(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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ぶっちゃけサブタイと前書きの内容に1話作るのに悩む時間の半分を費やしてる気がする。


竜の焔。

「…ああ、俺だ。

――――そうか良くやった」

 

「どうした?」

 

「烏丸の方が“竜”の発見・回収に成功したようだ、一先ず心配は無くなった」

 

「そいつは本当に良い知らせだ。

…じゃ、撤収するか?」

 

「…いや、まだ滞在する。

どうもやはり嫌な気配が抜けん」

 

 

 

 ◆――――◆――――◆

悲しみ、絶望が滲み出て土に染み込み

深みは未だ飛び立たぬ。

多くの涙と血で固まった大地

喰らうものの目覚め未だ知られず。

しかし顧みられず、容易に踏まれていく

 ◆――――◆――――◆

 

 

 

 

…どうやら部屋の外は随分騒がしいようだが此処は打って変わって静かなものだ。

音も無く光もない一室に、小さな火が灯る。

 

今や熱だけを残してガラクタとなった赤熱するソレの光は暗闇でよく映えた…広大な闇をほんの僅かに切り裂くような赤い光をユラユラと揺らし、その残光を眺めてはたまに噴き出る小さな火もまた揺らす。そうやって一頻り遊んだ後は“ポケット”にソレ――――【螺旋剣の欠片】を放り込み、今度はオレンジ色に光る瓶を引っ張り出した。

 

螺旋剣と同じく暗闇で光るその光を、今度は揺らすでもなく、ただじっと眺める。もう補給の手段が断たれて久しいソレは相も変わらず橙の煌きを宿すが…いずれ只の緑色をした不格好な瓶となるだろう。ソレ――――【エスト瓶】が不死の宝と呼ばれたのはもう遠い遠い――誰も記憶していないだろう――己(若しくは獅子兜たち)だけが脳裏にて光景を宿せる、火継ぎの時代の話だ。

 

不思議なようで…その実昏く乾いた世界の歴史、それも今は最初から無かったかの様だった。

 

名残も全て消え去って新たな文明が長く息をしていた。

それでも、いつからだろうか?自分らのような所謂過去の遺物が、新しい時代に噴き出して来たのは。

一体何が彼らを呼び寄せたのか。

 

 

…きっと地球(ほし)だけが知るのだろう。

 

 

 

 

【彼】は立ち上がり、気晴らしに外へ出ようとした…これは先ほどの騒動が何であったのかを確かめる目的もある。

 

彼は部屋の襖を開けた…その時だった。

 

「「あ…」」

 

部屋の前には、ラウラとシャルロットが居た。

どうやら向こうが襖を開けようとした瞬間に【彼】が開けてしまったらしい。

 

「…というか暗いな。

寝てたのか?兄さん」

 

ラウラの質問に、ああそうだと適当に答えた後に彼女らの要件を尋ねる。

 

 

「ああ、いや、別にこれといった要件はないぞ。

ただ…どうせなら一緒にババ抜きか大富豪でもしないかと思ってな」

 

そう言ってラウラがトランプを取り出す、つまり遊びに誘うつもりだったらしい。

断る理由も無い彼は了承して自らの部屋のライトを付け2人を招いた。

 

 

「それじゃ…。

お、お邪魔します…」

 

やたらと畏まっているシャルロットに【彼】は別にそんなのは要らないと言い、楽にするよう促す。

 

部屋の中央で3人が円を作るように集まるや否やラウラがカードを配る。そこに【彼】が待ったを入れる…何せ彼はそもそもババ抜きと大富豪のどちらをやるのか聞いていない。

 

「いや、私も決めていないが…どちらにしても配る必要はあるだろう」

 

彼女の言う事も一理ある。

しかし配ってから何をするかを決めるとは思っても居なかった彼は苦笑いしながら配られたカードを取っていく。

 

…初っ端からハートの2を引いた。

成程と思いながら彼は配った後にゲームを決める方式の利点を見出す。

 

そして3人にカードが配り終えた後に【彼】はいち早く大富豪に一票を入れた。

 

「に、兄さん…意外と、こう、したたか?だな。

(まあ私も結構な手札が揃っているから)別にいいが」

 

「流石にそれは…ね。

(とは言え僕のも大富豪としては強い方だし)大丈夫だけど」

 

流石に2人に意図を容易く読まれたがどうやら他の二人も中々のデッキが揃っていたようで満場一致で大富豪をやる事になった。

 

 

――――この試合は強いカードが先のハートの2しか無かった【彼】が惨敗を喫した。

 

「流石に切り札それだけって…」

 

「普段の戦術眼はどうしたんだ」

 

彼はだまらっしゃい、と醜態を誤魔化した。

…続く第二回戦をやる前に【彼】は二人に尋ねた、先ほどの廊下の喧騒は何であったのかを。

 

 

「あ、ああ…アレは…」

 

「アレはだな…その…」

 

どうやら相当説明し辛いのか、妙に顔を赤くしながら言葉に詰まっている。

彼は無理をしなくていいと言うが、何とか恥ずかしさを振り切ったシャルロットが説明を始める―――――――――そして説明の序盤で彼は事の全てを察する。

 

 

要はこういう事だ…織斑姉弟の部屋から千冬女史の“とんでもない声”が聞こえたので一夏の取り巻き三人衆と合流したラウラとシャルロットが襖に聞き耳を立てていた所、何かしらのアクシデントが起こって(彼は襖が倒れたのだろうと予測)聞き耳がバレた…という事だ。

彼はそれを踏まえて、大きなため息をついた。

 

何せここの所やたらと一夏はその手のトラブルを起こすのだ。

確か数日前に放課後の特訓で鈴音の蹴りを受けてセシリアの胸に思いっきりダイビングし、【彼】との組み手の特訓の際に攻撃を受け流されて箒の太ももあたりを鷲掴みにし、最後は……………これは織斑一夏の名誉のために黙っている事にした。

昼頃の災難もそうだ。

 

とは言え一夏は入学当初からそのような調子である。本人の名誉の為に言っておくが、彼自身は故意でやっているわけではない。

 

ため息は2人にも伝染した。

 

 

 

何はともあれ始まる第二回戦…今度はジョーカーと再びハートの2があった。

それだけである、残りは8切りすら出来ない、カスばかりだ。

 

―――――――――しかし今回はなんと一番乗りだった。

 

「そんなっ…2のカードが3枚もあったのにっ」

 

「間が悪かったね、ラウラ」

 

【彼】はその時になって思った。

…先ほどの喧騒に一夏の落ち度は無かったのではないかと。

 

 

因みに3回戦はクラブスートの“最強”と呼ぶに相応しい良いカードが揃っていたが惨敗、ビリっけつで終わった。

 

 

この対戦を最後にゲームは7ならべにシフトしたのだが…。

 

「むーん…(一体だれがスペードを止めているのだ…!誰がスペードのJを持っている…!それさえ出てくれれば…!)」

 

「うぅーん…(ちょっと、誰がダイヤの8止めてるの!?残りはダイヤだけなのに…!)」

 

【彼】の意地の悪さが十二分に発揮されて現場は静かな修羅場と化した。

 

この後の“ジジ抜き”では【彼】が全戦全敗し、シャルロットが一度席を離した時に行われた【彼】とラウラによる一回限りのポーカーではハートの4を始とするスリーカードをスペードの10、J、Q、K、Aのロイヤルストレートフラッシュで見事に爆散させられたことによって敗北を喫した。

 

 

 

 

 

この大敗で気力を使い果たした彼は、その場に寝転がってしまった。

 

「どうした?もう終わるのか?」

 

ラウラはカードを一度片付けながら尋ねる…対して【彼】はシャルロットが帰ってくるまで休憩すると言った。

彼は仰向けになって天井から部屋を照らす蛍光灯を見た、白く僅かにそして細かくチラつくような光だ。

 

永く見続けていると眼も頭も可笑しくなりそうな不思議な光を見つつ…その頭は実の所、その光の様に真っ白であった。

 

 

元より食事を終えてからずっと考えっぱなしだったのだ、先の火遊びもそもそも自分の頭の中で渦巻いていた全てを静かに焼き払う…様はリフレッシュのつもりで始めたもの…トランプ遊びも(スイッチの入った7ならべ以外)あまりものを考えなかったせいで散々な結果になったが、大分スッキリできた。それを何故今更また雑多に思考回路を巡らせなければならないのか。

 

彼はこのまま寝てしまいたいと思いつつ目を細める…が、突然何かが頭上の蛍光灯の光を遮った。

 

「寝た、のか…?」

 

ラウラが彼の顔に覆い被さるように、その瞳を覗き込む。

まだ寝ない、それだけ答えて彼は目を閉じた…しかしまだ寝ない。いい加減あのチラつく白い明りが鬱陶しく感じてきただけだ。ラウラが陰になってくれたのは丁度良かった。

 

「寝ているじゃないか…兄さん…」

 

彼は再び、起きてるよと口を開いた。ラウラは「そうか」と彼と同じように横になる…要は添い寝だ。

暫くの間2人は何もしゃべらなかった…彼はまた瞼を貫いて眼に焼き付く蛍光灯の光に辟易しながらも黙って休憩を続けた。シャルロットが中々帰ってこない事を気にしながら。

 

 

 

 

 

…不意にラウラが「兄さん?」と口を開く。

お前は違う

「その…兄さんは、兄さんにとって…“火”とは何だったんだ?」

お前は全てだ

随分と可笑しなことを聞く…彼はそう思いながらも中々核心的な部分を尋ねたラウラに対し、多少モノを誤魔化すように答えた。

自分の人生そのもの…いや、自分は火を宿す存在だったと。

お前に自由意志などない

かなり言葉を抜かしたものの、嘘でも無かった………誰の言葉でもない、全ては火に惹かれる己の本能がままに。静かな狂気とも言えるその意思があらゆる試練をねじ伏せた。常に前進のみを考えていた焼き付いた眼、その名残が今も【彼】には残っているのだろう。火守女の目よりも酷く淀みそして暗い…しかし人間味を思わせるその目には。

ただ一つの感情を手にしただけの奴が

 

たったそれだけ。その言葉を聞いたラウラは何か思い詰めるような様子だった。

そして最後にこれだけ呟いて再び沈黙へと歩んだ。

 

 

「兄さんは、兄さんなのか…?」お前は誰でもない

 

お前には元より全てを語る資格はない

誰のおかげだと思っている?

お前のどの口が…!

惚けたために崩れ去るがいい

 

因果は終わらないよ

ずっと、ずっと…例え愛が枯れても歩き続けて最後は心だけ死に絶える

それでも長い旅路、多分行き着く先ってのはある

 

 

道を行く者、本能を信じる者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして大嵐は急に大地を襲うのだ…なんの前触れも無く、無から有が生じるかの如く。

例え前兆があっても常人では見えることはない。だからこそ人はいつも無から生じる有を信じてしまう。

 

全ては前倒しになった。

 

 

 

―――――――――突然襖が開いた!

 

「――――佐々木!

ラウラも居たか…緊急事態だ、制服とISスーツを持って来い!無論ISも忘れるな…!」

 

「教官…!?

…了解です!」

 

突如として千冬女史に2人は呼び出され戸惑ったものの直感的に緊急事態を察して両者瞬く間に準備を整え彼女に追従した。

 

 

「織斑教官、一体何が…?」

 

「説明は後だ」

 

ラウラの質問が先送りにされる間、【彼】は入学して一番の悪寒に襲われていた。

恐らくはVTシステムの一件を超えるだろうその感覚は、全て己の知り得る“よろしくない情報”が引き起こしていた…今【彼】が抱えている問題を全て統合するとある一つの事件へと行き着く。

 

 

…案内されたのは、ハイテク機材が置かれ臨時の司令部となった旅館の1室だ。

既に他の専用機持ちの面々、そして何故か篠ノ之箒までもがその場に集まっている。

 

「これで全員か。

先ずはコレを見ろ」

 

テーブルに敷かれたホログラムのディスプレイに様々な情報が記されたが、そのほとんどが決まってやたらと機密性の高さを雰囲気だけでも放つようなデータだった。内一つにはISらしきモデルが表示されている…この時点で皆、今回何が起きていたのか理解した。

 

「教官…!まさか…」

 

「そうだ、Aレベルの匿名任務だ。

…今から1時間ほど前にハワイ沖で明日行われる予定だった試験稼働前のチェックを行っていた、アメリカとイスラエルの合同で開発された第三世代IS銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が突如暴走、その場に居た整備員数十名を殺害した後監視空域を離脱したとの事だ」

 

「十数名を…殺害…?」

 

「何の冗談よ…」

 

「これはフィクションでも何でもない、実際に今その福音は日本列島に近づきつつある…もし福音がここを通過し住宅地まで到達した時起こるのは…」

 

 

―――――――――――――――民間人の虐殺。

それを彼女が言うまでも無く想像した【彼】以外の面々は静かに震え上がった…何せ自分らがこれより相手をするのは、スクリーンだけの存在だと思っていた冷酷無比の殺人マシーンなのだから。

 

「到着はおよそ1時間50分後だ。

その前に教師たちが周辺海域及び空域を封鎖、そして福音本体への攻撃は――――――――」

 

「――――俺達、専用機持ち…か」

 

「その通りだ一夏。

以上が今回、学園上層部より下された指令だ」

 

つまり、上層部は少年少女らに相手を徹底的に打ち砕かんとするような機械の相手をさせようと言うのだ。

それに対して彼は…特に思う事はない。彼は残酷ではないが冷酷だ、そんなものだろうという感情しか抱かなかった。

 

…けれども今回ばかりは感情的にならなければならない理由があった。本来明日の昼間に暴走する予定だったソレが急遽予定を早めて暴走した理由――――それは間違いなく己の時代の“遺物”が関係している事を確信していた。蔓延る呪いは…全て滅さねばならない。

 

ただ心の内から自分たちが叫ぶのだ。

“やれ”と。

 

 

 

意を決した【彼】は黙って立ち上がった、そして部屋を出ようとする。

 

「おい、佐々木!どこに行く!」

 

彼は織斑千冬の剣幕に対し、淡々と只の偵察だと答えた。

そして彼はそのまま言葉を続けた。いくら専用機とは言え就寝前というあまりよろしくないコンディションで向かわせるのはどうなのかと。彼は偵察も兼ねて時間稼ぎも行うつもりだと言った。

 

無論、本来の目的は偵察でも時間稼ぎでもない…福音の完全な破壊、討伐だ。

 

 

彼は語り続けた…この中で一番の夜更かし屋(ナイトオウル)は誰だと。

皆が静まり返る中、彼はそういう事だと一言発して再び出ようとした。

 

だがそれを静観すべきでないと考える人間は、ここに何人もいる。

 

 

「待つんだ兄さん!

相手は軍用ISだ、いくら兄さんでも危険過ぎる!」

 

「そうだよ潤!

コンディションがどうだって、チームでならばリスクも分散されるよ!」

 

「考え直せよ佐々木!」

 

ラウラ・シャルロット・一夏の三人が襖の前に立ちはだかり必死に【彼】を止めた。

しかし三人の制止は空しくも彼の腕力の前に崩れ去った。

 

 

その瞬間に千冬が【彼】の肩を掴んだ。

掴んだ肩をぐるりと引っ張り強制的に身体ごと振り向かせ、ノーガードの腹部に重い鉄拳をねじ込んだ。

 

本来ならば余りの痛みと衝撃に意識が吹っ飛ぶそのボディブローは、しかし彼は強靭な耐久力で耐えて見せた。彼は言った、何のつもりだと。

 

「貴様を止めるとなると、これぐらいせねばなるまい。

…貴様一人をむざむざ死なせに行かせるわけにはいかん、おとなしく連帯行動をしろ。いいな?」

 

彼はブリュンヒルデの強烈な睨みにも屈さず、逆に彼女を睨み返した。

そして固く閉ざしていた口を再び開く、自分には例え3か月の停学を喰らおうが何だろうが引っ込むつもりはないと。

 

この時既に敬語など忘れてタメ口であった。

 

「スタントプレイのつもりか」

 

そういう事にしておけと、彼は否定も肯定もせず千冬の腕を振り払い部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

「潤!まってよ!

何を焦っているのか分からないけど、一人じゃ危ないよ!どうしても行くっていうのなら――――」

 

退室した【彼】を追いかけてきたシャルロットは、彼の腕を掴んで引き留めるものの、やはり容易く振りほどかれてしまった。

しかし、それでもと再び腕を掴む。

 

「確かに…潤なら一人でも福音だってなんだって倒せるかも、しれないけど…」

 

視線と共に声を落とす彼女に、彼は自らの腕を引く彼女の手を優しく引きはがして語った。

自分にとって重要なのは倒せるか倒せないかではなくて、倒しに行く事なのだと。

 

 

彼は今になって妙に自分が熱くなっていた事に気が付いた。

どうせ最終的に福音を倒せればよいのだ、ともなればシャルロットや他の専用機達と連携する方が都合が良かったハズ。

 

しかし啖呵を切ってしまった以上、今更引けないのは不死だとか以前に彼の意地だ。

 

彼は今にも泣きそうな表情のシャルロットを後に去って行く。

 

 

 

「ねえ…行くなら、一つだけ約束してよ。

絶対、死なないって」

 

勿論だ、と。

“不死”たる彼は答えた。

 

 

 

 

 

   ◆   ◆        ◆    ◆        ◆    ◆

 

 

 

 

 

海岸から少し進んだ所の山中、そこには隠されたコンテナが存在した。

コンテナの中身は彼が纏うIS・アックスマンのオートクチュール…通称【古竜の鱗(スケイル・ゼロ)】と呼ばれる“名目上は”防御特化型のパッケージだ。

 

またの名を【鎧纏竜(エデル・アーマード)】とも呼ばれるそれをISと共に纏おうとした時、どこからともなく衣擦れ音がサラサラと響くのを感じた。

 

…何度か聞いたパターンの衣擦れだ、この音が出る服を着る人物を【彼】は一人しか知らない。

彼は何処も振り向かず、スケイル・ゼロを眺めたまま言い放った…これも全てあんたの思い通りかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一件独り言の様に聞こえるそれは、なんと返事が返ってきた。

 

「まっさかー!悔しいけれど何もかも計算外で計画が滅茶苦茶だぜい☆!

…ま!どうせいくらでも修正できるしやる事も大して変わらないから、どーーーでもいいんだけどねー!」

 

余りにも緊張感の感じられない場違いな口調の持ち主は、何を隠そう――――あのISの開発者たる篠ノ之束博士その人だ。

【彼】は何時ぞやのように待機状態のアックスマンにコンテナから伸びるコードを繋ぎ、博士の話をコンテナに寄りかかりながら聞いた。

 

「てかさー、やっぱりあーくんの言う通りあんた変わったよねー。随分カッコつけちゃったけどあんた死亡フラグって知ってる?

まあ何しようが死なないような、ってかもう死んでるに等しい燃えカスの王様には関係ない話だろうけどさ」

 

相変わらず口やかましいと思いながらも彼はそういえばと話を続けた。

…獅子兜の男と何らかの関わりがあった件についてだ。

 

 

「そういえばあんたには言って無かったねー、聞かれなかったし。

あれからちょーっと、面白そうなモノいっぱい持ってたからチョット手助けしちゃった★!」

 

彼はため息をついた…ここ最近こればっかりな気がする。

ちょうどその時にスケイル・ゼロの準備が終わり、コードを引き抜く。

 

 

そのついでのような感覚で彼は博士に尋ねた、道楽ばっかりで本来の目的から大分逸れてるのではないかと。

 

「まーねー…、でも手駒は多い方がいいからね。

そんな事言ったらあんただって今も私の目的から逸れているんだよねー?」

 

詰め寄ってくる束に対し、彼はあるモノを見せた。

そうするや否や彼女は何か不味い物でも見たかのように一目散に逃げていく。

 

 

「げげげーっ!こりゃ逃げねぇとやっべーぞ★!

束さんのキューティー♡ウサちゃんイヤーがぶっ壊れちゃーう!」

 

脱兎の如く…とはよく言ったものだ。

持ち前の身体能力で瞬く間に【彼】から離れていった束は途中「あっそうだ」と思い出したかのように突然振り返った。

 

 

 

「あんたが本当に目的を忘れてるかもしれないから言っておくけどさー、あんたは――例え使い捨てだとしても――今後の要なんだからね。

そこはちゃんと覚えてるんだよ…そのすぐ物を忘れる脳ミソで」

 

それだけ言い放った彼女は「それじゃーねー☆」と、身体能力を使って再び何処かへと消えていった。

博士を見届けた【彼】はもう一度スケイル・ゼロを眺める…奇しくもこれもまた竜なのだ、本来福音を乗っ取る為に使われていたものの不慮の事態で一度回収を余儀なくされた“竜”と同じ…。

 

 

 

 

 

 推奨BGM・DRAGONFLAME/JAM Project

 

 

 

 

 

夜の海岸に、強烈な咆哮が響き渡った!

浜辺で今飛び立たんとしているアックスマン(古竜の鱗(スケイル・ゼロ)装備)、通称鎧纏竜(エデル・アーマード)はアンロックユニットの翼を大きくはためかせ、背中より伸びる長い長い尾を自由自在に振り回しながら再び吠える。

 

竜は飛び立った。

過去に悲しみを背負うとも前へと進み続ける【彼】の意思がそのまま推進力とでも成ったかのように、通常時の数倍のスピードで海上を駆け抜けて行く。

 

 

神速で竜は破壊へと向かってゆく…しかし研磨とコーティングにより銀色に輝いた多数の鱗は不滅・不朽の象徴だ。

それが今も【彼】をしがらみに縛り付けているのだろうか…ずっと昔の火継ぎより変わらない殺意で、今は大型の機関砲を握る。

 

俺の戦いはずっと続く…そう念じる様に翼をより大きく開いて加速した。

 

Heaven or hell

 

本当に、この終わらぬいのちが果てる時まで。

 

 

 




まあハッピーエンドで終わるわけ無いよね、フロム作品が。
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