(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
※ここから言い訳
あとそれとねぇ!私まだIS原作読めてないんですよ!未だにアニメ勢ですのよ!?なのにだよ?原作だけの部分に手を出そうとしてる。時代や環境のせいじゃなくて…俺が悪いんだよ!確かに回った書店すべてISが1冊も無かったとはいえ、この小説のIS側のキャラクターが原作に沿わなくなるのは私の責任だ。だが私は謝らない――――って、エーブリスって奴が言ってたんです!!…もうね、許せますかこれ!許せねえよなぁ!?いや許せないならブラウザバックで、許せる!ならそのまま読み続けてどうぞって話でしかないんだけどね。
え?原作の情報?wiki調べよwiki調べ。あとキャラクターの方は偉大なるIS二次の先輩の方々の書き方を基に統合してなんかいい感じに自分で弄ってそれっぽくしてみただけです。
※ここまで言い訳
というわけで間違いなく実質的オリジナル設定ですハイ。
…となるとこれも入れないとね。
※本小説には原作とは異なるオリジナルの設定を多数含んでおります、それらが苦手な方は今すぐブラウザバックを推奨します。
――――今更?うん、そうだね。
というわけで本編どうぞー。
2022/02/23:サブタイトルの大幅変更
2022/10/25:引用及びサブタイ微修正
【確か…】
ラウラはそういえば…という切り出しで、【彼】に問われた。
あの時何故彼女が駆け付ける事が出来たのかについてだ。これに関して何か不味いような事でもあるのか、ラウラはしどろもどろになりながら答えた。
「あ、あぁ、そ、それは…あの、その、やっぱり私も…」
この様子でほぼほぼ動機を察した、学園寮でもやってた
いやまさかそこまで常識が欠如しているわけではないだろう…と。心なしか眉を顰めながら。
――――――――というのが、彼女が眠りに落ちる前の記憶だった。
その後に今は休めと言われ【彼】を信頼してゆっくり、持ち込んだ寝袋の中で熟睡していて…目覚めた今は丁度陽が沈んだ頃であった。
何でもないであるのならば欠伸の一つでもするものだが、状況が状況なのでラウラは直ぐに意識を覚醒させた。
「兄さん…状況は?」
件の建物は確かにそれなりの数の兵士がいた。確かに武装の特徴等は襲撃者の者と一緒だが、それはそうとだ…どうも薄い、警備が妙に薄い。
いや、元より罠だと断じて来たのでこれくらい想定内だが…それにしたって中途半端な警備をさせていると言うのが【彼】の感想だった。この程度、お決まりの指輪セットが無くても簡単な抜き足差し足でさっくり入れそうだとしか言えない。
これについて意見を求められたラウラは少し考えた後に問いへの答えを口にした。
「――――確かに警備の配置がまるで素人だ、装備の質と釣り合わない…かと言って無人警備装置の類も無さそうだ。
兄さん、あの装備だったのだな?シャルロットを連れ去った兵士は」
【彼】は只々頷く。
「だとしたら…私達を中へと誘い込むための囮か?」
二人共そうとしか考えられなかった。
この辺りで相手の狙いを読むことを止め、一先ずどのようにして建物へと侵入するかを議論し始めた。
――――しかしその内容は大したものでも無かった。
何せ外回りをしているのはたった2人…同時に片付けて、念の為無線を拝借するという程度だ。
「それでいいだろう…一応
所で兄さんは?その古いカービンでは先ず無理だろう」
確かに44式騎兵銃はこの手の潜入に向くとは言えない。
しかし【彼】もそれは承知の上であり当然対策も取ってきてある…と言えばその通りなのだが、少々アクシデントがあった為に少々信頼性に問題のある代物を持ち出すしかなかった。
彼が“ポケット”から引っ張り出したのは、大きくてゴツゴツとした…巨大なクロスボウ。通称【スナイパークロス】*1と呼ばれるカリムの狙撃手ご用達の狙撃用クロスボウだ。
…しかしこのクロスボウはサイズ故に使用の際に相当な技量が必要となる。
「…なんだ?その、米軍の火力主義が行き着いたようなクロスボウは」
これしかなかったようだ。
更に言うとこのクロスボウ、射程以外に特にこれといった特徴も無い為【彼】は過去に(なんの気の迷いか)原盤まで用いた強化を行ったきり、底無しの木箱の奥底で眠っていたのだが………とにかく様々な事情が重なった結果、今の手元にあるクロスボウがこれだけになってしまったという事だ。彼はこれの原因の一端である一夏に対し内心罵倒したが、その際の行動で自身の命が救われたのも事実なのでどうも強くは言えなかった。
一先ず、目の前の軽装兵の脳味噌を貫く程度の力は出せるハズである…むしろそうでなかったら詐欺だとカリムやチェスターを訴えたい、とまで【彼】は考えていた。問題はどのようにして法廷まで引っ張り上げるのかだが――――話を戻そう。
いつの間にかラウラは茂みに溶け込んでおり、一切の音すら立てずにハンドガンの確実な射程距離内まで近づいていた。【彼】も後を追おうとしたが、流石にこんなデカブツを担いでは足手まといだろう。
「私は右の方だ…兄さんは左を」
コアネットワーク経由の指示に従い【彼】は左側の敵を狙う。
――――兵士二人が倒れたのはほぼ同時だった。
クロスボウの着弾までのタイムラグを読んだラウラがタイミングを合わせてハンドガンを発砲したようだった。隻眼でよくやるなと思いながら彼はスナイパークロスを捨てた。
こんなものを室内で使う方が可笑しいのだ…が、他に潜入向き且つ中~遠距離の攻撃が可能な武器は見当たらない。彼が首を傾けながら“ポケット”を探り、他に何かあったかと唸っていると直ぐにそれらしいものは見つかった。
「他に敵は居なさそうだ。
…所で、それでいいのか?」
二人分の死体を片付けながら、ラウラは【彼】が右手に構える武器について指摘した。
…今、彼が持っている鉄パイプにフォアグリップを付けた様な簡素な銃――――ウェルロッドと呼ばれるそれはイギリス製の特殊消音拳銃だ。使用するモデルは32口径弾を使用するMark.Ⅱ…威力に不安があるが、そもそもが真っ向からの撃ち合いを想定していない銃なのでこのくらいがよいのだろう。
「…
彼はただ単に、人の記憶がある方が武器として信頼できると語った…一体このウェルロッド、前の持ち主はどんな人物だったのだろうか。
兎にも角にも現状は殆ど時間が無い。
早速二人は入り口の罠を警戒しつつ建物の中に入って行った。
入ってすぐは非常に広いエントランスであり、万が一ここで銃撃戦になった場合は障害物も無いのでとことん不利だ。なので互いに足元や天井、床などに罠などが無いか注意しつつ抜き足差し足で進む。
遂にエントランスの階段に差し掛かった時、ラウラが【彼】を制止した。
「…認証システムだ。
下手に触ると警報が鳴る可能性がある」
取り合えずその手の機械について【彼】は彼女に任せる事にした…何せアンティーク趣味のポンコツだからだ。
頭部のみレーゲンを展開した彼女は、ハイパーセンサーを併用しながら慎重にその認識システムがある部分を探る…のだが、何か様子がおかしいようで「ん…?」と訝し気な声を上げた。
【彼】は何が起きたのか、ギリギリ聞こえる程度の小声で聞いた。
「いや…作動していない。
それにシステム自体もかなり古い…建物に以前からあった物か?」
どうやらそもそもの話、システムが動いていないようだ。
――――とすると、何かおかしな話になってくる。
普通認証システムをここに付けるのならセキュリティ上、普通は稼働させておくはず。兵士が見回りに出てるなら余計そのハズだろう…なのに動いていない。とするとラウラが言ったようにこれは以前からあったものという事になる。
…しかしこの建物の経歴からしてそれはおかしい。どうやら当時最先端だったらしいそのシステムは、しかし一体…態々“歴史の研究”を行う研究所に必要なのだろうか?本当にこの施設は、ひいてはこの施設を拠点としていた組織は果たしてどのような歴史を調べていたのだろうか…そこの所が気になった【彼】は目の前でシステムを未だ用心深く調べるラウラに聞いてみた。
「どうやら…地球上の生物の
…彼はため息の後に、自分に聞けば調べるまでも無かった事を話すと「(流石に)そこまで生きていないだろう」と彼女に突っ込まれた。ラウラが100%正論である。
階段を上がる途中も幾つかの認証システムがあったようだが、そのどれもが稼働していない上に一世代前の代物だったらしい。たかだか人類だか地球だかの始まり如きで相当厳重なものだ…まるでエリア51である。これだけで陰謀論は幾つ立てられるだろうか?
そういえば【彼】が簪から紹介してもらった小説にもそんな組織があった様な、無かったような…。
――――――――突然、窓の外で何かが動いたような気配がした。
階段を上り切った先にある窓――――確かその先は中庭に通じていたハズだ――――に何か、人にしてはやたらずんぐりとしたような何かが通った…気がしたのだが、それ以降は動きも何もない。
彼は気のせいだったと改めて目線を真っ直ぐに戻した。
先導していたラウラが急に、左右に円形の絵画が飾られた扉の前で立ち止まった。
「…ここのセキュリティだけ生きている。
網膜認証型か…外の兵士でも入れる、か…?」
どうやら、ここだけ認証システムが稼働しているようだった…厄介だとは思うし何なら「テディベア」の一言で開いてくれとも思わなくもないが、とどのつまりこの先に二人が望むような情報がある可能性が高いのだ。例えそれが罠だったとしても関係は無い、それならそれで丸ごと食いつぶすつもりだった。
【彼】は装置で読み取るのは片目か両目かを聞くと、ラウラが「右目だけだ」と返す。
すると彼はラウラに周囲に気を付けて待機するように言って、来た道を引き返した。
…途中、何故かサバイバルナイフをどこからか取り出したのが少々不穏ではあるが。
一先ずその場で立ち尽くすのは危険だとして、彼女は近くの椅子に身を隠した。
――――それから【彼】は戻って来たのは、暇をつぶす事すら考えない程直ぐの話だった…右手が何故か赤く、てらてらとしているのが気になるが。
彼はラウラにシステムの位置を聞くと、そこに“右手”をかざした。
システムが彼の右手の中にある“何か”を読み取ると無事、扉の鍵を外して二人を歓迎するかのようにゆっくりと開いた。
ラウラは【彼】が一体何を持ってきたのかようやく理解して、非常に引きつった顔をした…想像しなきゃよかった、いくらそれが正解に近かったとしてもだ。
「兄さん…」
きっと今、彼女とは反対方向の…窓際のゴミ箱へと投げ捨てた物体は――――これ以上は考えないのが賢明だろう。
何はともあれだ、先へ進まねば。
…扉の先はいかにも研究所然としていて、しかしそこへ足を踏み入れてみればどの部屋もがらんどうとしていて既にこんな廃墟からは皆撤退しているとしか思えなかった。
とは言え、何故だか聞こえる…僅かな獣声。
「犬の鳴き声…だな、
こんな狭い所で猟犬など放たれたら…ここではISはロードオブシンダーどころかシュバルツェア・レーゲンですら展開出来ない。
【彼】はただ、犬は嫌いだと呟いた。
そんな猛犬達が放たれる事が無い様に内心祈りながら探索を続ける内、ガラス越しにテーブルの上に何かの書類があるのを見つけた。それを確認しに行くことをアイコンタクトで同意した両者は先ず、部屋の入り口を入念に調べた。とにかく丁寧かつ慎重、小さな傷一つすら見過ごさないように。
やがて安全が確認でき、ギィィというやや古い音をたてて扉を開け部屋の中へと入った。
「…変だな、上手く行き過ぎている」
ラウラが率直な意見を述べた。
それは今後何か罠があるという意味ではない…その罠を仕掛けるような所を悉く逃しているという意味だ。実際これは所謂内部告発か、それとも襲撃者と敵対する第三者の介入ではないのかと疑い始めている。
この時【彼】も、先ほど見かけた大柄な人影を思い出していた――――そういえばあれの頭部は相当大きく無かったか?そもそも角の様なものが生えていたかもしれない。不確かな記憶を無駄に疑い続けてしまう程“気に食わない空気”が湿気を帯びて、全身の神経という神経に纏わりついていた。気持ちが悪い…。
――――それでもまずは目の前にあるそれをどうにかするべきだろう。
彼は机の上の書類を取った。今時珍しい、英語で書かれた文書だ。
詳しい内容はほぼほぼ専門用語なので少々分かりかねたが、どうやらこの研究所は古い時代に死ぬことのない存在が居た事を突き止めた…という趣旨の事が書かれていた。随分核心に近づいていたな…と彼は関心した。
しかし、その不死について区分を設定している所が分からなかった…【彼】の誤訳かもしれないが、もしかすると現代の技術で何か“呪い”に段階的なものがあると判明していたりするのだろうか?考えてみるとそうだ…今いるこの時代の技術は彼が生者だった当時からでは思いもしないような観点を見つける事が出来ているのだから。
だが肝心なシャルロットに関する情報は無かった。
興味深い資料だったが今は関係ない…ハズレだったとラウラに引き返して先に進むよう指示した。
それにしてもだ…本当に気味が悪い。【彼】もラウラもそれしかなかった…先の言葉を否定するわけでは無いが、寧ろ今どこかで吠えている猟犬たちが放たれた方が(比較的ではあるが)気分爽快というものだ。いくら息巻いていようが、それくらいの雑な罠であって欲しかったのだが…。
「…ここ、か?」
何度か廊下の角を曲がりに曲がった果て――――二人はとうとう一番の責任者…所長と呼ぶべきか?ともかくそのような人物のための部屋だったと思われる物々しい扉の前にたどり着いてしまった。
一応ブービートラップの類を確認するが、それすら既にもどかしい。とは言え、本当にこの先に罠が存在していたらここで先ほどまでの注意が全て無駄になるだろう…それだけは避けたかったので引き続け警戒を続けながら、便宜上所長室と呼ぶその部屋の中の狭い通路を進む。
…やがて、通路から開けた部屋に出た。
そして見回すまでも無く、真っ直ぐ見つめた先にはデスクが…そして後ろ向きの高そうな椅子があり、それに誰かが座っているのが僅かに見て取れた。
二人はアイコンタクトで静かに近づく事を決め、一層気配を顰めて歩む。
その途中でラウラはナイフを…【彼】は鎧貫きを片手に持って不意の近接戦闘に備えた。
僅かに見える人影からして相手が来ているのはビジネススーツか何か、つまり使いぱしりの戦闘員とは違う…何か情報を持っている重役の可能性が高い。ここで身柄を確保し尋問すればシャルロットに繋がる情報のいくつかは手に入れる事が出来るだろうとは【彼】もラウラも考えていた。
――――先にたどり着いたラウラが、スーツの人物に銃を向けた。
「動くな、手を上げて…持っている物を捨てろ」
「……ようやくか、間に合わないと思ったよ」
銃を向けられたスーツの…髭面の男は振り向き手を上げ、しかし向けられた銃に臆することも無く…ただその厳格な表情をそのままにしていた。
その表情を見たラウラは、何か驚いたような顔をしていた。
――――しかしいつまでも驚いてはいられない、直ぐに2度目の警告を行う。
「早くソレを捨てろ、次は無いぞ」
「ああ、悪い…」
男は手に持っていた何か――――いや、見るからには只のペンを何事も無くデスクの上に置いて、自身はそのままデスクから遠ざかった。本当に敵意は無いようだが、それでもまだ隠している切り札が無いとも限らない。彼女は入念にデスクや男の服の内側などを調べ始めた。
それを待たずして、【彼】はウェルロッドを男に向けながら質問を開始した…まず最初に、何者かと。
「何者…か。
今、君たちがここに来るように仕向けた張本人だ。佐々木君…いや、ムッシュ佐々木。そう呼ぶべきだろうか」
名前を呼ばれた事に対して一瞬だけ反応してしまった…が、そもそも【彼】は世界的にも珍しい…というか二人しか確認されていない男性操縦者の片割れだ。一般人でも名前を、場合によっては顔を知っているだろう。しかし訂正で
問題はそこではなく、この男が【彼】らを招いた…という所である。
一旦真偽の確認は置いておくとして、それが本当なのだとしたら…この、いかにも重要な役職に就いていますと言わんばかりの高級スーツに身を包んだ男は果たして何者か?余りにも流暢な日本語なので訛りから国籍を特定することは出来ないが、顔立ちからしてヨーロッパ系であるのは間違いない。何か…表には公表できない組織の幹部だとかでも言うのか。
【彼】は今度はラウラに聞いた…この男は何者なのか?お前の知っている人物か?と。
彼女は「あぁ…」と、その口から男に関する情報を語った。
――――――――――――――――おそらく、それによって【彼】が受けた衝撃は非常に強いものだっただろう。
「この男は…この男の名は、アルベール。
アルベール・デュノア…」
………今、己がどれほど硬直していたのか。きっと【彼】はそれを知る由は無いだろう。
デュノアというファミリーネームと、男の顔を見れば分かる。この後の説明は要らない…この男こそデュノア社のトップ、デュノア社の
やはり今回の一件にデュノア社が関わっていたのだ…そう確信した【彼】は、目の前にいるおそらく全ての元凶たる男をより強く睨みつけた…湧き上がってくる、最早どうしようもない怒りと殺意を精一杯抑えるその眼に射抜かれながらも、スーツの男――――アルベールは今も硬い表情を崩さない。
【彼】は低く…そして押し殺すような声で、何のつもりだ、何の為に呼び寄せたとアルベールに問いかけた。
「…君たちに、情報を与えるためだ。
娘の、シャルロットの居場所を――――」
言葉を遮るように、【彼】はアルベールの胸倉に掴みかかり、こめかみにウェルロッドの銃口を押し付け、よりドスの聞いた声で責め立てた。何処にいる、何処にやった、と。
3・2・1・1・4・2・1・3・2・4・1・5・3・2・1・1・4・2・1・3・2・4・1・5
「やめろ!兄さん!
一旦この男ごと、あの倉庫に――――ッ!?」
ラウラが制止に入ったその直後、そう遠くない場所で何かが大きく拉げるような音が響いた。【彼】はアルベールを離し、確認してくるとラウラに告げて再び狭い通路を通り廊下に出た。
――――また、あの音が響く。
微かに聞こえる…蝶番が軋む音から恐らく何者かが扉を破壊しているのだと推測を立てた彼は、ウェルロッドをコッキングして不意の接敵に備えた――――その瞬間から、息を切らした武装兵に出くわす。
兵士がアサルトライフルを向けるより早く、【彼】のウェルロッドが眉間を撃ちぬいた。
痛みを感じる間も無く絶命した兵士は…しかし前述のように、その直前まで何かから逃げて来たかのように呼吸が荒かったのが気になるところだ。
…今丁度、3度目に今までで一番の轟音を響かせた“それ”から逃げていたのだろう。
今の音で、恐らく扉が破られた…そんな剛力の持ち主は今真っ直ぐに此方へと向かっている事だろう。
32口径のウェルロッドが通る様な相手とは考え辛かった、なので【彼】は44式騎兵銃を背中のホルスターから引き抜き、装弾数を確認して銃剣を展開し、真っ直ぐ構えた。
次の曲がり角…その奥から聞こえる足音からして、おそらく此方が
――――――――しかし…引き金を引く事は出来なかった。
その“剛腕の持ち主”は唸りを上げて、【彼】を血のような眼で射抜く。
今日一日で、後何回驚けばよいのだろう。
曲がり角の先にいた、剛腕の持ち主の外見は余りにも衝撃的過ぎた……人の倍ほどあるような身長と筋肉量、そして常人が両手を用いても持ち上げられるか分からないような二振りの大ナタ…そしていかにも怪物然とした、異形のシルエット。
これだけの要素が揃えば、確かに怖気づいてしまうのも無理はない…が、彼が顎を外すほど口を開いて驚愕したのはそうした未知との遭遇が理由では無かった――――むしろその逆、よく知った顔に…最早見ないだろうと思っていた、その“山羊”のような面に出会ってしまった事に驚愕したのだ。
…そう、彼は目の前の怪物を知っている。
“山羊頭のデーモン”。それは嘗てそう呼ばれていた存在だった。
冗談じゃない。【彼】は叫びながら胴体に2発、弾丸を撃ち込むものの山羊頭はそれが効いた様子をピクリとも見せない。それどころか、その2発で怒り狂ったのか雄叫びを上げて鉈を振り上げ、彼目掛けて突進してきた!
今度はその特徴的な頭部に照準をつけた。
――――――間一髪!、山羊頭の頭部の、4つある目の内の1つを撃ちぬいてその場で悶絶させることに成功した【彼】は一旦退却して所長室に戻っていく。
「何があったんだ兄さん!?さっきの銃声は一体…ッ」
説明をしている暇は無かった。
この部屋には幸い、窓が幾つかある…高さも、ISさえ用いればどうって事のない高さだ。【彼】はラウラに、
奴は既に所長室の扉に真っすぐ向かってきている。それに再び銃撃を浴びせ始めるが、今度は両手に持った大ナタで防がれてしまい、大した効果を見せる事なく危険な領域まで近づかれてしまった。その故に彼は即座に銃剣による突撃に切り替え、山羊頭の脚目掛けて走り出す。
大ナタの縦振りを紙一重で躱し、その丸太にも似た脚にスパイクタイプの銃剣を突き立てた!
だが、思っていたより深くは刺さらなかった。そして何度か戦った、どの山羊頭のデーモンよりも強い…それが【彼】の率直な意見だった。
その時、遠くから硬く軽いもので床を突く複数の音がとんでもない速度で迫って来る。
【彼】は即座に何が迫ってきているのか理解し、そして慟哭した…今じゃなくてもいいだろうと。
一先ず山羊頭の脚から銃剣を引き抜き、大ナタを振り切って再び距離を取り――――というより逃走して、より迎撃しやすい場所へと移動した。それを追いかける山羊頭と…硬く軽い“爪”をカチカチカチカチカチカチと鳴らしなが猛スピードで駆けてゆく、先ほど何処かで吠えていた猟犬。
どうにか迎撃がし易い場所までたどり着いたのは良いが、相変わらず狭い…図らずしも現状は、【彼】をして“悪夢”と言わしめる、不死街の下層における山羊頭のデーモン戦の再現となってしまった。
いや…犬の数が数倍数十倍ほどに増えているので余計最悪だ…。
彼は“ポケット”からロングソードを引っ張り出した…あの鎧職人謹製の剣だ。
いの一番で飛び掛かって来た、肌が焼けただれてやせ細ったグロテスクな猟犬の頭を振り下ろしで勝ち割り、次に来た2匹を同時に首を跳ね飛ばし、その後間を置かずして噛みつかんとやって来た1匹の心臓を貫いた。
犬の対処は慣れたものだ、心底やりたくないのはいつまでも一緒だけれど…。
それでも数が多いと厄介であるし、特にあの山羊頭のデーモンが邪魔だ。
――――突然、背後から猟犬が飛び出して来た!
今まで斬り伏せたどの犬よりも一回りか二回り大きなそれは【彼】が防御として突き出した右腕に噛みつき、鋭い牙を突き立てた。
肉が削がれ、骨までも砕かれんとする痛みに耐えながら彼は犬の頭部をそのまま壁に叩きつけ、脳味噌を揺らした所で先の1匹と同様に心臓を指し潰した。その内に山羊頭がナタを振り上げて迫っていたので奴の側面を転がるようにすれ違い、その先にいた犬を蹴っ飛ばした後に山羊頭の身体をよじ登り、肩に足をかけた所で振り落とされる前にその頭蓋に剣を突き立てた!
強烈な痛みに耐えかね、暴れる山羊頭から剣を引き抜き、ナタで断ち切られる前に飛び出して脱出……その勢いで、再び噛みつかんとする猟犬に対して上から右足を…下から左足を振り上げ(振り下ろし)、まるで蛇の顎がバクリと獲物に喰らい付くかのように猟犬の顔を挟み潰す。
そのまま膝を折りたたみ、着地と同時にグルリと犬を巻き込んでそのまま首の骨を折り絶命させた。
また動作の直後を狙った、今度は他より一回り小さな猟犬の…その暗い穴のような眼をロングソードで突き刺す。
これだけ倒してもまだ猟犬は6匹か7匹はいる…これをどう斃すべきか、そう考えている内にも猟犬たちは迫ってきている。
うち、最初に牙を向いてきた個体を、何時ぞやの大掃除をたまたま免れた小盾を“ポケット”から引っ張り出して弾き返し、怯んだ隙に首を斬り落とす。
…いい加減埒が明かない、そう感じた【彼】は虎の子の黒火炎壺を猟犬の群れ目掛けて投げた――――するとどうだ?ドカーンというよりチュドーン!そんな思いもよらない程の大爆発を起こして群れを一掃し、山羊頭にも少なくないダメージを与えた。
寝耳に水…そして、棚から牡丹餅と言う奴である――――そういえばこの黒火炎壺は
…しかし、彼女はこの一件の襲撃者にある意味関わっている可能性があるのだ…そう考えると完全にプラマイゼロ、というかマイナスである。
それは兎も角、既に山羊頭のデーモンは息も絶え絶え…いくら強かろうが所詮は山羊頭だ、今更【薪の王】が苦戦する要素など何処にもない。盾を捨て、剣を逆手に持った彼は山羊頭目掛けて走り出し、その目の前で大きく跳躍する!
逆手に持った剣の切っ先は…先ほど開けた頭蓋の穴目掛けてズルリと気持ちが良いくらいスムーズに刺さり、脳を破壊された山羊頭は一瞬痙攣……その後、ピクリとも動くことなく背中からばったり斃れた。
【彼】はずるるぅ…とグロテスクで滑りの良い音を立てて剣を引き抜き、全く…と思いながら剣の血糊を振り払った。
…早い所、ラウラに追いつかなければならない。ここにいるデーモンがあの一匹とは限らない上に猟犬も何匹か向こうにいるのかもしれないからだ。
彼はズタボロになったセキュリティドアを超えて、再びエントランスに戻って来た。
――――するとどうだ?巨大な騎士が佇んでいるではないか。
一体なんなんだ此処は。悪態をつく程にもう呆れに呆れて、疲れさえ覚えて来た【彼】に、兜の一本角が特徴的な騎士は細長い剣を構え、瞬く間にその間合いを詰めて今にも彼に斬りかからんとしていた。
そして振り下ろされる、鋭い一撃…それは【彼】が立っていた階段をいともたやすく切り裂き、その余波で彼が怯みそうになる程だ。何はともあれ出口を目指すがスルリと先回りをされ、そのままノーモーションで飛んできた刺突によって皮一枚が小さく切り裂かれる。
なんてふざけたスピードだ…そう思っている時、既に二撃目はすっ飛んで来ていたのでハリウッドダイブで横振りを紙一重で躱す…はずだったが、多少髪の毛にあたったようで予期せぬ散髪をされてしまった。
こんな所で、こんな見るからに頑強そうな相手と戦う暇はない…どうにか隙をみて逃げ出そうとするが、その隙が出来る気がしない程に“騎士”の剣技は強烈だ…ラウラやシャルロットの事を気にする焦りがあることも要因だが、【彼】でさえ避けるのが精いっぱいである。
僅かな構えの後に、騎士がまた雷光のように早い刺突を放った…間一髪躱せた【彼】はしかし、運悪く瓦礫に躓いてバランスを崩し、床をゴロゴロと転がる羽目になる…が、そんな事など騎士には知った事ではないようで再び突きを放った。これもギリギリで躱せたものの、恐らく次が放たれれば【彼】の心の臓は容易く貫かれる事だろう。
まるで四騎士が一人、深淵歩きアルトリウスを思わせるような騎士の攻撃に追い詰められ、しかし打つ手など殆ど残っていない【彼】は遂にIS、ロードオブシンダーの展開を決意した――――その時だった。
何かが近づいてくる…移動する音だ、とてもスピードの出る何かだ。馬か?いや違う、エンジンの音だ…強い内燃機関を持つ自動車の音だ…じゃあ、車種は?
――――その答えは、間を置かずして判明した。
強烈なエンジン音と共に、1台のバイクが入り口のもう動かない自動扉を突き破って【彼】と騎士の間にダイナミックエントリーし急ブレーキをかける。一体何が…と考えている内にバイクに乗っていたライダーが折りてヘルメットを外した。
「ここは俺がやる…お前は逃げろ…!」
【彼】は、目の前の男を知っていた――――臨海学校前、水着売り場で出会った男…名を【六多七瀬】という男は、よく見れば一切瞬きをしない不気味な…しかし、強くそして熱い意志を持った眼差しで、先の言葉を彼に放った。
ジョーカー
仮にも獅子兜の仲間である上に、そもそも六多七瀬という“偽名”を名乗っているこの男を信用していいのか分からない…が、一刻の猶予も許されていないこの場において助太刀してくれるなら、もう誰でも良かった。
【彼】はこの場を七瀬に任せ、廃墟から脱した。
そして、変わって騎士の前に残った七瀬はぐっと眼前の敵を睨みつけ、ポケットから“何か”を取り出す。
「…大丈夫だ、3分以内に決める」
両者が睨み合い、しーんとしていた廃墟に機械音が響いた。
「怪物よ、さあどうする?」
――――リヴィアのゲラルト(The Witcherシリーズ)
<次回までのロード時間中のアイテム紹介>
【灰燼騎士】
何者かによってさまざまな改造が加えられたIS。
それは他の騎士達とは違い、光も闇もなく、ただ忘れ去られた“虚無”より出でた者共を炉にくべる使命を持つ。
ワクチン接種二回目で僕も晴れてワクワクチンチンとなったのでその勢いで色々弄っちゃいました…。勢いって本当に怖い