DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

98 / 129
第八十七話 決着

 目を瞑り、聴力を鋭敏にすることでアレックスの攻撃を回避している圭だったが、実際のところ本当の意味で紙一重であり、内心は焦りで冷静さと集中を乱しそうになるのを、なんとか意思の力で捩じ伏せ、繋ぎ止めていた。

 

(……次は、右。いや、縦! ……っ! 今度は、横薙ぎ……!)

 

 一撃一撃が必殺の攻撃。

 それをなんとか回避しているが、それでも。否、だからこそ、圭の精神負荷は凄まじいものとなっていた。

 それも仕方ない。最初の方こそ攻撃を回避されたことでアレックスも動揺し、多少の()()があった。

 しかし、同時に彼女は以前の失敗から学び、圭がまだまだ半人前だとしても警戒すべき、と考えていたことから、動揺は長続きすることなく。それどころか、今度は逆に圭がどこまで出来るのかを見極めるため、攻撃のキレが上がる始末。

 その状態では、とてもじゃないが反撃は夢のまた夢。

 はっきりと言ってしまえば、攻撃を受け昏倒するのを先の橋にしているだけで、完全な劣勢という状況だった。

 この状況を打破するには圭の力だけでは不可能。何らかの外的要因が必要不可欠なのだが……。

 

(……この、ままじゃ――!)

 

 朱夏はアレックスの猛雷撃を受け復帰は絶望的。美紀もまたアレックスからのダメージが抜けきっておらず、復帰にはまだしばらく時間がかかりそうに見える。

 即ち、それまでの間、どんな手を使っても良いのでアレックスの猛攻を耐える必要があるのだが……。

 

「……っ!」

 

 ――こうも攻撃が激しいと……!

 

 今はなんとか回避できている。だが、その度に精神をヤスリで削られているような状態なのだ。とてもじゃないが美紀が復帰するまで耐えるのは絶望的だと言える。

 しかし、絶望的だとしても耐えるしかない。それが唯一の道筋なのだから。

 だが、そんな圭の思いもむなしく――。

 

「……ぁ!」

 

 僅かに、ほんの僅かに削られた集中力の隙を付き、アレックスのレーザーブレイドが圭の身体に接触。

 本来ならダメージらしいダメージにはならなかっただろう。だが、今回でいえば致命的だった。

 

 僅かに攻撃が掠ったことによる痛みで、一瞬とはいえ硬直する圭。そして、それは紙一重で回避していた彼女には致命的な隙だった。

 

「……どうやらここまでのようね」

 

 アレックスとしては、確かにてこずらされた。そう素直に称賛できるほどの快挙。だが、ここまでだ。

 彼女は決着をつけるため、圭に向かって最後の一撃を――。

 

《アレックス――!》

 

 瞬間、ジョージから放たれる警告。

 彼の、AIらしからぬ焦りを含んだ声を聞いたアレックスは反射的にその場から飛び退く。

 そして、それと時を同じく炎の塊が先ほどまでアレックスがいた場所に飛来し蹂躙する。

 驚き、炎が放たれたであろう場所を振り返るアレックス。そこには――。

 

「……アギ、ラオ――!」

 

 うつ伏せで倒れながらも、最後の力を振り絞るとともに、本来彼女が使える魔界魔法。火炎属性の下級であるアギを超えた中級魔法のアギラオを放ってみせた美紀の姿。

 だが、それが本当に限界だったのだろう。

 今まで受けたダメージと、使うことが出来なかった魔法を使った反動で、美紀の意識はぷつり、と糸が切れた人形のように落ちた。

 とはいえ、彼女の行動にアレックスの肝が冷えたのも事実。どっ、と噴きでた冷や汗を拭う。

 しかし、この時。彼女は完全に失念していた。一番警戒していた筈の圭に対して意識が逸れていたことを――。

 

「――召喚!」

 

 その、圭の言葉を聞いてアレックスは失態を悟る。圭に悪魔召喚の隙を与えてしまったことを。

 

「しまっ――!」

 

「……来て、()()()!」

 

 そして召喚される魔獣-ケルベロス(太郎丸)

 

「――アオォォォォォォォォォンッ!!」

 

 ケルベロス(太郎丸)から放たれる咆哮。

 それは今から貴様を討つ、という宣言に他ならない。

 しかし、同時に圭の顔色も悪くなっている。

 当然だ、いくら圭が今回の模擬戦で著しく成長しているとはいえ、MAG自体はかなり消耗しているのだ。

 その状況で中級、というよりも半ば上級に足を踏み込んでいる神魔、ケルベロスを召喚して無事で済むわけがない。むしろ、召喚した直後にMAG不足となり意識が刈り取られていないことに驚嘆するべきだろう。

 だが、圭はそこで止まらない。止まれない。

 アレックスを倒すにはまだ不足している。だから――。

 

「来て、コボルト、ツチグモ!」

 

 彼女のさらなる召喚により犬の獣人である地霊-コボルト。蜘蛛の妖怪である地霊-ツチグモが召喚される。

 

「グゥゥ、オレサマ、サマナー手伝ウ。――ススクカジャ(命中、回避強化)!」

「――タルカジャ(攻撃力強化)!」

 

 二体の地霊によって強力な力を持つケルベロスにさらなるバフがかけられる。

 これでも万全とはいい難い。しかし、それでも多少なりとも差を埋める手立てとなる。だから……。

 

「わたしは、まだ――」

 

 本来、自身が従えることが出来ない大悪魔に加え、さらに二体の追加。それを維持するためのMAGを放出して意識が朦朧としている圭。

 ここで終わる訳にはいかない。しかして、長期的に維持できないため短期決戦に挑むしかない。それを理解していたからこそ、圭はこのような危険な賭けに出た。

 それが圭の思い付く限りで最良の可能性だからだ。しかし――。

 

 ――忘れてはならない、アレックスも、唯野=アレクサンドラもまた()()に足を踏み入れている存在だということを。

 

「……ガァッ!」

 

「――っ!」

 

 ケルベロスの爪とアレックスのレーザーブレイドが交差し、火花を散らす。

 

 ――拮抗。

 

 見た目だけなら華奢な少女であるアレックスと、猛獣のケルベロスであるが爪が、ブレイドがあたる度に甲高い音とともに押し戻され、互いに決定打になり得ず、二合、三合と攻撃を重ねていく。

 袈裟、逆胴、唐竹。振り下ろし、薙ぎ払い。互いのあらゆる手段を経て攻撃を通そうとする。しかし、その度、弾かれ、躱され仕切り直しとなる。

 業を煮やしたケルベロスは息を吐き出すように口許を膨らませると、中から炎が漏れ出す。

 彼の代名詞とも言えるスキル、ファイアブレスだ。

 そのままアレックスに向けて、炎が吐き出される。が、その一撃は彼女へ届かない。攻撃が当たらなかった訳ではない。むしろ逆だ。彼女は自ら当たりにいった。……ただし、レーザーブレイドに当たるように、だ。

 それを見た圭は危機感を覚える。なぜなら、それは先ほどの朱夏の時の焼き直しだからだ。

 

「……太郎丸!」

 

 レーザーブレイドで炎を掬い、纏わせるアレックス。そして――。

 

「――猛炎撃。燃え尽きなさい!」

 

 今度はアレックスから業火が放たれる。

 だが、ケルベロスは火炎無効の耐性を持っているためなんの問題もない。むしろ問題は……。

 

「ギャアァァァァァァ、マス、ター……!」

 

「……!!」

 

 そのようや防御耐性を持っていなかったコボルトとツチグモは一合のもと焼き払われる。

 そして、その凶刃は圭の下へも……。

 だが、それを許すケルベロスではない。

 彼女を守るため、自らを盾にするケルベロス。

 しかし、それはアレックスに対して隙をさらすことを意味した。

 

 そして、歴戦の勇士であるアレックスに隙をさらすとはどういうことを意味するのか。

 それを圭は身をもって知ることとなる。

 

「……ここまで、ね!」

 

 彼女はその一言とともに地面を踏み込む。

 その踏み込みは凄まじく、彼女の力に耐えられなかった地面は、シャベルで抉られるように弾けとぶ。

 そしてその反動でアレックスは跳ぶように駆ける。まさに一足跳び。圭との距離は離れていた筈なのに、次の瞬間には彼女の目の前にいた。

 しかし、彼女との間にはケルベロスが――。

 

 

 

 

「……はい、そこまで」

 

 いつの間にか彼女らの合間には晴明の姿が。

 そして晴明はアレックスの攻撃を防ぐように倶利伽羅剣で切り結んでいた。

 その、彼の背後を呆然と見つめている圭。

 だが、直後。彼が自身を守っていることを理解した彼女は緊張の糸が切れ、今までの反動だろう。精神的、肉体的疲労が一気に襲いかかり昏倒する。

 それを支えるケルベロスだったが、彼女の安全を確保すると自ら送還し、姿を消滅させる。

 このまま留まり続けると、消費MAGの負荷で圭が危険にさらされる可能性が高いからだ。

 そして、それを見てアレックスもまた振るっていたレーザーブレイドから力を抜くと、背を向け美紀へと駆ける。

 ここに晴明がいる以上、圭のことは任せてもう一人の親友を見るべき、と判断した。

 その姿を見送った晴明は苦笑する。なんだかんだ言って、彼女もやはり親友のことは心配だったことを悟ったからだ。

 

「……やれやれ」

 

 彼としても、まさか模擬戦がここまで白熱。というよりも実戦染みたものになるのは予想外だった。そして同時に美紀と圭の覚醒もだが。

 二人の覚醒を思い顔を綻ばせた晴明は振り返り、倒れていた圭を抱きかかえる。そして――。

 

「……よく、頑張ったな」

 

 優しい声色で囁きながら頭を撫でる晴明。

 頭を撫でられた圭は、意識を失っている筈たが、それでも先ほどよりも顔が紅潮し、緩んでいるように見えたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。