(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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今回は海回だからね…。


水没。

  ◆   ◆   ◆   ◆

嘗て別たれた事で今を手にした

「…バスが来たぞ」

 

「ああ。

このまま…出来ればあの男以外が全てを決してくれればいいのだが…」

 

「全くだ、日常を失う上に後戻りの出来なくなる力なんて無い方がいい」

 

「その通りだ。

だがもし…いや、もしもの事を話すのは少々ナンセンスだが…もしも、奴のソウルが目覚めてしまう事があれば…」

 

「そうなってもあの男なら大丈夫だろう」

 

「随分肩を持つのだな、彼の…」

 

「あぁ…少し、似ている気がするんだ…」

 

「…」

 

「…あの男なら光を追い続けてくれるさ。

きっとな」夢幻だとしても

 

「――――…。

…我々は光も闇も、どちらにも偏った時点で終わりだ。

命に敗北することになるだろう。唯一運命に抗うとしたら…それは光と闇、両方を受け入れて飲み込むか…前例は無いが」

燃ゆる漆黒の翼

「…」

 

「だが、それでも不死たる者というのは――――っ、まあいい。もしも考え得る最悪の事態へと進んだら…元の計画通りに進めるだけさ」

 

「…ああ」

 

 

 

「所で、店の仕事はいいのか?七瀬」

 

「今日は休みだ」

 

「そうか」

 

  ◆   ◆   ◆   ◆ 

 

 

 

天を仰いで見上げるその空は、いつからの物か

やがて破滅が翼で駆けるその空は…

 

 

 

 

 

 

 

 

…【彼】は水辺が嫌いである。

大体の場合は水没し、良くても足を取られ凶悪な怪物とギリギリの追いかけっこを強いられ、そして運が悪いと食われるか潰されるか…引き裂かれて死ぬ。

 

重い鎧を着込んだまま足を滑らして海に転落した時は地獄の苦しみを味わった、いくら足搔けど足搔けども動けず、そして浮けず…空気を水圧に搾り取られて肺をギリギリまで圧迫され、全身すら締め付けられたかのように死んでいくのだ。

 

 

そんな経験を数え切れぬ程した彼にとって海は忌々しい以外の何者でもなかった。

しかし、見ているだけならばこの魔性の塩水はただ優美であるだけ。遥か遠くで見るだけならば湖獣だって動物園の生き物と変わりは無く、人を食うと言われるロスリックの城も立派な建造物であるだけだ。

 

牙を持つものは決まって外見だけは素晴らしく良い…彼はそう昔を懐かしむように思っていた。

 

…そもそも彼はクラスメイトと混じって水辺ではしゃぐ程の精神年齢ではない、年寄りの彼にはそういったフィジカルな遊びがどうもやり辛いのだ。水辺を走り回ってどうする?水を掛け合うのが面白いのか?乾ききった【彼】はそんな事で楽しめる若者たちが羨ましかった。

 

バス内のカラオケ大会はそんな年を気にせず少々楽しめたが…それとこれでは話が違う。

 

 

 

そうだ、今一夏が鈴音に肩車させられて展望台代わりに使われているのも…。

――――その瞬間彼に嫌な予感が過る、まさか定員超過で自分もやらされるのではないか?

 

正直、今はそういう気分にもなれない…とことん今に馴染めぬ男だ。

 

彼は咄嗟に一夏達から目を背けて、偶々近くに居た蟹と戯れ始めた。

そして【彼】は気付く、向こうの岩場にこんな蟹たち…それ以外にも彩り豊かなが生き物が多くいることに…それらを眺めている方が自分らしいと、彼は立ち上がって岩場を目指した。

 

 

ただ独り歩くうち、彼は灰の湖の風景を幻視した…そこには波打つ音と女子生徒達の声こそ無かったが、裸足で砂浜を踏みしめる感覚が嘗ての記憶を呼び起こす。湖獣がいきなり飛来して来ては襲い掛かってきたあの時の衝撃はいつまでも忘れられないだろう。本当に何故、牙をむく獣に限ってあれほど美しくなってしまうのだろうか。

そして其の先に待ち構えていた物と言えば…竜だ。

蠢く現世、万物は幻惑か

 

 

そうだ、あそこには“竜”がいた。

只々胡坐を掻いて何かを待つように佇む【岩の古竜】が。

喰らったものが目覚め出す

彼は前に獅子兜から聞いた言葉を思い出す、“竜”に気を付けろ…と。

鱗など、ただのこけおどしに過ぎない

正直なところ、この記憶とあの警告が結びつく事はないだろう。本来ならばそうだ…しかし彼には(警告を受けた時もそうだが)“竜”に関しての懸念があった。いつ運命が暴れだすか分からない。だが…そうだとしても彼は荒れ狂う運命を鎮めなければいけない宿命を背負っている。

彼はまた無情に語るだろう、いつもの事だと。

 

 

 

 

――――再び現実に戻された時、彼は大分歩いた事に気が付いた。

暫く見なかった…色の無い何かと昔の記憶だ。

照らし出す女神の横顔に祈れ

彼は来た道を引き返すことにした…そして彼女らに混ざりに行くのだ。

 

 

「あ、佐々木君!

一緒にビーチバレーやろうよ!」

 

「わ~い、じゅんじーも来た~」

 

【彼】はクラスメイトの誘いに快く乗った。

しかし彼は、肝心なビーチバレー及びバレーボールなるものが分からない。

 

という訳で先ずは見学しつつクラスメイトからルール説明とサーブ・レシーブなどのコツの説明を受ける事にした。

 

 

現在試合は一夏・シャルロット・ラウラの3人、つまり専用機組対その他の生徒…といった状況であった。

 

皆して動きが良い…。

シャルロットもそうだし、ラウラも軍属なので中々の動きであったが、一夏もまたアタッカーとして中々の動きをしていた。

普段の七転八倒具合からは想像もできない有能っぷりだった。

 

思えば一夏は戦闘センスは未熟だが、運動神経含めて素質自体は高い…経験が無いだけだ。

それさえあるのなら、この活躍も当然と言えるだろう。

 

 

しかし彼には一つ妙な弱点があった…どうも災難に魅入られている。

その不幸が、どうにも幸運と見分けられぬのが何よりも悩ましい。

 

 

 

一瞬だけ、相手の女子生徒のビキニがズれ、あまり見えてはよろしくないものが見えてしまった。一応言うと、それ単体の大きさは控え目で…尚且つ綺麗な桃色であった。

 

そして一夏はソレに目を取られて惑わされ、スパイクが顔面にクリーンヒットしてしまったのだった。

【彼】がアクシデントの瞬間から、想定していた自体そのものが現実となった。

 

 

 

スパイクを行った女子生徒は慌ててビキニを直し、シャルロットとラウラは急いでぶっ倒れた一夏に駆け付けた。

当たり所がどうにも悪かったようで――いや、ただ単にクラスメイトのソレに興奮しただけだろうが…――妙な昏睡状態に陥っている。

 

―――――――――ここで【彼】が出撃を宣言した…という訳でダウンした一夏に代わって彼が専用機組に入る事となった。

大まかなルールと動きは既に覚えた。

 

 

サーブは相手チームからであった。

取り合えず彼は軽い気持ちで軽い構えを取って、相手のサーブを待ち構える。

 

…が、想像以上に鋭かった無回転のサーブは前衛の彼の顔を掠めてすぐ後ろに着弾してしまう。

所詮はお遊戯…そんな軽い気持ちが【彼】の運動神経を鈍らせたのだ。

 

 

 

彼の中で、何かに火が付いた。

それは“大人げない”なんて言葉を何処か遠くへと吹っ飛ばす業火の勢い。

 

 

 

 

一先ずミスを詫びてボールを回収し、相手チームに投げ渡して試合は再開される。

…この時の彼は、先ほどとは比較にならない程本気だった。

 

先ほどと同じキレのある無回転サーブ…しかし今回の彼は対応が違う!

 

彼は自分が持つ身体の武器を総動員した、パワーにスピード…そしてそれらを完全無比に制御する経験と理性、そして力の流れを完璧に把握する学年最年長故の知恵!それらが【彼】という驚異的なアスリートを生み出す!

 

 

着弾寸前のサーブは彼の瞬発的なレシーブで掬い上げられ、それを先ずはシャルロットが繋ぐ。

詰めは勿論【彼】だ、189センチという学園内でも類を見ない高身長はより高所からのスパイクを可能とした!彼の長年あらゆる得物を振るい続けた剛腕から放たれるスパイクはまるで旧式カノン砲の砲撃!ボスーンッという強烈な音を立てて着弾したそれは誰の目にも止まらなかった!

 

…カノン砲は流石に誇張し過ぎたが、強力であった事に違いは無い。

 

唖然とする相手チームを他所に【彼】は初体験ながらに完璧に1点を決めた喜びを雄叫びで表す。

 

 

 

 

―――――――――【彼】という鋼の牙を手に入れた専用機組のここからの勢いは、それはもう凄まじかった。

彼の凄まじき力は主に守備に置いて発揮された。というのも流石にあのスパイクはけが人が出るとの事(あとズルい)で封じられてしまい、あえなく後衛でラウラやシャルロットに攻撃を繋ぐこととなってしまった…が、それでも相手チームはその鋼の牙を崩すには至らなかった。

 

「次は私だ…こっちだ兄さん!」

 

「頼んだよラウラ!」

 

何処へサーブ・スパイクを放とうが彼はレシーブを決め、アタッカー二人へと(多少粗いが)上手に繋いでいく。

しかし相手も「八月のサマーデビル」だか何だかと名乗るだけあって先ほどの殺人スパイク程ではないシャルロットとラウラのスパイクは上手にレシーブしていく。

 

 

そして繋いだトスがスパイクへと繋がる瞬間、シャルロットがブロックに飛び出す…が、多少指先を擦るだけのソレは大きく弾道を上方向に反らしただけで相手コートに押し返すには至らなかった。このまま着弾すれば相手チームの得点だ………が、鎧を纏っていない時の【彼】の瞬発力を侮ってはいけない。

身軽さによって、その五体の力はそのままスピードになり、あっという間に着弾地点にたどり着く!

 

その場の判断で大振りなレシーブによりそのまま相手コートへとボールを押し返す!

 

 

「私行く!」

 

「待って!多分アレ、アウト!」

 

自称八月のサマーデビルこと谷本が弾道を読み、仲間のレシーブを止めた…が、着弾地点は意地の悪い事にギリギリコート内に入るような場所であったため、そのまま専用機組の点数となった。

 

長い長い、1点を争う攻防はこうして幕を閉じて次の一点の争いへと繋がったのだ。

 

 

 

―――――――――ここで相手チームに、神の牙が宿される。

 

「ほう、ビーチバレーか」

 

「楽しそうですねぇ」

 

 

ここに来て、なんと谷本サマーデビルと交代して千冬女史が相手チームに参戦したのだ!

ついでに山田先生も参戦することになり【彼】が代わろうとしたが、なんと千冬は【彼】を対戦相手として指名し、その瞬間大激戦が約束される。

 

 

鋼の牙と神の牙の攻防…それは神話の大戦を思わせる程に圧倒的な試合であった!(誇張表現)

神の牙(千冬)のパワフルかつ何処に飛ぶか予測させない駆け引きを交えたスパイクを、鋼の牙(【彼】)はそれに惑わされず発射の瞬間を見極め確実に神の牙の一閃を断ち切らんとレシーブする!

その着弾音はまるで雷鳴!しかし彼の肉体は何でもないかのように無傷!そのバレーボールに慣れてきて大分マイルドに上げられたレシーブは最終的に山田先生のスパイクへと繋がるが即座に千冬女史がブロック!自軍のコートへと押し返されたものの【彼】の跳び込みレシーブによってネットを山なりに大きく飛んで相手コートへと押し出す!

 

「流石だ、佐々木…!」

 

「来るよ!」

 

再び向こうがトスを繋いでの神の牙(千冬)による強烈スパイクを放とうとする!しかし鋼の牙(【彼】)はその直前でブロックを試みた!

これには流石に面食らった彼女はどうにかブロックをすり抜けたもののスパイクの威力が半減し、それをシャルロットに拾われ【彼】が繋ぎ、最後は山田先生のそれなりに強いスパイクで専用機組の点数となる!

 

 

 

 

 

この攻防は長く続いたが、最終的に織斑千冬率いるチームが最後の最後で決定的なスパイクを決めて専用機組の敗北が確定した。

…その後の成り行きで【彼】は海に入る事となった。

 

抵抗が無かったわけではないが、先ほどのビーチバレーの興奮が彼の慎重さを打ち消していたのだ。彼は念のため浮袋を手に海へと臨んだ…この時周りのクラスメイトにカナヅチを疑われたが、彼は不自然に縹緲とした様子で誤魔化した。必要以上に何でもないと誤魔化したので泳げない(というか泳ぐのが怖い)のが若干筒抜けであったが。

そして誘われるがままに浅瀬に踏み入った―――――――――その時だった。

ここから始まる

彼の足は突然謎の深みにはまって身動きが取れなくなり、その瞬間今日一番の波が襲来!彼は波に攫われ海中へと引き込まれた!

…幸い、鎧の類は身に着けていなかった上に浮袋を持参していたのでどうにか地力で浮上し、どうにか地上へと這い上がる事が出来た。この時ばかりはクラスメイトも肝が冷えたが【彼】が何事も無さそうだったので、彼共々笑って済ませた。

 

 

先ほどは何かの偶然だろう、そう思って再び浅瀬に足を踏み入れた―――――――――その瞬間、産卵のために訪れたオサガメ(色々可笑しいが突っ込んではいけない)が彼の足に思いっきり激突して彼は頭から海中にドボン…そして今度は先ほどよりも高い波によって彼は深い海中へと引き込まれてしまった。流石に2度も彼の水没を目撃したクラスメイト達は、今度は浮袋もなく危ない体勢での水没だったために今度こそは彼の生死を疑った。

…しかし偶然にも波によって再び【彼】は陸へと押し返され、一応は事なきを得た。

お前の呪いだ

 

もう水辺には近寄らない…そう誓った彼だった―――――――――が!!!なぜか飛んできたキツツキが激突した(最早考えるな、感じろ)事によってメインブースター(?)がイカれ、不規則な軌道で宙を舞った後に今度は海面に強く叩きつけられて三度水没する。この時鼻や口から海水が逆流してしまい空気がほとんど奪われた状態となっていた。流石に今度こそは自力も偶然も見込めないため、教師たちも総出で【彼】の救出が行われた。

メルツェル織斑姉弟のファインプレーにより彼は引き揚げられたが、【彼】は心身共にダウン…結局ラウラとシャルロットが差し入れのかき氷やスイカを持ってきて慰めに来るまで非常に沈んだ表情であった。お前の魂は壊死するべきだ

 

 

 

この日から【彼】にとって“河童”及び“水没”は禁句となった。

 

 

 

 

 

 

 

すべてしずめ

 

  ◆   ◆   ◆   ◆

 

「おう、待たせたな」

失敗作が現れた

「遅かったじゃないかクロウ。

…おい、さっさと枝を使え」

 

「悪い悪い。

――――なあ、これ外見は相当間抜けだよな?」

 

「間抜けだと思われる以前に気付かれんさ。

それこそ…あの女にも、な」

 

「あの女?…ああ、向こうの。

織斑千冬、ブリュンヒルデ――――世界最強ね、それに気付かれないんじゃ大丈夫だろうよ。で、その隣のは?」

 

「篠ノ之箒…あの博士の妹だ」

 

「ほう。何か話しているようだが…話題も博士か?」

 

「知らん、指向性マイクなんざ持ち出せんからな」

 

「ISは?」

 

「コアの反応を探られたら厄介だ。

…とは言え、あの2人の話題なんざこの時期博士以外にありえんだろうさ」

 

「ふーん…まあ、実の妹と“白騎士”だもんな。

――――というか白騎士のコアは何処にあるのか見当が付くのか?」

 

「いや、全く情報が入らん…いつも通りだ。

あの“灰燼騎士”に在るとも考えられん…ともすれば、まさか…」

 

「まさか、って…白が付くからって白式だとか言わないよな?」

 

「バカが…一応それなりの理由があるのだが、到底推測の域を出ない。

何せ不確定な部分が多い。まさか…あの少年が…」

 

お前は闇がほしいのだろう

 

「―――――――――ま、なんだっていいさ。

それよか“竜”だろ?どうなんだ?」

 

「…それなんだが、どうも最悪の事態になりかねん気がしてきて落ち着かないんだ」

 

「何か不安な要素でもあるか?」

 

「いや…そういうのじゃない。

何となくだが、そう感じる」

 

「そりゃ、あんたが疲れてるだけだ…休むか?他の奴に代われよ」

 

 

 

「だといいが。

―――――――――――――――おい、クロウ…!」

 

「なんだよ急に―――――――――――――――ッ!?」

 

「…アレ、気付いているように見えるか?」

 

「いいや…だが感付いてはいるように見える」

 

「――――あの女が、気のせいだと見逃すと思うか?」

 

「多分、な…擬態している訳だし。

だが絶対そうだとも言い切れん。ここは大事を取って…」

 

「ああ。

彼女が此方を視認出来ない位置まで遠のいたら移動するぞ、他への連絡はその後だ」

 

「了解」

 

信用するな

 

 

「(さて、先ずは……――――………か)」

名も無き、王を狩りつくす者よ

  ◆   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

沈む夕日を背に【彼】は端末を取り出した。

内容は…いつもの様に、突発的な嵐を予報している。

 

…最早それは避けられない。

瑠璃蝶の花の種、それが芽吹く時まで

 

 

彼は悟っていた、恐らく“竜”は避けられぬのだろうと。

どうしても運命は立ちはだかろうとするようだ…【彼】に出来ることと言えば、その運命を乗り越えること。天を穿つように高い、その運命を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして深みは忍び寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次で出せればいいんだけどね、竜。
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