(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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タイトル?まあ、さもありなん…と言いますか、ね。



2021/09/29、タイトルを一部変更しました。


The Great Will's Parabellum  
魚と玉葱それと44。


 

 

 

  ◆ ◆ ◆   ◆ ◆ ◆   ◆ ◆ ◆

何故私は求めている?

今もまだ眠り続けている、この―――果て無き欲望。

火に封されている今だからこそ尋常の精神を保てるものの、解き放たれれば――――それに屈する他は無い。“寄る辺”など幾つでも捨てて――――アレを掴み取ろうとするであろう。

ダークソウルの在り処とは

――――今や世界に広く細かく離散した暗い魂の集積点、受け入れれば――――暗く冷たい玉座を手にすることが出来る。

欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい

闇よ、力よ。

何故だ火は寄る辺なり

薪の火さえ消せば玉座への道が開かれる

闇の王は、未だ空位。

私こそが闇の王だ

  ◆ ◆ ◆   ◆ ◆ ◆   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成層圏の下の川辺にてバカンスする者

~こいつ等玉葱しか持って来て無ぇ!~

は、始まります…(-_-;)

 

 

 

バスや電車を経由して今、やっと山道へとたどり着いた。

この先に目的地のキャンプ地がある。“三人”はそれぞれ大きな荷物を背負って道を歩み…楽しみのバカンスへと着々と近づき始めた。

 

 

――――そう、三人で。メンバーは【彼】、シャルロット、ラウラ。

追加の一人はラウラである、しかし何故彼女が川辺の日帰りキャンプに加わる事になったのかと言えば…それを説明するのは困難を極める程に事態が複雑に絡み合っているのである。

 

最初に言い出したのはそもそも誰だったか、一人として覚えてはいないがきっと最初は軽い弾みのような言葉だったのだろう。それが一体、誰の耳に渡り数々の人と言う濾過布をくぐって…あらぬ方向へと言葉の持つ意味が捻じ曲がり、それが起爆剤となり……何故か箒、鈴音、セシリア、そして一夏*1とISによる決闘を行うという事態に発展したのだった。

 

形式上は特訓中の模擬戦という扱いのそれに対し【彼】は…もう、何と言うか、ひたすらに面倒臭さを沁みる様に感じていた。

一体何故、自分たちの休暇の予定がこんな事になっているのか。それを考えるだけでドデカいため息を――――それも首をガクンと勢い付けて揺らしながら――――つきそうになる彼…この時の自分に付いて、今となっては(余程ロクな宿命(さだめ)を抱えてこなかった)自分もまだこんなにウンザリ出来るのかと一種の関心さえ覚えているそうな。

そして明らかに数的不利な決闘当日、最早弁明する気力どころか持ち慣れた斧さえ担ぐのが億劫になった彼は一先ず【薪の王】を弱火で発動、尖兵として突っ込まされる白式・雪羅操る一夏の攻撃を受け流し――――弾き――――掴んで投げて――――偶に大発火で押し返したり、炎の壁で軌道を変えたりして彼をボールのように扱い他3人へとぶつけてそのままダラダラと削り続けていたのだった…何か、どうにか、どうにでもなってくれる瞬間を待ちながら。

 

…因みにこの、一夏(ボール)のぶつけ合いはIS学園の生徒の間では【夏の大三淫凶殺】という名で知られる事になった。

理由は――――状況的に察する者もいるかもしれないが、一夏(ボール)が箒、鈴音、セシリアの誰かにぶつかる度に一定の確率*2一夏(ボール)がラッキースケベを起こした事に由来する…誠に訳の分からぬ星の下に生まれた男である。

 

 

結局、主にシャルロットの頑張りによって謎の誤解は解け、その果てに――――ラウラも日帰りキャンプに加わるという結果が齎された。

断る理由も無かったのでシャルロット共々【彼】は即刻OKを出した…それだけである。

 

 

…当時の事を思い出しながら語る三人のうち【彼】とシャルロットは、まだバカンスも始まったばかりなのに少々疲れたような表情をしていた。

 

「そんな事があったのか…兄さん達も大変だったな」

 

「ほんと、参っちゃうよ。

あの日は夕飯忘れてすぐ寝ちゃったし」

 

因みにその日は…というかその日も彼は夜中ずっとゲームしていた。

 

 

一夏達はあちらで何か別の予定があるようだ。彼はそれで良かったと思っている…無理もない、確かに一夏達――――というか、一夏に付き添う三人組*3は【彼】にとって気さくに話しかけられる数少ない数人なのだが、いかんせん想い人(一夏)の事で一々うるさ過ぎる。痴話喧嘩は対岸でやってて欲しいというのが彼の率直な願いであった。

 

特に(【彼】個人的には)セシリアが一番うるさかった…入学当初のアレに始まり、その後一応関係は改善した。の、だが性分的に合わない所があるのか妙にぶつかり易い…それとつい最近、何時ぞや(外伝2話目)のカンニングの件がバレてすごい顔で睨まれた。

 

 

そういえば……と“睨まれる”で彼は、1週間前にまたまた一夏に酢豚を作って来た鈴音に対して酢豚以外のレパートリーは無い物かと口にまで出してしまった所「アンタは黙ってなさいよ!」と殺気を纏いまくった顔で睨まれた事を思い出した。後で聞いてみれば、嘗て鈴音は一夏に「毎日酢豚を作って食べさせる」的な事を言っていたらしい。つまり日本文化でいう毎日味噌汁を食べさせる的なアレ、というか酢豚に置き換えただけの…つまりそういう事である、との事だった。流石に【彼】はこの時ばかりは反省した。

 

 

そして箒には臨海学校の後から時折、とても何か言いたそうな鋭い目つきで睨まれる事がある。

此方に関しては間違いなく保護者(束博士)が絡んでいるとは彼自身察しは付いていた。

 

 

 

――――ここまでだと彼女らといがみ合っている様に見えるが、それでも友人達である。

 

セシリアは学園でも唯一、指輪物語の話題が全面的に通じる相手だ。

このきっかけは誰が提案したのか専用機組全員で指輪物語の映画6作(ロードオブザリング3部作~ホビット3部作)を見る事になった事にあり、当初彼は剣技等と言った映画故仕方ない部分がどうしても気になってしまいチクチク突っ込んでいた…が、世界観に一種の懐かしさを覚えたのか、態々原作書籍を(通販ではなく態々足を運んで)買い求めに行く程の“沼り”を見せたのだった。

……ああ、この鑑賞会でセシリアが「原作重視でホビットシリーズから見せるか、映画の演出重視でロードオブザリングから見せるか」で小一時間迷ったのは【彼】らの記憶に深く刻まれている。

 

「僕、あの時「映画だからね」って何回言ったっけ」

 

「10回は超えていた気がするぞ。

それよりも兄さんが作中のアドリブを見抜いてた方が印象的だ」

 

「あー、かなり最初の方だったよね…アラゴルンが投げられたナイフ弾いてたやつ」

 

それと同じくアラゴルンが兜を蹴っ飛ばした時のアドリブ*4も見抜いていた。

逆にガンダルフが燭台に頭をぶつけた所は若干アドリブか演出か迷っていたのだが。

 

「結局あれは演出だったね」

 

「寧ろその後だったな…アドリブ」

 

この出来事は、休暇直前に【彼】が保護者から頼まれた“小間使い”にて使用した【サウロン(指輪の王)】というコールサインの採用にも深く関係している。何時ぞやの事だっただろうか?不死の巡礼者時代に集めた見た目も能力も多種多様な指輪のコレクションを見せた事が発端で、ラウラ以外の1年専用機持ち組の中で彼と指輪王が結びついたのだろう。

 

 

鈴音も鈴音で、何だかんだ他クラスの情報を手に入れる際【彼】はよく彼女を頼っている事もある。

というより彼自身1組以外の知り合いが鈴音と、そして普段何処にいるのかよく分からない更識簪ぐらいであり、更に言えば上方向の関係なんかは一層乏しい…強いて言うならアドレス交換をした新聞部の副部長ぐらいだろうか。そして例の生徒会長はあのファーストコンタクト以降なんの関わりもない。

 

「上の繋がり…。

私も2年生以上の知り合いが全く思い浮かばない」

 

「そういえば僕も…」

 

何だかんだ、皆上方向の人脈には乏しかったようで【彼】は安心した。

 

 

最後に箒だが…こちらは彼女の姉である束博士(保護者)からの頼みで時々(一夏の情報をダシに)内情やらを聞いている内にそれなりには交友関係が築けたという部分がある。しかし博士との関係が露呈した今はギクシャクしているだろうと【彼】も予想していたし、前述のように箒も【彼】に対して思う部分があるようだ。

 

 

 

 

…さてさて、此処までの道中三人は喋りっぱなしだったのだが今になってとうとう話題を切らしてしまった。

しかしラウラがすかさず話題…というか無茶を振ってきた。

 

「…日本では話題が無くなって来た時は誰かが“すべらない話”をするらしいぞ。クラリッサが言っていた」

 

「絶対嘘だよ」

 

嘘…では無いが、間違いではあるだろう。

とはいえ未だ目的地が見えない中、無言が続くのは苦痛であるだろう…そう考えて【彼】は自分の“昔話”をした。不死になる以前の…まだ微かに記憶している生者の記憶だ。

 

 

 

――――ある所に一人の鎧職人がいた。

その鎧職人は腕は正直微妙で作品の品質は良くなかったが、自分が買える鎧は彼のものしかなかった為に仕立ても修理も彼をアテにしていた。

 

ある時、鎧職人は工房を締め切り外界との関わりを断った。いくらドアを叩いても引き返すよう強く言われ、ワケを聞けば彼は一職人として世に名を遺すような作品を作ってやるんだと息巻いていた。その職人の腕を知っている【彼】はできっこないから大人しく店を開けと要求するもの聞く耳を持たず、約二か月は工房を締め切っていたのだとか。

その間【彼】は鎧の修理を自前で行っていたらしい。

 

そして遂に工房が開いた後の来客第一号だった【彼】に()()()は息を荒げ、ドタバタと狼の群れにでも追いかけられているかのように慌ただしい様子で“作品”を持ち出して、いの一番にこう叫んだのだという。

 

 

 

 

 

 

――――“見てみろ!最高級の()だ!”と。

 

 

いや、鎧を作れよ!という素早くそして鋭い自らのツッコミを【彼】は今も覚えているという。

結果的にシャルロットとラウラは最後のオチでクスッとしてくれたので“すべらない話”としては間違いなく成功だろう。

 

「それで、その剣はどうしたの?」

 

シャルロットの問いに彼は傭兵団の団長に渡したと答えた、既に斧を使い始めていたので自分の武器は間に合っていたのだという。その剣の評価は最後まで聞かず終いであったが、長く使い続けてはいたので本当に品質は良かったのだろうとも補足をした。

 

因みに【彼】すら知る由もないのだが、その剣は何時ぞやの交渉用のハードディスクを叩き割る時に使用したあのロングソードである、なんの因果か…様々な持ち主を巡りに巡って、剣の刃以外の柄や鍔といった部分に様々な改修を施され、最終的には当時の面影を刃以外に遺さない形で【彼】の手に戻って?いたのだった。

 

 

 

…ここでラウラが一つ、ある事実に気が付いた。

 

「あの、さっきの話からして…なのだが。

もしや兄さん、年齢がすごい事になっているのでは?」

 

「あ…。

潤って、もしかして…」

 

ここまでの話、つまり上の“すべらない過去の話”を含めて全て“いかれた冗談”で今までなら片付けられていたのだろう。

しかし彼女らにはこれらの過去を裏付ける要素が手元に揃っていた。

 

【彼】が時折話す“呪い”の話に、福音戦での即死からの復活、そしてその後の身体調査の際、心配になって教師達の話を盗み聞きした際に知った【彼】の身体的特徴等々。彼という人物が不老不死か、その類であるという事実を非科学的だと笑い飛ばすにはあまりにも情報が揃い過ぎていた。

 

 

…もし()()()()()()に当てはめて考えるなら、【彼】が話していた装備が使われた“中世”はざっと調べても大体5世紀あたりから始まり、14か15世紀辺りが中期として扱われているらしい。ジャンヌ・ダルクで有名な百年戦争も大体この時期だ*5。それを踏まえて考えると【彼】は間違いなく百歳なんて区切りはとっくに飛び越えており、場合によっては千年を超えて生きている可能性も示唆されているのだ。

 

 

――――話を戻すが、先の“すべらない話”は彼女らの状況証拠からくる疑念の間接的な肯定に他ならない。

それに対して【彼】はしまった、といった様子で頭を抱えながらも、まあそれはそれでと若干諦めに近い様な受け入れを見せた。

 

というのも最近、年齢の件が隠せてる気がしないのだ。

先ず検査によって【彼】の身体的な特異を知る教師の一人である山田には何かと腰や各関節の痛みを心配される事がある…天然なのか冗談なのか、間違いなく前者だろう。彼女自身、生徒の年齢の問題だとかは(教師としてそのような経験は無かったが)それ程気にしていないようで「学習に年齢は関係ない」とまで言ってくれた人物ではある。

……この時彼は気が付いた(と言うより思い出した)、この年齢についての話題を最初にしたのは自分自身――――己がセシリアから“色の無い何か”現象のおかげでボケ老人と呼ばれた事を散々な年齢的自虐(腰が痛い、物覚えが酷いetc)を何も考えずに盛りに盛って彼女に話した事がきっかけではないのかと。

 

 

その話を二人にしながら、年齢について本格的な肯定を【彼】を恐る恐る行った。別に幻滅されたりするのが怖い訳では無いしされるとも思っていなかったのだが、どうしても過去が引っかかって来る。何せ不死という事で何かと迫害を受けた記憶も僅かに残ってはおり、果てに北の不死院に閉じ込められた訳だ。躊躇うのも無理も無かっただろう。

…しかし今までの人間関係と今しがた知った年齢は関係無いというのは二人も同じだったようである。

 

 

「そうか。ならば年寄りにこんな大荷物を背負わせるわけにはいかんな。

私のバッグ、テントの骨組みくらいなら余裕で入るぞ」

 

「腰痛めたら大変だもんね。

…あ、後ろから支えようか?」

 

先の老人扱いネタに便乗したノリツッコミ…ならぬ、ノリボケである。

 

実際の所全然耄碌していない…というか不死であると同時に肉体的には不老なのでそんな節々の痛みなどは存在しない【彼】は、二人共抱えて目的地まで突っ走るぞという妙な脅しまでしたものの、このやり取りに感じてはどこか満更でもない様子だった。漸く…と言った所か、呪いを気にしなくて良い“寄る辺”にたどり着けたのは。

 

 

 

――――そんなこんなでやいのやいのと戯れている内に、三人はいつの間にか目的地に到着していた。

 

「写真で見たのより随分と広いな…」

 

「それに…思ったよりも川、深いね」

 

「…気を付けるんだぞ兄さん」

 

【彼】はだまらっしゃいと返した。

歳といいカナヅチといい介護要件が本当に多い男である。

 

 

とにかく三人はそれぞれ準備を始めた…【彼】が持ってきたテント等の用具をシャルロットと共に設置し、その間にラウラが焚火に使えそうな枝をかき集める。持ってきた薪の量が予定時間分程には無かったためだ…ここで枝すら落ちて無かった時は【彼】がロードオブシンダーを展開して【薪の王】を発動して螺旋の剣を地面に突き立てる予定で居たが、その必要が無いくらいラウラは落ち枝を集めてくれた…きっと軍隊でサバイバル訓練でもした賜物なのだろう。

 

そして日帰りキャンプの準備を終え、もうすぐ昼時という事でそれぞれが持ち寄った食材を取り出す――――その時に事件が起きた。

 

「あの…ラウラ?

その、大量の玉葱は一体」

 

「これしかなかったんだ。

…それにシャルロットこそ、6割方玉葱(カット)じゃないか」

 

「う、うん…そう、だけど。

――――で、潤のは」

 

さて、今日【彼】が持ち寄ったのは【玉葱】【長葱】【万能葱】【サラダ油、小麦粉等の揚げ物セット】【にんじん】…かき揚げでも作る気だろうか。

他二人も何故か玉葱率が多かったり、そもそも玉葱しか持ってきてなかったり(しかも未カット)

 

「何なのさ、そのよく分からない葱推し」

 

正直、玉葱以外の葱はよく分からずに持ってきたのが事実である。

 

「だからといっても、こうなるものか?そして申し訳程度の人参…。

――――所で、肉は持ってきてないのか?誰も」

 

「あ…」

 

もうお分かりだろう!!!誰も…肉類を持ってきていないのである!!

BBQにおいてはナチュラルにキツイ事態である。

 

しかし、そんな事もあろうかと言う勢いで【彼】は幾つかのパーツを取り出し、組み立てた。

バラバラだったそれらは1つに組み合わさる事で釣り竿と化した。彼はこれでタンパク質を確保すると言い出したのだ。

 

 

因みにこの釣り竿、束の廃品置き場から適当に材料を見繕って、なんだかそれっぽくなるように【彼】が作成したものである。性能は棒切れに糸が垂らされただけのローテクも良い所だが、やたら良い素材(正体不明の合金や合成繊維等)を使っているので日本のあまり大きくない川魚には過剰なくらいの耐荷重性はありパワーさえあればクジラも釣れる計算だ。しかしこれを作成する際、普段博士が使っている高度な自動作成装置を訳も分からず使ってしまって色々滅茶苦茶にしたので帰ったら怒られるのは確定していた未来であった…。どうしようと迷う彼は誰も救わない(笑)

 

 

…本当はアーバレストを使って直接魚を狙い撃つ方法を考えていたのだが“ポケット”を使わないと日本国内では容易に持ち運べない事を考えて渋々釣り竿を作った次第である。

 

「クロスボウって…そんな強引な」

 

「兄さんなら当てられない事も無さそうだがな」

 

「流石に無い…んじゃないかな?

――――それじゃあ僕たちは野菜の方やろうか」

 

「だな」

 

こうして食材の採取と調理の担当が別れ、暫し静かな時間が流れた。

黙々と獲物が掛かるのを待つ【彼】の後ろでシャルロットとラウラの二人ががトントントンとリズミカルな音を立てて持ち寄った野菜たち(ほぼ玉葱)を切っていく…しかし二人共、玉葱を切っていると言うのに不思議と悶える様子はない。玉葱の調理に余程手慣れているようだ…とは言えシャルロットの方に関しては特別関心する事も無かった、料理が趣味だと言うのだから玉葱を切るくらいお茶の子さいさいというのだろう。寧ろラウラの方も手慣れていた事に【彼】は驚いていた…何せ戦う技術だけを教えられた娘である筈だが…これもサバイバル訓練の賜物だと言うのか。

 

私は玉葱を3等分した程度で目が染みて碌な作業が出来なくなる。一応、過去の番組でひ○みちおに○さんが「口呼吸のみをすることで目が染みなくなる」という裏技を披露したのは良く覚えているし今でも実践しているのだが、それでも数分程度しか持たない――――おっと、話が脱線していた。

 

 

…妹達の手際に関心している内、釣り竿に手ごたえがあった。

割とデカイ反応だ。養殖場の十数センチ程度のマスとは比べ物にならない…1匹で三人分できそうな勢いだった。

 

竿・糸・釣り針共に十分過ぎる剛性を持った素材であるため、先ず釣り糸を切られて逃がす心配は無かった…なので【彼】はお構いなく竿を引っ張り上げ、最初の獲物をゲットした。

 

…1m近いヤマメだ、1人で食べるには中々インパクトが強い。

水揚げされて尚もビチビチと力強く暴れるその様が、強靭な生命力をこれでもかと表している…良い獲物だ、と彼は釣果に納得して二人の元へと向かった。

 

 

――――近づけば近づく度、聞こえてくるシャルロットの鼻歌。

ヨーロッパらしいリズムのそれは日本国内では「クラリネットを壊しちゃった」の原曲として知られる、シャルロットの祖国フランスの軍歌…「玉葱の歌」だ。歌詞の内容はとにかく玉葱のフライが美味しくて仕方ない、それを食べればいくらでも戦えるという事を全面的に押し出したものとなっている非常に愉快な歌だ…軍歌が面白おかしくて愉快なのは別に良い、の、だが……如何せんフランスという国の国歌の方が軍歌らしい歌詞なのを考えると、妙ちくりんな雰囲気を感じざるを得ない。

 

まあ、飯が美味くて士気が上がるのなら軍隊としては願ったり叶ったりという現実を想えば非常に切実な歌とも考えられるだろう。【彼】自身も生者時代に「飯が美味いから戦える」みたいな歌を歌いながら行軍を行った記憶はほんの僅かにある…歌詞もリズムも覚えちゃいまいが。

今、彼が覚えている歌詞と言えば…精々臨海学校帰りバスのカラオケ大会で歌った「EVER LAST」と「Carry on*6」くらいだろう。

 

 

【彼】は玉葱の歌を聞く内、彼は一人の友人を思い出した…最早言わずもがな、であるだろうか?その友人というのは玉葱の様な鎧に身を包んだカタリナの騎士ジークマイヤー及びジークバルドだ。彼のユーモアは冷たさと乾きしかない荒んだ世界において一種の清涼剤であったのだろう。

 

…そんな彼らの最後と言えば――――いや、もう語るまい。あのカタリナ騎士は…自らの誇り高き騎士道を貫いた。それだけで良いだろう。ジークマイヤーの娘ジークリンデも…。

 

 

 

 

これ以上、巡礼時代の事を考えるのは止めた。

せっかくのキャンプなのだ…楽しまねば、笑わねば…只々自分に言い聞かせた。

 

 

「♪~……!。

潤、おかえり――――って、何ソレ!?」

 

「ヤマメ…だな。

随分大きいが」

 

サイズに見合ったリアクションで何よりだ、二人共目をぱちくりしている。

彼は空いていたテーブルにヤマメを乗せ、口の中で絡まっていた釣り針を外した。

 

大きいのは川ばかりでは無かったらしい。

 

「全く、その様だな兄さん。

鮭も釣れるんじゃないか?」

 

「まさか…まだ時期じゃないよ」

 

「物の例えだ」

 

釣れたとしても日本国内では環境保護の観点から産卵期の川を遡上する鮭の河釣りは様々な厳しいルールがある…ハズだったが、つい最近何故か非常にそれらが緩くなったようだ*7。一応ある程度の制限があるとは言え、一体どのような環境変化があったのか…それともISの開発による副作用か何かか…これ以上は学者でも教授でもない【彼】の考える事ではないのは確かだ。

…そもそも今【彼】らがいる川では鮭は釣れない。

 

再び釣りへと向かうのに従い、また釣り針に餌を引っかける。今度は更に大物を狙うつもりで大きめの餌を使った…流石に欲をかき過ぎてはいないかと思ったが、あのくらいのヤマメが居る事にはいるのだ。何、釣れない様ならまた小さい餌を使えばよいのである。

 

 

…垂らした釣り糸が落ちて、餌の重みで水面が撥ねる。

そして先ほどの玉葱の歌の一件でまだジークの酒が残っていた事を思い出した彼は釣りのお供として“ポケット”から取り出し、その小さな酒樽を勢いよく煽った。

相変わらず不思議な味だ…不死だと言うのに、ちゃんと酒を飲んでいる感覚があるのだから。未だにこの酒の秘密が分からない。以前酒の席でジークバルドから聞いた事があったが、その時は「簡単には言えんよ」とはぐらかされてしまい、結局秘密など分からず終いだった。

一度、酒にエスト瓶を混ぜているのかと思って実戦してみた事はあるのだが上手くは行かなかった…ただエストが薄くなっただけだ。エストスープだってそうだ、アレは本当に検討が付かない。一体何とエスト瓶を混ぜたと言うのだ…彼は迷うばかりであったと、二口目をチビチビ飲みながら思い出す。

 

…その時、急に釣り糸が張った。

――――もしこの時、酒を飲んでいなければ…というのは違う。いくら体勢を整えて居ようが大自然の力に対して人は無力だった。寧ろ釣り竿に“もしも”がある…もし、そこら辺の安物であれば…この後何も起きなかっただろう。もし、あと少しでも脆い素材で出来ていたら…きっと食い逃げられただけの事だっただろう。それは只々竿が過剰に強靭だったが故に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……玉葱はこれでいいかな」

 

「こんなに玉葱を切る事なんて、これからの人生でも中々ないだろうな」

 

「そうだね。もし次行くとしたら…ちゃんと玉葱以外も持って行くから。

…それで、後は」

 

「ヤマメか…しかし、見れば見る程大きいな。

…80㎝、一体何を食べたらこうなるんだ?」

 

一応日本記録では86㎝のヤマメ(サクラマス)が洞爺湖に置いて釣られているという情報もある。

 

 

「そもそも食べきれるのかな…」

 

「念の為、タッパーは3つほど持ってきたぞ」

 

「僕もジップロックは箱ごと持って来たよ」

 

二人共、お残し対策は万全だったようだ。

…そしてラウラがとある懸念を思い出し、シャルロットに語った。

 

「…そもそもなんだがな。

兄さんが何か食べている所を見たことがない」

 

「この前凄い食べてたよ、体も大きいから食べる時はいっぱい――――というか、潤…居なくない?」

 

「何…本当だ、奥まで行ったのか?」

 

二人はいつの間にか、【彼】の姿が消えている事に気が付いた。

いくら見渡せどもその姿は見当たらない…先ほどシャルロットが言及したように彼は体長が190㎝にも迫る巨漢だ。IS学園でも中々居ないサイズなので普通に廊下歩いているだけでも結構目立ち、そしてタダでさえ大きいアックスマン及びロードオブシンダーが更に巨大に見えてしまう要因でもあった。

 

なのに中々見つからない。対岸は高い崖なので先ず行けるハズがないしオーバーハング状であるため高身長である彼とて登りきるのは簡単ではない。まさかISを使う事もあるまい…二人が余計きょろきょろとしてる内、ヤマメ(ソレ)が目に入るのは同時だった。

 

 

確かに彼はよく溺れるかもしれない、しかしそれは実際には彼がカナヅチだからではなくただ単に海辺での運がやたら悪い事に起因する…それも生態系を歪める程の凶運で、臨界学校ではそこにいるハズの無いキツツキやオサガメなどが呼び寄せられそれらが全て【彼】の水没という結果に繋がるのだ。

 

「もしかして…」

 

シャルロット、そしてラウラの顔が徐々に引きつってゆく。

こんな巨大なヤマメがつれるくらいだ、もしかしたら…もしかするかもしれない。

 

 

ここである事例の話をしよう。

アラスカのとある川で、ある時身長180㎝程の男がキングサーモンを釣る為にやってきた。男は自身に満ち溢れた様子だったらしい…が、いざキングサーモンを釣るとなった時、なんとキングサーモンが持つ川を遡上する程のパワーによって逆に男が川へと引きずり込まれてしまったらしい…身長180㎝の男が、である。

幸い、その時は周囲の人の助けによって事なきを得たのだが…男のやる気は何処へやら、それとも川が非常に冷たかったのか完全に委縮してしまったとの事だ。

 

このようにアラスカでは度々キングサーモンを狙った釣り人が逆に巨大なサーモンに引き込まれて最悪溺死する事件が毎年のシーズンに何件かは必ず起こっているらしい。

 

 

二人はこの話は勿論知っていた、だからこそ非常に…それも福音戦の時と同じくらい焦っているのだ。

特にシャルロットは禁断症状にも近い状態だった。無理もない…【彼】が一度、福音の矢によって即死した時最も取り乱し、彼の水没時に最もショックを受けて塞ぎ込んだのは彼女である。いくら彼が死なないにしても、きっとあの瞬間を思い出すのは…言葉にも出来ないハズだ。

 

シャルロットは衝動に駆られ、走り出そうとした――――その時だった。

 

 

ガサリと、二人の背後で人の気配が動いた。

振り向いてみればそこに立っていたのは…この事件の渦中だったハズの【彼】であった。

 

「じ、潤…?」「…兄さん?」

 

あぁ…と返事をしたその声は確かに【彼】の物である。

しかしその恰好は非常に奇妙なものであった。

 

先ず全身が洗濯機に入れられて洗濯されたのかと思うほどにずぶ濡れであるし、その上に右肩に四又鋤を抱えその先端には3m越えのニジマスが突き刺さっている…どうやらずぶ濡れの原因はコイツらしい。というかそもそも一体何があったらニジマスが3mにもなるというのだろうか?そもそもこの魚はニジマスなのか?体表の特徴がニジマスと一緒なだけで全く違う何かではないのか?

 

更に【彼】の口には一般的なサイズのアユが咥えられており、その様子がこの緊迫した空気に謎の和みを与えていた。

 

曰く、このニジマスの怪物によって川へと引き込まれ水没したらしい。そして口の中にガボガボと水が入り込み、アユやらの川魚も口へと突撃してくる状況になって流石に不味いと考えて急遽ロードオブシンダーを展開。流石の3m級ニジマスもロードオブシンダーには勝てず、綱引きのパワーバランスは一気に【彼】へと傾き、最後には取り出した人間サイズの四又鋤で一突きにしたらしい。

 

そうして陸に上がった頃には大分流されており、戻って来るのに時間がかかってしまったのだそうだ。

【彼】はそれらの経緯をブルーシートを敷きながら二人に話した。これから、このニジマスの解体に入るそうだ…ポケットからシミターやファルシオン等々、様々な刃物を取り出して丁度良いものを見繕う。

 

「と、とにかく…無事でよかった」

 

この後、無事に昼食を迎えられたのが丁度12時程の話であった。

 

 

 

 

どこにあるんだろう…いつかの話なんて

―――――――――――――――

―――――――――――――――

手にしてるのは

 ◆   数時間後…   ◆

いつも掛け替えのないモノ

―――――――――――――――

―――――――――――――――

でも…どんな人も…再確認するまで全く気が付かない

未来じゃない、今だ。

 

 

 

あの後、一度テント等を畳んでもう少し川が浅い所まで下った。

 

 

そっと、素足を冷たい川の水に浸してみて…しかし何も起こらない。

普通これくらいなのだ。水辺に触れる度、何かが起こる方が可笑しいハズなのである――――それは兎も角、【彼】はこうしていると、福音を斃したその日の夜中を思い出す。あの時は夜空に月虹が掛かっていた…あれだけハッキリとした月虹など不死の悠久の命を持ってさえ見れるかどうかという程だった。

 

今は燦々と太陽が彼らを照り付ける、日本の夏場らしく湿気と共に人をジリジリと蒸し焦がしながら。

その下でも【彼】の妹達は水着に着替えて元気に水を掛け合って遊んでいるのを見て、これが若さなのかと遠い眼をしてしまった。

 

 

彼はそこから数歩、ゆっくりと歩んだ所でしゃがみ、川の中へと手を入れる。

何を探るでもなく…だからと言って、涼みを求めた訳でも無く。ただただ思うがままに、手を入れた所に指輪か何かでも落ちてる奇跡が起こればそれでいい。それが所謂等身大というものだと、独り言ちて満足したかのように振る舞った。高くは望まない、周りの全ては何時か終わってしまう…だから、いつからか夢を見れない男になった。そうすることで恐怖を押し殺していた、例え手元の幸せが無くなったとしても…それで怖くなくなるのなら。

 

――――彼の足元に、ビーチボールが落ちてくる。

先ほど【彼】がふくらましたものだ、どうやら向こうの二人がコレを使って遊んでいるうちに勢い余って跳んできてしまったらしい。

 

彼はそれを投げ返してやり――――そこからバレーボールに変わるに従って彼も加わった、どれだけ等身大を求めようとも運命はこの男を先へ先へと進ませようとするらしい。

時に一番深くて膝の上まである川に飛び込んだりするバレーのパス繋ぎで彼は結局またずぶ濡れになった…私服で。

 

 

…時折分からなくなる、自分が一体何をしているのか。

“色の無い何か”の様な何もかも虚無に送り込まれる感覚とも違う、強い光で…己の目がくらみ、頭の中までもが真っ白に漂白されるような…【彼】自身然程よく理解してはいないが、もし言葉にするならこのくらいか。

 

きっと、幸福慣れしてないせいだ…彼の自己診断はそういう結果を出した。本当に…本当に、こんな日常なんてどれ程長く見て無かっただろうか。そもそも、例えこの“平和な”時代にまた呼び起こされた時とて、今の様な毎日なんか想像もしていなかったハズだ…あの空で燃える太陽のように、成層圏という名を持つ悠久の力(インフィニットストラトス)を用いて、また己を燃やし尽くす事だけを目に宿し闇へと吼えていた時が既に信じられなくなっている。

 

灰など風に吹かれて、音もなく虚無に還る宿命(さだめ)では無かったか。

 

 

 

だけど…ああ、あの安らぎが、あの希望が、あの未来が。握られた手の温かみがもう忘れられないのだ。

いつの日か少しでも温もりが欲しくなっている。

 

――――何を戸惑っているのだ?寄る辺は火なり。

 

そうだ、火が寄る辺…己を、帰り道へと導いたあの“火”が。

無数の王と世界に希釈されても…ただ私だけを見てくれ。火よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が紅い、朱い黄昏に染まる頃には、とうの前に帰路についていた。

 

「それじゃあ、また今度だな…シャルロット、そして兄さん」

 

「うん。

また…夏休み中に会えるといいね」

 

またな…と、近いうちの再開の約束をしてラウラと別れた。

そういえば彼女は夏休み期間は何処に帰っているのだろうか…自分が所属している部隊――――名を“黒ウサギ隊”と言ったか――――の元にでも帰っているのだろうか?それだと国境を跨ぐ羽目になる筈だ、先ず無いだろう。

 

…そう考えていると、やはりというかシャルロットもこの時期何処に帰っているのかも彼は知らなかった。

【彼】は一応保護者が何かしらの手段で手に入れた郊外の平屋に帰っている。これは一種のセーフハウスとしても機能していた時期があり、入学以前のゴタついてた期間には時折世話になった事もある。

 

 

そして話を戻すがシャルロットは――――彼がある程度この答えに近づいた時、シャルロット自身が「ねえ」と【彼】に声をかけた。

運命が…きっと僕らを呼んでいる

「あの…さ、良かったらでいいけれど…今日は潤の家に泊まってもいいかな?」

だからかな…信じられる、離れないって。

…彼は何となくだが、これを聞かれるとは思っていた。

これは数か月前に聞いた情報なので現状は違う可能性があるが、今の彼女は実家…つまりデュノア社の意向に逆らっているにも関わらず、何故か本社からの援助が続いている状態。つまり今、彼女に用意されている家とはデュノア社が用意したモノに他ならない。

我が子を何だと思っているのか知ったこっちゃない父親と、自身を泥棒の子供と罵った継母の用意した家だ…帰りたがらないのも無理はないのではないか。

 

「いいの?

…ありがとう」

 

()()を何となく――――確証こそなかったが――――察した【彼】は、シャルロットを自分の家に泊めることにした。

本来二人の分かれる道だった場所を共に進み、やがて目的地の平屋にたどり着いた。

 

「ここが…潤の」

 

貧相な家だろう、と冗談めかして彼女に問う。

それと同時に彼はポケットから鍵を取り出した…古い古い、芸術性だけが取り柄のセキュリティがガバガバも良い所のウォード錠――――に見せかけた、非常に高度な電子ロックだ。博士がいつの間にか暇つぶしで付けていたらしい…正直【彼】は、態々家の鍵をあける為によく分からん工程を踏まなければ行かなくなったことに一抹の不満を覚えているようだ。

 

鍵穴に鍵を差し込んで、それがあらゆる情報のやり取りをしている間にシャルロットの事について…少々地雷を踏み抜くようではあるが、デュノア社との今の関係を聞いてみる事にした。一応【彼】も【彼】で色々と関わってはいるのだから…。

 

 

「本社との?

うん…まだ支援は続いてるよ、なんでだろうね」

 

どうやら支援は今も継続中らしい…まだ利用価値を見出すというのか、いくら第三世代の開発に難航しているとは言え…諦めが悪いと言うか、何と言うか。もうこれ以上この話をするべきではないのかもしれないし、そもそも聞くべき事では無かったかもしれない。

ほぼ感覚的にそう思った【彼】は今現在の話題に切り替えた。

 

あのニジマスの切り身についてだ。

何せ3m級の巨体だったが故に食が細めの少女2人と実質的老人1人で食べきるのは少々無理があった。そのため解体時に食べられそうな量のみを見極め、それ以外をタッパーやジップロック等に詰めて持ち帰ったのである、そのために一度冷蔵庫で保存する必要があったのだ。

その全てをシャルロットが今現在所持しているが、ナマモノなので常温での放置は出来ないので一度は【彼】の家の冷蔵庫で保存するという話だった。

 

――――家に入るや否や、シャルロットはそれを直ぐに実行した。

普段食事などしない不死人の冷蔵庫はガラガラで、ニジマスの化け物からとれた切り身をすべて敷き詰めてもまだまだが余裕があった。彼女はそれを見て、只々「ああ、そっか…」と【彼】が一体どのような存在なのかを改めて実感してしまった。同時に考える――――望まずして、いつまでも終わらない世界に閉じ込められた気分とはどのようなものなのだろうかと。

 

 

普通、不老不死とは人であれば一度は(場合によっては生涯ずっと)憧れる代物だろう。しかしよく考えれば分かることだが、己だけが永遠の存在となってしまうと周りがそうではないために身近にいる様々な人間との別れを経験する。誰もが経験する父母・祖父母、そして叔父(伯父)や叔母(伯母)との死別だけでなく、子がいれば――――そして子が不死でなければ――――我が子との死別すら経験するだろう。

それだけではない、思い出の場所だって…永遠にそこにある訳では無い。いつかは崩れて・崩されて消えて行く。誰にも見送られる事もなく、風景も空気も…何もかもが変わって、やがて生きているのに生きた証が無くなってゆくかのように。

 

既に実の母親を失っているシャルロットは、その悲しみが痛い程に理解出来た…ただずっと、失うだけになってしまった人生で何が待ち受けるのか。最早その手元の幸せでさえ奇跡なのかもしれないと…全てが霞むようだった。

 

 

もし出会いがあるかもしれない…しかしその出会いも何時かは終わりを見届けなければいけないと分かっていたら、素直に喜べるだろうか?

 

 

 

 

 

――――不意に、戸を叩く音がした。

この平屋には実はインターホンが無いので仕方のない事だろう、きっと宅配か何かだ。

 

間を置かずして、別の部屋で荷物を片付けていた【彼】が対応に向かった…家の主なので、彼方に任せておくのが正解だろう、来客のやる事ではない。

一先ず全ての食料品を冷蔵庫に入れ終えたシャルロットは、その小さなリビングを見渡す。

 

その中で、ソファーの上に垂れかかっている何かを見つける。

 

「…!(あれ?このペンダント…)」

 

【彼】が学園でも時折弄っていた、掠れた真鍮のペンダントだった。

三角形のマークが特徴的な蓋を開けると…本来肖像画の類があるのであろうそこは極限まで磨かれ、鏡面を持つまで磨かれた金属の板がはめ込まれていた。その面は今、正面にあったシャルロットの顔を映し出していた。

 

そして蓋の裏には何か文字が書いてあったようだが、掠れている上にシャルロットの知らない文字だったため解読は叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――銃声。

突如鳴り響いた…余りにも大きすぎるそれは、シャルロットの意識を僅かな間突き飛ばした。本当に、本当に大きな銃声だった…日本で流通するような小口径のリボルバーが出せる音量ではない。それこそ――――持ち運ぶことを前提としていたら――――かの有名な44マグナムで無ければ出せない。

 

「ッ…!!」

 

シャルロットは慌ててリビングを飛び出し、玄関に向かった。

――――ちょうどその瞬間、彼女の目の前にいた【彼】は左わき腹を左手で抑えながら膝を付いていた。

 

「潤ッ――――!?」

 

彼に駆け寄ろうとしたシャルロットだったが突然、何者かに肩を掴まれた。

そして振り向くより前に強烈な電流が彼女の身体を流れ、悲鳴すら上げる間もなく気絶してしまった――――スタンガンだ。

 

 

それに気が付いた【彼】は咄嗟に“ポケット”からK31を用いたオブレズピストルを引き抜きスタンガンを持ったガスマスクの男を撃とうとした…が、それより前に彼を44マグナムで銃撃したサングラスの男に顎を蹴り上げられ、そのまま昏睡状態に陥ってしまった。

 

薄い意識の中で、辛うじて見えたのは…スタンガンの男に抱え上げられ、連れ去られるシャルロットの後ろ姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  「みいぃっつ…!恐怖は絶対。一時の敗北はよい。だが手段を選ばず、必ず復讐せよ。…できるかの、この儂に復讐を」

――――――大忍び・梟(SEKIRO:SHADOWS DIE TWICE)


 

 

 

*1
巻き込まれただけ

*2
具体的には大体35%ほど

*3
今後何らかの要因で増える可能性アリ

*4
正しくは負傷事故

*5
ここまで要情報・要検証

*6
紛らわしいようだが遠藤正明の方ではなく

Avenged Sevenfoldの方

*7
現実では今現在も鮭の河釣りは規制が多いので注意。




 <次回までのロード時間中のアイテム紹介>

【牙獣の使者の証】
6角の星が描かれたペンダント。
その星は、各々を現す三角形が二つ重なりあったもの。

使者の世界を現す“時計”でもあるそれは、本来は悔やみ続ける者の所有物だったようだ。
それは通常のペンダントと同じで“時計”としての機能以外は何もないが、悔やみ続ける者にとってもそうであったように、使者を記憶によって繋ぎ止める楔であったようだ。










…はい、始まりました!完全オリジナル展開の夏休み編!最初に言っておきますが滅茶苦茶趣味全開です。

え?和気藹々?ほのぼの?ダクソに何求めてんの?

因みに最後の梟のセリフは…まあ、CoDのキャンペーンみたいなノリでやってみました。アイテム紹介とセットで次回からもありますのでどうぞよろしくお願いいたします。
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