(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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なんか前書き後書きに使う時間が増えてるような気がする。
…何故か知らないけど前と後書かないと落ち着かないんだよなぁ。また頭の可笑しいコメント催促でも書こうかな…。






…という訳で不死人が居ないおかげかやたらと鍵括弧率増えたISダクソ、始まるよー。








不可能を破壊する。

嵐の吹き荒れる浜辺に6人の若い男女(切り札)が並んでいた。

降りしきる豪雨を物ともせず灰色に染まる地平線の彼方をじっと見つめながら、彼・彼女らはISを展開する。

 

『全員、よく聞け。

どうやら福音から二次移行(セカンドシフト)を行ったと思わしき高エネルギー反応を検出した、今の奴の状態は未知数だ…今回は斥候が居ない、慎重に行け』

 

「分かったよ、千冬ね『織斑先生、だ』そうだった…織斑先生」

 

「ちょっと一夏…。

こんな時に締まらないわねぇアンタ」

 

「無駄口はここまで。

未知との遭遇が始まりますわ…!」

 

「ああ。反撃だ…」

 

「絶対に…!」

 

 

 

 

皆、それぞれの思念を胸にその翼をはためかせ(スラスターを吹かせ)て一気に飛び立った!

横一列に並んだ6機のIS部隊が豪雨を弾丸のように横切って高速飛行する中、ラウラが他の5人へ「いいか、皆」と通信を入れて今回の作戦を再確認した。

 

「今回は以前まで兄さんや一夏に箒が戦っていた福音のデータを基に作戦が立てられている。

その作戦は続行だ、作戦内容に奴の急激な変形・変異を想定したフォーメーションがある事は皆覚えているな?」

 

「ああ。

会敵する前に、しかも二次移行するとは思わなかったけどな」

 

「予想外だが…一応想定の範囲内だな」

 

「会敵予想時刻まであと5分!、もうそろそろ掃射想定距離に入るよ!

皆、気を引き締めて!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

各機、スラスター出力を高めて一気に福音へと近づく!

…その時一夏が、上空より謎の高エネルギー反応が検出されている事に気づく。もしそのエネルギーが落下して直撃するのは…………鈴音の甲龍だ!

 

彼は咄嗟に叫んだ!

 

「鈴!!避けろッ!!!!」

 

「へっ…?

―――――ッ!?」

 

 

 

 

 

――――突然!甲龍へと一条の稲妻が落下した!!

間一髪“黄色い”落雷を回避した鈴音は予想外の出来事に度肝を抜いた。

 

「落雷ッ…!?」

 

「でも、“黄色”だったよ!?」

 

「普通そうじゃないのかよ!?」

 

「馬鹿言え!一夏!

落雷が黄色いのはデフォルメ表現だけの話だ!それにこれだけの距離ならばッ…!」

 

余りにも想像の斜め上を行く現象に対して動揺が走り、連携が少しづつ崩れていく中、彼女らの通信へ『狼狽えるな!』割り込むように千冬が先ほどの落雷についての説明を行い始めた。

 

 

『先ほどの落雷は福音が発生させたものだ。

アメリカとイスラエルの合同軍が衛星も使用し奴を分析した結果判明した…信じられないが奴は落雷を、いや、嵐そのものを発生させている』

 

「嵐を発生ッ…!?」

 

「そんな無茶苦茶なっ…!」

 

驚くのも無理はなかった。

現行のISでも、流石に天候を操るような力を持つものは存在しない…ましてや広範囲に嵐を(それも熱などで水蒸気を発生させる等の自然現象を利用したものではなく、純粋に自らの“力”として)発生させるような代物となると―――。

 

少年少女達に、それ以上考える余裕は与えられなかった。

突如“鐘”の音が鳴り響き、上空より鳥類を思わせるフサフサとした翼を持った巨大な人型が舞い降りてきた―――――これが今の福音だ。

 

 

福音は大剣の様に巨大な穂先を持った槍に、その黄色い雷を纏わせてブンッと鈍い風切り音が鳴り響くほど素早くそしてパワフルに振るい構えた。

 

「何よ天候操作って。

冗談がキツ過ぎるんじゃないの…っ!」

 

「さっきより酷いっ…!

――――また来るぞ!皆避けろ!!」

 

箒の怒号が鳴り響いた……今度は1発だけでなく辺り一面へと連発的に落雷が落とされる。

彼女らは編隊を崩され散り散りなる。しかしその中でも先ずシャルロットがそのより鋭く、より殺気を纏い、より冷静な目でチャンスを掴み両手に持ったマシンガンの弾幕を福音へと叩き込みつつラピッドスイッチで右手をショットガンに持ち替えて、今度は鳥と竜のアマルガムのようになった頭部を狙い撃った!

 

間髪入れずにラウラがレールカノンによって頭部へと追撃し、更にセシリアがダメ押しにと狙撃を叩き込む。

しかし福音は何でもないかのように振る舞い、剣槍を振るって嵐を巻き上げシャルロットら3名を遠くへと押しやった。

 

 

彼女らと入れ替わるように、箒が鈴音の龍咆による援護射撃を受けて福音へと突貫する!

 

「今よ!箒!」

 

「はぁああああッ!!」

 

紅椿がエネルギーを纏った雨月と空裂を振り下ろし、福音の剣槍と鍔迫り合う!

しかし福音は第4世代のパワーをも圧倒しており、力任せの押し込みで意図も容易く構えを崩し、稲妻を纏った蹴りで箒を打雷させつつ背後から箒の援護に迫っていた甲龍の双天牙月を剣槍の片手持ちで受け止め、もう片方の手で形作った雷の槍を叩きつけ此方も打雷した。

 

「ぐぅうううッ!!

…なめるなッ!!!!」

 

箒が福音の隙を見て放った突きはやはり剣槍に阻まれた…だが、その瞬間何かが福音の背中を切りつける!

 

 

「俺を忘れるなよ!」

 

一夏は振り下ろした雪片を、再び防御のために素早く持ち上げ剣槍の刃を咄嗟に防御しつつ福音の胸部へと蹴りをねじ込み距離を取った後に、手の甲でプラズマ刃を研ぐように構えを取る。

 

白式を最優先すべきと考えたのか福音は全速力で一夏へと接近し刺突を繰り出すが、その一撃は咄嗟に見切られ柄ごと足で押さえられ首元へと刃が迫る!

…福音は寸での所で強引に白式を押し返し、剣槍で薙ぎ払うが一夏は素早いイグニッションブーストで福音の視界から消え、入れ替わるようにアサルトカノン2丁を福音の顔面目掛けて構えたラファールカスタムが眼前に現れた!

 

 

 

「僕の今の気持ちが分かるかい?」

 

冷酷だが鬼気迫る眼と顔をした彼女は、その衝動のままに引き金を引いた!

 

一回だけではない、ありったけの、撃てるだけの弾丸を全て吐き出すようにカチカチと何度も引いた!!やがてアサルトカノンの弾が無くなると今度は最接近して盾殺しを全弾その頭部へと打ち込み続けた。

 

鳥竜の顔が破裂し、中から何かの柄が露出した!

…アックスマンの斧だ!シャルロットは福音の肩部に足をかけて斧の柄を引っ張る。引き抜いて、恐らくはもう一度その頭部へと振り下ろすつもりだ!!

 

 

 

身体から何かを引き抜かれる痛みに悶えた福音はその口から火炎を吐き、抵抗するがラファールカスタムには掠りもしない!そして火炎を吐き疲れた所にブルーティアーズのBT4機が口内めがけて一斉掃射を開始!その拍子で斧がブチリと引き抜かれた!

 

福音は剣槍を使って頭上のシャルロットを叩き落そうと試みた…が、空裂のエネルギー波と龍咆によって剣槍を持つ右手の動きが封じられ、その間には今にもラファールカスタムが斧を振り下ろさんとしていた!!

 

 

「でぇええやぁああああアアア”ア”ア”ッ!!!」

 

渾身の叫びをあげたシャルロットの、怒りの刃が福音に叩きつけられる!!

最早その叫びは人ではなく半ば獣にも似たものにもなり、頭部のみならず肩部や腕部などにも何度も何度も振り下ろされた!!!

 

最後は刃こぼれした部分から斧の刃が真っ二つに割れ、ほとんど鈍器となったそれを右手で保持しつつ左手にショットガンを持ち連射して牽制しながら撤退し、入れ替わりで紅椿が雨月のレーザーを半壊した福音の半壊した部分へと撃ち込むのと同時にセシリアがロケットを頭部の傷へとぶち込む!

 

 

 

「まだまだぁ!」

 

追撃で再び鈴音が切りかかり、福音と激しい剣戟を始める。

彼女は剣槍の突きや切り裂きを紙一重で回避しつつ、二刀流故の手数で重い斬撃を次々と繰り出していく…だが福音もその攻撃を剣槍か、若しくは素手で受け流して対処し、全くダメージを与えられない。

 

焦りに焦り切った鈴音は、これでもかと双天牙月を振り上げるが、そのためにノーガードになった腹部へと福音の雷を纏った拳がねじ込まれ、彼方へと吹っ飛ばされてしまった!

 

 

だが彼女はただでは転ばず、吹っ飛ばされながらも龍咆で反撃しつつその援護として彼女の反対側からシャルロットがマシンガンの掃射でクロスファイアを行う。その隙に今度は一夏と箒が福音の左右双方より接近し挟み撃ちをかけてガードをし辛くする作戦を取った!

…しかし2人が切りかかる直前、眼前に落雷が発生し福音はそのまま距離を取る。

 

逃がすものかと白式と紅椿は福音を追いかけた!

福音の周囲で発生する落雷を掻い潜り、福音自身が放つ嵐の斬撃波を紙一重で回避して近接戦闘を仕掛けるものの、やはり福音へと与えられるダメージは少ない…今の奴はどういう訳か先ほどよりも近接戦闘術が格段に上昇しているのだ、それこそ剣道経験者であるはずの箒ですら手も足も出ない程に。

 

 

とは言え二対一だ、一夏も箒も互いの足りない技量を補う様に戦う事で圧倒的な格差を埋めている。

福音があちこちに斬撃波を放ちつつ投げた雷の槍を分裂させて弾幕を形成するが、それに対し白式は零落白夜を発動し全ての攻撃を無力化!それを見た福音は直ぐに迎撃態勢をとるが、急遽襲撃した紅椿が半壊した福音の頭部へと空裂を叩きつけ一時的によろけさせ、その間に右腕を箒が絡みつき、そして左腕をラウラがワイヤーブレードを使用することで封じて零落白夜による必殺をサポートする!

 

「今だ一夏!

今のうちに切れ!!」

 

「あまり長くは持たんぞ!早く!!」

 

 

「皆ッ…!

うぉおおおおおおおおおおああああああああああッ!!!

 

彼は雪片を大きく振りかざした。

一条の白い光は真っ直ぐに福音へと突き進み、その必殺の一撃は確実に福音へ吸い込まれていく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――突如、福音がまばゆい光を放った。

 

その直後の出来事を、一夏は鮮明に記憶していない。

分かるのは…今、福音は箒を彼方まで吹っ飛ばし、ワイヤーブレードをズタズタに切り裂いて、白式の胸に剣槍の切っ先を突き立てている事だ。

 

流石に何時ぞやのVTの様に絶対防御まで貫くような事は無かったが、それは間違いなく一夏を大方文字通りに釘付けにして一切の抵抗を許さぬまま、次第にあの黄色い電光で溢れてきた。

 

 

普段鈍い鈍いと言われる一夏も、これには危機を感じ行動を起こそうとする…が、最早雷撃は氾濫寸前。

避けられない事を察した彼は目を瞑り、どうにか白式が耐えるようただ祈るしかなかった。

 

 

 

 

『ッ!!』

 

…だが、その雷撃が一夏を襲う事は無かった。

突然大振りな剣が剣槍の長い柄に振り下ろされ、剣槍を叩き落された福音へと更に剣の横振りが迫る!

 

 

「…えッ!?」

 

恐る恐る目を開けた一夏に跳び込んできた風景は、彼が驚愕するのには十分過ぎた。

――――嘗ての襲撃者(獅子兜)が今、あの飛行型のマシンと共に福音と戦闘を行っているのだ!

 

 

 

「一夏!

無事か!?返事をしろ!」

 

「あ、ああ、大丈夫だ箒。

…でもあのISって」

 

「アイツ…こんな時に何の用なの!?

襲撃犯じゃなかったのアレ!?」

 

「…とは言え、今は私達に敵意はないようですわ。

一先ず、呉越同舟…と行けばいいのですが…」

 

 

当事者達が獅子兜を警戒する中、急に通信が飛び込んできた。

それはラウラやシャルロット、ましてや千冬ら教師の誰かでもない…ボイスチェンジャーを利用した機械的な声だった。

 

『何をしている!

一か所に集まるな!奴は何処にでも落雷を落としてくるぞ!!』

 

「へ!?

――――うわぁあッ!?」

 

声の主の言う通り、一夏達のすぐ近くに雷撃が落ちてきた。

4人は散り散りになり…しかし直ぐに福音への攻撃へと移った。

 

 

だが…彼女らはそこで手をこまねいてしまう。

何せ今、とても福音への攻撃が難しい状況なのだ。

 

 

 

獅子兜の福音への対処は素晴らしかった、まるで福音の攻撃を未来予知でもしているかの様にスルリと避けては攻撃の後の隙にツヴァイヘンダーを確実に叩き込んでは再び攻撃を容易く回避し、ましてや挑発する余裕すら見せた。

 

「アイツ…福音の攻撃をあんな簡単に…!」

 

「さっすが、佐々木と渡り合ってただけはあるわね」

 

「それは良いが、落雷の頻度がさっきまでの数倍に跳ね上がっている!

奴の言う通りだ…動き続けろ!止まったら直撃するぞ!」

 

ラウラの言う通り落雷の数は明らかに増している。

一夏を始めとした専用機達はそれを常に躱し続けて、自分らの機会を伺い続けていた。

 

 

 

 

…福音の片翼が断ち切られた!

振り下ろされたツヴァイヘンダーの刃はそれどころか、剣槍すらも叩き砕く。福音は何故か自分の攻撃が読まれ続ける事に理解できずストレスを感じ、闇雲に攻撃を振るうものの獅子兜にはやはり当たらない。

 

『昔と同じだ。

いや、同じなのはガワだけか…中身はあの蕩けた汚泥のままなのだな』

 

獅子兜は挑発ついでに、ツヴァイヘンダーへ黒い瘴気を纏わせてグッと腰に溜め込んだ。

福音が手を振り上げ雷の槍を生成しようとしたその瞬間!溜め込む構えから一気に突きを打ち放ち、ボロボロに破壊された胸部へとその刺突を叩きつける!!

 

 

ツヴァイの鋭い先端は福音の装甲に風穴を開け、刃に纏わせた瘴気を流し込む…毒にも似たその力は福音の身体を蝕み始め、福音は悶え始める。

獅子兜は勝利を確信していた……だが、その時に異変は起きた。

 

 

福音が吠えるのと同時に、まるで重力の向きでも変わったかのような強烈な突風が吹き荒れ、獅子兜を押し流す。

 

『ッ!、何!?

うぉおおおおおッ!!!?』

 

獅子兜は予想外の攻撃に対処しきれず、しかしどうにか体勢は立て直したものの更に勢いを増す落雷に行動を封じられ反撃に出る事は叶わない。

幾度となく打雷し、自分の限界を感じた獅子兜は拡張領域より二つの筒状の何かを取り出し、『織斑一夏!』と一夏を呼び出してそれを投げ渡した。

 

見事筒をキャッチした一夏は獅子兜に呼び掛ける。

 

「何だよコレ!

何故俺に…!?」

 

『元からソイツを渡すのが今回のッ…!

使い方は教えてくれるはずだ…!だが、決して――――――――――――――――』

 

獅子兜は、その言葉を言い切る前に巨大な落雷に飲まれた。

落雷が過ぎ去った後に、彼の姿は見当たらなかった……塵一つ残さず焼き尽くされたか、それともただ単に戦線を離脱したのか。

 

 

 

一夏は手元に残った、筒状を見つめた。

これで何をするべきなのか…獅子兜は使い方は教えてくれると言っていたが、一体何が…――――彼がそう考えていた所に、ふと“意思”の様な何かが流れ込んで来た。

 

“意思”によると、この筒状に硬く封じ込められている存在があるらしい。

だがその存在は…非常に荒れ狂っているようだ。

 

 

「(その為ならば…)…よし」

 

一夏は意を決して、筒状を握る手に力を籠める。

白式のマニピュレーターの中でピキピキとヒビが入り始める音が鳴り、次第にその音は強くなる。

 

「うぉおおっ…!(俺は、それでもっ…)」

 

筒状はヒビこそ入れども中々割れない。

まるで使い手を試すかのように…それとも筒状そのものが内包する存在を余程恐れているのだろうか…。

 

 

だが、一夏の“声”によるものか…次第に筒が砕け始めた。

 

 

 

「(俺は、俺の道を…!)絶対、絶対にッ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――たった今、筒が砕けて内包された存在が暴れ出した。

未知の力が白式の中で溢れ出し、急激な変化を促す…その強烈なパワーに一夏は悶えた。

 ABSORB STORM 

彼の意識が遠のいてゆく…まるで、深淵に沈むかのように。

 

 

 

 

 

     ◆  ◆     ◆  ◆     ◆  ◆

 

「束様、白式のシールドエネルギーが急激に減少しています。

このままではバイタル状態も…」

 

「だいじょーーぶ大丈夫!

手は打ってあるから。さーてと――――――――――――――――へいガ「駄目です束様」ハロー箒ちゃーん!」

 

『ッ!?!?

あ、姉上!?それよりも大変なんです!一夏が――――』

 

「焦らない焦らない落ち着いて。

そろそろ紅椿の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)も使える様になっているハズだから」

 

『ワンオフ…!

私はまだ紅椿を使い始めて、ほんの少ししか経っていません!』

 

「心配ご無用!紅椿(それ)作ったの私だよ?

箒ちゃんが使おうと思えば使えるって!そう、“使おう”と、思えば…」

 

 

 

『使う…?私が…』

 

     ◆  ◆     ◆  ◆     ◆  ◆

 

 

 

 

紅椿の開発者である自らの姉、束から受けた言葉について考えこむ箒。

だがその間にも一夏は悲痛な声を上げて悶え続けていた。

 

「ッ!一夏!

一体何が…!」

 

彼女は必死になって考えた。

今の自分何が足りないのか…一体紅椿(これ)は何を求めているのか…!

 

問いかけようが答えの出ない疑問―――――それを解いたのは、たった一つの偶然だった。

 

 

いや、解けてはいないだろう。

しかしこの“機会”は間違いなく偶然だ。

 

 

 

「!?、なんだ――――【絢爛舞踏】?」

 

突如発生した【絢爛舞踏】の4文字。

そして箒は今、ある事に気が付いた。

 

 

「ッ!?紅椿のエネルギーが…回復している…――――ッ!!もしや…(コレならば…!)」

 

紅椿は全身から金色の粒子を放ちながら白式へと接近した。

 

「一夏…一夏ぁ!!!!」

 

 

そして、彼女は未だ痛みに悶え続ける一夏の右手をその両手で握る。

すると突然彼の表情は悲痛なものから穏やかになり、急激に減少していたシールドエネルギーも一気に回復する。

     FUSION DraGOn

白式はまばゆい極光に包まれた後、その光が白式の光に焼き付き幾何学的な紋様を刻んでゆく。

同時に白式自体も大きく姿を変えた――――そう、白式の二次移行(セカンドシフト)だ…!

 

 

 

 

 

  私は、ずっと、この楔にいます あのまどろみの終わりから、再びまどろみの時まで

 

 

 

 

 

 

 

「…箒、ありがとう」

 

「へ?

いち、か…?」

 

「俺も、今から…決着付けに行くから…!!」

 

  BGM/覚醒

 

 

二次移行を経て【白式・雪羅】となった白式は、以前の数倍のスピードでかっ飛び、瞬く間に福音の懐へと跳び込んだ!

 

 

「これでも、喰らえぇええええええええええええええええええええええッ!!!!!

 

左手の多機能武装【雪羅】の力を使い巨大で岩のような手を出現させ、その手で思いっきり福音を殴りつける!!

 

吹っ飛ばされた福音への追撃に、孤島でレールカノンを構えていたラウラが砲撃をぶつけ、そして福音のすぐ真横を通りかかった鈴音が龍咆を至近距離で連射しした。

福音はピンボールの様にあちこちへと飛ばされ、遂には海上を引きずり回されるように滑る。

 

どうにか復帰して、もう一度空中に飛び上がった福音に今度はシャルロットが飛び掛かり、真正面からマシンガンとショットガンのダブルトリガーを喰らい硬直する。尚も容赦のない攻撃を続ける彼女は弾切れと同時にマシンガンをブレードに切り替え福音の口内を切り裂き、そして彼女の背後より迫っていたラウラと入れ替わった!

 

 

「この時をずっと待っていたぞ!!」

 

プラズマ手刀を胸部に突き立て、福音の首筋から飛び出る突起に残っていたワイヤーブレードを巻きつけ、思いっきり引っ張った!

植物の根の様にズルリと引き抜かれたそれは、【彼】が先の戦闘で突き立てていた剣だ。

 

 

「せぇぇえええええええええいッ!!!!」

 

彼女は剣を巻き付けたワイヤーブレードをその身ごと遠心力で回し続け、勢いが十分に乗った時、先端の剣を福音に思いっきり叩きつけた後それをワイヤーブレードから両手で保持して福音の鳩尾に突き立てた!!

 

 

 

 

腹に剣を抱えたまま更に吹っ飛ばされた福音の眼前に、剣を腕ごとクロスさせた紅椿が飛び込んで来た!

 

「貴様を、ここでッ…!」   貴様の陰我!

 

かの鬼切と姥断の戦技が如き跳び斬りを、エネルギーを纏った雨月と空裂で放ち福音を切り捨てた紅椿の真正面から、大トリの白式・雪羅が突撃してきた!雪片の切っ先を指の甲に添えて、一夏は狙いを福音に定める。

 

「俺たちが、断ち切るッ…!」 俺が断ち切る!

 

 

福音が苦し紛れに雷の光弾を放った!

一夏は剣を両手で構えそれを一刀両断し、その勢いで体をスピンさせる!!

 

最早出遅れた福音に対処する術はない…白式が福音と通りすがる瞬間、一夏は雪片を思いっきり振りかぶって福音の胴体を切断した!!!

 

 

 

 

 

 

福音は悶え、その鱗と鎧の様な外装が再び蕩けた泥となって崩れて行く。

そしてその泥もまた水分が蒸発し、固まりそして少しづつ分解されてゆく…消滅は時間の問題だろう。

 

…途中、目が覚めたようにムクリと起き上がった福音は消滅しかけた自らの手を見つめ、ぐっと握りしめる。その手には何も無いようで、何か太めの物が握られているようだった。

 

 

 

「…?(アイツ、一体何を―――――――)」

おおかみがはなたれた

ふと、一夏が黒い疾風が自らの真横をすり抜けた様な感覚を覚えた。

咄嗟に振り返ってもそこには何もない。何もない………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、“何もない”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?(み、皆何処に!?)

おい、おい!!箒!セシリア!」

 

彼はいつの間にか消えていた皆の名を一人ずつ叫んだ。

 

「鈴!シャルロット!ラウラ!

…何処だ…!」

 

彼は必死に辺りを見渡し、消えた彼女らを探した。

こんなだだっ広く障害物もない大海原の大空で、どうやって隠れるのだろうか…?

 

気が付けば福音も姿を消している…まさかとは思うがと、一夏は息をのむ。

 

 

 

 

 

 

彼はハイパーセンサーを起動しようとした…その時、白式から遠く離れた各地で何かが思いっきり衝突した跡が観測された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――まさか。

彼は恐怖した、ここから遠く遠く離れている地点…紅椿のような超の付く最新鋭機ならいざ知らず、第3世代とは言えISがこんな短時間であそこまで飛べるハズが無い。となると、彼女らは物凄い勢いで吹っ飛ばされたと考えるのが自然だろう。

 

 

そしてついにハイパーセンサーが“何か”の正体を捉えた。

標準的よりも一回り大きなサイズの真っ黒いISが、眼光を赤く光らせて上空にひっそりと留まっていた。

 

 

 

一夏は震えが止まらなくなった。

恐らくこの短時間で彼女らを一掃したのであろう未知の存在が、只々その赤い眼で自らを見つめているという事実…彼はそれに気付き、只々恐怖するしかなくなった。

 

ハイパーセンサーが黒いISを逃した。

彼は驚きはすれど、その場から動くこともままならなかった…あの速度に、どう対処すればよいのか…彼には一切わからなかった。それでも感じる、僅かに、殺気を…だからこそ、尚も敵が恐ろしい。

 

 

 

そう、目の前に迫っている大剣が。

 

 

 

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