はぁッ! ――マハ・ジオダイン!」

 

「――マハ・ラギオンだっホ!」

 

「……切り刻んであげるよっ!」

 

「……天扇弓!」

 

「――(かんぬき)投げ!」

 

 魔神柱のもとに雷が、炎が、斬撃が、矢が、大質量の物体が雨霰と殺到する。

 無論そのような攻撃を一手に受けた魔神柱は堪ったものではなく、先ほどの攻撃で防御膜を破られたこともあり、まともに防御することもできずにダメージを負っていく。

 

「あり、得ぬ……。ありえ、ぬ。なぜ、我が……、俺さ、まが……」

 

 そして、遂にダメージが本体の許容量を越えたのだろう。

 魔神柱は、フォルネウスは呆然とした様子で言葉を紡ぐ。その身体からはMAGが、魔力が霧のように昇っている。

 もはや肉体を維持することすら不可能に、文字通りの死に体となっていた。

 

 そんなフォルネウスに、晴明は無言のまま近づいていく。そして――。

 

「じゃあな、化けて出るなよ――」

 

 そう言いながらメギトファイアを突き付けて、発砲。

 それがトドメのなったのか、フォルネウスの身体が完全に崩壊していく。

 それと同時にこの空間。決闘結界も少しずつ崩れ始めていた。

 戦いに決着が付いたことで結界の役目も終わり、本来の世界へ帰還を果たすのだった。

 

 

 

 フォルネウスとの決着を付けた晴明は、決闘結界が崩壊したこともあり、もとの世界へと帰還を果たした。そこには結界の主、大僧正の姿もあった。

 

「……どうやら戻ってこれたようだな」

 

「無事に帰ってこれたようじゃの、重畳、重畳」

 

「あぁ、大僧正。助かったよ。……それで他の皆は?」

 

 晴明の質問に、大僧正はなにを今さら、といった様子で答える。

 

「さまなぁ殿が巡ヶ丘高校へ向かえといったのであろう? 皆、一足先に向かっておるよ」

 

「そうか、なら良い。……俺たちも急ぐぞ、なにか嫌な予感がするし、な」

 

 そう言って晴明と大僧正は巡ヶ丘高校へと急ぐ。嫌な予感を胸に感じながら……。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、ヴィローシャナ。どうやらあの魔神柱もどき、やられてしまったようだよ?」

 

「で、あろうな。まぁ、問題ない。所詮は紛い物よ、それより――」

 

「それより?」

 

「どうやら、かの大魔王が動いたようだぞ?」

 

「へぇ……? そりゃまた……。()()()()()()かい?」

 

「そうであろうな、機が来た。と言うことかも知れんな」

 

 

 

 

 

 

 晴明が感じていた悪い予感、それは見事に的中していた。

 今、巡ヶ丘学院高校には招かれざる客が、同時に彼女らにとって因縁深い存在が訪れていたのだ。

 

「さて、恵飛須沢胡桃? 君の力を、彼女たちに、丈槍由紀に魅せてあげると良い」

 

 かつての偽物、ドッペルゲンガーではない()()の胡桃へ耳打ちする白人の美丈夫――ルイ=サイファー。

 

 突如として校庭に現れた二人に困惑していた学園生活部の面々だったが、それでも胡桃を救う好機に違いない。

 そのために、アレックスが、そして由紀が脇目も振らずに校庭へ駆けていく。

 

「――先輩!」

 

「くるみちゃん――!」

 

 なぜ、このタイミングで胡桃が、ルイ=サイファーが現れたのかはわからない。

 しかし、由紀にとってそんなことはどうでもよかった。仲間を、親友を助ける好機なのだから。

 だが、その由紀の考えは直後、頭の中から消え去ることになる。

 

「ゆ、き……?」

 

 どこか、浮世離れした様子で由紀の名前を呟く胡桃。

 その彼女の呟きが聞こえた由紀はそれに答えようとして――。

 

「そうだよ、くるみちゃん! 私はここ――」

 

「ゆ、きぃ……ゆぎぃぃぃぃぃぃぃぃ――!」

 

 由紀の声を遮るように彼女の名前を呼びながら叫ぶ胡桃。

 それとともに彼女の身体に異変が起きる!

 

 彼女の右半身の一部、右腕の肘から先。そして制服を着ているため見えないが右胸の半ばから脇腹、右足全体が黒く変色するとともに硬質化し、一部はひび割れたような紫の紋様が奔るとともにウロコのような突起物が形成されてくる。

 さらには側頭部から山羊のような角が、そして臀部からはまるで西洋竜のような尻尾が生える。

 それはまるで人ではなく悪魔のようで――。

 

「――さぁ、魅せておくれ恵飛須沢胡桃。君の、ヒトの、力を望みし者の可能性を」

 

「あ、あぁぁぁぁぁああぁ――――!!」

 

 あらゆるものを拒絶するかのごとく、胡桃は発狂したように叫ぶ。

 それはまるで、あらゆるものを憎み、妬み、悲しむ慟哭のようであった。

 

 

 

 ――()()-恵飛須沢胡桃が現れた――




 読了お疲れさまでした。作者です。

 今回、魔人化した胡桃の容姿につきましては、きららファンタジアにて実装されている星5戦士、恵飛須沢胡桃か、がっこうぐらし~おたより~第7話 ???に登場した感染し、異形化した胡桃を確認していただけるとわかりやすいかと思います。
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