(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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ッシャオラ!
しゃるらう回やってくぞオラァ!





2021/3/4:セシリアのセリフを一部改変&追加。


無知の大罪、過知の箱罠

…まずいな、彼の心がそう呟いた。

最初、妙に雰囲気を感じたのでまさかとは思っていたのだが、彼は第一印象及び普段の様子から何もかもを見誤っていた。

どうしてもそっちの人間に見ることが出来なかったのだ、その手の人間が放つ香りすらしないから…経歴され知っていればと、彼は後悔をした。

 

隠しの手練れでもない、先天的なものと…そして煮詰め切っていない部分がその雰囲気を悟らせなかったのだ。

彼はそのように分析する…が、今の役に立つものではない。

 

 

アックスマンの巨体を弾丸が掠める…先ほどから回避先が読まれている。

反撃しようにも距離が離れている…マシンガンもミサイルランチャーも弾速と精度の問題で大した効果を望めない…ウォッチドッグオブヘルを持ち出すことも考えたが、アレはセシリアへメッタメタに叩き付けたり投げ付けたりしたせいで精密機器が故障し“保護者”にも面倒という理由で修理を後回しにされたので当分はただの鈍器だ。

 

ここまでの後に回りまくる展開を手を抜いたせいだと直ぐに自分の行動を改め、巨体の大半を覆い隠すようなタワーシールドを持ち出した。これならば回避もクソもない、彼は相手の行動を見逃さぬように僅かにシールドから顔を出した。動き回ればいくら熟練の射手であっても少しばかり飛び出している体を狙い撃つなど至難の業である。

弾丸が盾を貫通しなければという条件は付くが、そこの所はあまり問題にはならない。

 

これで銃撃を防ぎながら指輪を一部、幻肢の指輪に変えながら距離を取っていく。

上空からライフルでの射撃を行っていた相手はやがて【彼】を見失った。これは分の悪い空中戦を避ける狙いもあった。

 

 

彼は飛行する高さに細心の注意を払った、あんまり低いとスラスターが土埃を巻き上げてしまう事は承知している…というより、元々彼はこの指輪を使用する際はかなり環境に気を遣う。

さもなければ全てが崩れるのだ。

 

 

更にスラスターもオフにしてPICでゆっくり動いた。

しかし時間の問題だ、向こうも(カラクリは分からないだろうが)透明化の特性は知っているハズだ…何せ、セシリアに対して使った際分かりやすい所から見ていたのだから。

 

急遽組み立てた作戦なので成功するかどうかいつも以上に怪しい…が、この戦いはデモンストレーションであるとはいえ手を抜いてはいけない。何度も言うが相手はそれなり以上に熟練した戦士だ。

 

 

 

…そして彼は、一先ず安堵した。

向こうが此方を視認できるまで近づくその前に“所定の場所”に到着したからだ。

 

その時、相手も幻肢の特性を思い出したのか近づいてきた。

それでいい…万が一、今気付かれても射角的に問題ない。

 

 

彼はスラリと大短刀を抜く。

斬ることから刺すことまで十分何でもこなせる便利な一本だ。

それをしっかりと握り、深呼吸して時を待つ…。

 

―――――――――今だ!彼の心はそう叫んだ!

スラスターを一気に吹かして勢いよく吹っ飛び、それでもただ一直線ではなく多少軸から左右上下にブレる様にして相手へと斬りかかった!

 

 

相手も瞬間的に危機を察知して、ライフルを向ける…が、その引き金を引く事は出来なかった。何せ【彼】は不規則にブレているのみならず、射線の先に千冬先生や生徒たちが居たからだ。

 

その一瞬の戸惑いの隙に、彼は一気に間合いへ飛び込んで突きの構えを取る。

…賭けに勝ったのだ!

 

 

渾身の刺突は、しかし間一髪で回避されて空を斬る。

しかし一撃目が交わされるのは想定済み、すかさず順手から逆手に切り替えて【死角からの一撃】を放つ!

 

…だが、その時には向こうの手にはグレネードランチャーが握られていた。

刃が絶対防御を発動させる直前、彼の脇腹に炸裂弾が直撃する!

 

 

鈍い呻きは爆音にかき消され、彼は地面へと落ちていった。

しかし大したダメージでは無い。直ぐにでも立ち上がろうとするが…。

 

 

 

 

「そこまでだ、二人とも。

これ以上は時間が潰れる」

 

千冬先生が終了の命令を出した。

それを聞いた相手――――――――――――――――山田先生もまたゆっくりと着地する。

 

彼女の想像以上な強さに【彼】は思わず率直な感想を漏らしてしまった。

只々、強い…と。そして彼はISを解除した。

 

「やり過ぎだぞ佐々木、忠告はしたはずだ。

…ともかくこれで教員の実力も分かっただろう、これからは敬意をもって接することだな」

 

 

…この言葉の後に、専用機持ちの指導による実習が始まった。

 

 

 

案の定、男子連中に多く人が集まったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風に捲られたタロットが嘲笑うように占った。

それは悪魔のタロットである…だが、風に揺られるばかりで正位置も逆位置も示さない。

 

たった一人の誰かが世界をまるっきり変えるなどと…誰もが否定するだろう。

しかし既に為されている事実だ…希望でも、絶望でも、始まってしまっている。

 

 

 

    ◆   ◆   ◆  

 

 

さて、授業終わりに一夏やその取り巻き、そしてシャルル及び【彼】の一同は一緒に昼食を取る事になった。どう考えても取り巻き連中が鈍感男(一夏)へのアピールのつもりだったのに肝心な鈍感男がやはり鈍感にもシャルルと彼を呼んでしまったのだ。

 

しかし彼女らは例え邪魔が一人二人いようと関係ないようで、自らが用意した昼食による好意アピールを強行した。

 

 

 

トップバッターはセシリア・オルコット。

…イギリス人が旨い飯を作れるはずがないと言いたくなるのは山々だが、しかし恋と戦争で手段を選ばないのもイギリス人なのでガツンと一夏の胃袋を掴むような料理を持ってきたのであろう。

 

―――――という期待英国の伝統的所作のような華麗さで裏切るように、彼女の用意したサンドイッチを食べた一夏の顔が真っ青になっていく。

 

しかしセシリア選手それに気が付かない、どうやら自分の腕を物凄く過信していたようで「もっと食べて」と殺意の無い殺意をギンギラギンに向けてくる。だが一夏、こんなひどいものを食わされて文句ひとつ言わない(箒の弁当に逃げたが)。やはり優しすぎると涙も拭えないのか…世の中残酷である。

 

 

一方その頃【彼】は、一夏に不味くても不味いって言わないデリカシーがあることに驚いていた。そしてシャルルは一夏の味覚と胃袋を心配した。

 

 

気が付けば選手は次鋒の箒にチェンジ、こちらは経験豊富なのか料理を絶賛する一夏。どうせ嫁に向かえるならこれぐらい料理上手な女である(彼女の場合、暴力癖がネックだが一夏の鈍感さと優しさならまあ…大丈夫だろう)。

 

それに対してセシリアと鈴音はぐぬぬと言わんばかりに歯を食いしばった。

…いや鈴音はともかくセシリアお前はぐぬぬする以前の問題である、先ずはクックパッドでも持ち出してから挑むべきだ。

 

 

 

面白い奴らである。

彼はそう口にした。

 

「あはは…。

そういえばさ、潤がくれた指輪のことだけどさ…」

 

 

この発言、何気なく一夏に「あーん」しようとしてた箒・セシリア・鈴音の三人の耳に入ってしまい…。

 

 

 

「さ、佐々木が?」

 

「シャルルさんに?」

 

「指輪を、あげた?」

 

「佐々木さん、もしかしてソッチでしたの…?」

 

「あー…それでなんか…うーん…」

 

「…いや、別に個人の勝手なのだがな…」

 

 

…あらぬ誤解をしたので、【彼】は丁寧に事情を説明した。

それにしても3人とも何とも言えない顔である。

 

 

「あ、そう…びっくりさせないでよね」

 

「指輪…トールキンの小説みたいですわね」

 

「全くだ」

 

事情を知ると、まるで虚無であるかのように無表情となった3人。

彼は微妙に怒りを覚えたが、怒ってどうするという問題なので特に気にしない事にした。

 

 

「…ところで佐々木、他にもそういう指輪持ってたりするのか?」

 

意外な所に食いついてきた一夏の質問を受け、彼は“ポケット”から持てる全ての指輪を出して一同を驚愕させた。

主に収納スペース的な意味で。

 

 

何はともあれ、指輪の数々はどれも彼以外の5人は目にしたことがない品物ばかりであった。

 

「何これ!猫みたい!」

 

鈴音の取ったのは銀猫の指輪である。

彼は簡潔に高所作業の安全祈願だと言った。

 

 

「なんだ?これは…指?」

 

箒がとったのは灰の指甲だ。

一瞬悩んだ末、呪いに対するお守りだと答えた。

 

 

 

「竜の、指輪ですの…?」

 

セシリアは佇む竜印の指輪を手に取った。

これについては使ったことがなかったため、正直に詳細を忘れたと答える。

 

 

 

「これ、面白い形してるね。

どんな指輪?」

 

シャルルはなんとゴダの守護指輪を引き当てた。

彼は満面の笑みで最強の指輪だと答えた…まあ何故かある時期から効果が大分弱まったが。

 

 

 

そして…。

 

「おぉ、この指輪かっこいいな…」

 

一夏に至っては持ち前の巻き込まれ体質によるものか、なんと災厄の指輪を引き当てた。

彼は素直に超絶的に曰く付きな厄介物だと答えた。付けたら死ぬほど痛い目に遭うとも。

 

「うぇ、そんなものも持ってるのか…」

 

「よく呪われないわねアンタ」

 

「いよいよ指輪物語になってきましたわ…」

 

呪いなら彼は間に合っていると返した彼の脳裏には、炎揺らめくダークリングが浮かぶ。

いつの日か受けた不死の呪いを始め、幾多の呪いが彼を蝕んできた。

 

もう多少の災厄では動じないのだ。

――――――――――――――――とは言え、積極的にこの指輪を付けたいとも思わないが。何せ利点のりの字も見当たらない中々ふざけた指輪であるのだから。

 

 

ついでに災厄の指輪を一夏に欲しければ持ってって良いと勧めたが、流石に遠慮された。

 

 

 

…彼は芝生に散らした指輪達をかき集め、再び“ポケット”に突っ込んだ。

その際もやはり収納について突っ込まれかけたが、【彼】は総スルーした。

 

所で…と、彼は先ほどまで取り巻き連中が繰り広げていた「はい、あ~ん」争奪戦について指摘した。

――――すると3人は面白いように血相を変え跳び上がり、各自の得物(弁当・及びゲテモノ)を手に持って一夏に詰め寄った。

 

 

「ほら酢豚食べなさい酢豚!」

 

「ちょ、ちょっと押さないで下さいまし!

…一夏さん!サンドイッチもどうぞ!」

 

「なっ…この!私が先だろ!一夏!」

 

 

しい。

今この現状にピッタリと収まるこの言葉が、【彼】とシャルルの脳裏に浮かんだ。

 

 

 

「ねえ、潤?さっきの続き…この指輪のことだけれども…」

 

どうかしたのかと彼が聞いた後、長きに沈黙が訪れた。

シャルルは後ろめたい様子で言葉に詰まったまま、動かなかった。

 

…やがて再び顔を上げたシャルルは笑みを浮かべて口を開く。

 

 

「…ううん、やっぱり何でもない。

ごめんね」

 

彼はただ、気にするなとだけ言って地平線の彼方を見つめた。

只々青い地平線の先…何があるわけでもない、何かあっても関係ない。ただ…昔のように、地の果てを見下ろしていただけであった。

 

――――――たまに当時の感覚へとかえる事がある。

今でも感じるのだ…過去によく取った行動をしていると、ふと身体に装備の重みがフラッシュバックする。

重みと一緒に痛みまでもが蘇る事がある…古傷がただヒリヒリとするような時もあれば、火を継ぐたび感じる凄まじき業火―――またはその残り火に体を焼かれる痛み。折れた剣を握り続け、硬くなった掌の皮膚。

 

 

…ふらりと、風が吹いた。

それによって【彼】は内なる火継ぎより帰ってきた。

 

終わっていない、何も終わっちゃいない…ただそれだけの事実を固く握りしめるように、また地平線を睨みつけた。まだ剣は握れる…斧も振り下ろせる…槍だって突き立てられる…身体はまだ動くのだから。

 

 

    ◆   ◆   ◆  

 

 

 

これから先、何が変わってゆくのだろうと…伝えるモノは変わりない。

世界の闇が全て取り払われようとも、人は胸の内に共通鍵を持って行く。

 

 

 

 

 

 

ああ、そうだ…結局のところ彼は部屋の掃除を遂行したのか。

結論から言わせてもらうとてつもなく中途半端だ。

 

ベッドは一応整頓されているし、地面に物が散乱しているわけでもない…が、とにかくテーブルや棚の上が酷かった。

どう見ても元々地面に放置してあったものを無理やり押し並べたような、最早物置と言った方が納得のできる様子になってしまっていたのだ。プリントだろうが何だろうが無造作に積み上げられている様は、潔癖症の人間が見れば麻疹を起こす可能性すらあるだろう。

 

 

彼自身、流石に不味かったかと最適解が分からないながらに反省の気持ちはあるにはあるのだが…しかし、何度も言うようだがこの男に清潔さを期待するのが間違いであったかもしれない。

ここまでくると火継ぎがどうこうという問題ではなく、本人の性格の問題である。

 

もしも彼を弁護するのならば、他人の前でいきなり服を脱ぎだすことが無かった事を褒めるべきか。

 

 

 

…それと何だかんだでシャルルのスペースは十分確保されているので(取り合えずは)この件について保留されることとなった。

 

 

「…これで全部、だね。

ありがとう、手伝ってくれて」

 

力仕事と高所での作業のみ【彼】が手伝う事で、シャルルの引っ越し作業は直ぐに終わった。

【彼】とシャルル…2人の棚を見比べるだけで何かの境界線が張られているのではないかと錯覚するだろう、性格の差がここでハッキリと出ている。

 

 

彼は僅かに敵わないという脱力感で気を落とした。

…たかが掃除、去れども掃除。とは言え案外些細な事には変わりないだろう…そのために、気を持ち直すのは非常に早かった。

 

その直後にシャルルが「そういえば」と、話題を持ちかけてきた。

 

 

「一夏が放課後に特訓してるって聞いたけれど…潤はしてないの?」

 

そのことか…と彼は壁の方を見て頷く。

――――彼はこの特訓には参加していない、いや、正確にはちゃんと特訓のメンバーとして入っていないと言った所か。

 

というのも、一夏の特訓は他の同年代の専用機持ち(セシリア・鈴音)及び箒の主導で行っている為、この特訓は同時に女たちによる一夏の取り合いも兼ねている…そのために彼が入る余地などなく、参加するとすればわちゃわちゃとしている状況に(文字通り)横槍を入れるか、ミサイルでちょっかいを掛けるかのどっちかでしかない。

 

…こう書くと一夏が彼女らの面倒臭い願望に巻き込まれて碌に特訓も出来ていないように思えるが、彼自身は訓練を真面目に取り組んでいる。その甲斐あってか最近は他の専用機持ちに実力が追い付いてきているようだ。

 

 

ちょっかいを掛けに来る【彼】も感じていた、あの少年は自分のような時間をかけただけの凡人とは違う…もっと先天的な戦いの才能を持っていると。

 

 

一夏の伸びしろは兎も角として、彼は以上の理由で入れない事を冗談半分に話す。

そして最後に自分と一夏達との実力の開きについても話した…言っては悪いが彼らと戦って得られるモノはもう過去の自分が経験していると。

 

「そうなんだ。

…やっぱり、昔から戦ってた潤は強いんだね。先生とも互角だったし」

 

 

シャルルは【彼】の出自(カバーストーリー)については聞き及んでいるようだ。

彼は答えた…半分は正解であると。確かに積み重ねで自分が優位に立ったのは当然だが、それを補強したのが“力”を貰った事であると。

 

「力、ってIS?」

 

彼は頷いて、硬くてよく動くだけの力…そう自らのIS【アックスマン】を評価した。

十分すぎるだけの力だ。

 

 

真の力とは。それは死を与える力でも、雷を自在に扱う力でも、人知を超えた英知を扱えることでも、ましてや混沌の炎でもない。肝心なのはそれを持つ誰かだ…誰か自身の力によって付加される力は本来の100%かそれ以上にもなるし誰かが弱いと付加される力を扱えないか力に飲み込まれるだけだと。

逆も然り、人はどれだけ強くともその強みを生かせる何かを持たないと、何かに立ち向かうにしてもソレは困難を極めるのだと。

何か挑むたびに無力を感じ、策略を練りソウルで自らを強化し鍛冶屋に武器を鍛えさせ乗り越えてきた彼はそれを深く身に刻んでいた。それの絶望しかねない程の難易度でさえも。

 

本当に強いのは…人のこころ。それが光であれ、闇であれ…変わらないのかもしれない。結局何かに飲み込まれて…果ては…。

 

 

 

…一頻り語った所で、彼は自分が熱くなりすぎている事を悟った。

しかしシャルルは彼の言葉を一言一句真面目に聞いていたようで、それを知った【彼】は案外満更でもない表情をしてみせた。

 

「潤って、すごいんだね。

同い年とは思えないなぁ…」

 

 

シャルルの関心の言葉に対して、自分は彼?が男であることが信じられないと…そう口にしかけた所で【彼】の端末に連絡が入った。その内容を確認すると彼はシャルルに外出することを伝える。

 

「外…?

そろそろ時間だよ?大丈夫?」

 

その頃には戻れるとだけ伝え、彼は脱ぎ捨てていた制服の上着を再び羽織って外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壊れそうな世界を守るのは誰か。

それに目を背けず、取り乱してでも自分だと言い張れる所にたどり着く…例え呪いでも、それだけの価値を感じたのなら

 

それによって、嘗てより夥しい命が糧となってきた。世界こそ吸血の怪物かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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