DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第八十六話 魔技

「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ――!」

 

「――疾!」

 

 二人の掛け声とともにそれぞれの得物、西洋剣とレーザーブレイドが火花を散らせながら交差する。

 それを見ながら感心するアレックス。

 美紀は朱夏と同じように刀身にMAGをまとわせることで一時的とはいえ、レーザーブレイドと打ち合えるようにコーティングしていた。

 むろん、それは付け焼き刃であり、朱夏のように常時とはいかない。しかし――。

 

「……っ、器用なことを――!」

 

 アレックスと二合、三合と打ち合い続ける。

 その度に彼女は、レーザーブレイドにあたる瞬間だけMAGをまとわせることで己の消耗を抑えていた。

 さらには――。

 

「……ふっ!」

 

「――!」

 

 ――シールドバッシュ。

 

 がむしゃらに、と見せかけて。少しでもアレックスが隙をみせると盾による打撃を与えようとする。

 それもアレックスが手加減をしているからこその結果といえるが、それでも。

 

(……心構えが違うだけで、こうも――)

 

 美紀による容赦のない攻め。それを受けてアレックスは笑いだしそうになる。

 そう、それでこそ。

 

 ……一度、己の意志で戦うと決めたのなら躊躇など必要ない。

 それが戦士の作法。

 己が生き残るため、誰かを守るため全力を尽くす。それが正しい道なのだから。

 

 その時、アレックスは己の腕にかかる負荷が軽くなるのを感じた。

 美紀が攻撃の手を緩め、退いた。

 

 今までであれば、それは躊躇の証か、もしくは自身の息を整えるために退いた、と判断しただろう。しかし――。

 

 美紀が退くのに合わせ、アレックスも後退する。

 その直後、先ほどまで二人がいた場所に魔弾が殺到する。

 

 ――圭が放った音の魔弾だ。

 

 まさに、阿吽の呼吸と言うべきか。

 もともと二人が――アレックスもであるが――親友であり、お互いに何を考えているのか手を取るように分かること。そして、何よりアウトブレイク後、ともに行動していたことにより、同じ死線を潜ったことで二人の連携にさらなる磨きがかかっていた。

 

 だが、それはあくまで二人が多少手強くなっただけの話。

 その程度ではアレックスの足元にも及ばない。

 

「……っ!」

 

 彼女は光線銃を二人に向けると弾幕を張るように乱射。結果として二人は、回避を優先するためその場を離れる。

 そして、それは二人にとって悪手となった。

 

「……疾!」

 

「――っ!」

 

 二人が離れる、言い方を変えれば分断をされた隙を付きアレックスはまず美紀へ接近。

 むろん、アレックスの接近に危機感を覚えた美紀は即座に防御するため、盾を構える。しかし――。

 

「……甘いわね!」

 

 美紀は前方でどん! という大きな音を聞く。しかし、盾に衝撃を感じない。

 そのことに自身の失態を気付いた美紀は――。

 

「しま――、ぐぅ!」

 

 即座に身体を反転させようとして衝撃――!

 ()()に吹き飛ばされるのを感じながら後ろを確認すると、そこには回し蹴りを放ったと思わしきアレックスの姿が。

 

 そう、アレックスは美紀に急接近することで彼女を今から攻撃する。と誤認させることで盾を構えるように仕向け、視線を遮断。

 その後は、自身の脚力を存分に発揮し、一瞬で背後に廻ると無防備な背中へ改めて攻撃に移ったのだ。

 

 アレックスに吹き飛ばされた美紀は、土煙を上げて地面を滑りながらも、彼女の追撃を回避するため、一刻も早く態勢を建て直そうとする。

 ……だが、そんな彼女の思惑と裏腹にアレックスからの追撃は来なかった。

 その理由を察した美紀は焦る。

 

「……けい!」

 

 そう、アレックスの狙いははじめから美紀ではなく圭。それ故に盾役(タンク)の美紀を彼女から引き剥がし、分断して、さらにはダメ押しとばかりに遠くへ追いやった。

 

 そも、アレックスにとって美紀と圭。どちらが驚異度が高いか、と問われれば圭と答えただろう。

 それは単純に数の問題――美紀が一人であるのに対し、圭は仲魔を召喚することで戦力の増強を図ることが出来る――でもあるし、それ以上に。

 

《……相棒(バディ)、随分彼女を警戒しているようだが》

 

「それは、まぁね。()()があるのに警戒しない理由もないでしょ?」

 

《確かに》

 

 そう、彼女の前世に於いての失敗。取るに足らない存在だと思っていた唯野仁成(今世の父親)を甘く見ていたことにより、彼女が当初抱いていた目的は瓦解した。

 それを思えば、いくら半人前とはいえ油断など出来るわけがない。

 だからこそ、まず障害となり得る可能性がある圭から潰す。

 もちろん、これは模擬戦であり、彼女自身圭の覚悟を認めたことから、怪我させるつもりも、ましてや殺すつもりもない。

 だが、それはそれとして、上には上がいるというのを理解させるためにもここで、朱夏も同じように行動不能になってもらう。

 

 その思いのもと、アレックスはレーザーブレイドを圭に振るう。しかし――。

 

「えっ……」

 

 その光景を見た美紀、そして何より攻撃したアレックスさえも驚きで固まる。

 攻撃は完璧だった。タイミングも、どう考えても圭は避けることが出来る筈がなかった。にも関わらず――。

 

「くっ……!」

 

 あまりの驚きに一瞬固まったアレックスだが、すぐ正気に戻ると追撃を放つ。だが、それも……。

 

「当たら、ない……?!」

 

 キチンとレーザーブレイドが空を切る()はする。それなのに、速さも一級なのに、なぜ紙一重で躱されてしまう。

 そのことに驚きを隠せないアレックス。

 

 

 

 そんな二人の攻防を遠くから見ていた晴明は、圭がなぜ回避できるのか。そのからくりが分かり、狂気染みた笑みを浮かべる。

 

「く、くく……。なるほど、なるほど。これは俺の目が節穴だったか……!」

 

「……はーさん? どういうこと?」

 

 その、晴明の尋常ならざる様子に、由紀は引き気味になりながらも問いかける。

 由紀の問いかけを受け、我に返った晴明は解説をはじめる。

 

「あ、あぁ。すまないね。……そうだな、まずは圭を見てくれ。どこか、おかしいところがある筈だ」

「おかしいところ……?」

 

 そう言って由紀は、そして近くにいた悠里もまた圭を見つめる。

 少なくとも、今もアレックスの攻撃を回避――その時点で随分とおかしいが――している以外におかしなところは……。

 

「……あっ!」

 

 そこで悠里がなにか気付いたように声を上げる。

 その声を聞いて、由紀は悠里に問いかける。

 

「りーさん、なにか分かったの?」

 

「え、えぇ……。ほらよく見て――」

 

 そう言って悠里は圭を指差すと、答えを告げる。

 

「――けいさん、目を瞑ってる」

 

「……あっ!」

 

 悠里の指摘を聞いて、改めて圭を見る由紀。

 その彼女の瞳には、確かに目を瞑り、しかしながら、その状態でアレックスの攻撃を回避している圭の姿が見える。

 確かに言われてみれば異常な光景だ。

 

「……音だ」

 

「……えっ?」

 

 そんな時、不意に聞こえた晴明の声に疑問を抱く二人。

 そんな二人に、晴明はどういう意味かを説明する。

 

「あいつ、圭は意図的に視覚を遮断することで聴覚を鋭敏にして、あらゆる音を拾ってるんだ」

 

「あらゆる音?」

 

「あぁ、彼女の剣が空を裂く音はもとより、足が地面を踏みしめる音、剣を振るうときに骨が軋む音、筋肉が膨張、収縮する音、そして息づかい。あらゆる音を聞き取り、次、いつ、どこに攻撃が来るかを予測し、最小限の動きで回避している」

「……まさか」

 

 晴明の言葉を聞いた悠里は絶句する。

 果たして、本当にそんなことが常人に可能なのか。

 それはもう、人の業ではなく、魔技とでも称するべきではないのか。

 

 そんな考えが顔に出ていたのか、晴明は悠里に向かって一つの事実を告げる。

 

「ふふ、悠里さん一つ勘違いしているようだから言っておくが――」

 

「……?」

 

「あいつも美紀も、それに君たち二人だって、もう既に常人とは隔絶した存在になってるからな?」

 

「……っ」

 

 晴明によって突きつけられた事実に言葉を詰まらせる悠里。

 そうだ、そもそも常人は悪魔やシャドウといった存在に立ち向かう、ことは出来たとしても生き残るのは至難の業だ。

 そもそも、覚醒しレベルを得た時点で他の常人とは一線を画す存在となる。

 

 ちなみに、一つの比較対照としてオリンピックの金メダリスト。彼らの身体能力が覚醒者たちからすると一部の、得意分野に限定されるが、Lv3からLv5程度と言われている。

 

 即ち、学園生活部の覚醒者たちや美紀、圭は必然的に、スポーツの世界トップクラスの選手たちよりも優れた身体能力を持っていることになる。……年齢的に言えば、ただの高校生が、だ。

 そのことからも、彼女らが常人と比較できない高みにいるのは理解できるだろう。

 

 もっとも、だからといえ圭のようなことが出来るかどうかは、また別問題となるが……。

 

 それはともかくとして、晴明はアレックスと圭の攻防を見て、彼女が見せた才能の片鱗に対する称賛と、そしてあの場に己が立っていないことによる僅かな嫉妬の表情を見せる。

 

 もしも、あの場に己が立っていれば、あの才能と相対していれば、それを糧に己が力の、さらなる飛躍を望めていただろう、と確信して。

 だが、それ以上に晴明は、圭の特異な才能を称賛する。

 

「ふ、ふふ……。あいつが、圭がさらなる研鑽を積めば、いずれ俺を超える才を世に知らしめるだろうな。それが、ライドウすら超える、というのは流石に厳しいだろうが……。あぁ、本当に楽しみだ」

 

 そう言いながら晴明はかつて(前世で)見た、創作上の()()――悪魔ではない――を想起する。

 圭なら、彼女ならそこまで至れるかもしれない、と思いながら。同時に、その時のために、晴明は己が出来うることを考える。

 

「と、なれば今のストラディバリでは、少々扱いづらい、か? なら、やはりヴィクトルの協力が必要、か。それに――」

 

 そう言って晴明はいつの間にか、手に握っていた()を弄ぶ。

 

「――これを使えば……。くっ、ふふ……。どれ程の高みに至るのか、本当に楽しみだ」

 

 晴明が狂喜するのと呼応するように、彼の手の内にある石もまた、不吉な波動を発するのだった。

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