(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
そして次回から最終章やっていきます。
2020/10/13、事前に考えていた展開を一部入れ忘れたので挿入しました。
世界は心の中で生まれ変わる。
心配せずに生きろ。
瞼を閉じ瞳でソレを見つめれば過る、孤独な暗闇の中で見た記憶。今の今まで自分が憎み殺したがっていた相手が一体何を思っていたのか。結局の所、弟も姉と同じ輝きを放つ心を持っていた。誰かじゃない、自分が…自分じゃない、誰かのために…他の何かを全て守りたい、内なる守りし者の心だ。それは白金の刃という形で時を超えても受け継がれてゆく。ラウラはその様をあの暗闇で見て、そして感じた…何故あの男がここまで強くなれたのかと。
そしてあの男――――一夏という白夜の騎士の幻影はサラサラと消えて、今度は鈍い明りが灯る。
明りが火によるモノだと分かるのに時間はかからなかった…傍には錆びて焼き付きズタズタになった甲冑を纏う何者かが腰を下ろして篝火を見つめている。
この時彼女は確証こそ無かったものの、この甲冑が【彼】であると確信していた。彼は随分前の邂逅の時と同じく、何かを待っているようであった。
「お前は…何を待っている」
ラウラが【彼】に問う。しかし返ってきた言葉は意外なモノだった。
――――既に何も待っては居ない、自分はここで全て終わったのだと。
どうにも理解が出来なかった、一体何が終わっているのか…。
彼はそれを語らない、只々篝火を見つめるだけで何も言わずピクリとも言わない。
いかつい甲冑を纏いながらその姿は哀愁を漂わせていた…ラウラにはその哀愁がとても己と同学年の人間だとは思えない、永きを生きて枯れて朽ち果てるに果てれなかった哀れな存在に思えた。すべてが終焉を迎えて尚、たった一人取り残されてしまった男だと。
だが【彼】は現に戦い続けている。何もかも終えたと言うのに。
「お前は――――」
次なる問いを掛けようとした時、不意に彼が立ち上がった。
そして篝火に突き刺さる捻じれた剣を引き抜き、こう言い放つ。
呪いを滅せねば、と…。
――――――――――気が付くと、彼と同じく捻じれた剣を手に持つ存在が幾人も居た。
姿形はそれぞれ違うが纏う哀愁は誰も変わらない…彼らは皆同じ方向へ、一直線に歩き始めた。
慌ててラウラも追いかけるが、歩幅とペース以上の歩行速度があるのか(或いはラウラが自由に動けないのか)【彼】の背中は一向に遠くなるばかり。やがて無数の彼らの中に埋もれて姿が見えなくなると、彼女自身も視界がぼやけ始めてきた。その中で、彼らが皆チリチリと僅かな火に包まれていくのを見る…だが、その熱さを物ともせずに彼らは歩き続けていた。まるで己が燃えている事自体当然であるかの如く。
その無数の熱気に充てられたのか彼女は暗闇の中、膝から崩れ落ちる様に視線が下がってゆくのを感じた。
…彼女の元に一人、彼らの波に逆らって向かってくる誰かが居た。
誰かは、伏せる彼女の元で膝を付き囁いた。
行くぞ…新たな時代がお前の名を告げている。
ラウラは再びオッドアイの目を開いた。
日は織斑千冬が来た時よりも随分と沈んでおり、最早目先の物でさえも分からなくなりそうな程保健室は暗くなっていた。黄昏の、そのまた先…夜の一歩手前、とでも言うべきか。
その時、ノックが響いてドアが開く。
保健室に入ってきたのは【彼】であった…噂(?)をすれば、という奴である。
彼は保健室の場所のややこしさに愚痴を呟きながらラウラの元へと向かった。
そして何も言わないまま彼女の横たわるベッドの隣にあった椅子へと腰を下ろし、ここで初めて口を開いた。調子はどうだ?と
「良い訳があるか…と、言いたいがな。
多少気疲れしている以外に異常はない」
彼はラウラの言葉に頷き、元気そうで何よりと言って持ち出した鞄を漁り始めた。
「…何をしに来た?笑いにでも来たのか?」
彼女の突然の問いに対して、彼は率直にそうではないと返した。笑う所も無い、とも。
続けて【彼】は自分自身の要件も話した…ここの教師や技術者、医者では分からない、自分だけが専門とする診断をしに来たのだと。
「診断?私の?
何を診るというのだ?」
それはだな…と、彼は鞄よりゆっくりと物を取り出しながら語る。そして思わせぶりな表情を浮かべながら、へっへっへと笑う…。
――――取り出したのは、ボコボコとした黄金の十字架であった。
安心なされよ、其方は何者にも憑りつかれてはおらぬ、其方の魂は健全そのものであるぞ…やたらと尊大な言葉遣いでモノを語り、ぐっと十字架を目の前に掲げた。
「…エクソシストの真似事か。胡散臭いにも程があるぞ」
ラウラからの評価は散々だった。
一発芸がスベった彼は渋い顔をしながら冗談だと十字架を差し出した。なんでもこの十字架はただのチョコレート菓子であるという。
よく見れば黄金はただの包み紙で、微かにカカオの甘い匂いも漂っている。
【彼】は食べておけと彼女に手渡した。
「何処で売っているんだ、こんな物…」
態々この男が教会か何かまで出向いて差し入れを貰ってくるような人間だと思えないラウラは、チョコレートの仕入れ先について疑問を持ちながらも包み紙を剥がし、十字型のチョコレートを口に運んだ。
…別段、旨いわけでもないごく普通のチョコレートだ。
しかし甘い。多少の疲れはとれるだろう。
あっという間に完食した後、彼は包み紙を回収して適当に投げベッドを3つ超えた先のゴミ箱へホールインワンさせた。戦闘中に見せたグレネードといい、素晴らしい投擲技術である。
「何処で身に着けたのだ?あれほどの技術を」
彼は答えた、ただただ戦い続けている内に身に着けたのだと。
投擲然り、剣術然り、体術その他の戦闘技術然り、ノーコンから…腰の抜けた縦振り横振りから…弱弱しい拳や蹴りから…何度も何度も繰り返して己という赤熱した鉄を叩き続け、より鋭い刃を持った刀剣となるまで…いや、なってからもずっと戦い続けて…そんな事を長きにわたって続けたことで手にした強さなのだ。
彼はソレに対して、自分の様に1日に(強くなりたいと思うが思わまいが)何百何千回と戦っている阿呆であれば誰でも辿り着ける場所であるとも答えた。
「成程、鍛錬の果て…か。
ますますお前が同い年かどうか怪しくなってきたぞ」
よく言われる、と彼は自分の実年齢について多少誤魔化すような形で答えた。最早この手のやり取りは定番と化している事に彼は自分がかなり無理して年齢を騙っている事を改めて実感する…聞けば世界には90歳という高齢でも小学校に通っている者が居るというので別に無理して16歳を通すことは無かったのではないのだろうか。
何を言っても今更なのでこれ以上考えることをしなかった。
何はともあれ“診断”も“お見舞い”も終わった。
彼はラウラに別れを告げて立ち上がると「待ってくれ」と彼女に呼び止められたので、ドアの方面に振り向かせた身体をもう一度彼女の方に向ける。
「お前は…お前は、知っているのか?私の姉妹の事を」
どうやら1週間前の発言を覚えていたようだ。ここで言う姉妹とは厳密には同じ母の腹から生まれるような一般的な意味合いは持たない…ラウラと同じタイプの試験管ベビーという意味だ。
彼は知っているとも、と彼女の質問を肯定した。
曰く、ある研究所に滞在していた時に出会ったようで、ひょんな発言から自分の事を弟だと言い張るようになってしまったらしい。それ以来の付き合いだと【彼】は語った。
「そう、か…。
今は何をしているのだ?その姉妹は」
彼は暫しの間黙って…その内分かるかもなとだけ言って今度こそ部屋を出てしまった。
再び静寂に包まれた保健室で、ラウラは一人既に沈み切ってしまった太陽を見る。
「弟、か…」
保健室を出てすぐに【彼】は箒と出くわした。
「あっ、佐々木…一夏を見なかったか?」
彼は見てないと答えた後、食堂にいるのでは?と答えた。
すると箒は矢継ぎ早に「ありがとう」と言って食堂へと走っていった。
…彼もまた、事前に買っておいたサンドイッチを手に屋上へと向かった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
かぽーん、なんて音が非常によく似あう大浴場に男が二人寛いでいた。
無論、IS学園内の男子なんて言ったら大体織斑一夏と【彼】なのでその二人であるのだが。
今日から大浴場にようやく男子の時間が割り当てられたのだ。そんなわけで一夏は「日本人と言ったら風呂」と随分満喫しているのである。
【彼】もまた凍てついたエス・ロイエスを思い出すと言って感傷に浸りながら身体を温めていた。
「エスロ…何だ?それ」
不意に出した聞きなれない地名に関して聞き直すように質問した一夏に、エスロイエスとは雪の積もっている場所だとシンプルに答えた。ある遺跡のファロスの仕掛けを使って治湯を沸きださせることが出来、それによって過酷な雪道での疲れを癒すことが出来た…のだが。
「そっかぁ、雪の中の温泉か。
行ってみてぇな」
今の一夏の発言に対して彼は不自然なほどの笑みを浮かべて今度連れて行ってやると答えた。
…言うまでも無く、悪意たっぷりである。
エス・ロイエス…厳密には壁外の雪原という場所は一寸先が白く隠される程の猛吹雪が吹く場所だ、更に道中には氷馬や追放された戦士たちがうろついており、特に氷馬は攻撃力が高い上に素早いので非常に厄介な生き物である。
そんな場所に態々温泉のために出向くなど割に合わない上に、治湯の場所もかなりこじんまりとしており吹雪が吹き荒れていなくとも地味な遺跡か単調な雪景色、後はファロスの仕掛けの奇妙な顔しか見えないというオマケまでついてくる。
一夏は何秒生き残れるのか楽しみだと心の中で笑いながら、肩まで湯に浸かり込んだ。
「…なあ、佐々木。
あの後すぐ消えたから言えなかったけど…ごめん」
何がだ?と、水面を見つめ深刻そうな顔で話を始めた一夏に対して【彼】は問うた。
「ラウラを助けた時さ…。
結果的には良かったけれど、お前に散々迷惑かけちまって…やっぱり、間違ってたのかな?俺が全部守りたいだなんて…」
より視線を落として一夏は待機状態の白式を見る。
ふぅ…と【彼】は一息ついて、お前の信じてた事は間違いじゃないと一夏の肩を叩きながら語った。
彼はそのまま語りを続ける。
【彼】は一夏の進もうと決めたレールに勝手に乗っかって怪我をしただけであって、一夏は何も悪くは無い。寧ろ一夏はあの絶望的な状況に置いてラウラの命を見捨てず僅かな可能性に全てを掛けて助けようとした…それはどんな神や聖人を崇める教えであっても共通する正義であり、その信念を青臭いと笑えども悪だと断罪されるべきでない誇り高き考えだと。
何よりも、あの妥協が皆の正義とされている時に己の絶対的な正義を貫き通した心の強さこそ本当に素晴らしい…誇るべきだと。
「誇るべき…」
彼はそうだと、話を再開した。
人は大体の場合、年を取るにつれて誰かのためだとかそんな壮大で英雄のような考え方なんか出来なくなってしまう。どんなに少年の頃にヒーローに憧れたって、現実の非情さを知るにつれて憧れも潰えていくし何ならそんな英雄だった少年時代とは裏腹に全てを闇に落としてしまうかもしれない。そして永い時が経てば人は心を擦り減らして亡霊の様になってくる。だからこそ己の正義を貫く難しさはそこにあるんだと。
彼は一度間をおいて、三度話を始める。
お前がISに乗ったのは全くの偶然だったかもしれないが、その後ISを使ってどうしたいと考えた?と。
「俺は、俺は…守りたいんだ、他の誰かを。
それこそ千冬姉だって守りたい。もう守られるだけの俺で居たくないんだ…」
彼は一夏の信念を聞いた後にまた語った。
その猛る想いが本当ならば、その自分で決めた道を最後まで…それこそ命が尽きるその時まで駆け抜けてこそ永き時を経ても輝きを放つ生鮮が生まれる。一夏はまだ16前後だ、その道において試練と共に正しさとは何かをどんどん知ってゆくだろう。
美しいだけの、純粋な刃は脆く戦えないが、あらゆる思念や願い・祈りを込めた黄金の剣は、最後で最強の闇への盾となり矛となると。
彼は最後にこう言った。
お前が選んだ道は絶対に間違いなんかじゃないんだ…その道を道なりに駆け抜けて行けと。道しるべは全部“ここ”にある。そう言って【彼】は一夏の胸をバンッと叩いた。少々勢いが強すぎて一夏が「あうっ」と軽く呻いたが、あまり気にしない。
「俺の道が…そっか。
ありがとうな、佐々木!」
一夏は沈んだ表情をもう一度輝かせた。
そして二人はまた湯加減を堪能し始める。
「そういえばシャル…は、来ないよな」
一瞬この発言の聞き逃しそうになった【彼】は二度見するように今の発言について問いただした。
シャルロットの事についてお前も知っているのか?と。
「え?え!?
えっと、シャルの事って…実は女の子だったって事か?」
…彼は頭を抱えた。
何となく彼が秘密について知る事となった経緯が想像出来てしまうからだ。
しかし、もしかするとかなり重大なバレ方をした可能性もあるので恐る恐る一夏にどうしてわかった?と聞いた所…
「えっと…………佐々木が居ない時に、俺がノックして入ったら、シャルが着替えてて…」
また頭を抱えた【彼】であった。
本当にこの男はブレない男である。
「ブレないって、俺はわざとじゃねえよ!」
わかったわかった、と彼の必死な弁護を若干諦めに近い感情で聞き流しながら顔面を湯に埋めた。
どうせ着替え中に入った後もドタバタでラッキースケベを起こしたのだろうと考えるともう笑いと苦笑いがミックスしてすさまじい顔に成りかねなかったのでこうするしかなかったのだ。
一夏に非はあれども悪気はないのが一番の困り処である。
「ま、まあ…結局そういう事だからシャルは来ないよなって話」
当たり前だろ、と彼は直ぐに突っ込んだ。
――――その時、二人の背後で物音がした。
どうやら更衣室に誰か来た様だが…。
一夏と【彼】が真顔になるのはほぼ同時であった。
「い、いや…まさかな?」
言いたいことも同じである。
彼はきっと清掃業者か、2人の動向をチェックしに来た教師だろうと言った。高校生が浴場でふざけ合うのはきっと何処の国の学校も(風呂という文化があれば)同じなのだろう、その監視に来たのだと彼は若干抑揚を抑えた声で語る。
――――そして浴場のドアが開く。
どうも聞こえてくるのは女性の吐息だが、まあ気のせいだろうと彼は更に抑揚も勢いも抑えたような声で話すが、監視にきた教師(主に千冬女史)か覗きに来た変態だろうと小さく答えた。
「いや覗きに来たのはやべぇって…」
「あ、あのぉ~…」
疑いようもなくシャルロットの声であった。
二人は恐る恐る背後を向くと、やはりというかなんというか…バスタオルでギリギリ身体を隠した彼女が入り口で立ち竦んでいた。
「しゃ、シャル!?
どうしてここに?シャワーとかあっただろ!?」
「それが…シャンプーが無くって…それでせっかくだからって…」
あー…と、彼は眉間を抑えた。
実は前日に(また)シャンプーの中身を全てぶちまけてしまったのだ。器用なのか不器用なのか分からない男である。
「なんでぶちまけるんだよ…」
その話を聞いた一夏は、素朴な質問をぶつけた。
確かに普通に使っていれば中身をぶちまける事は無いはずだ―――――――――だが【彼】の答えは斜め上を行った。なんとシャンプーやボディーソープを使う際に上のポンプを使わずになんと一々フタを開けて傾けて中身を出していたと言うのだ。
…で、時々手が滑って落としてしまうのだと言う。
「さ、佐々木…お前、シャンプーとかの上のアレ、押せば中身が出るんだぞ…?」
彼は口をあんぐりと開けて驚いた。
それこそ某海賊漫画の自称神の能力者もそこまで開かないだろうというレベルで、だ。
アレは飾りではなかったのかと、【彼】は改めて技術の進歩の素晴らしさを実感した。
「いやいや…触っていれば気が付くだろうに、分かんなくってもさ…」
其処ら辺りは初体験の本人でなければ分からないだろう。
まあ話を戻して問題はシャルロットである。
何はともあれ最低限のデリカシーとしてブツは隠せと彼は一夏にタオルを渡すが、どうやら湯舟にタオル着用で入るのはマナー的にダメらしく、仕方なく太ももを閉じて体育座りに近い体勢でブツを隠す両者であった。
…シャルロットがシャワーで体を洗い始めてから大分経った頃、先ほどの焦りも大分落ち着いたのか男2人は次第に足を自由にし始めほとんど平常心で寛いでいた。(彼はそんなに取り乱していなかったが)
「…やっぱりなぁ、大自然の絶景の中の温泉とか…」
ふと呟いた一夏に対して、彼は何を贅沢なと突っ込む。
ついでに、絶景が見たいなら後ろに霊峰が二つあるぞと冗談半分に言う…のだが、流石織斑一夏は本当に山があると思い込んで思いっきり背後を向いてしまった。
勿論、シャルロットと目が合う訳で…。
「う、うわぁあ!?すまん!」
「きゃぁあッ!?
…い、一夏のえっち…!」
…という、国民的アニメのようなやり取りが起きたのは想像に容易かっただろう。
馬鹿が。と【彼】はため息をついた。彼は片膝を立てて膝に肘を載せて頬杖をつく体勢を取った後にそう言えば…と一夏に箒が探していたぞと報告する。
「あ、そうだ…早めに上がって来いって言われてたんだった…」
一夏は何か気まずさを残して、ブツをタオルで隠しながらさっさと出て行った。
さて、浴場には【彼】とシャルロットのみが残った。
しかし彼は特に気まずくなるでもなく、特に何も気にしない様子で寛ぐ。
やがて(随分と長かったが)シャルロットも体と髪を洗い終えて、彼のすぐ隣で湯に浸かった。
随分近くないか?と彼は問う。
「やっぱりダメかな…僕が一緒だと…」
そんなことは無い、と彼は淡々と答える。
このやり取りを最後に互いにしゃべらなくなった。
「ねえ、潤?
少し話しておきたい事があるんだ…」
長い間、静寂が包む中…最初に喋りだしたのはシャルロットだった。
彼は黙って彼女の話を聞く。
「明日にも、男の子のフリをして生活するのをやめようと思うんだ。
もう一回手続きとかしてさ…今度は女の子としてここに残るよ」
彼はシャルロットの意思に対して、お前がそれを選んだならそれでいい…とだけ答えた。
選んだ道に後悔が無ければ、例え過酷な運命だろうとも…。
「所で潤の選んだ道ってさ…どんな道なの?」
急に自分の事を聞かれた【彼】はほんの少し驚いた。
そんな物を聞いてどうする、と。
「それは…昼間の戦いの時、何かに憑りつかれているみたいだったから。
きっと潤が決めた道がそうさせてるのなら――――」
なら、なんだ?と、再び問いかけた。
「――――…友達が不幸だと、こっちも辛いから」
そうか、とだけ…彼はむず痒そうに答えた。
【彼】は暫しの間考えた後に、自分の道を“消そうにも消せないものを、消して回る道”だと答えた。
「消す…?」
ああ、呪いをな…と付け加えて、彼は視線を落とした。
水面に映る己の目の奥…そこには消すべき呪いの一つが宿っている。今は自分だけだが、いずれこの不死の呪いが再び世界を蝕む事になるかもしれない…それ以外にも今回のデーモンといい、過去に全て片付けたハズの古い残痕達が目覚めつつある。
新しい時代を告げる前に、過去の遺物たちがそれを妨げようとしている。
自分たちの呪いは自分たちで決着をつける…持ち越させることはしない。
全てを闇へ、そして虚無へと葬り去る―――――――――――例え己でさえも。
「…その道を辛いって思った事、ある?」
何度もある。
だが、心が折れるたびに何度も立ち上がったのが今の彼だ…今更折れて停滞するわけにも行かない。
「後悔したことは?」
無いとは言わない。
それでも道が続く限り進む…それだけが彼の生き甲斐だった。
…本当に、聞いてどうするんだ?と再びシャルロットへと質問した。
彼女はただ「潤の事を知りたかっただけ…」とだけ答えて、より互いの距離を近づけた。
肌が触れるか触れないかぐらいにまで近づいて…その時彼は先に上がろうとした。けれどもそれは出来なかった――――いつの間にかその手がシャルロットの手によって握られていたから。
やめろ、等とは言えなかった。よくよく思い出せば彼女はまだ16か15で、母は恐らく最近病死している…まだ二十歳にもならない年で母との死別は堪えるのだろう。そうして送られた先と言えば子供にこんな工作員紛いのハイリスクな仕事をやらせる父親と継母である…流石にそれが分からない程人間性を摩耗したつもりもないと、彼はシャルロットが満足するまで微動だにしなかった。
しかし、自分の死した冷たい身体で何が出来ようかと…彼はため息をつく。
「…もう、居なくならないで」
シャルロットが小さく呟いた一言が、彼をより縛り付けた。
嘗てと同じ…あらゆる呪縛に身を固められていくのと同じ感覚――――だが、不快感はない。まやかしの温かさと甘さではないからだろうか…暫くそのような感覚に触れていなかった【彼】は遂にその理由を見つける事が出来なかった。
火とは違う温かみによって、灰が生まれた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
終わりは突如として始まりを告げる
竜が焔を吹き掛ける時、全ては終焉へと向かってゆく。
そして彼は思い知るのさね…誰も知らぬ小人がいかに短小で卑しい存在であったのかを。
神は死んでも尚世界の根にしがみついている。それら全てを丁寧に削ぎ落さない事には始まりは訪れない。
「シールドエネルギー90%低下!
今すぐ撤退しろ!沈むぞ!」
「あれは…
それも――――」
「僕は、絶対に許さない…」
「アイツは元々そういう奴なんだよ…前にしか行けない…!」
さあ、彼を焚べよ
「あんたは今後の要なんだからね。
そこはちゃんと覚えてるんだよ…そのすぐ物を忘れる頭で」
「薪の人、どうか…」
「例え武器が一本も無くても…そういう人間だからこそだ」
「マズイ…海水の温度が急激に上昇している…!」
そして彼らは思い出すのさね。
人の可能性が…成層圏のその先の様に何処までも果てしない巨大なものであったとね
そして…嘗て彼が何であったのかを
【注意:ここから先思いつきのギャグネタ及びキャラ・世界観の崩壊という蛇足がありますので、余韻を残したまま終わりたいという人はここでブラウザバックをお勧めします】
【成層圏にてボケるもの】
「お前ら流石に苔位は食ったことあるだろ?」※不死人
「いやいやいや食べないから」
「流石に苔を使った料理はウチでも聞いた事ないわね」
「そもそも苔って薬効ありますの?」
「毒消しにも止血にも使えるだろうが」※不死人
「潤の所の苔、可笑しすぎるって…」
「最近の悩み…持ち込んだ家具が多すぎてルームメイトの方に迷惑をかけてしまっている事でしょうか?」
「プルトップの開け方が分からない」※不死人
「え?」「え?」「え?」「え?」「え?」「え?」
「何だお前ら、知ってるのか?」※不死人
「…やっぱり佐々木ってポンコツな所あるよな」
「お前にだけは言われたくなかった」※不死人
「どうだ、この服イカすだろ」※不死人
「んー…何だろ、日本にそんなロゴの企業があったよね。確か、えっと…なが…「永〇園?」そうそうナ〇タニエン」
「お前によく似合うと思うぞシャルロット」※不死人
「えぇ…」
「いいか、どんなに運命に縛られんとしてもどうせ生まれ行くものは名前に縛られる。俺だってそうだ、世界で二番目のIS操縦者ってだけで特撮のサブヒーローを演じた俳優から名前を取ってられた。それも昭和と平成から一人ずつ、それぞれ一番最初の奴だ。妙なところだけ凝ってその実かなり薄っぺらい。
…名前ってのはソイツに呪いも祝福も与えられる、ちゃんと考えて付けろよ」※不死人
「いやゲームでそんな事言われてもなぁ…」
「モンスターに名前つけるだけじゃないの。
もうまどろっこしいから酢豚マンにするわよ」
「お前本当に酢豚しか頭にないのか?」※不死人
「捻り潰すわよ?」
(Maincraftプレイ中)
「誰だこんな所に家作った奴…」※不死人
「あ、待てそこは…」
「え…――――爆死したぞ?おい!」※不死人
「その家潤が作った家だよね?」
「あっ…」※不死人
こんな感じで不死人(イメージCV:チョチョーの人)がポンコツ晒してく感じでした。