(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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しゃるらう、まだまだ続くぜ


極光の陰、我忘の煌

たった今、ラウラ・ボーデヴィッヒがIS学園に到着した、まだ陽が地平線より姿を現して間もない早朝の出来事だった。現場より謎の石像を発見・材質は既存の石材や金属とは大きく異なる特徴を持つ

彼女は降り立った駅を出て、学園内の通路を歩く。

 

その小さな身体を此処へ運んだのは、黒く疼く怨嗟の慟哭…もしも感情を力に変えられるのならば、その私怨は鋼を引き裂く神の牙とも成り得る陰我は華奢な姿形では想像することも出来ないだろう。

 

 

…彼女は道を行く途中、場違いなモノを見つけた。

芝生に腰を掛け、地平線の彼方を見つめる“男”の姿だ。

 

IS学園に男などと、迷い人で笑い話か何かで終わるだろうが…生憎とその男は学園の制服を身に纏っている。ならばあの“織斑一夏”か?彼女は一瞬そう考えたのだが、知っている情報との相違点が多く、ならばと次の候補を挙げて正解にたどり着く。

…あれが“佐々木潤”であると。

 

 

「貴様、ここで何をしている」

 

彼女は【彼】に声を掛けた。

聞いたこともない声に振り向き彼は、しかし彼女の詳細を問う事もなく只々質問に答えた。

 

――――――――――――――――力を、待っているのだと。

検査で内部に人型の死体を確認。石像は棺であると判明

彼女は「何をバカな…」と呆れるように言った。

 

 

「それは待って得るものではない。

己から掴み取りに行くものだ」

 

彼女の言葉、それは納得に値する物であった。

確かにそうだ…と。ただ待つだけなど楽して得られるような力は大抵碌な力ではない、例えば何かへの隷従を強いられる罠だ。

 

 

しかしな…。彼は言葉をつづけた。

何かへと向かって貪欲に突き進もうとするならば、それこそ待つ事も大切なのだ。

困難があると分かって突き進むのは良い…が、それらは大体死を招く事になりがち。なればこそ一度動きを止めて心を落ち着かせ周囲を見回すような冷静さが必要なのだ。

 

人間の目では走ったまま見える景色など限界がある。

何があるのか、何が出来るのか、何を用意できるのか…それら全て考えた上で待つという選択肢はあるのだと。

 

 

 

つまりは、知った上での行動は愚行ではない。

周到な準備が勝利を招くのだ…彼はそう語った。

 

 

「フン…口では何とでも言える。

…貴様が待つ力とは何だ」

 

――――――――――――――――己の力を更に高める力、そう問いに答えた。

 

 

「精々その力に振り回されない事だな」

 

彼は踵を返して去っていくラウラに向かって、身の丈に合わない力は持たないようにしている事を伝えた。

 

 

…丁度その時端末に連絡が入る。

彼は内容をざっと確認した時、今回は先ほどの女の言う事が正しかったと舌打ちを打った。

完膚なきまでの理不尽に面した時は準備もクソもないのだ。

現場の機材では棺の解体は不可

やや恨めしそうな顔のままに彼はまた別の場所へと向かった。

早朝なので彼の姿を見る者は誰もいない…静かな道を早歩きする。

 

 

3つ程、角を曲がったあたりだろうか…ようやく彼の目的の品が見つかった。

タンカーや港に積み上げられているようなコンテナよりも一回りほど大きい灰色の近未来的なボックスは、彼が近づくと勝手にインターフェースが現れコードが伸びた。

 

彼はそのコードを待機状態のアックスマンに数秒程接続し、作業の終了を告げる音声が響くと接続を解除した。

 

 

 

…さて、私は謝らなければならない事がある。

アックスマンが持つ斧を度々大斧と表現した事があっただろうが、実はあの斧はアックスマンの巨体から見れば精々ミルウッドの戦斧レベルである…同じサイズまで大きくした防火斧と比べると大振りであることには大振りだが、それでも足りていない…大斧と呼ばれるには不十分なサイズだった。

だが今回【彼】に支給された両刃の斧は違う…一回り大きいアックスマンで無ければ逆に振り回され、そのアックスマンであっても多少取り回しが重くなる程のサイズ、そこから繰り出される威力など容易く想像できる。棺を研究所に輸送、解体し死体を摘出

彼は満面の笑みでソレを受けとった。こういうので良いのだと。

 

 

 

 

 

ここで彼はある事に気が付いた。

…先ほどのラウラ、何気にスカートじゃ無かったのだ、IS学園史上二人目(暫定)のズボン女子学生である。彼は妙に感心していた。やはりいるのか…と。

 

 

 

 

 

 

 

解剖直前、死体が動き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――だが今、そのラウラが一夏を平手打ちしている意味は分かりかねた。

大斧(真)の受け取りの後、(夜中ずっとあの場所で待機していたために)千冬女史からはお叱りを受け、シャルルには心配されてと中々濃い目の朝であったが…ここに来て濃さが加速するとは【彼】の目を以てしても見抜けなかっただろう。

 

彼含め、クラスは唖然としている。

そんな普通は気まずいであろう空気をラウラという女はまるで何でもないかのように突き進み、割り当てられた自分の席へと着いた。生命反応らしきものは見られず

 

 

…シャルルより凄い生徒が来たと、彼は独り言ちた。

と言うよりもシャルルは案外人としてごく普通の性格を持った人物であるために、最初のバレバレな男装の衝撃は直ぐに薄れ、何だかんだでごく普通の友人として接しているのだ。

 

それに比べてラウラは性格面でもかなりぶっ飛ばしてくる程の強烈さを持っている…何をカリカリしているのか【彼】には見当も付かないが、並大抵の怒りでもないとは考えていた。態々ビンタまでするのだから。

 

 

 

この後の授業は特に何もなかった。

彼はラウラが事あるごとに一夏へととっかかる事を予測していたが…流石にそこまで尖った事をするつもりも無かったようだ。

 

    ◆    ◆    ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナにて【彼】は専用機を持たない生徒達に特別授業を行っていた。

アックスマンが両手で構えたタワーシールドに向かって、打鉄を纏う生徒達が打ち込みを行う。ただ盾に刀を打ち込ませるのではない、彼が口頭で振り下ろし、横薙ぎ、斬り上げ、袈裟斬り、突き等とドンドン指示を飛ばし、女子生徒がそれに従う形で上記の攻撃を仕掛けるというものだ。

 

攻撃の組み合わせはランダム、時に蹴りや殴りにタックル等武器ではなく体を使った攻撃も指示することもある。

回数は一人につき5回で、列に並んで一人ずつ打ち込みを行わせる仕組みだ。

 

 

この訓練方法は【彼】がほんの僅かに記憶する訓練兵時代の訓練と、今までのISに対する近接戦闘の経験から照らし合わせた戦法に基づいて即興で考案したものだ。

剣や刀と言うのは甲冑相手では刃の鋭さなどあまり役に立つ場面は少なく、結局のところ叩き付ける事が主軸となってくる。硬い金属と絶対防御でガチガチのISならば尚更だ。

 

そうした時、剣や刀を叩きつけた時に必要になるのは叩き付けで有効なダメージを与えられるだけの地力と、それを確実に当てるだけの技量、そしてそれらを相手より多く行うためのより多いスタミナであると彼は結論付けた。体内より高エネルギー反応検出

結局の所、今までの戦いと求められるものは変わらない。

 

 

…彼は1度の打ち込みの回数を6回に引き上げた。

同時に自分の盾を押し切った者に何か奢るとも宣言する。

 

当然ながら打ち込みの勢いは増した…いくらアックスマンと【彼】のパワーとは言え耐えきれるかどうか微妙な所である。彼は自分の財布の心配をしたが、特に買いたい物が新作のゲーム機以外思いつかなかったので取り合えず盾を構えなおして迫りくる怒涛の連撃を耐える。

 

 

 

 

――――――――――――――――だが、ある時から打ち込みが来なくなった。

何かあったのかと思い、彼女らを呼びかけようとするが…その直前に上空より戦闘音を聞き取った。

 

ふと、空を見上げると…そこには白式とオレンジのISが見えた。

よく見ればオレンジのISはラファール・リヴァイヴのカスタム機(ラファール・リヴァイヴ・カスタムII)であり、パイロットはシャルルであることも分かった。

彼はカスタム機という事で親近感を覚えた、何せ自分のアックスマンも試作の外宇宙探索用機体を戦闘用に改造した(と言うより、して貰ったの方が正しい)ISであるから。以降、死体を「非検体」と呼称

 

 

シャルルは優秀なパイロットであった。

特技である高速切替(ラピッド・スイッチ)を駆使して変幻自在な攻撃を繰り出し、近接武装しかない白式を見事に重火器だけでなく近接戦闘でも翻弄している。

彼は前日の山田先生以来の感覚を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…結局、白式及び一夏はほぼストレートに敗北を喫した。

彼のシールドエネルギー消耗の理由はほとんどが銃火器によるモノであり、それを知った【彼】は一度特別授業を打ち切った。

その際に女子達から受けた礼をどうもと返して、彼は一夏達の元へと向かった。

 

 

しかし目的は彼らではない、自分の持つ銃火器の性能を今一度確かめるのと単純な射撃訓練のためである。

たまたま彼らの近くに射撃訓練用のターゲットがあった、それだけの話だ。

 

 

 

彼は先ず、最近よく使うヘビーマシンガンを手にした。

コイツの特徴はなんといっても総合火力からくる使いやすさだ、比較的大型の弾頭を高いレートで連射することが出来、更に単発火力もそこそこなのでセミオート射撃に切り替えればマークスマンライフルとしても使用可能。

 

だが弾が大きいので反動は連射速度と相まって非常にキツく、また弾速も然程速くない上に、銃本体も中々重いのでアックスマンでなければ運用は少々難しいと思われる。

 

 

彼は試しにホログラフィックの的を出して数発、指切りで3点バースト射撃を徹底して狙い撃った。

…結局の所今まで使っていたクロスボウと何ら変わりない。狙って引き金引いて撃つ…違うのは弾速と装填速度そして装弾数だけだ。

だからこそ、彼はこれで満足できない…動かない的を撃った所で得られる経験は無い、戦いは双方あちこちに動き回るのだから微動だにしない的に慣れてしまうと試合じゃ全く通用しない撃ち方をしてしまう。

 

なので軽い試射に留めた。

照準装置のブレは無い、銃身の歪みも見受けられない。最高のコンディションである。

 

 

 

次にミサイルランチャーを手に取った。

これは成形炸薬の詰まった無誘導のマイクロミサイルを先のマシンガンとほぼ変わらないレートで打ち出す強力な対物武装だ。火力は光るものがあるのだが如何せん弾速が遅いので対ISでは出番がない…と言うのは考えもしない者の戯言、ばら撒けばかなりの制圧効果が期待できるだろう。

 

こちらも数発の試射を行う。

…やはり弾速が微妙だが、クロスボウと大体同じくらいと考えれば此方の方が馴染むと言えば馴染む。

それにこのランチャーは反動が比較的軽いので近距離で使うには―――――いや、僅かとは言え爆風がネックとなる。

 

 

 

因みにウォッチドッグオブヘルは整備不足で現状銃火器として使えないのでパスする。

 

 

 

そして最後…これは彼自身初めて使う武器だ。

ウォッチドッグオブヘル以上に大筒なその大型火器を肩に担ぎ、真っ直ぐ構えてフォアグリップを握り、照準器を覗く。

此方は所謂バズーカ砲、もっと付け加えるなら荷電粒子を打ち出すので言わばビームバズーカだ。

 

引き金を引こうとすると、すぐ右隣で銃声がした。非検体動き無し、時折瞬きの動作を確認

…どうやらシャルルが一夏に銃火器の使い方をレクチャーしているようだ、話では日本人ほど銃が一般生活からほど遠い人種はいないと聞いていたので(一夏にとっては)貴重な体験となっているだろうと【彼】は思った。

 

 

彼は二人へ声をかけ、調子を聞いた。

一夏は「おう!」と返事をしながらサムズアップを見せて、シャルルは手を振った。

どうやら楽しんでいるようだと確認し、もう一度引き金に指を掛ける。

 

 

 

その時から聞こえてくる女子達のささやくような声、それらがいくつも重なり合って十分人に聞こえる音となる。

 

…やたらと回りが騒がしくなった。

どうやらドイツのISがいるらしいが、アリーナ内には見当たらない。彼は周囲を見回して生徒達の視線を割り出すと、上方向にドイツ機がいる事が分かったので彼女らと同じ方角を見上げた。

 

確かに、カタパルト付近に黒いISを纏ったラウラが居た。

この時初めて【彼】は彼女の国籍を知るのだが今は関係ない。

 

 

不意にラウラが口を開く。

 

「…織斑一夏、私と戦え」

 

稲妻の様に急な宣戦布告であった。嘗てドイツは電撃戦を研究していたと聞くがそれは国民性によるものだったのだろうか?

兎も角【彼】は三度引き金に指をかけ、いつでも狙い撃てる構えを取る。

この女は直ぐにでもぶちかまして来る…彼にはそういう確信があった。

 

 

そして名指しされた一夏は、叩きつけられた手袋を丁重に断った。

 

()だよ…理由がない」

 

「私にはある。

もう一度言う、戦え…私と」

 

「今やる必要も――――「そうか」え?」

 

 

ラウラ…もとい、シュヴァルツェア・レーゲンは即座にレールカノンを構えた!

それに対し反射的に【彼】がバズーカの照準をレーゲンに合わせて、シャルルがシールドを構え一夏の前に出た!

 

 

【彼】とラウラ、引き金を引いたのは同時!

弾速に勝るレールカノンが先にラファールカスタムの盾に着弾し、直後に荷電粒子が紙一重で避けたレーゲンの装甲を掠める。

 

…外した、早急にそう判断した彼は素早くマシンガンをセミオート状態で取り出しレーゲンへと放った。

だがその全ての弾丸は1発もレーゲンに直撃することは無かった。全弾がレーゲンの前で弾かれたのだ!

 

 

全身装甲(フルスキン)の骨董品如きが…無駄な事を」

 

 

彼は驚愕した、何もないのに…そんな馬鹿な話があってたまるかと。

手品のカラクリを暴かんと、今度はフルオートに設定して再びスコープを覗き引き金に指を掛けた。

 

だが…。非けけけけ…いえ…んじょ…おと…る

 

 

 

 

 『そこの生徒!何をやっている!』

 

教員の怒号がスピーカーより飛び出す。

流石にここまでだろという彼の予想通りラウラはISを解除して、捨て台詞を吐いて去っていく。

 

一度終わりを告げた頃、辺りは騒然としていた。

無理もないだろう。しかし彼は何かが引っかかっていた。

 

 

あの女の動機、まさか…彼はISを解除しながら必死に思い出す。

何があったのか…あの場所が何処だったのか…。

 

 

 

 

 

 

 

     【データ破損】

 

 

 

 

 

 

 

  ◆    ◆    ◆

 

がらんどうの更衣室の片隅で【彼】は端末を耳に当てていた。

つまりは通話中なのだが、その間彼は一言も発していない。

 

…やがてたった一言の感謝を述べて通話を切り、親指で眉間を押した。

 

 

案外面倒臭い案件だった、いくら自分が関係ないとはいえ…あの調子が最長3年は続くと考えると少々考え物である。もしもラウラが怒りをエスカレートさせていけば今後何をしでかすか分からないし、先ほどのような決闘行為を3年も続けられては身が持たない。

…何より、彼女に織斑一夏を殺されてしまう事態など――――――――非常に悩ましい問題だ。

 

私怨は時がたつと根が枯れるか、より伸びるかのどちらかだ。

後者になるという証拠はないが前者があり得ないという証拠もない。

 

 

 

――――――――――――――――彼は結局全て当事者の一夏に丸投げすることを決意した。

一夏にとっては純粋にとばっちりであるが…他人の説得でどうなるという問題でもなさそうなのだ。

 

きっと解決には長い時間を使うだろう…しかし1年程度でしがらみが消えてなくなれば、少なくとも【彼】の感覚では早期に収まったと言える。

 

 

と言うよりも彼は人間関係がどうだこうだと言うのは苦手である。

 

 

 

…彼は更衣室の隅から立ち去り、一夏達の元へと向かった。

 

 

「あ、佐々木。

小便の割には長かったな」

 

大分溜まっていたと一夏に返した後【彼】は荷物を持ち上げた。

…その場にまだシャルルが残っているのを見つけると、まだ帰っていなかったのかと問う。

 

 

「うん、待ってたんだ。

…じゃあ一夏、僕たちは先に帰ってるね」

 

「ああ、お疲れ様」

 

互いに手を振るシャルルと一夏。

遅れて【彼】も一夏に夜道に気を付けろと冗談半分で警告して手を振った。

 

…流石にラウラが暗殺を仕掛けるという事は無いだろうが。でなければ決闘など申し込まないだろう。

 

 

 

「アレっ…そういばシャルル?」

 

「ん?どうしたの?一夏」

 

「いや、なんか…雰囲気変わってないか?」

 

「ぇえ?そ、そう?

別に…何もしてないけどな…」

 

「そう…、か。

悪いな、止めちゃって」

 

「大丈夫だよ。またね一夏」

 

2人は再び歩き出した。

 

 

 

――――――――――――ここで、彼は以前より放置していた問題に片を付ける事を決める。

無論シャルルのことである。彼(彼女)も十分厄ネタなのだ…こっちもこっちでこのまま会社からの指令をエスカレートさせていけば近いうちに大きな事件が起こりうる。

 

経済的な面が絡んでいる分シャルルはラウラよりも数倍厄介なのかもしれない。

 

 

だからこそ、形はどうであれ【彼】は決着を付けに行く必要があった。

一応布石は敷いてある…別に必要も無かったが、せっかくなので使う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

…考えている内に気が付けば部屋の前だ。

【彼】は慌てて鍵を取り出した。最近無意識にも色の無い何かを見るようになっている気がすると、彼は2種類の厄ネタ以外で頭を抱えた。

 

「今日も、シャワー先いいかな?」

 

どうぞ、と軽い身振り手振りも踏まえてシャワーの順番をシャルルに譲った。

…別に順番を気にするほどの潔癖症でもない。

 

 

薄暗い自室の中、彼は椅子に腰かけた。

…仮初の友人をどうすべきか。

 

 

 

 

ただ深く、深く考えた。

彼女のこと、デュノア社のこと、そして何より自分らのこと…それらを天秤にかけ、どう傾かせるべきかをあまり社会のモノを知らない頭で考える。

 

 

―――――――――――彼は目を見開いた。

どうすべきか決めたのだ、何の声に従うのかを。

 

 

 

 

彼は風呂場に通じる洗面所のドアを開け、棚からボディーソープを手に取った。

前日、最後にシャワーを使った【彼】がちょっとした事故で全て中身をぶちまけてしまったのだ。

 

彼はシャワー室にそのボディーソープを持った右手だけを突っ込んで、シャルルに手渡した。

 

 

「ありがとう。

…でもまだ残りがあったと思うんだけれど…」

 

彼は気にするなと誤魔化す。

そして風呂場のドアの前で、話題を切り出した。

 

幸運の指輪の事覚えているか?と。

 

 

 

「え?指輪?

うん…それがどうかしたの?」

 

彼は言う、それはどの指輪にもあった効能の話だ。

前日手持ちの指輪を見せた際、どの指輪にも必ず何かの意味があった…火や雷、呪いへの耐性、魔法の強化、背中への致命的な一撃の阻止、被ダメージの増加、容姿の変化etc。

 

無論、彼がシャルルに渡した幸運の指輪なるモノも同じで。

そしてその指輪は実際には幸運の指輪などと安直な名前ではない。

 

 

しかしシャルルにとって幸運と変わらないかもしれない効果は秘められている。

 

 

「それじゃ…この指輪ってどんな意味があるの?」

 

シャルルの問いに、彼は口角を上げて答えた。

―――――――――それは“愛”であると。

 

 

ここから【彼】のおふざけが始まる。

その指輪には愛の束縛と言う意味が含まれ……………そして彼の生まれた場所では男は生涯を共にしたい相手にそれを渡して……………それを受け取った瞬間神は契約の成立と見なして2人を心身共に……………縛り付け……………そして(以下省略

 

即興で考えたので文脈で滅茶苦茶であったが、シャルルは相当取り乱しているのか特にツッコミを入れる様子もない。

 

 

「え…ええ?

あの、潤?僕、男だよ…?」

 

姿は見えなかったが、声の様子から想像以上に取り乱しているのが分かった。

シャワーも一瞬止まった訳で。

 

 

彼は別に茶番をしに来たわけでもないので早々に嘘だとネタ晴らしをする。

 

「そ、そっか…お、脅かさないでよ!もう!」

 

悪い悪いと冗談半分に謝りながら、本来の意味を説明すると伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

そして彼は幸運の指輪……………いや、【化生の指輪】についての説明を行った。

 

 暗月の神グウィンドリンはその力から、娘として育てられ暗く儚い女神の如く振る舞ったという。

 その指輪は彼が女神たる為に男の仕草を一切消し去る目的で彼の幼き頃与えられた指輪である。

 

 

 

――――再びシャルル…いや、シャルロットの動きが止まる。

今度は先の感情の昂りからくる取り乱しではない、その逆…感情の青ざめからくる取り乱しだ。

 

彼…いや、彼女は自分の鼓動が早くなっていくのを感じた。

最初からバレていたのかと。

 

 

 

 

そんな彼女に【彼】は最後の一言を添える。

…お前と一緒だ、と。

 

 

 

 




















実を言うと私は感想通知を見ると股間に衝撃が走りテクノブレイクしてソウルロストする。




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