(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
今回の話「ん????まさか…」と思う所があっても、コメント欄での言及は一切禁止です!!。
心の中にしまって置いてください。
…いや、大多数は思うでしょう「こやつ、何をほざいとるんだ?」と。まあそれならそれでいいです、うん、分からなきゃそれでいいんです。
でもその手の知識があり、尚且つ勘の良い方…多分5割か4割くらいは気付く可能性があると踏んでおります。今回の話はそこら辺かなり攻めました。まあ言うほどって感じだけど。
そして「真耶分かっちゃった(※マヤじゃないのは作品に合わせた工夫)」と言う方。
何もねーから!何もねーって言ったら何もねーって事だから!(小泉構文)
しょうゆう事です灰。
あ、因みに前々から分かってた/薄々感付いてたという方も言及禁止です。
どうしてもと言う方はダイレクトにメッセージからどうぞ。まあ返信が僕の寒いギャグ集と化すだけですが。
長々と煩いし寒い話を失礼しました。それでは本編どうぞー。
2022/02/12:内容の一部改変
2022/02/16:内容の追加・改変
2022/05/09:文章内の異常な数値の訂正
現在、未確認生命体の■■県■■市襲撃から■時間が経過。
襲撃地点が日本国内においてかなり辺境にある地方都市である事と、直前の国際規模の通信障害という2つの要因によって自衛隊及びにIS部隊の派遣が現状大幅に遅れている模様。
またこの未確認生命体は世界各地で発生しており、中には首都を襲撃されている国もあるとの事で海外への応援要請は断念。
死者は現状■千に及ぶと予測される。生存者は町の有力者及び警察機関によって都市部を脱出。住宅街の住人と共に郊外の施設へと避難。避難先では衣食住が不足しており一刻も早く支援物資が到達される事が望まれている。
自衛隊は輸送機を使い空中投下で避難所に物資を届ける作戦を決行したが、飛行型の未確認生命体により輸送機が攻撃される。■分後、輸送機は避難が完了していない住宅街へと墜落した。これによる死傷者数は現状不明。
余談だが、生存者の話によると未確認生命体の中には“男性のみを狙う個体”と“女性のみを狙う個体”が居るとの事だが真偽は分からない。
超大型種が此方へ真っ直ぐ向かっているのが山頂の避難所から確認できる。未確認生命体は何らかの方法で生命体を探知する能力があるのだろうか。
避難所が襲われるのも時間の問題だ。
巨大な顎から発せられる大咆哮は獣の中の大気を酷くうねらせ、外界へと飛び出さんとするデーモン共をそれだけで討ち滅ぼした!
そして【彼】が腕を振るえば、運悪く直撃したデーモンは千切れ飛び、その顎を力の限り閉じれば、食い千切られて四散した。その比類なき力で吐き出される火炎のブレスは滅びそのもの…“蒸発”などという言葉も生ぬるい悲惨な結末がデーモンを待ち受けるのだ。それに対して哀愁など何処にもない…元より理性無く喰らい尽くす事で生きる野獣共だ、かける慈悲など何処にあろうものか?
逆にデーモンの攻撃は彼のウロコを傷つけもしない。隔絶した力の差により阻めぬものと化した【彼】の進撃は遂に最深部へと到達する。
そこに存在したのは…幾何学模様と3つか4つほどの眼が存在する核らしき球体と、その周囲から発せられるエネルギー体から生える3つの百足が如き首を持つ竜。
――――その3つ首が、各々の顎門から黒い火球を吐き出した!
嘗ての闇さえ思わせる禍々しいそれを【彼】は全身から噴き出した奇跡【フォース】にも似た暴風の力で弾き返し、大樹のような足で前進して拳を振り上げた。
放たれた右ストレートは三つ首のうち中央の噛みつきを潰す…拳の威力は顎の外殻をバッキリと砕き、連鎖的に2本の水牛のような角もミシミシと破壊した。その割れた外殻からは竜の頭の他に、人間のデスマスクのようで非常に悍ましい…第二の顔とも言うべきものが覗く。
そして左右の首が怯んだ中央に代わって【彼】へとカウンターとして中央同様に、そして挟み撃ちの形で噛みつきにかかった。
…しかし、左右の首はそれぞれ彼の萎びているようでその実パワーに満ち溢れた手で首根っこを掴まれてしまい左右の挟み撃ちは失敗に終わる。
ぐぐぐ…と、そのサイズ故に何か巨大な蛇が獲物を絞め殺すような音を立てて三つ首の左右を握る力が強くなっていく。右の首も左の首も、絞り出すような悲惨な悲鳴を上げて全身にヒビが入っていく。
やがて【彼】の握力が左右の首の剛性を超えた時、2つの首は掴まれた部分のみならずその首全体が破裂し黒い霧上となり、球体のオーラへと逃げ帰って行った。残された中央の首は、ヤケを起こしたか…無暗に【彼】へと噛みつきに行くものの、その上顎と下顎を掴まれ、聞く物の神経を震え上がらせるような甲高い…まさに絹を裂くような音を立てて上下にバッサリ別たれて霧状と化した。
残るはこの気味の悪い球体だけだ…が、再びそれに目を向ける時には球体を軸に、上下の顎が形成され、そこから頭、胴、翼、手足、そして尾と瑞々しいエフェクトを伴って【彼】と同等のサイズの竜に変化していた。
その魔竜は自らの力で獣の体内を、宇宙空間にも似た数々の星が瞬く無重力の空間に塗り替えた。
口内の球体をぐるりと回転させ、2つか3つほどの眼を開き、それで【彼】を睨みつける魔竜は同時に球体へと力を集中させる。
危険を感じた彼は翼をはためかせて魔竜の正面から避けた…その直後、魔竜の口内から火とも水ともとれる不可思議なエネルギー体が勢いよく射出された!その間に【彼】は一気に相手に接近し力を纏ってタックルを仕掛ける!
地力では敵わぬ様子の魔竜はその一撃で大きく吹っ飛ばされ、その圧力によって既にボロボロだった翼の皮膜が更に破け始める。間髪入れずに【彼】が火炎ブレスを浴びせて魔竜の表面を焼き焦がす!
燻る魔竜は反撃の一手として、両手に己のエネルギーを集中し始めるが、それすら許さぬと再び接近を始める【彼】を見てエネルギーの集中を中断し、一度距離を置かんと逃げ去り、それを追う【彼】とのドッグファイトが始まった!互いに背後を取り合うその軌道は、それだけで芸術と成り得る程であった。
彼は猛スピードで飛翔する途中、迫り来る魔竜の迎撃を躱すかその硬い岩のウロコで受けるかで全て無効化し、暴風の力で更に速度を上げて徐々に追いつき、やがて魔竜と並走し真上に陣取った後にガッと体当たりを繰り出し、そのまま魔竜を巻き込んで急降下を唐突に繰り出し、【彼】は魔竜共々星界の下層へと落下していった。
2体の竜は、何処かの固い大地へとその身を激突させた。
正真正銘…真っ暗で何もないそこの静寂を引き裂いてお互いが再びぶつかり合う!
先んじて繰り出された【彼】の正拳突きが魔竜の頭部表面を砕くと同時に、魔竜もまたブレス攻撃で彼の胸のウロコを焼き焦がす。それに負けじと鋭いかぎ爪で1撃2撃そして3撃と魔竜を切り裂いた【彼】は相手の首へと噛みつきジャイアントスイングで力任せに空いてを振り回した!
先の三つ首のような悲鳴を上げた魔竜は身をよじり【彼】の顎を引きはがそうとするが、地力で敵わぬ故にその試みは失敗に終わり、やがて強烈な遠心力をかけられたまま地面に叩きつけられ、大ダメージを負った魔竜の上に馬乗りになった【彼】はあらん限りの力で何度も何度も何度も何度も何度も拳を振り下ろし、やがてズタズタになった胴体は顔面諸共消滅し、泡沫と化して結局球体に逆戻りした。
最初から、元の力が幾分削られていたのだろうか?否、それらは既に形骸化していたのだ…。
最早勝ち目など無くなった魔竜改め球体は次元の狭間へと逃げ込もうとした――――が、その前に【彼】の顎に捕まり、再びブンブンと振り回されては地面に叩きつけられ、そして空高く掲げられたかと思えば(噛みつかれた状態で)火炎ブレスを至近距離で直撃させられ、劫火に包まれた球体はやがて炭や灰、塵となって消えた。
2体の竜はその存在感の割に、呆気なく【彼】によって滅せられた。
しかし元よりあの2体は当初の目的ではない…真の目的地は“ここ”、獣の奥底の、そのまた先にあるこの闇の空間。
嘗ては“深淵”とも呼ばれたそれ、若しくはその類似物にて彼は【薪の王】を発動させ、身に火を纏い始めた――――それと同時に、空間から彼へと向かって黒い瘴気が集まり始める。
火と闇、互いに干渉し合っていたそれらはいつしか混じり合い、やがて一つに溶け込んでゆく…元はどちらも一つの存在であった、そう語りかけるが如く、緩やかに…緩やかにと、清と濁が太極図のような表裏一体を超えて合一へと化して行く。
全てが始まり、散り散りになっては各々の路を征き、しかしその道は終わりに近づくにつれて一つに収縮していく…。世界とは、地球とは、元よりその一つの巨大な石の中でそうであれと運命が定められていたのだろうか。
その灰の眼には、間違いなく
――――やがて彼は【
しかし本当に強いモノは確かに存在する。
朧げな記憶と確証で開いた1ページ…そこに永久の切り札が綴られるのはいつの日か。
(前略)
かくして、IS部隊による掃討戦が全世界で開始された。
IS学園の所在等の要因で日本に専用機、量産機含めたISが多く集中していたが、後の調査で太平洋の日本国領海内付近に多く出現していたことが分かっており、結果として良い方向に働いたと言える。
また記録によると白いIS他数機が避難が完了していない地域の防衛、及びに生存者の避難誘導を行っていたとされている。当該地域は避難が完了した数分後に大型種の出現が確認されており、これもまた結果的に良い判断となった一つであろう。
しかしこの時はまだ人類側は出遅れによって劣勢であったと言わざるを得ない。
(後略)
【王】は、本質が抜けて既に残骸と化していた獣の死骸から地上へと這い上がった。
まだ空は薄暗い…が、もうじき夜は開けるだろう。この閑静な荒地にいずれ光が刺し、その地獄が鮮明になっていくのだ。
彼は未だ暗い瓦礫の道筋を真っ直ぐと進んだ…最初から全て分かっているように、まるでその眼に導が映っているかのごとく。そうだ、何を血迷っていたのか…ただ進むだけなのだ。己はこの瓦礫を払わねばならない…理由さえ見失おうとも、使命のために武器を握り続け鎧を纏い、只歩みを続けて行く。
灰と呼ばれる己に、愛なんて必要が無い。
己の、使命とは……――――。
「遅かったな」
「ギャラリーにはお帰り頂いたぜ、無論害虫駆除もな」
その声につられ、足を止めた【王】の前には2人の男がいた。
片方は良く知る姿だ…獅子兜、己がそう呼ぶ長身の男の後ろにいる比較的若い男。恐らくは此奴が相方のクロウなのだろう。あの可変型ISを操っていた男だ。
「遂に貴様は…。
いや、当初はそれを目指していたのだろうな。時代の…完璧な消滅、それにかける年数など気にもなってはいまい」
獅子兜の何処か要領を得ず主語の抜けきった語りを【王】は一言も口を挟まぬまま、しかし理解しつつ聴き通す。それが務め、それが義務。それこそが消え逝く者達への礼儀だとして。
「今や何物も気にしてはいないだろう?
そうだ、あらゆる全てに無頓着…ただ戦う事だけを胸に、使命に厳格で、冷酷で。例え神を憎もうが、その神々が作り出した下地を妄信する」
やはり彼が語る事は無い。
「だが、それでいい…誰もがそうだ、皆惹かれている。
――――皆、そうだったんだ。最早イカれているのは、我らの方か…ははっ…」
獅子兜は尚も続けた。
決して良くは無かった、寧ろ最悪だっただろう…けれどもそれが、それだけが彼らの
その証さえあった…今や遠き時代への憧憬が、やりきれない気持ちとして少しずつ少しずつ、彼の中でこみあげて来る。
変わるもの、変われないもの…ただそれだけの事だ。
「貴様はいい、最早そうでは無いからな。
だが…我らに…私に、何処に還れと言うのだ」
すっ…と、その手でツヴァイヘンダーを抜いた獅子兜の後ろで、クロウもまた双剣を引き抜く。
【王】はそれに対し、何のリアクションも起こさない。
「知らぬハズはあるまい…只の不死が還る所は、それしかないと」
ぐっと、ツヴァイを構えた獅子兜はその刀身を撫でて、雷と闇の力を刃に宿していく。
それを終えて――――カッと目を見開き、【王】に対して声を張り上げた!
「分かる筈だ!
我ら不死がッ、何を求め戦うか!」
知っている…彼はそれを知っている。
だからこれより先、言葉は完璧に意味を成さなくなるのだ…ッ!
三者全員、同時かつ一瞬で己のISを起動したのと同時に大地を蹴って走り出した!!!
全身に火を纏った【王】は折れた剣を振るって燃え盛る斬撃を数回放ち、獅子兜とクロウへの牽制を行いつつ左手に劫火が纏い憑く雷の杭を生成した!!
炎の斬撃を全てツヴァイで叩き落とした獅子兜は、更に追撃で放たれた燃ゆる雷の杭を素早いステップで躱し、【王】の隙を突いて刺突を放つが、その一撃は彼の折れていながら一定のリーチと切っ先の鋭さを持つ剣で防がれ、更に【王】が全身から放った小さな無数の火球を避けるために一時後退した。
獅子兜と入れ替わるように、クロウが【王】の上空で人型形態に戻り、その動作の勢いで片方を順手にもう片方を逆手にもった細長い双剣で回転斬りを放ちながら落下してくる!
彼はその回転撃をバックステップで躱し、間髪入れずに放たれたクロウの突きに次ぐ突きそして挟むような斬撃の連打を剣でいなしつつ、丁度クロウから死角になる所で左手に、今度は黒い火炎を混じらせた朱い、紅い火炎を溜める。
再びクロウが左手の剣を逆手に持ち替える瞬間!クロウの目の前で【王】は左手に溜めた炎を炸裂させてよろめかせ、次いで剣の袈裟斬りを2度放った後に回し蹴りですっ飛ばし距離を離した。その間に火球群を振り切った獅子兜が直ぐ後ろまで迫り、遂に刺突を直撃させる!
緊急的な対処として【王】は装甲の上でツヴァイの刃を滑らし、そのまま刺突を抜けさせて獅子兜の体勢を崩すのを試みる…多少シールドエネルギーが削れるが、不死たちの戦において多少の切り傷は無傷も同然、寧ろ浅い攻撃を当てた事は攻撃を外した事にも等しいのだ。しかし彼がそうであるように、獅子兜も、そしてクロウもまた歴戦の不死だ。
刺突が流され、勢い余って体勢までも崩れて行ぎ、しかし獅子兜は強く踏み込む事で己自身の力で流されてゆくのを抑え、逆に【王】への膝蹴りへと繋ぐ。彼はそれに対して身を屈め、咄嗟に肘と膝でガードするものの、その時には獅子兜はツヴァイを振り上げていた。得物の長さからして柄頭で殴りつけるつもりだろうが、あの質量と彼自身のパワーでそれを行えば、今の体勢だと【王】と言えども地に伏す事になる。
退いて避けようにも、クロウが双槍を構えて飛行形態で迫っている。前門の虎…というより獅子、そして後門の
そのまま獅子兜を押し込み、クロウの追走までもを振り切ってそのまま獅子兜を壁に激突させる。
背中を強く打ち付け、まだ回復が終わらない内に【王】は更に右手に鉄塊を纏い付けて獅子兜に右ストレートを放った!2度の強い衝撃で壁はガラリと砕けて、支えを失った建物は崩れ落ち、大鯨の口のように獅子兜を飲み込んでいく。
再び、クロウが【王】へと接近する。
双槍を巧みに操り、そして槍のリーチを最大限に生かして近づき過ぎず遠過ぎずの位置から連続して刺突を放つ。ディレイすらも交えたそれに彼は何度か穂先を自らの走行に掠めてしまう…が、それを何時迄も許すか?それは否!
【王】が握る剣に、ピシリと規則的な亀裂が走る。
そして彼が振るった事でバラバラに分かれたそれが、しかし引き合う石の力でそれぞれが連結し、鞭の様にしなやかな軌道を描いてクロウの双槍を掻い潜ってそのシールドエネルギーを削る!
引き合う力でまた一つの剣に戻ったそれをもう一度、今度は刺突のような形で剣の分離を促し、鋭角に割れた切っ先を弾丸の様にクロウ目掛けて放つ。
クロウは直ぐに中盾を呼び起こして一撃を防ぐが、二の矢は既に放たれていた。
彼が眼前から盾を退かして【王】を見ると、その枯木の枝のような細腕が数本生える両肩から巨大な澱みの塊を生成していた。
「マズッ…!」
その所々が薄っすらと燃えた二つの大澱が放たれた直後に踵を返して撤退するのに対して【王】は更なる追撃を発動する。
剣を触媒にソウルの力を集中させ、過程で生まれた結晶を槍状に形成する…所謂ソウルの結晶槍だ。
今にも結晶槍を放たんと更に結晶の生成を促している途中に、しかし異変が起きた。背後の――獅子兜を埋めたハズの――瓦礫が爆発し、だがその破片は飛び散ることなく爆心地に集中して行く…。
「ォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」
彼は素早く後ろを振り返った――――その先には、飛び散るはずだった瓦礫を収集・圧縮して作られたであろう岩石の大槌を振り翳す獅子兜が目の前に居た!間合いとタイミングからして、既に躱す事もカウンターも間に合わない…そう判断した【王】は一度集中させた結晶を霧散させ、左手で炎の障壁を構築する。が、大槌の衝撃がその程度のもので防げるはずもなく障壁が捲られ無防備となる!
「終いだッ!」
その最悪のタイミングで、クロウが戦旗を構えて突撃してきた!どうやらしつこく追跡していたハズの大澱を今になって振り切ったようだ。
戦旗の特殊な力で強化された穂先が…【王】の装甲を突き穿ち絶対防御を発動させる。更に彼への追い打ちとして獅子兜が大槌による強烈なバックスタブを放ち、【王】のエネルギーを大幅に削った。
しかし彼は、これしきで斃れる訳にはいかぬ…そうして飛びそうな意識を一気に引き戻して右手にある武器を出現させる。それは【グラント】或いは【モーンの大槌】なる、神聖の力を纏いし巨槌。その先端を地面に叩きつけ、込められていた力を全方位へと放出する形で解き放つ!!
放たれた神の怒りは、獅子兜やクロウはおろか周囲の床や瓦礫、そしてそれを纏めて圧縮した獅子兜の大槌すらも粉微塵に吹き飛ばし、既に荒れ果てていた演習場一帯を一層滅茶苦茶に荒らした。
更に【王】は粗い網目状の口部で左手から火を吸引し、それを全て【酸の霧】に変換して噴き出した。
通常この術は文字通り酸性の霧を緩く噴射し、目つぶし・目くらまし及びに防具の崩壊を狙うものだ。しかしISの力か…はたまた【王】自身の力故か、噴き出された酸は颱が如き威力となりて既に十分過ぎる程に荒れ果てていた周辺地域に吹いた。
クロウと獅子兜はパワーアシストにPIC等々、己の力の他にもISの力ですらも最大限に使ってこの凶風の中で踏ん張り続けた。徐々に、徐々に…シールドエネルギーが削られていく焦りを何処かで抱えながら。コンクリートの瓦礫は既に火が付いた蝋燭のようにドロドロになり、周囲に飛び散っていた樹木の破片は跡形も無く朽ち果てていく…。
「クソッ…無茶苦茶なっ――――――――」
――――突如、獅子兜が後方へと吹っ飛ばされた!
一体何が起きたのか…【王】が何かしたのは間違いない。しかしこの己が身体に奔る衝撃が如何にして生み出されたものなのか…それだけが判別できない。飛ばされる直前、周囲には何も見えなかった…【王】か?いや、流石のアレと言えども獅子兜が目視出来ぬ程の速度で飛び回る事など不可能だ。
ならば何だ?放つフォースの類か?それ以外にあの酸の嵐を突き抜けられる物質が思いつかないが…しかし放つフォースの飛翔速度などたかが知れている。避けれずとも視認出来ぬハズがないのだ。もしやアレは、この酸にも耐えうる何かを持っているのか?そう思考が至った時、獅子兜は【王】の力の本質を真に理解した。アレは古きあれらの時代における総て…或いは凡ての“記憶”。
獅子兜は次なる手に出た。彼の両手に現れるは、2丁のマシンガン。
一般的にはクリスヴェクターと呼ばれるものに類似した、しかしやたらと銃身の長いそれを向かい来る【王】へと引き金を引きながら、スラスターを吹かし後退を開始した。
マシンガンの弾丸を彼は炎の衝撃で防ぎつつ、両肩から【降り注ぐソウル】と【輝かしい雷球】を展開して上空から濃密な弾幕を放つ…つもりでいたが、突如飛来した弾幕により降り注ぐソウルの球体が破壊されてしまった。
弾幕を放ったのは、飛行形態で急接近したクロウだ…そして彼は浮かび上がった雷球から降りしきる雷光を紙一重で躱しつつ【王】目掛けて3発のミサイルを放って再び距離を取った。
ミサイルは主の手から解放された猟犬のように【王】を何処までも追いかける。
…先ず1発目が雷光に直撃して爆散した。それでも残り2発は追尾を止めず、対処に追われる彼へと獅子兜が更に弾幕を放つ!
障壁の防御すら届かない背部を撃ち抜かれながら、しかしバレルロールや急停止などの変則的な機動を交えつつ獅子兜・クロウ・ミサイルの3つを相手に立ち回り続けた。
【王】が咄嗟に投げた炸裂火球が、2つ目のミサイルを迎撃する。残るミサイルは1つ…しかし同時に獅子兜とクロウの両者がそれぞれ挟み込む形で急接近している…絶体絶命、とはまさにこの事だった。
しかし、何処までも彼の行く末は変わらない、例え足元が薄氷のように不安定でも――――【王】は1本の刀を鞘付きで現した。
鞘を最早投げ捨てるかの様な抜刀で、綻びたが如く歪な刃が炎獄と共に露わになる。その刀で先ずは2撃…それでミサイルを焼き切り、残る2撃で獅子兜の攻撃とクロウの攻撃を素早く――――というより、ほぼ同時のような速度で弾いた!
更に両肩から放つ膨大な【闇の飛沫】で獅子兜を圧倒し、更に鞘を触媒に変化させて発動した【闇の霧】でその動きを封じる。
黒い黒い霧の中から、獅子兜の断末魔が響き渡る…アレの蝕みは、例えISの絶対防御であろうとも防ぐことは出来ぬのだ。
それを見届けた【王】は直ぐに刀を鞘へと納め、居合の構えを取りつつ一気にクロウへと近づいた!向こうは人型に戻り、蒼く白い輝きを放つ大鎌で彼を待ち構える。
火の量が一段と増した【王】が大鎌のレンジに入ったのを見た瞬間、クロウはそれをそっ首目掛けて振り抜いた。
カーン…と、甲高い音が鳴り響く。首狩りの一撃はしかし、居合から繰り出された弾きによって防がれ、逆にクロウは大きな隙を晒してしまった。【王】が刀の切っ先をぐるりとクロウへ真っ直ぐ向けた時、刀身は薄く消え去る。弾きの衝撃で動けなかったクロウは、それの正体を直ぐに理解した。
その、嘗て一人の剣士が百人斬りを成し遂げた“魔剣”の刃は、半ばこの
斬れぬ物無き刃の名、それは…。
「【闇朧】ッ――――」
クロウの胸が十の字に斬り裂かれた直後…更に4発の斬撃が彼を襲う!
シールドエネルギー、絶対防御、そしてIS本来の装甲すらも中身のクロウ本人ごとズタズタに切り裂かれ、傷口から鮮血が飛び散る。
「――――こんな、もので………ッ!?」
彼の胸から、闇朧の半透明な刀身が長く長く伸びる。
影を落とす一撃が致命となり、クロウのIS…そして彼自身の崩壊が始まったのを見た【王】は彼から闇朧を一気に引き抜いた。
ISの機能が停止し、クロウは遂に地へと落下を始める。
…また一人の不死が、この世から消えた。嘗て手元にあった様な幸せを求めた者や、王を狩り続けた者ですら存在した世界すら今や持てず、しかし放浪の果てに今…確かなる終わりを得たのだ。
「俺は……俺は、結局何処にも、たどり着けねぇ…――――」
それは絶望か…それとも安らぎだったのか。
「教えてくれ…何を間違えたんだよ…」
しかし、未だ戦いは続く。
闇から抜け出した獅子兜の、名前に似つかわしいけたたましさを感じられる雄叫びが響き渡る。
彼が振り下ろしたツヴァイを【王】は盾で受けつつセスタスを装着した拳で数発殴りつける。5発目の打撃で獅子兜もまたツヴァイから右手を離してそこにセスタスを嵌めて【王】の顎目掛けてカウンターを放ち、更に左手もまたツヴァイからかぎ爪に持ち替えて彼を斬りつける。
エネルギーシールドを突き抜けたかぎ爪が【王】の胸部装甲に爪痕を残した。
顎に加えられた衝撃から意識を引き戻した彼は、獅子兜目掛けてヘッドバンドを食らわし、更に追い打ちで盾の淵を顔面に叩きつけた後すかさず右手を竜骨の拳に変えて渾身のボディブローを放った!
腹に尋常ならざる一撃を受けながらも獅子兜は右手を異形の爪に変え、左手のかぎ爪と共に【王】へと斬りかかるが相手が繰り出したシールドバッシュで潰され、彼はそこに右脚で蹴りまでも放った――――が!獅子兜はその蹴りを自由にした両手で掴み止めた!
彼は先ず左腕の肘で【王】の右脚の足甲を割り、右腕の肘で彼の顔面を打ち兜にヒビを入れる。その流れのままに背後へと回り、【王】の背中にダガーを突き立てた後にその巨体を持ち上げて、そのまま地表目掛けて己ごと突き落とした。壮大かつ強烈なバックドロップだ。
崩壊したトーチカに突っ込んだ両者は、それすら突き抜けて地下シェルターの奥底までたどり着いた。
最初に起き上がった獅子兜はツヴァイの刀身を握り、再び周囲の瓦礫を呼び寄せた。瓦礫の大槌となりしツヴァイを振り翳した彼は――――しかしその胸に6本のボルトが突き刺さった。
仰向けの状態のままアヴェリンを2丁呼び寄せた【王】が、同時に引き金を引いたのだ…彼はその身を起こしてアヴェリンから大弓に切り替え、突撃槍のような大矢を引き絞った。獅子兜はソレを見て回避を試みる、が、直前でボルトが爆発を起こし彼の身体を硬直させ、大矢の直撃を許してしまった。
壁を2枚か3枚ほど突き破り、パイプ束に激突した獅子兜を【王】は脚部パワーアシストとスラスター出力を全力全開にして追いかけ、追い打ちのタックルで再び壁を数枚突き破り、最後に一層燃え盛る腕で獅子兜の胸倉を掴んで再び地上へと飛び出た。
「まだ…終わらんッ!」
獅子兜が、己を掴む腕に双短剣を突き立てた。
彼は【王】の手から放たれ自由になったと同時にロングソードを引き抜き、その刀身に出来るだけ掠め取った闇の力をありったけ込めた。
「私が、私こそが闇の王だ。
静かなる虚無の奥底にっ――――」
闇で満ち溢れた剣を突き出し、残る力を振り絞って獅子兜は目前の敵へと突撃する。
その眼には【王】など煙幕や著しい消耗によって、朧気にしか映っていなかった。
故にその光がハッキリと見えない――――エメラルドグリーンに輝く、月光のようだが…その実全く違う、根源のそのまた根源の力。その強大な意思の名を――――。
【王】はその“斧”を振り下ろした。
緑色の光を放つ、それを…。
しかし獅子兜の突撃は止まらず、遂に剣の刺突が彼に直撃した…が、闇の力は最早先の一撃でかき消され、ただの鉄の塊と化したそれは…シールドエネルギーや通常装甲を突き破る事が出来ても絶対防御迄は届かず、そのまま激突の衝撃で刀身が砕け散った。
ほぼ無傷の【王】とは対照的に、獅子兜は斧の一撃が完全に魂へ届いてしまったが為に消滅が始まっていた。片膝膝を付き、散り逝く己が魂がパラパラと灰の様に舞って【王】へと吸収されゆくのを見届け、彼は口を開く。
「そうだったのか…貴様が…」
最後に何を知ったのだろうか、それは【王】が知り得る事か…或いは否か。
獅子兜は…王を狩る者は、もう片方の膝も付き、遂にその姿は消え失せた。
意思の光が滅した斧を握り、【王】は虚空を見つめる。
まだ、終わらない…続いている。取り憑かれたように繰り返しながら、1歩1歩踏みしめて進むその背後で「おい…」と、【王】を呼び止める声がした。
「そのまま行くつもりか」
振り返らずとも、この声の主は知っている。
六多七瀬――――きっと彼が、先ほどシャルロットを助けたという張本人なのだろう。
そんな彼のぶっきらぼうな問いに、彼もまた冷徹に返す。
其方には関係のない話であると。
「ああそうだ…俺は、お前達の言う使命とやらに関係は無い。
だがもし、お前も運命と戦い続けると言うのなら…話は変わって来る」
七瀬はゆっくりと歩み寄り、再び【王】へと問いかけた。
「あの子は、どうなる」
あの子…この場合、シャルロットの事を言うのだろう。
立ち去ろうとする【王】の足がピタリと止まった。
「置いて行くつもりか?
それでどうする、まさかそれであの子が幸せになると言うのか」
【王】は何も答えられなかった。
「…それだけは、絶対にない。
例え最適解だったとしても、置いて行かれた方には――――いや、置いて行く方にも必ず悲しみが残るんだ…終わる事は無い」
激しい悲しみも怒りも覚えられず、静かに【王】は問いを返した。ならばどうすればいい…と。
「お前がそばにいて…あの子を守るんだ。
心配ならな」
弾き出された答えは、至極簡単な事。
しかし【 】はそれさえも行う事が出来ず、只々引きずっていたのだろう。
「忠告は、したぞ…」
――――七瀬の発した一言一言が、常に心の何処かを突き刺して行く。
使命、使命、使命、使命。意味も訳も無く駆り立てていたソレが煩わしく頭の中で響いていた事に今更気が付いたのだ。
いつの日も過去に取り憑かれていた。名が変わったあの日から未来――――悲しみが終わる場所へと向かう旅路を覚悟していながら、その足には火の時代のしがらみを纏わりつけていた。獅子兜達と何も変わっちゃいない…今に居場所を見いだせず、やはり火に追い縋るだけの不死だった。或いはそれすら振り切りたくって、未来を急ぎ過ぎたのかもしれない。
結局の所、何であれ全ては己が始めてしまったことなのだ。
あの時最後には火防女を後ろから切りつけ、消えかかる火を奪ってその身に宿し、極めつけは持っていた暗い魂の血さえもを飲み干した。元よりそれを成し得てさえいなかったのだ。
シャルルと名乗っていたあの日のシャルロットに、よくも説教をほざけたものだ…そう彼は己を嗤った。
ただ一人の人間として己を見つめる回りに目を背け、使命を言い訳にずっと逃げ続けていた。真に欲しいモノがそこにあると言うのに。
何が怖かったのか…何を恐れていたのか。
今こそ彼は乗り越えねばならぬ。内なるものに向き合い、連鎖の影を断ち切るべきなのだ。
彼は一度ISを解除して、その手に自分自身の生徒手帳を持ち、そのカードケースにある学生証を見た。
しかしその上には嘗ての古い身分証があった。ソレに記されているのは、己の肖像及びに細かな個人情報と、ある人物から肖った別の名前。今も昔もその名を語り継ぐ者は無く、しかし多くにとっての運命を切り開く楔となっていた…宿命の路へと不死を導く、灯に。
【彼】はその身分証だけを抜き取り、嘗ての恩人と最後に残った不死を弔う心の内に崖の下へと投げ捨てた。
もう、それでよいのだ。
長い付き合いだった“使命”とも、これで最後だ。
この時になって初めて、先に見た路の意味を思い出した…危険な薄氷渡りは、決して狂気の突撃などでは無かったのだ。
再び展開したISは聖竜の力によって先の戦とは大きくかけ離れた姿をしていた。
先ず目を引く太く力強い印象となった手足等の明らかに良くなったガタイに、凡そ騎士とは呼べぬだろう竜の髭のような口元のV字の飾りにに後頭部より生える3本の角。そして細く鋭い六角の眼の上には紫水晶のように鮮やかな色の丸い腔が見える頭部。
そして両腕の側面には轟々と金切声をあげて刃を回転させるNARUKAMI mdl.1*1がガッチリと装着されていた。
【彼】は両手に
「どんな神になるのかは我らが決める。過去は関係ない、過去の私とは違う道を歩め。乗り越えるのだ」
――――クレイトス(GOD OF WAR)
自衛隊の主力戦車たちが一斉に、砲口より火と弾を吐き中型のデーモンを薙ぎ払う。
遅れて更に後方に陣取る自走砲が群れの中央に追撃を加え、少なくない数のそれが一掃された。しかしまだこの国を飲み込むには十分な程の数が侵攻を続けている。
そこへ、真正面からIS・打鉄が数機ほど突貫した。加えてハイエンド機と思われる黒いISが上空より飛行型デーモンの追走を振り切って群れに強襲をかける。
…燃ゆる市街地に、1機の戦闘機が墜落した。
誰にやられたなど分かり切った事を問うものはいないだろう…しかしパイロットは幸運にも生きていた、少なくとも今の所は。彼は脇腹の傷を手で抑えながら市街地を抜け、ある程度坂道を上った高台から太平洋側を見下ろす。
分かっている、自分も皆も分かっている…どう見たって、アレを潰さなければ街を喰いつぶす奴らを止める事は出来ない。だがアレを潰しに行くのに十分な戦力を揃えられない、街を護るだけでもう精一杯だ。
何か、こんなクソッタレな戦況を一気にひっくり返す最強の切り札でもあれば――――そんな遠い望みを抱いて、パイロットはそのまま背後から忍び寄ったマンイーターに惨殺された。
――――2台のエンジン音が、風の様に通りすがる。
その頃にはマンイーターは凍り付き、そして複数の弾痕でバラバラになっていた。
<次回までのロード時間中のアイテム紹介>
【最後の不死達のソウル】
現在までずっと眠らずに生き残っていた不死人のソウル。
長い年月を経て、やがて特別な何かを複数宿すまでになって尚も求むは火か闇である。それは己らが生きた証を語り継ごうという意思か、或いは単に望郷する心が残っただけか。
いずれにせよ、今や必要のないものだ。
P.S. 最初の英語部分、もっとセンスいいのあったら受け付けます(活動報告コメント欄で)