(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
対戦カード的に2日使わなきゃいけないのがなぁ…。
…待つしかない。
夕方の一室、明かりも付けず薄暗い部屋で、木製の椅子に前かがみで座りながら静かに時を待つ。
【彼】は時間の流れとは、自らに取って都合の悪いはたらき方をすると理解していた。なればこそ、ただじっと待つのみである…待っている物が期限内に届くかどうかは知らないが、文句を言った所で早まる訳でもない。
彼は“その事”に関して、無力だった。
やがて日も落ちてきて、一層暗くなろうとしていた頃…コンコン、と、ドアをゆっくりとノックする音が響いた。
椅子から立ち上がり、ドアを開くと二人の見覚えのある女がいた。
…いや、片方のやたら可愛げのある着ぐるみを纏ったのは見覚えがある。間違いない【彼】のクラスメイトだ。
「やっほ~、じゅんじー」
突然ラフな呼び方で(それもほとんど初対面の人間に)呼ばれたので彼は少々うろたえた。
まあいい…と、その件を取り敢えずで流し、二人に要件を聞いた。
「えっと…これ、佐々木君のだよね?
机の下に落ちてたよ」
手渡されたのは一本のシャープペンシル…確かに彼が使用していた物だ。
彼は手短に感謝を述べた。
「どういたしまして~。
…そう言えばね~?じゅんじー」
何だ?と着ぐるみの少女に問う。
「えっとね~?かんちゃんがね~、じゅんじーの名前の事を「すごい二人目な名前」って言ってたんだよ~」
かんちゃん、というのは恐らく彼女の友人だろう。
そうか…それが?と、再び問う。
「それだけ~。なんでだろうね~?
…あ、私の名前はね~、布仏 本音っていうんだ~よろしくね~」
「…わ、私、相川 清香!
って、知ってるかな…同じクラスだもんね」
急な自己紹介で、ようやく二人が誰だったかを思い出した【彼】だった。
口は禍の云々…といった雰囲気でそのことを口に出さず、ただ頷くだけにとどめた。
「にしてもじゅんじー、一週間後大丈夫?」
本音の一言に、彼はピクリと反応した。
相川もまた何か不安そうな顔をしている。
「やっぱりヤバいよ…相手は代表候補生だよ?」
かけられる言葉にも、彼はただ平然とする。
恐れる理由がないのだ…たかが多少の才で図に乗る小娘如きに。
事の発端は、この日の授業中にあった。
まだ太陽が頂点にて光を放っていた時刻…。
「…この時間で再来週行われるクラス対抗戦に出場するクラス代表を決める」
この時に決められる事になっていたクラス代表こそ後に彼女ら…いや、学園全体の話題の種となるモノであった。
先生の解説が終わるや否や、真っ先に一夏が推薦され、直後に【彼】もまた推薦されたのだ。
初日をとっくに終えて、いい加減この空気にも慣れてきた【彼】は、持ち前の年長者としての落ち着きさえ取り戻していた。
慣れてしまえば元居たロードランやドラングレイグにロスリック等と何ら変わりない。もし己がこのクラス代表という役割を与えられたのなら、自分なりにやり遂げるだけだとそれ以上何も考えなかった。
例え、考えた所で【彼】という人物は…―――――――。
「納得行きませんわ!」
彼はセシリアのキンキンと高い声に眉を顰めた…その声で発する言葉の内容には一切耳を貸さない。
例え耳を(一瞬だけ)貸したとしても“貴族に謙虚さはない”という彼のやや偏見気味の考えの通り
その内カチンときたのか、一夏まで声をあげ始めた。
口論は徐々にヒートアップしていき、最早両者の言う事どっちもどっちだという状況まで発展した。
もうそろそろ切り込んで来るだろうと、彼は千冬先生を見る。
何かが面白いのか、僅かに笑っているのが分かる。
そして、二人の口論は意外な形で終わりを告げた。
「このっ……!
決闘ですわ!」
「おう、いいぜ…その方が彼是と言うより早い…!」
不意を突かれたように【彼】は、意外な方向に転がったという趣旨の言葉を呟く。
この決闘の飛び火、恐らく彼自身にも来るだろうがソレは構わなかった……己こそ
そして彼の予想通り、火の粉はこちらにも導かれる。
火種そのものの手ではなく、観る者の手によって。
「さて…推薦されたからには佐々木、貴様にも出てもらう」
行けるな?――――彼女の、千冬先生の問いに選択肢は無かった。
そして彼の中にも断る選択肢はない。僅かな才で図に乗る小娘に、世を見せるには丁度いいと。
結論を言う、【彼】は結構乗り気だった。
「へえ、調子に乗って殺されに来たのですわね」
それはどちらの方か?と彼は返す。
「…いいでしょう。
貴方たちの勇気、いいえ、蛮勇に免じて特別にハンデを差し上げます…さあ、希望するハンデをそれぞれ好きなだけ言いなさいな」
【彼】は彼女の提案を笑い飛ばす。
そして今度は一夏へ言葉を向けた…蛮勇とはお前と誰の事だと。
「いやそれって…。
というかセシリア、ハンデは寧ろこっちがだな…お前が欲しいハンデ言えよ」
一夏の言葉の後、教室は一気に静まり返る。
―――――――――そして皆、笑った。笑いに笑った。
またこれだ…【彼】は肩をすくめた。
この世界の歪さ――――それこそこのISに由来するものだった。
このISという世界の力を司るマルチスーツは、女にしか扱えない。だから男は虐げられるのだ。
そうした、酷く傾いた天秤に対し…しかし【彼】は思う事など何も無かった。
確かにえらく傾いているが、ソレが傾き得るものであるのは百も承知。
まだまだ世界はアンバランスを極められるだろう…戦いと絶望の中で、思う以上の事に慣れ切ってしまっていた。
そして、そのアンバランス故に…一夏と【彼】は渦の中心なのである。
生徒の一人が一夏に逆にハンデをもらう事を提案するが、彼は「男に二言なし」とそれをはねのける。
随分勇ましいが、身の丈に合うかは…まあ、志の高さと、その輝きは何にも代えがたい。
折れるまで…ただ見届けてやることにはした。
そして続く、【彼】の回答。
セシリアがソレを問う。
すると、だ。そうだな…と彼は首をゴキリと回す。
そして口を開いた、そして右手を差し出す…両手もいらない。右手のみで勝利はつかめると。
再び静まり返った…今度は皆が笑い出す前に、【彼】がへっへっへっと薄い笑いをあげる。
つられてセシリアも静かに笑い出した…。
「本当に日本の男子はジョークセンスに富んでいますわ…っと、貴方は日本人なのは名前だけでしたわね。
きっとジョークの国から来たのでしょう」
そうだ、と“名前だけ日本人”という部分を肯定する。
だが“ジョークの国”という部分は否定した…こちらの国には人食いウサギはいなかったと。
…腕や足一二本程度の重症を負わせても斬りかかってくる“黒騎士”はいたのだが。
「ま、当日になって己の愚かさを思い知る事ですわ」
おほほほ、と高笑いをするセシリアを…【彼】は静かな眼差しで見送った。
どちらの事だかな…とは、言葉には出さなかった。
そして今、夕暮れ時に至る。
「やっぱり右手だけはダメだって…相手は代表候補生だし、しかも“専用機持ち”で…」
相川がそこまで言いかけた所で【彼】は関係ないと言葉を遮った。
肩書が戦士の技量や筋力、知力や信仰等を強くする事など無い。
彼は黙って手に持った端末の画面を見せた。
…あの[AX=MAN]と名付けられた巨人の姿である。
「え、これって…」「じゅんじーの、専用機?」
彼は肯定した。
「だよね~、貴重な二人の内の一人だからデータは欲しいよね~」
「でもコレ、私達見ちゃって大丈夫?」
不安げな相川に、許可は貰った、只の絵だ、と彼は答える。
その時、部屋の前を一夏とそのクラスメイトであり幼馴染でもある篠ノ之箒が通った。
「お!佐々木、お前の部屋ここだったのか」
「む…ああ、二人目か」
「あ、織斑君」「おりむ~やっほ~」
古風な雰囲気を放つ箒は、あまり興味無さげに【彼】を見る。
よく見れば一夏と箒、二人共汗だくだったので彼は何があったかを聞く。
「え?何って…1週間後に向けての修行だよ。
佐々木にとっては六日後だが」
「ふん…まさかあれ程まで弱くなっているとは思わなかった」「だから箒、バイトとかで…」「黙れ、男なら四の五の言い訳を言うな」
唐突に始まった夫婦漫才を何となく見届けながら、彼は一夏が武道を習っていたことに驚く。
…しかし事情があったとは言え腕を落としてしまった事には、なってないと多少の落胆を覚えた。
「なってないって…佐々木は大丈夫なのかよ、修行とかしなくって」
一夏の心配を、彼はたった数年で落ちるような腕は持っていないと返した。
「そういうの慢心って言うんじゃないのか…?」
確かにそうかもしれないが、彼は自らの実力は一番分かっていた。
ついでに言えば、相手のセシリアの実力や、彼女の専用機[ブルーティアーズ]のスペック等も調査済みだ。
それを踏まえた上で、【彼】という歴戦の戦士は断じたのだ。
負けるつもりも無いし、負けた所でドベがドベのままなのだ。
「そ、そこまで言うなら…って、どこ行くんだよ」
【彼】はスタスタとその場の4人に背を向けて去っていきながら、休む事を伝えた。
「あぁそうか…お疲れ」
「佐々木君、お疲れ」「じゅんじーまったね~」
それぞれが別れの挨拶をした後、ドアがバタリと閉まった。
完全に暗闇に包まれた部屋の中彼は先程の椅子へまた腰を掛けた。
再び彼を静寂が包む。
その先は、【彼】にしか見えない…何故かそう言われた気がした。
…さて、此処で少し困った事が起きる。
先ほど二人に届けてもらった、己自身のものだというシャープペンシル…これがどうも、自分の物では無かったらしい。
【彼】が使っていたのと同様のペンだが、彼の筆箱には…既にそれが入っていたのだ。
つまり届けられたコレは、【彼】と同じ物を使う…誰かの忘れ物、と言う事になる。
後日、忙しい勉強の合間に、クラス中を尋ねる羽目にはなった。
…で結局、持ち主は見つからなかったとさ。
喜べ縦ドリル、ベテランの不死が直々に蒙を啓いてくれようと言うのだ(セスタス我慢ブンブン)
因みに主人公に鍵括弧使わない縛りはしてるけど、口調としてはダクソ特有の「貴公」だとか「~であろう」「~だろう、だろうか」等を使用しないくだけたものを想定しています。
地の文で書いてあるのは、大体そんな事を言っている目安だと思ってください。
不死人の詳細情報みたいなの欲しい?
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いらんから続きはよ
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書けやアホゥ
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がんたんく