(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
こんな夜に限って、一つも篝火はない。
既に銃声が幾つか鳴り響いている…ラウラ達が応戦を開始しているのだろう。
7月19日、多分…この日から今の全てが始まった。
俺だけじゃない。いつでも、何処にでもいる…己が宝の為に、世界を差し出せる奴が
――――そして、どこかでで手榴弾が破裂した。
罠が作動した証拠かもしれない。どうやら連中、出端を挫かれたようだ…頃合いである。そう見極めた【彼】は床に突き刺していたロングソードを引き抜いて、その右手からすり抜けぬよう柄を強く強く握りしめた。
今宵、初めて使う防刃仕様の特殊繊維グローブとガントレットの着け心地が最悪なのが多少の心残りではあるが…。
懐かしい足音だ。意思を失った、虚ろな獣が何にも囚われず…そして何をも想わず歩み来る音だ。
――――ここで多少の違和感を覚えた。【彼】は現代の軍隊というモノを知り尽くしたワケではないが、少なくとも“特殊部隊”と名乗るのなら、こんな突進バカのような行軍を行うハズがない、のだが…。
そう考えていた所で、コアネットワークを通じて楯無から連絡が入る。
『佐々木君、こいつ等何か変よ!?
幾ら撃ってもッ…これじゃあまるで…』
『仕方がない…パンツァーファウストを使うッ!』
ラウラが放った炸裂弾頭が、どこかで爆裂した音が響き渡る。
…物凄く、強烈な勢いで悪い予感が漂って来た。
いや、仮に“そう”でなかったとしてもだ。楯無の話から推測して…仕掛けられた、幾つかの罠が既に意味を成していない可能性がある。彼が確認した限りでは半分ほどが人の痛覚に頼った罠であった覚えがあるからだ…。
それは無駄にエネルギーを必要としない、効率的な罠だが…それだけに致命的な力を持つことはない。
かのフィリピン戦争において当時の米軍が経験した悪夢を、【彼】らは弾丸ではなく罠という形で経験することになるかもしれない…しかし、まだ手榴弾を用いた罠がある。アレならば広範囲を消し飛ばす事で“その手”の兵隊にも効果的なストッピングパワーが望めるだろう。
――――また手榴弾が破裂した、微かに肉片の飛び散る音もする。
心なしか、かなり近い所で炸裂している…それと妙に数も多い。いくらこちらが少人数とはいえ、こんな…たった一人の敵に人数を割けるほどの大部隊なのだろうか?
一度、コアネットワークでラウラまたは楯無に連絡をいれた。
『数?いや、確かに多い事には多いが…それ以上に奴ら一人一人がしぶとくてッ――――なあ、既にかなり侵入を許しているハズだよな?』
『そりゃあそうでしょ――――!、可笑しいわね…一人もこちらに流れ込んでこない』
そうだ、そこが可笑しいのだ。
仮に連中…ザ・ウォッチャーの狙いが【彼】ただ一人だとしよう、そうなるとこんな広い廃倉庫群など探し回らねばいけないハズ…だが、奴らはどういう訳かほぼほぼ一直線に【彼】めがけて走っているのだ。まるで居場所など最初から筒抜けであるかのように。
『全くコッチにはこないわね…足止めに応戦するばかりで』
やはり…と、先ず彼が疑ったのは内通者の存在だ。
何より怪しいのはアルベールだが、あの男は先ず今【彼】が何処にいるか知らないし知る術をも持たない。楯無も少々怪しいとは思うのだが今さっきの発言が内通者としてのものなら滑稽なだけでしかないし、そんなドジをするような人間とは思えない。
そう考える内に足音がゾロゾロと近づき、10秒に1回ほどに罠が作動する爆音が響き渡る。
――――たった今、モノが崩れる音が響いた。例の“穴”にしかけた釣り天井の罠だ。あれでどれだけ仕留めれたかは未知数だが…全体の数からして1割にも満たないのは分かり切っていた。
左手に握る黒騎士の盾を前に構える…今は背後の心配をしなくていい、何せすぐ後ろは壁で所謂背水の陣とか呼ばれる状態で挑むのだ。ラウラ達の報告から敵が
ここではナイフはリーチ的に困り、銃火器も味方で入り組み過ぎる上に距離も中途半端だ。
因みにいくら古い盾と言えども原盤による強化を施したものなら7.62x51mmのNATO弾も防げることは事前に実証済みだ。撃たれ過ぎに注意すれば削り切られる事もない…後は己次第だ。
…ラウラから、更なる情報が入る。
『狙撃手を確認した。
20㎜の対物ライフルだ…弾の種類によっては、この距離だと壁ごと撃ちぬかれるかもしれん』
20ミリ…と、彼は非常にマズイ現状を確認して顔をしかめた。
流石にこの原盤強化の盾も対物ライフルとなると少々話が変わって来る…まだ12.7㎜の方が可愛げもあったものだ、流石にこんな狭い空間で持ち出される事は無いと信じたいが外側から撃ちぬかれてはどうしようもない。
【彼】はラウラと楯無に、狙撃手を最優先で排除するように言った。
『無茶言ってくれるわね…リスク高いのよ?カウンタースナイプって…!』
それは百も承知だった。
――――その時、敵が既に約10m圏内に入りつつあることを悟った。
見えている侵入口は3つ、もし発破をかけられたなら更に多い…狙撃手の事もあり、彼は壁しかないハズの背後や背の低い頭上までもを警戒した。最早何処から飛び込んできてもおかしくはない。
…最初の敵は、特に奇襲もなく正面の侵入口から真っ直ぐに突っ走ってきた。しかしそこは対人用の地雷原と化しており、踏み入った者を順番に地雷が消し飛ばして行く。
その内、右側の侵入口からも罠を乗り越えた敵兵がなだれ込んで来た。
とんがり帽子のようなヘルメットの敵兵は、ボウイナイフとカランビットナイフの二刀流を構えながら瞬く間に間合いを詰め――――【彼】は敵が攻撃も防御もするより早くロングソードを振り下ろして最初の一人を斬り殺した。死体から流れ出た僅かなソウルが【彼】の身体に吸い込まれ一体化する。
次に迫ってきたカランビットのフックを素早く潜り抜けるような動作で躱しつつがらあきの胴体をすれ違い様に斬り裂き、真正面にいた敵兵の(PDWを構えた)腕をロングソードで貫く。そのまま腕ごと上に押し上げられた銃口から弾丸とマズルフラッシュが吐き出され、明後日の方向に弾痕が複数出来た。
腕を負傷した敵の片足を蹴って体勢を崩し、丁度腰当たりまで下がったその顔面目掛けて腕から引き抜いた剣の切っ先を刺して絶命させ、同時に背後から斬りかかって来た敵を盾で払い落し、再び斬りかからんとした所を次は剣でガード。間髪入れずに盾でボディーブローを叩き込み蹲った所を更に両腕の振り下ろしで地に伏せさせて、うつ伏せ状態の背中から思い切り剣を突き立てた。
続く、今度は何処で拾って来たのか古びたラバー製スレッジハンマーで殴りかかって来た敵をパリィからのスタブで対処。さらに追加注文された直列3人組――――武装は前からカランビット&ボウイナイフ、PDW、アサルトライフルのような何か――――が来た辺りから段々と【彼】の処理能力を超えつつあった。
フェイントからの刺突、断頭、兜割りの順序で3人組を片付けつつ、更に迫ってきた5,6人のナイフ持ち集団を盾でまとめて押し返し、すぐさま剣を広範囲に振って複数人を切り捨てる。
…しかし、その斬撃を縫って目前まで迫った敵が【彼】の胸をカランビットナイフで切りつけた!
バトルファイトを二度と終結させるな
咄嗟のバックステップによって浅い切り込み*1で済んだため、即座の反撃の串刺しによってその敵の脚を地面に釘付けにし、盾で全力のアッパーカットを放った!
盾越しに伝わる顎及び首の骨がメキリと砕ける感触は、対象が絶命ないし戦闘不能になった事を意味している。故にさっさと脚から剣を引き抜いて次の敵に備えた。最早撤退の選択肢はない…今しがた襲い掛かった敵の、真っ直ぐな長槍のような刺突を盾の丸みで受け流し、そのがら空きな背中をバッサリと切りつけた後に何処からか投げられたナイフを叩き落としつつPDWの銃撃をガード…そのまま射線を切るような位置に移動した時【彼】は己が既に囲まれていた事に気が付いた。
敵の1“体”ごとが不規則に、影のように動く…一見、まるで細かな連携が取れているように見えるそれは実の所、誰一人として正気を保っている者がおらず、各々の欲望で肉体が覚えていた技術を基に動いているだけだった。
切り札は二つ…別たれたままでいい
――――そうだ、楯無の言う通り…奴らはイカレている。
肝心なのはそれが薬物等の現代科学的手法に基づいたそれではなく、古い古い技法――――いやもう“業”とも呼べない、そうあれかしとして…なるべくして成った“現象”であるそれによって行き着いた者たちを【彼ら】は「亡者」と呼んでいた。
つまりは不死の成れの果て、まともで無くなり見境なく力を振るってソウルを啜る者達。
なぜそんなのが今の時代に生まれているのかの答えを彼は求めない、既にデーモンが例の研究所において確認されているのだ…取り返しがつかなくなりつつある事など、とうの前に理解している。
…【彼】は包囲していた亡者のうち、最初に斬りかかったものを返り討ちにした。
それに続いて2人目、3人目と続々…得物を手に彼へのなだれ込む。一人一人、確実に殺す手法を取ってはいられない…彼は刺突より斬撃を多用して、広範囲にジワジワと削る作戦に出た。
何度かナイフや銃弾が身体を掠め、幾度もに僅かな血を滲ませつつも敵の数は確実に減らして行く。
彼は亡者の一人の刺突を避けた直後、そのまま壁へと走り去って再びそれを背に戦い始めた。正面か側面の敵に集中しつつ、剣で斬り裂いては盾で弾き――――または受け流し――――刃と刃、そして弾丸が飛び交う極限領域を戦い抜く…その内、蹴りで突き飛ばした亡者が運悪くブービートラップを踏み手榴弾及びにオマケのC4が起爆!その衝撃によってか、棚がガラガラと崩れ落ちて積み込まれていた資材の残骸等が雪崩のように【彼】と亡者の兵隊たちの頭上へ落ちて来た。
絶体絶命の瞬間に、彼は亡者のカランビットナイフが引っかかっていた黒騎士の盾を放棄し、どうにか崩落から逃れ、他のそもそも崩落に気が付けなかった愚鈍な亡者兵たちはそのまま資材の山の中に埋もれて息途絶えた。
…とは言え、まだまだ敵は多い。まるで無限に湧いてきているのかと…鋼鉄の覚悟すら擦り減らし切られない程の錯覚を、それでも振り切ってまた亡者の軍勢へとただ一人立ち向かう。
左手には失くした盾の代わりに、背中のホルスターの端から引き抜いたウィンチェスターM1895専用の銃剣を構える。剣よりもリーチの短いこちらは、それ故に刺しても素早く引き抜ける点から主に刺突を中心とした運用を行った…奇しくも亡者たちの近接兵と同じ
…飛び掛かった亡者が振り下ろす刃を、【彼】は紙一重で躱しすれ違い様に銃剣で足を切り払って転ばした後、正面でPDWを構えていた亡者をやや下気味からの斬撃でバッサリと斬り飛ばす。
直後、左右からの挟み撃ちを仕掛けられるが彼はこれを先ず、左手からくる敵を剣で心臓を胴体丸ごと貫き、遅れて右手から来た敵を剣の柄を離した手に銃剣を持ち替え、更に眉間目掛けた投擲で脳を刺し貫いて対処する。
心臓を貫かれ、しかし未だ絶命できずたったままフラフラとする左手側の敵を、剣の柄を握った後のミドルキックですっ飛ばし、同時にその胴体から剣を抜き両手持ちで構えた。
剣を振り回し、正面に捉えた亡者に二度三度フェイントを入れた後にぐるりと身を翻して勢い付けた横振り一撃を与え、胴を切り裂いた後にその奥に居たアサルトライフル持ちの亡者目掛けてタックルを放つ!そのまま力任せに亡者を押し切り、2人…そして3人、をも巻き込んで壁に押し付け、最後にグサリと剣を刺して3人丸ごと屠った。
…その時、頭上からドンドンドンと遅い連射の銃声が響く!
何事かと思えば、ショーシャ機関銃で援護射撃を行うアルベールの姿があった、お陰で背後の敵に斬られずに済んだのだが…どうやらその際、弾詰まりを起こしたようで彼は「クソッ!」とか「これだから急造品はッ…!」とか呟きながら弾詰まりの解消を試みていた。
正直、【彼】もアルベールを少し気の毒に思った。が、今はそれどころでは無い。
飛びつくように、斃れ伏した亡者の頭から銃剣を引き抜いて、ホルスターのウインチェスターM1895に取りつけた後、丁度いい瓦礫の向こうへと跳び込んでアルベールに気を取られる亡者兵の頭に1発ずつ弾丸を叩き込んだ。
かの第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトが愛用した405ウィンチェスター弾仕様のそれは、命中する度に派手な血しぶきをあげて頭を弾き飛ばす…過剰ではないかと思われる威力も、本来はライオンなどの猛獣に用いる*2ような弾頭なのだ。
亡者を15体ほど…リロードの数からして3回ほど行った所でとうとう奴らの気が【彼】に向き始めた。PDWの掃射を瓦礫に身を顰める事で躱し、その中を匍匐前進で進んで素早く奴らの側面へと回り込み、再び銃撃を開始。近づいてきたナイフ持ちを喉笛への銃剣の刺突で沈め、更にさらに…態々引き抜いてきたのか【彼】が使っていたロングソードを手に斬りかかった亡者を、両手で銃身側を保持して繰り出したストックのフルスイングで顎を砕きつつトドメに眉間に弾丸を叩き込んでその頭を吹っ飛ばす。
これで手持ちの405ウィンチェスター弾も残り4発。それでも敵はまだ数え切れない程多い。一先ず、在庫の少ない修理の光粉をM1895に吹っ掛けた後に物陰から身を乗り出し、一番手前の亡者の心臓を撃ちぬいた後に銃剣突撃を決行した!
それは古い世界を焼き尽くして今の、そして未来のための肥料に変える焼却炉
敵の掃射が頬を掠め、肉を思いのほか深く抉り飛ばされるもののそれを意に介さずまずは亡者の一人の右目から脳へ…深々と銃剣を突き立てて瞬く間に殺害した後に左手で腰にぶら下げていたハンドアクスを引き抜いて、右手側のAR持ち亡者を鎖骨から脇腹辺りまで、所謂袈裟斬りという形で切り捨てた後に銃剣を引き抜いたM1895を素早くスピンコックした後に大きく集団から距離を取って銃撃を開始する。
例え明日が欲しくても…使命を果たさない限りその明日もない
残り3発…2発…そして最後の1発を打ち切る前に、近づいてきた亡者1体の腹部を銃剣で一刺しにしてハンドアクスで喉を切り裂き処分。亡者の首元から濁った鮮血がブシャリと飛び散った。
太陽が沈まず、やがて生命を蝕むその日までに
そして――――と、次の敵を片付けに行こうとした所で、何か硬くて太い物体を叩きつけられた【彼】は大きく吹っ飛ばされた。幸い、咄嗟の防御に用いた手甲が想像以上の性能を誇っていた事と、彼自身身体がソウルによってかなり強化されていた事、そして単なる当たり所という運によって大事無かったが、状況としてはかなりマズイ事になった。
他の亡者とは一線を画す程の巨体を持った肥満型亡者が、電柱だか丸太だかよく分からない巨大棍棒と鎖付きの鉄球を担いでやってきているのだ…それだけならそれでよいのだが、問題はそれが4体も居る事。先の大爆発と目の前の4人組のせいで大分広くなってはいるが、それでもこんな狭い場所では物量、質量共に間違いなく【彼】が不利だ。
先ほどから、何か敵がやたら数だけで脆いと感じていたが…まさかこんな古めかしい奥の手が来るとは想像もしていなかった。
それでも彼は銃と斧を握る手を緩めない…咄嗟に巨漢亡者の、ヘルメットで守られた頭部に狙いを付けて最後の弾丸を放つ。無論弾丸はヘルメットによって弾かれてしまうが、強烈なエネルギーを持つ大口径弾の衝撃はおいそれと無視できるものではなく直撃を喰らった巨漢亡者は頭を押さえてよろめいた。その隙に他の巨漢亡者の間をすり抜ける様に【彼】は走り抜け、振り下ろされる棍棒を紙一重で躱しつつ、分離した銃剣をよろけた亡者のアキレス腱に思いっきり突き立てる!
肉質の方はそれほど硬くなかったために深々と、刃が見えなくなる程に刺さった刃で巨漢亡者が悶え、斃れ伏した隙に丸出しの首元目掛けてハンドアクスを何度も振り下ろした!巨漢亡者の動きは鈍重でこちらへの到達まで大分時間がかかる。
原盤によって凄まじい切れ味を持つそれは、刃の小ささを物ともせずたったの5振りで完全に亡者の首を断ち切った!
しかし、それでもまだ3体…この数を相手するには分が悪すぎる――――と、考えていた所で再び頭上からの銃撃が飛んできた、どうやらアルベールは欠陥品のショーシャ機関銃を捨ててリベイロールスによる援護射撃に切り替えたようだ。しかし、正直リベイロールスの小さな弾丸は巨漢亡者に対して有効的な効果を齎してはいなかった。
それでも鬱陶しい事には変わりなかったようで、巨漢亡者は一心不乱にアルベール目掛けて鎖鉄球をぶん回す。そのせいで他の通常亡者を巻き込む…のはいいものの、資材やら瓦礫やらがやたら滅多羅に弾け飛び、壁にも幾つか穴が開き始めた。
このままではアルベールは死にかねない、ここでポックリ逝かれては重要な情報源が無くなってしまう…彼は咄嗟に、未使用の手榴弾を拾い上げてピンを抜き安全レバーを取り外し、爆発までの時間と投擲速度を一瞬で計算してグッと僅かに溜め込んだ後に亡者の頭目掛けて投げ付けた。
…手榴弾は亡者の眼前で炸裂!最早悶える間もなく吹っ飛ばされ、後頭部から倒れたそれは多くの通常亡者を巻き込んで圧し潰した。しかしアレで死んだとは思えない、だからと言って先の一人目のように首を断ちに行くには他2体が邪魔過ぎる。
あまりにも悪すぎる状況を何度も何度も噛み締めている内、自分の背後で何かがむくりと動く気配がした。まさか…――そんなはずが…――そう思って振り向くと、先ほど首を断ち切り殺したハズの巨漢亡者が…その太い太い2本の脚で立ち上がっているではないか。
冗談が、冗談が過ぎている。
首無し亡者は何処で拾ったか、日本刀のように反り返った鉄骨を振り上げ、首の断面から黒く淀んだ血液をダバダバ流しながら【彼】へと迫る様は恐怖以外何者でもない…彼は一瞬の怖気からどうにか脱し、疾風のような振り下ろしを飛び込みで避けた。
続く、首がまだある3体が棍棒を振り回して周囲の通常亡者を薙ぎ払いながら近づいてくる。いい加減、ロードオブシンダーの使用を考えた【彼】だがアルベールが居るせいでそれもできない。目の前の巨漢亡者を超えるサイズのロードオブシンダーは何か武器を振り回すだけでこの倉庫内の半分を消し飛ばしかねないのだ。おまけにコアがソウルと融合したせいか部分展開もできない。
アルベールを逃がそうにも、既に出入口には大量の通常亡者が流れ込んで来ておりそう簡単には行かないのだ。
…戦い続けるしかない、例え無間地獄の果てで足搔き続けるのだとしても。
古くより変わらない劫火にも似た覚悟の元、彼は再び大地を強く踏みしめて“ポケット”から【黒騎士の大斧】を取り出し、ガッ…と床を蹴って突撃を開始した!
【彼】による大斧の縦振りで、先方の巨漢亡者(首あり)の棍棒が先ず薪のように割れて、そしてバッサリとその太い腕までもが真っ二つに斬り裂かれる。その痛みに悶えてか…或いはあまりの衝撃に驚いてか悲痛な雄叫びを上げたその亡者を置き去り、今度はグルリと身を翻し勢いを付けた横薙ぎで、首無し亡者の片足を断ち切り、ダメ押しの体当たりでバランスを崩し倒した。
他の巨漢亡者へと向かおうとする途中、まだ【彼】を狙い続ける通常亡者の軍団を縦振りが地面に叩きつけられる衝撃や単純な横薙ぎ等で蹴散らしつつ、最後は全力を込めたカチ上げ斬りで一分隊ほどの数を仕留めた。
とうとう他2体の巨漢亡者が目の前まで迫った時、彼はこの時の為に温存しておいた“黒火炎壺”*3を勢いよく2体の足元へと投げつけ大爆発を起こす!全身を焼かれ、手足の指が数本吹っ飛んだ奴らに今がその時だと言わんばかり【彼】は攻め立てた…まず右側の1体の、棍棒を持たない手をバッサリ斬り落とし、次にはぶくっと太った腹部目掛けてボディブローに近い形で大斧を振るう。
重厚な刃によって深く抉られた腹から、臓器と血がグロテスクに噴き出し周囲に悪臭を巻き散らす。その中を一切も躊躇なく踏み込み、彼はそれらを被りつつ巨漢亡者の股下をスライディングで抜けて、背後を取った最後の一体へダッシュ攻撃を繰り出す。
走りで助走をつけた振り下ろしによって、巨漢亡者の脊髄はまるで竹のように割かれ動けなくなった。そこへ【彼】の容赦のない連撃が入り、瞬く間に亡者はただのミンチ肉に変わり果てて行った…そして最後に、腹を裂かれた巨漢亡者のその傷口の中に最後の黒火炎壺を投げ込んだ事で所謂“きたねぇ花火”へと化した。
漸く、手をさけるチーズ宜しくされた亡者が起き上がるのを確認し、有無を言わさず残りの四肢も残らず断ち切るか潰すかをされた結果、単なる肉達磨となった。残りは足を斬られ、しかも仰向けに倒れたせいで身動きが取れなくなってしまった首無し亡者である。これの処理さえ行えば後は…まだ通常亡者が居るものの、一応倉庫自体を放棄するつもりで全体にC4を仕掛けたので、それで一網打尽にしてやるだけだ…奴らは【彼】に引き寄せられる…簡単に釣られるだろう。彼本人は爆発をロードオブシンダーで対処すればよい。問題はアルベールだが――――――――――――――――。
そもそも博士の中での【彼】の役目など、それほどに大したものでは無かったのだ。
守りたいものがあり、そのために犠牲となる人柱…そして守りたいものを狙う者、それを釣るための囮
不死身の怪物…それだけの理由で【彼】は博士に目を付けられたのだ。
【彼】はソレを知る由はない…が、感付いてはいるだろう。
――――――――――――――――そう考えていた瞬間、目の前で倉庫半分が吹き飛んだ!
何事だろうか。C4が誤爆したにも爆発が中途半端過ぎる上にそもそもタイマーをセットしてあるので1分の猶予はあるハズだ、更に言えばC4が熱気で誘爆したなどと聞いたことがない。
混乱している内、まるで久しぶりに聞いたかのような楯無の声がコアネットワークを通じて響いた。
『佐々木君!不味いわ…所属不明のISが2機接近している!』
やっとか…亡国企業も遂に本腰をいれたようだ。
最早こうなる事も想定してのISの温存だ…それも最早必要ない。【彼】の身体に、チリチリと火が宿っていく。
――――爆炎揺らめく、視界の向こう側へと走り去った彼はその炎獄の中でロードオブシンダーを展開した!
「瞬き一つで確実に頭を割られる!ひと太刀合わせるごとに骨が軋む!受け流せる様な剣圧じゃねェ!!同じだ、あの時と!!だが、戦える。あいつに辿り着くまでの数え切れない夜がオレを叩き上げた。邪魔だ!!」
――――ガッツ(ベルセルク)
元よりこの物語は、輪廻や連鎖という柵の話ではない。
全ては古き時代の未来――――それへとたどり着くための物語である。
故に奇跡――――そうであるべきなのだ。
誰か歌詞がダクソっぽい歌出してるヘヴィメタルバンド知らない?
次回は…ちょっとこちらの更新の意欲が下がり気味になってきたので、ちょっとダクソ関係の動画とか中世武器の資料とか他のIS二次とか見たり読んだり(後は他の小説を投稿したり)で遅くなるかもしれませんしならないかもしれません。
<次回までのロード時間中のアイテム紹介>
【菊のストラップ】
嘗て、灰の大地へと迷い込んだ者の置き土産。
本来はペンダントだったそれが今ストラップという形であるのは、葛藤と試行錯誤の末に己の母を殺した証である。
…どんなことがあっても、いい人だから。おかあさんもきっとわかってくれる
それでもお前がやったんだ。