(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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前座オブ前座の話なので超ヘルシー……のつもりだったのに、大盛りのトルコライスみたいな事になっちゃった。また長崎行きたい…。

という訳でロードオブシンダー以後の初外伝です、どうぞー。


 『外伝・これからのこと』

「にじゅはち…にじゅうく…さんじゅ…ッ!

佐々木は…もう終わったのか!?」

 

 

今日は【彼】の特別トレーニング期間最終日。

その最終課程であるアリーナ内ランニング100周(障害物アリ)をたった今終えたので残りの時間――――具体的には担当の教師(千冬女史)が来るまで――――にISを展開、そして素振り用の熔鉄槌(黒くてデカいアレ)*1を引っ張りだして素振りを始めた。

 

因みにあのデカブツの“正しい用途”として、サイズと重量に物言わして自身を軸にグルングルン…独楽が如く振り回し最後には遠心力に任せて我が身ごと槌をぶん投げる!という用法があるのだが、それをつい先日やった所「真面目にやれ」と打鉄用ブレードでしばかれた*2ので単純に縦振りを何度も繰り返すのみにとどめている。

ついでを言うと彼は最近、制裁の威力が妙に上がっている事に感づいていた…まあ【彼】自身、生き物というか物質な所がある上にそもそも“不死”であるのだ。彼女もソレを知ってかブレーキが緩んだのだろう…心底どうでもいいが。

 

――――で、だ。

何故、特に罰則も無かった一夏がこのトレーニングに混じっているかと言えば、実はこのトレーニングの後に一夏の特訓が始まるというスケジュールになっていたため、どうせならと彼は混ざったのだ――――まあそこまでは良かったのだろう。結局、自身の姉及び【彼】から特別トレーニング中に課されたのは「腕立て・腹筋・背筋それぞれ30回休み無しの通しで30セット」という地獄のハッピーセットであったが。

 

 

丁度【彼】が素振りを始めた頃に一夏もトレーニングを完遂したようだ。

…ここで思い立った事があったのか、彼は動きを止めて黒いアレを降ろし、疲れ果てて寝そべる一夏に声をかけた。

 

「え?雪羅?

ああ…アレか」

 

一夏は左腕のみ白式・雪羅を展開して【彼】に見せながら説明を始めた。

 

「アレは…何故かは分からないが簡単には出ないんだ。

強く、本当に「出ろ!」って気持ちで構えないと、ホラ。普通…でいいのかな、こういう雪羅になるんだよ」

 

ここでいうアレというのは、福音戦にて見せた雪羅使用時に出現する巨大な手や“火の玉”等の超常現象的な攻撃である。

…正直な話、【彼】は既にあの力が何らかのソウルが作用したものであるとは見抜いていた。しかし福音戦(あの時)は特に注目していた訳でも無かった事もあり、何のソウルに由来する力かまでは特定に至っていない。

 

今をいい機会と考えた彼は、一夏に一度あの力を行使するよう言ってみるが…。

 

「それが…ゴスペルと戦ってた時は感じなかったんだけど、コイツは強力過ぎるんだ。

あの手で殴れば絶対防御は確実に発動するし、火の玉もアリーナのバリアを貫きかねなかった…もし誰かに使っていたかと思うと…」

 

…どうやら強大なソウルの力とだけあって、相当なモノではあるらしい。

二次移行当初、一夏自身がその力を感じなかったのは福音が同じく強いソウルの影響下にあり、何等かの耐性または単純な力の拮抗状態にあったために実感が薄れたのかもしれない。

 

ここで彼は数日前の他専用機持ち達による、謎の空気の正体に気付いた。

あの力でちょっとした(若しくは案外深刻な)事故でもあったのだろう…。

 

 

 

とは言っても、【彼】はソウルが一夏に何か良からぬ影響を及ぼさないか知っておきたいという気持ちもある。なので彼は空に向ければよいと、力の行使を強く勧めたが、やはり一夏は強い抵抗があってか消極的である。

 

「だからバリア壊すかもしれないって。

そんな事したら千冬姉に怒られるだろ」

 

それもそうだ…確かにそこまで大事にしたら(【彼】にとって)地獄の反省文が何枚追加されるのか分かったものじゃなかった。

 

しかし彼とてソウルの事となれば中々に諦めない。

そこで【彼】はふと妙案を思いついたようで、すぐさま【薪の王】をサクッと発動させる…これに対して一夏はキョトンとした表情で彼を見つめていた。

 

「お前…それ制御出来てるのか?」

 

ああ。彼はごく単純な回答を送った。

何せ元より“火”とは【彼】の…というか不死人にとっての寄る辺なのだ、その“(寄る辺)”の力であれば実質顔馴染と変わらないもので、その感覚を掴むのはそう難しい話でもなかった。というか殆ど篝火に火をつける(bonfire litの)感覚に等しかった。

 

「マジかよ…。

じゃあ、俺のコレを制御する参考とかになるのかな?」

 

それ自体はいくら歴戦の巡礼者たる【彼】でも見ない事には分からなかった、なので先ずは普段一夏がソウルの力をどのようにして引き出しているのかを問う。

 

「それは…強く思って、具体的には「絶対に倒す」とか「逃がさない」とか、本当に何もかもを終わりにするぐらい激しい感じでやらないと出てこない…って、こんな感じでいいのか?」

 

どうやら激情によって引き出される力であるらしい。

一体どこのどんなろくでもない怪物のソウルか未だ知らぬ彼だが、理性と真逆の本能によって作用するような力が一体どれだけ制御が難しいかは肌身に感じていた…現に、【薪の王】にも“その側面”がある。

 

ともあれ、そんな100か0かの力に対抗するための【薪の王】の発動だ、ピッチャーとキャッチャーの関係である。

後のためにも全力で来る様【彼】は一夏に呼び掛ける。

 

「なら……行くからな?」

 

 

 

 

 

 

「やめろ二人共。

ソイツの雪羅は洒落にならんぞ」

 

…これからの試みは、全て千冬の一言によって打ち切られた。

 

「お、織斑先生…」

 

ここで一夏が間違えて「千冬姉」と呼ばないパターンは結構珍しい。

それは兎も角、【彼】は彼女にこれから行う事の安全性を説得していたのだが、それでもまだ足りないようで「ダメだ」の一点張りであった…なので、これでもかと防御に特化した装備として両手に一つずつ…非常に分厚いタワーシールドを持って城門が如き構えを見せた。そんな彼の“特別に万全な態勢(ドヤ顔Wシールド)”を見た千冬は一旦はため息を付きながらも、若干諦めたような様子で了承した。

 

「…一夏、一番制御の利くやり方でやってやれ」

 

「あ、ああ…わかった!

…構えとけよ、佐々木…!!」

 

彼は巨大な双盾を両手・両足・地面全てを使ってガッチリと固定…一夏が放つ一撃に備える。

 

 

――――ぐわっ、と。一夏は巨大な腕を出現させた。

その表情は怒りとも、決意ともとれる非常に力強いもので相手を威圧するのに十分すぎる覇気が込められていた。

 

「ぉおお…。

うぉおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああッ!!

 

巨大で、岩の様な一撃が今放たれた。

その瞬間…何故だろうか、彼はまた“色の無い何か”を幻視していた。

 

 

 

色の無い、色という概念が抜け落ちたように真っ新なだけの空間。

何時もの事だ…法則は分からないが、特に【彼】自身のボケだとかそういうのに関係なく見る。

致命的な毒

――――しかし何かが違う。

今日は何かがある、何か色がある…景色がある。うっすらと…森か、それも上空から森を眺めているのか。そして次に映るのは夜景、暗い場所…それが激しく揺れ動いている。一体何と戦っている、一体何へと向かっている。そして隣にいるのは誰だ?誰と共に戦っている?そして最後に……今までの何よりも鮮明に映った、とてもとても大きな城壁、そして――――それに手を掛けた、巨大な……“あの手”。

世界を理解せしめ

 

 

 

本当は誰も望んではいないのだ

 

 

 

ソウルを…求めよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<――――…二次移行の進行を確認。

システム【黒壇の帝王】の緊急起動を開始、例外的処置によりコード【32.11.42.13.24.15】のAIの思考能力を100%解放…――――>

 

――――――――――――――――灰の丘…あの、灰の丘だ。

何故かそこに立っていた彼は、不意に気配を感じて振り向く…するとそこには、あの【悔やみ続ける者】が立っていた、どうやらあの時消滅した訳では無いらしい。

 

「よ、こうして話すのは初めてか?」

 

そしてこの男、どうやら口がきけたようだ。

ならば何時ぞやの福音の時に少しでも説明をしてくれれば良いものを…そう軽く毒づく【彼】に悔やみ続ける者は「まあまあ」と宥めるような素振りを見せた。

 

「あん時ぁ、言葉は不要だと思って。

……そんな事よりお前“時計”は持ってるよな?」

 

“時計”…そう言われて、彼は理解するでもなく、ただ本能的に懐からペンダントを取り出した。

六角の星…というより、三角形を二つ重ねた印が描かれたソレ。蓋を開くと「VorB*3」と刻まれた、青い短髪の少女…その肖像画があり、蓋の裏には古い言葉で『生命断ちを成す覚悟へツナグため』と刻まれていた。

 

 

「あるならいい。

借り物なんだからな?傷つけんなよ、特に写真…」

 

<――――…規定時間超過、システムを緊急停止します…――――>

 

 

 

 

……気が付けば彼は、かなり後ろに後退していた。

最早アリーナの壁は目と鼻の先であり、もう少しで壁を思い切り凹ます所だったかもしれない。

 

「……ーい、おーい!

佐々木―!!大丈夫かー!?」

 

白式を展開したまま、一夏が駆け寄ってきた。

 

 

 

ここまで起きた事を整理……しようにも、情報量が多すぎた。

あの短い時間の中で処理しきるには余りに膨大すぎる…頭がこんがらがってきた、と彼はもうこれ以上あの一瞬を理解せしめる試みを止めた。

 

「――――おい、佐々木?佐々木―?」

 

まさか死んだのでは?と言わんばかりに焦る一夏を宥め、あまりに強烈過ぎて言葉が出なかったと適当な事を言って己の無反応を謝罪した。

 

 

「全く…こうなるから…」

 

遠巻きに二人を見ていた千冬は、若干肩をすくめるようにまたため息をひとつ。

 

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆  ◆ ◆ ◆  ◆ ◆ ◆

     

      【食堂にて…】

 

これまた久しぶりに【彼】は食堂に訪れた。

理由は簡単、ただ単になんかガッツリと飯を胃の中へと運びたくなったからである…何処ぞのクリスタル製サイボーグのような、生身のクセにも似た習性だ。心が人であれば“楽しくない”と感じても何時かは戻ってきてしまう厄介な部分はいつまでも健在のようだ。

思い出すのは、家族との団らんか…傭兵仲間との宴会か……それとも豪華な祝祭か。そんなひと時の“人還り”の味は中々に良いものだった。

 

 

という訳で現在はシャルロットと共に、注文したトルコライスを箸でどんどこ口の中に運んでいた。

彼女とは例の全力パンチを受けた後の一夏の訓練で合流し、そのまま共に食堂へと来たのだ…というかわざわざ飯が食べたい等と思ったのは半分彼女の存在があってこそである。

 

そういえばシャルロットの趣味は料理だとか聞いた気が…。【彼】はそんな事を思い出していた。

 

「ん?どうしたの兄さん?

僕の顔、何か付いてる?」

 

何も、と彼は我に返った。ずっと横目で彼女を見ていたようだ。

…そして今、シャルロットが人前ではしないと言っていた【彼】への「兄」呼びが出てしまったのだが…それを指摘すると彼女は「あっ」と赤面する。

 

しかし誰かに聞かれていた訳では無いので、一応問題では無いだろう。

 

「そうだけど…。

――――あ、所で潤って夏休みの予定は何かあるの?」

 

余りに唐突な質問だったので、少し面食らった表情をした彼だったが、取り合えず正直に何もないと答えた。

 

 

「だったらさ、いつでもいいけど一緒にプールとか――――あ」

 

流石にプールはナシだろうと、シャルロットも言っていて気付いたようだ。

【彼】も溺死させる気かと冗談紛れに突っ込む。

 

「ごめんごめん…。

じゃあ、どこがいいかな?一緒に何処か行けたらなぁって思ったんだけれど…」

 

うーん、うーん、とカタリナ騎士のように唸る彼女に彼は一つの提案をした。

同じ水場として…山中の上流付近だ。流石に(天候に気を付けるという条件は別の形で依然付きまとうものの)浅い川でおぼれる程水難の相は持ってないハズなので【彼】にも丁度いいだろう。

 

「成程、川なら溺れないよね流石に。

…それならスイカとか持って行こうよ」

 

一瞬、スイカが出てきたことに疑問を覚えた【彼】だが、日本には川の冷たい清流で食物を冷やす文化がどうこうというのを思い出して納得した。この時イメージしたのは何時か見たビールのCMである。

 

 

 

こんな流れで、長期休暇の予定を埋めていく頃には大盛りだった夕食も食べきっていた。

…そういえば結局、不死人の身体は食べたものをどのようにして処理するのだろうか?その答えはこれまでもこれからも知る由もないだろう。

 

 

 

 

*1
IS用サイズ

*2
しかも着地後の硬直を思いっきり狙われて

*3
掠れてほとんど読めない




いいですか?もし今回何かに感づいても…直接言うのはダメですからね?





次回、夏休み回です。
ソウルシリーズ絡んでるとは思えないくらい和気藹々します。

水没希望?

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  • りにあがんたんく
  • りくせんきょうしゅうがたがんたんく
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