(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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今回から最終章の臨海学校編はーじまーるよー。
今回の白文字は物語の根底に関わる裏設定を多く含んでいるので暗号を多く使わせていただきました。解読または察してもコメント欄に書くのは控えていただけると幸いです


朝っぱら。

  ◆――◆――◆――◆

この翼も、その炎も

竜が翼をはためかせて飛び去ってゆく。

行き着く先には絶望と破壊のみがあるだろう…。

恐れない、断ち切ってやる

  ◆――◆――◆――◆

 

 

…それは日曜日の朝の事であった。OVP14114225

 

 

不死人は眠らない、眠れない彼らがもし眠る時は世界の終焉だ。

という訳で【彼】はいつもの様に夜通しで一人称のゲーム…所謂FPSというジャンルのゲームを遊びつくしていた。最近は色の無い何かを見る事もめっきり減ったので夜更かしを疑われる機会も減って安心して宵っ張り(ナイトオウル)になる事が出来るというものだ。(日曜日なので夜更かししようが何ともないだろうが)

 

…そんな時に織斑一夏は起床した、現在時刻は6時54分である。

シャルロットがもう一度性別を偽ることなく再編入してからの部屋の引っ越しはとても早かった、転入生として“シャルロット・デュノア”が紹介されたその日には部屋の再割り当てが完了していたのだから。

という訳で今は一夏と【彼】による完璧な男部屋が完成しているのだ。因みにシャルロットはラウラと同室になったらしい。元々一夏と同室だった箒は誰と同じになったかは定かではない。*1

 

 

「ふぁ~…。

佐々木、お前まぁた朝っぱらからゲームやってるのかよ…」

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一夏の言葉はヘッドセットを付けた彼には届かなかった。

仕方が無いので直接近くまで寄ろうとした時、一夏は本来誰もいるハズの無い【彼】のベッドで何かが動いているのを見つけた。

それが掛け布団に繭のようにくるまっているのを見ると、戦慄する一夏はそっと【彼】の掛け布団に手を伸ばし、摘まむようにして引っ張った。

 

 

――――中に居たのは、すやすやと眠る全裸のラウラだった。

 

 

「う、うわぁあッ!?

ら…ラウラ!?」

 

「ん…もう朝か…あれ?兄さんは?」

 

「兄さ…ああ、佐々木なら此処に…。

――――――――ってそうじゃねえ!なんで俺らの部屋に居るんだよラウラ!しかも全裸で!」

 

 

騒がしいなと振り向いて、ようやく【彼】は一夏達が起きている事に気が付いた。

そして全裸のラウラを見るなりヘッドセットを外して、起きたのかと声をかける。

 

「起きたのか、って…知ってたのかよ」

 

先ほどから興奮が冷めやらぬ一夏に対して、あぁ…と彼は経緯を説明した。

どうやら深夜に彼女が寝間着で侵入してきては彼がベッドで一休みしているところに(寝ていると思ったのか)服を丁寧に脱いで布団に割り込んできたのだとか。

 

 

何がなんやら…という話である。

 

「どういう事だよそれ…ラウラどうしたんだよ?」

 

「いや、日本では妹は兄が入浴中に突撃したり全裸で布団に突撃したりすると聞いたのだが…」

 

彼は流石に度肝を抜くような日本の文化に純日本人である一夏に尋ねた。

本当なのか?本当なら相当ヤバくないか?と。

 

 

「いやないないない、多分それゲームとか漫画の中の話だから。

…というかラウラ、何で佐々木が兄さん何だ?実は血が繋がってたりするのか?」

 

彼は血のつながりについて即刻否定した。

 

「いや…別に血のつながりがどうこうという話ではなくてな。

どうやら私の姉に当たる人物がな、兄さんの事を弟と呼んでいるのだ…つまり私が妹という事になるのは不思議ではないだろう」

 

いや十分不思議だ、滅茶苦茶不思議だ、と彼は素早く突っ込む。

…そしてコントローラーとヘッドセットを置いて生まれたままの姿でいるラウラに、彼女の服を投げ渡した。いいから服を着ろ、と。

 

 

するとラウラが寝技を仕掛けようとしてきたので軽く体勢を崩しかけるが、ギリギリのところで合気紛いの技(ほとんど本能的なので技かどうかも怪しいが)を使い逆に押し返した。

 

「むう…流石だな兄さん」

 

「いや流石とかじゃないって…絵面がヤバいから服を着てくれラウラ!

そして佐々木その押さえ方はいろいろマズイって!絵面!」

 

少々朝っぱらから煩いが一夏の言う通りである。

彼も確かにと納得して再びラウラに服を着るよう説得した、うつ伏せに…両手を押さえつけたままで。

人が来たらまあ、勘違いされるのは目に見えている。

 

「わざとやってるのか佐々木…!

先に拘束解けよ!じゃないと着替えも何もないだろうが!」

 

彼は、あ…といった表情で拘束を解いた。

 

「そうか、着替えづらいと思ったらそういう事か」

 

「どうしてそうなるんだラウラも!

なんだ?俺がおかしいのか?なあ!」

 

 

そう叫ぶ一夏に対して【彼】はお前は何も間違ってはいないが煩いと答えた。

一夏は「ああ、すまん…」と先ほどの勢いを忘れたかのように謝った。

 

 

 

 

…そして自体は更に混迷を加速させる。

突然部屋の扉がノックされた。

 

「潤、じゅーんー、少し聞きたい事があるんだけどいいかな?

入るよ―――――――

って、えぇ!?ラウラ!?ここに居たの!?しかもどうして裸なのさ!」

 

部屋に入るや否やラウラに驚くシャルロットに対して、こちらが聞きたいと呆れ半分に言う【彼】は、それと同時にラウラに服を押し付けている。

 

 

今度こそ着替え始めた彼女の近くには、咄嗟に視線をずらしたまま直立不動の状態を保っている一夏がいた。

 

 

「…本当にどういう状況なの?これ」

 

だから俺に聞くな、と彼はウンザリとした声で発した。

学園でもトップクラスのフィジカルを誇る彼も今回ばかりは相当消耗しただとかしていないだとか。

 

 

 

 

 

 

まあそれはそれとして、彼はシャルロットに要件を尋ねた。

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「え?あぁ…取り合えず食堂に行かない?

行く途中で話すからさ」

 

彼女は多少強引に【彼】の腕を引っ張り両者とも部屋を後にした。

…そして入れ替わるように箒が男部屋に入ってくる。

 

 

「一夏、朝稽古を始めるぞ…日曜だからと――――何故ラウラがいる?」

 

「俺が聞きてぇよ!」

 

「…む、箒か。

所で兄さんは何処だ?」

 

 

これが今回のイザコザの全貌である。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆    ◆  ◆  ◆

 

さて、先ほどのやり取りは現在から大体一時間程前の出来事だ。

今【彼】及びシャルロットはIS学園から日本国の本土へと続くモノレールに乗っている。

 

…というのも、シャルロットの要件というのが買い物の誘いであったからだ。

どうやら彼女は臨海学校に使う水着を持っていないらしく、しかし一人で行くのも“何か”寂しいという事で同じく水着を持っていなかった【彼】を誘い、結果的に一緒にお買い物をすることになった…という訳である。

この時【彼】はふんどしがある事を伝えたのだが、当然悪目立ちするのでシャルロットは「ダメ!絶対ダメだから!」と念入りに釘を刺した。まあ彼自身、誰が履いていたのか定かでないふんどしを履く気にはならないのだが。(何故持っているかは聞いてはいけない)

 

 

彼はずっとモノレールの窓から景色を見ていた。今までに体験したことも無いようなスピードで移り行く景色…それがとてもとても物珍しくて、じつとその先を見つめて一言も発せずピクリとも動かなかった。

 

「―――――――――――――――――…ねえ、潤?じゅーんー!」

 

余りに動かないので寝たのかと勘違いされた彼はシャルロットにグラグラ揺らされる。

急激に目覚めたように振り向いたその先には分かりやすくヤキモチを焼いた彼女が居た。

 

拗ねる彼女に悪かったよと頭を撫でて謝罪するも、大分長い事話をスルーしてしまったらしくそっぽを向いたまま一切喋らなくなってしまった。

 

 

困り果てた彼はその時、突如として妙な視線を感じたのでチラリと、向こうに感づかれない様に視線の出所を覗く。

――――鈴音とセシリアが、何故か刑事ドラマよろしく張り込んでいたのだ。

 

「…何アレ、親子?兄妹?」

 

「相も変わらず同い年とは思えませんわね。

…まあ彼方は彼方でいいとして、私たちは――――」

 

「ええ。

――――って、ちょっとセシリア、アレ見なさいってアレ…!」

 

「何ですの?あまり急かさないでくださ―――――――――――――――――――いッ!?!?」

 

どうやらお目当ては自分らではなく他の誰かだと悟った【彼】はそのまま彼女らを放って置く事にした。どうせ、どうせ!どうせ!!一夏絡みだろうし、というか一夏もこのモノレールに乗り込む所を見たわけだし。

お相手は恐らく箒だろう…一夏が買い物に“付き合う”と約束したら殴られたと言っていた事を思い出した彼はその約束でも果たしに来たのだろうと予想する。

 

 

 

まあそんな事は心底どうでもいいので、取り合えずへそを曲げたシャルロットの機嫌を取る事に専念することを決めた彼だった。

あーだーこーだと色々交渉すものの、対人関係に乏しい彼は年の功が全く役立たずに手を焼いていた。

 

「ふん…潤なんか馬に蹴られちゃえばいいんだ…」

 

彼は馬(刑吏のチャリオット)に踏まれた上に轢かれた事があるので蹴りまで喰らっては死因をコンプリートする羽目になる…そんな惨状を一瞬たりとも想像した彼は勘弁してくれと半ば懇願しながら説得を続ける。

 

 

 

 

結局、降りる駅に到着しても期限を直せずにいたが何だかんだで「手を繋ぎ続けること」を条件に何とか許してもらえた。この時【彼】はそれでいいのかと戸惑ったものの、シャルロットに有無を言わさず手を繋がされた事も記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

で、以下はそれを見た色々地獄組の反応である。

 

「…何ですの、アレ。

私達への当てつけか何かですの?」

 

「そうよ、きっとそうよ…どうせあたし達を、一夏に忘れられたあたし達を嘲笑っているのよ。

いいわよね…シャルロットは…」

 

「ええ…どうせ私達なんか…」

 

「あたし達は、どうせ日なたの道を歩けないわ…」

 

 

 

 

「何だ貴様ら、随分と沈んでいるな。

――――あ、兄さんだ」

 

「ッ!――――ら、ラウラ!?何故ここに!?」

 

「何しに来ましたの!?」

 

「別に何もしない、ただ水着が学園指定のスクール水着しかなかったので買いに来ただけだが…兄さんが居るなら着いて行く事に――――」

 

「待ちなさい!貴方も私たちと一緒に地獄に落ちてくださいまし!」

 

「そうよ!私達の姉妹に成りなさい…!

あんただけ近づけるなんて認めないわ!」

 

「なッ…!離せ!」

 

 

 

 

 

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街は思う以上に煌びやかなものであった。

久しく見てこなかった人の営みを感じられる風景を見て、彼はただその情報量に圧倒されていた。

 

IS学園もそうなのだが…制服という規制のないここはそれ以上に圧倒的だ。

 

 

だが、いつまでも圧倒されているわけにはいかない。

ここでまた我を忘れていると何時シャルロットの機嫌を再び損ねるか分かったものではない、それは二度と御免だと【彼】は彼女に提案した…水着の前に何か買うのか?と。

 

「何か…どうしよう、特に考えても無かったから。

――――あ!それじゃああのお店、行ってみない?」

 

シャルロットが指さしたのは…なんてことは無い、それっぽい雰囲気のアクセサリーショップだった。

彼は年頃らしいと思いながら、流石にここで買い物をする程の持ち合わせは無い事を告げるものの(流石に)シャルロットも「見るだけだよ」と答えた。いくら生まれが大手企業の社長の一人娘とは言え前の一件で完全に親子の関係及び会社の関係を断ち切ってしまったのでそもそもの全財産自体少ないだろう――――と言いたいところだが何故かデュノア社は支援を続けているそうだ。

 

 

…因みに【彼】の全財産は独自でプロご用達なヘッドセットを購入出来たりする程度にはお小遣いを貰っているものの、しかしそのヘッドセットを3つ4つ買ってしまったお陰で今回水着を買ったら当分贅沢なことが出来なくなる。

溜まりに溜まった潤沢なソウルを湯水の様に使っていた感覚が離れなかった結果である。

 

 

 

そんなことはさておき、だ。

アクセサリーショップで【彼】は特にめぼしい物もないので茫然と歩く隣で、やはり年頃らしい反応を見せるシャルロット。そんな彼女を見る彼の眼は自分にもこんな時期があったのかと最早朧気どころかほんの微かな光のみの記憶を懐かしむ老人のソレであった。

 

…そしてまた妙な気配がすると思えば、今度は一夏がどうやら旧友らしき人物と会話している光景が窓越しにあった。

しかしそれが気配の元ではなく、もう少し辺りを見渡していた後――――尾行中のセシリアと鈴音の二人と目が合ってしまった。

 

 

 

彼は必至に、そして静かに気が付いていないフリをした。どうせ自分はボケ老人の類か何かと思われているだろうとほんの一欠けらの望みに全てを掛けて全力で尾行組を無視した。

 

「…?

どうかした?潤」

 

彼は何でもないとシャルロットの質問に答えた。

 

 

…そしてあまりに展示品に興味がないので何か適当に話題を振ろうにも、肝心な話題が出てこない。

しょうがないので無理に話題を振らずに結局彼女を見守る事に専念しようとした―――――――――――その時に再び妙な気配を感じた。

 

またあの二人かと思ったが、見渡しても見当たらない…その時視界の端で何かが不自然に動いた気がした。

咄嗟に視線を向けた時には既に姿を消していた。彼はただの買い物が厄介な事態を引き寄せる結果となってしまう―――――――その予兆を感じ取っていた。

 

 

そして気が付けば店内を一周しており、シャルロットも気が済んだようである。

【彼】はそろそろ水着を買いに行く事を提案して、彼女もまたその提案を了承して共に水着販売店へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「…さて、あの二人から抜け出したのはいいが。

兄さんとシャルロットは何処だ…?」

 

 

 

「一夏さんと箒さんは何処ですの…?

それにラウラさんまで…」

 

「完ッ全ッに迷走してるわね、あたし達」

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、迷走地獄三姉妹の事はどうでもいいとして今は【彼】とシャルロットの水着選びだ。

今現在の結論から言えば彼の水着は物凄いスピードで決まった。

 

というのも、彼はいちいちこんなことを選ぶのに時間を掛けていられないと即座に男物の水着をザっと見て、一番無難かつピンときたデザインを手に取り即決したのだ。

 

稲妻なんかよりもずっと早いその決断にシャルロットはもう少し考えることを勧めたが、彼の考えは変わらず果ては男の仕事は決断だとか適当な出任せを言って我を押し通した。因みに灰色のダボダボした感じのズボン系の水着であった。

 

 

…で、今度はシャルロットの水着の番である。

流石に彼女はしっかりと考えて選ぶので、【彼】の様に魂の叫びに100%従って決める事は無かった。

 

 

「うーん…。

これとかどうかな?」

 

シャルロットは水着を一つ手に取って彼に見せるが、彼は女物の水着の良し悪しは分からないという。

 

「そうじゃなくって…似合ってるかな?って」

 

この場合流石に正直な意見を丸ごと言ってしまうのはナンセンスだとは彼も知っているので、無難な答えを返した。出来る限り表情豊かに答えて…無関心だと思われないように。とは言え今手に取っている水着は中々シャルロットに似合っているのも事実だ。

 

「良かった…それじゃ試着してみるから、ちょっと待ってて」

 

そう言われて彼はカーテンの閉まった試着室の前で腕を組み壁に持たれかかった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――まただ、今度はかなりはっきりと気配を感じる。

先ほど自分らを監視していたであろう気配が近い証拠だ。もしかするとここで仕掛けてくるのか?彼は神経を研ぎ澄ます。

 

こんな所で戦う羽目になるのは御免だが、相手はお構いなく来るだろう。彼は“ポケット”より何時でも武器を取り出せる構えを取る。

 

だが流石に妙に気配が駄々洩れであることに違和感を感じた。

刺客であればこんなアホっぽく気配を出さない、もう少し殺してくるだろうに。それとも対面した戦闘に余程の自信があるのか?彼は思考も同時に張り巡らす。

 

 

 

横から人影が見えた、今度は見逃さない…その人物の全体像を【彼】は完全に捉えた。

 

「お前が佐々木潤、か」

 

それは日本人系の顔立ちをした男だった。

伸長は約172から173センチ、190近い【彼】と比べると小さいが日本人的には標準的な伸長である。

 

…どうやら敵意は無いようだ。彼は構えを下ろしてその男の話を聞く。

 

「俺は………七瀬、六多七瀬(ムタ ナナセ)だ。

ある男から伝言を預かっている。“この店の裏路地で待っている、来るかはお前次第だがよく考えておけ”、だ…」

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一方的に話す七瀬なる男に対して【彼】は問う。何者だ?と。

 

「…それを言う事は出来ない。

取り合えずこれだけは言っておくが…出来れば行った方がいい、お前の役に立つはずだ」

 

どうも要領を得ないが…まあ、何か警告しに来ているとでも言いたいらしい。

幸い七瀬からは嘘つき特有の嫌な雰囲気はしないので(要件のある男次第だが)危険という事はあまり無いだろう…ゼロパーセントという訳でもないが。

 

 

彼はシャルロットの着替えを見てから行くと七瀬に伝えた。

 

「そうか。大切にしろよ、自分を想ってくれる人は…

 

七瀬は最後に小さく呟いて、不愛想な表情のまま去って行った。

普通なようで何処か不自然で不気味であった…彼は七瀬という男をそう評した。というより七瀬という名も恐らく偽名だろう、何となく自分の名前に慣れていない感覚があったのだ。

 

 

 

…その時、試着室のカーテンが開いた。

当然だが水着姿のシャルロットがそこに居た。

 

「どうかな…?」

 

彼女の水着姿は美しいものだった…というよりシャルロット自身何を着ても似合うような美貌の持ち主なので似合う似合わないを聞くのは野暮な事であると彼は感じていた。彼は良いじゃないかと絶賛すると、彼女の顔は元々ほんのり赤かった顔を更に赤らめて「ありがとう…」と呟いた。

 

ここで彼は用を足してくると言って一度彼女と離れる事を告げた。

 

「うん。それじゃあ僕は着替えて待ってるね」

 

再びカーテンが閉められたのを確認して、彼は店を出て裏路地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ?可笑しいな」

 

「どうしたのだ一夏?」

 

「いや、確か佐々木が居たような…」

 

「気のせいだろう。

そんな事より水着を選ぶぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――裏路地には誰も居なかった…が、何もない訳ではなかった。

其処に会ったのは太陽霊のサイン、つまり要件のある人物はコレを使って自分を呼べと申しているのだ。

彼の中で警戒度が非常に狂い始めた…何がしたいのだろうか。

 

彼は何はともあれと召喚を開始する。

…そして一切のタイムラグも無くサインからスーツ姿の男が出てきた。どうやら暗い偽りの指輪を使っているらしい。

 

 

 

…次の瞬間、彼は驚愕することとなった。

 

 

 

「久しぶりだな…。

七瀬の言う通りだ、大分様変わりしている」

 

……そうだ、その声に非常に聞き覚えがあったのだ。

間違いない…何時ぞやの獅子兜のISの声である…!

 

【彼】は一気に警戒度を跳ね上げ、静かに…だが荒げた声で何のつもりだ!と獅子兜の男を責め立てる。

 

 

「ハァ、そう怒るな…といっても以前アレだけやっていれば無理もないか。

――――別に俺は戦いに来たわけではない。というか太陽霊では戦うもクソもなかろうて。ま、お前次第だが」

 

戦いに来ていないという言葉を信じていない彼は警戒を緩めない。

…その様子に獅子兜の男はまたため息をついて「分かった」となだめる様に語る。

 

 

「先ず俺…いや、俺たちが何なのかを話す。

俺達は――――お前と同じだ、火継ぎの時代の残滓漁りに勤しんでいる“不死”達だよ」

 

この男が不死である事には驚かなかった。

そんな気もしていたし、何よりそれを仄めかす発言をしていた。

 

 

問題はそこではない、彼は獅子兜に問いかけた…俺の何を知っているのかと。

 

 

「何を……うむ。聞いて、少し会って、今話してる…それ位しかお前の情報は無いな。

我々はお前の“保護者”とも面識があるのでな」

 

“保護者”…その言葉を聞いた瞬間彼は非常に落胆した。

またそういう事をする、と。それについて獅子兜も思うところがあるようで「まあそういう人物だ」と諦観を示す。

 

 

「で、だ。

先も言ったように…我々はお前と違って組織として行動している。

ある研究組織を基にな…その組織は十数年以上前に壊滅したが、当時のリーダーと優秀な研究員が残っていて力を貸してもらった。

研究と重なる部分があったようでな…利害の一致という奴だ。

―――――――――こんなものでいいか?」

 

ともかく敵意の無い事を悟った【彼】は獅子兜に要件を聞く。

 

 

 

「そうか。

要件は…簡潔に言おう、“竜”には十分警戒しろ、出来るならば近づかない方がいい」

 

また、抜けた言葉だ…彼は即座にそう思った。

しかし彼にはどうも覚えがあった、とりわけ“竜”は火継ぎの時代云々ではない、つい最近にその手の情報を“保護者”経由で送ってもらったばかりだ。

 

彼は獅子兜に問うた、もっと詳しく言えないか?と。

 

「…すまない、出来ればそのまま察して貰うと助かる」

 

やはり、か。彼はお決まりのパターンに頭を抱える。

彼にとっては理由まで話してほしかったが、向こうにはかなり折り入った事情があると見える…それこそ“保護者”が関わるのだから相当であると感じていた。そして自分の察しの“その先”も在り得る事を彼は悟った。

 

 

「…俺からは以上だ。

お前が…道を間違えない事を祈る」

 

獅子兜が【決別の黒水晶】を手にして使用する直前、【彼】は最後の質問をぶつけた。

…あの七瀬という男は、何時ぞやの紙飛行機か?と。

 

 

「紙飛行機…ふっ。

いや、アレはクロウという別の男だ。七瀬は…そうだな、彼も我々と同じ“不死”である。それだけだ」

 

一頻り質問に答えた獅子兜は「では…」と今度こそ決別して消えていった。

彼はそれを見届けて、再びシャルロットの所へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

彼には試練を告げる“鐘の音”が聞こえていた。

それもかなり大きな音で…まるで古竜の頂の大鐘楼のソレのような、非常に大きな嵐を呼ぶ鐘の音が。

 

しかしそれも何時もの事だ―――――――――この時はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼はシャルロットと合流した時、奇跡的な事態に直面する。

 

「…潤!遅かった―――――――――あ」

 

「一夏さん一体どこへ―――――――――あ」

 

「全く人が多くて面倒くさ―――――――――あ」

 

「結局決められなかったじゃないかほうk―――――――――あ、やっぱり潤だ」

 

「なんだ?何かあったか―――――――――あ」

 

「何処なんだ、何処に居るんだ兄さ―――――――――あ」

 

 

あ…、と皆同時に声を上げる。

そうだ。たった今外出していた全ての専用機組(+α)がこの水着販売店で一度に合流してしまったのだ。

 

 

この後帰りは皆で帰った。

 

 

 

*1
単純に【彼】が興味無いとも言う

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