(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

44 / 46
エルデン休暇から帰ってきました。




という訳でどうぞー。




2022/09/07:グワイヒア隊および楯無のセリフ変更


  成層圏にて――――

異常。敵国の民を皆殺す、軍隊の機銃掃射が如き相次ぐ異常事態。

それはごく小さな“破”から始まった…果てしない、そして巨大な、国の壁も人種の壁すらも超えた真の無差別たる“急”の連なりが、最高潮に達したのが今この瞬間であった。

 

 

…空想に描かれた悪魔が突如現れて、それらが世界各地の街を襲った。これが事実である時、特にその手の特撮作品の世界観でも無ければソレだけで未曽有のパニックを引き起こしうると誰もが考え、実際にそうなった。何あれ?何だあれ?一体なんなんだ?一体なんなの?それらの疑問が気付けば阿鼻叫喚の声に代わり、あらゆる教えに伝えられた地獄を現世に描く。

 

地獄の悲鳴で呼び寄せられたのは、情報の渦。

 

『何処が襲われた?』『何処が壊れた?』『何人が死んだ?』『誰が死んだ?』『何処が対処に向かった?』、『どんな奴らが出てきた?』『そいつらがどんな手段を使って来た?』『そしてどんな奴らが追加で来た?』………

 

前線に居る専用機持ちのパイロット他あらゆる部隊へ、千冬らが中心となって指揮を飛ばす…その基地が持ちうる高い処理能力さえ超えたそれがようやく一種の纏まりを見せたその時に彼女らはまた情報の渦へと投げ込まれた。

 

“何か”、とにかく超自然的な何かが出たという。

神か?悪魔…いいや、悪魔(デーモン)は十分出ている。では何だ?正体がどうであれ、飛び出してくるのは―――例え悪魔が実際に地上を跋扈する緊急事態でも―――与太話の域を出ないような報告。

 

更にさらに、それらに付随してくるのは、相次ぐ敵の完全撃破と増援襲来の続々報。

再び錯綜し始めた場の緊張感に…千冬は遂にデスクを叩いた。

 

「本当に…本当にッ!何なんだ!」

 

「現在、ネットワーク障害は復旧し切っているようですが…こうも情報が錯綜しては――――」

 

「佐々木は」

 

「相変わらず…」

 

「…クソ」

 

叩きつけた手を更に握りしめながら、悪態を付く彼女。その元へ、一人の男――――アルベールが全力疾走で近づいてきた。

 

「あ、アルベール社長!?

一体何が…」

 

「…ようやく、本社との連絡が取れた」

 

「社長、今それどころでは」

 

こんな時に何を…と多少苛立ちを隠しきれていない千冬に、息を切らしたアルベールはその手で門前払いに待ったをかけた。

 

「間違いなく関係のある話だっ…!

これが嘘で無ければ、事態は今まさしく――――」

 

 

 

そこまで言いかけた時、基地全体にけたたましいサイレンが鳴り響く!

非常灯の赤い色は…或いは後々ここに流れる血の警告か。

 

「どうした!何があった!?」

 

「未確認生命体の群れを半径1㎞以内に確認!

その数――――」

 

オペレーターは、その口を塞ぐことが出来ずに言葉を詰まらす。

対して千冬らは行動を催促したりはしなかった…何せ、その“群れ”が空を覆い尽くしている。ヤーマの判決を踏み倒し、ケルベロスを沈黙させ、三途を飛び越え七つの門を打ち破って現世に乗り出た地獄の使者の軍勢。それをはっきり窓越しに見ることが出来たからだ。

 

 

「――――ええい!総員迎撃態勢だ!

山田先生、ここのISは?」

 

「ラファールリヴァイヴと打鉄が1機ずつ、それだけです」

 

「ッ…かくなる上は」

 

 

最早それだけのISで、仮にどうにか出来る実力者はここに千冬と真耶の二人しかおらず、また二人共その気であった。いくら元代表候補とブリュンヒルデと言えどもあの未知の怪物(デーモン)にどれだけ立ち向かえるのかは分からない。もしかするとデーモンを全て打ち倒せるかもしれない、しかし命を落とし、最強の伝説が幕を下ろすかもしれぬ。

それでも、きっと二人が行かなければ…もしも彼女らがやらなければ。

 

互いにアイコンタクトをとった千冬と真耶は、そのままISの格納庫へと向かおうとした――――その時だった。

 

「!?これは…!

司令官!周囲で高エネルギー及びに超()()反応を検知!」

 

「何、だと!?」

 

「まさか…」

 

「場所は!?」

 

捜索、故の沈黙。

この僅かな間に空間を駆け巡った、最大級の緊張感…それは絶望への覚悟か、希望への賭けか。

 

「直ぐ、上です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――窓越しの景色が、緋色に染まる。

建物を覆う赤い朱い、紅い炎の先にオレンジとエメラルドグリーンの一閃!灼熱の台風の目から飛び出した燃ゆる聖竜の名を、姿形が変われども知る者が居る…!

 

「佐々木かッ…!」

 

そう、【彼】だ!【彼】が表れたのだ!

戦翼を広げ、基地上空から群れの中枢へと飛び去った彼はトマホークの炎を扇状に撒き散らし、多くのデーモンを焼き殺すのと同時に地上の木々を踏み倒して進撃を続ける、高い塔のような騎士型デーモンへと急降下。脳天からつま先まで右腕のNARUKAMI mdl.1で唐竹割りにして瞬殺、間髪入れずに物理法則の律を飛び越えた超常的加速で上空まで舞い戻り、飛行するマンイーターやフィーメルイーターの群れを次々と、1匹ずつ引き裂いてゆく。

 

 

デーモンが、悪魔の軍勢が、著しく数を減らしていく。しかし多い、それでも多い。

ジリ貧に陥るのは時間の問題――――そう思われた次の瞬間!聖竜は太陽の様に眩い光を解き放った!!

 

「高エネルギー反応、更に増幅中!!

縮退化もかなり進んでいます…最早固形寸前です!」

 

「め、滅茶苦茶だ」

 

「総員!耐衝撃姿勢をとれ!!何が来るか分からんぞ!!」

 

千冬の一喝によって基地の全員が身を屈めるなり何なりとした瞬間、輝きが一層強くなる――――かと思えばそれは一度遠のき、直後に最大級の煌きを数秒間放って消えた。おそらくはあの“固形化するほど縮退したエネルギー”を放出したのだろうと、誰もが予測した。その証拠にあれだけ居たデーモンの軍勢が、跡形もなく消え去っている。

 

 

【彼】は基地を一瞥し、そのまま遠い空へと去って行った。最早命令すら受ける暇すらない。

 

 

「…事態は間違いなく、好転している。

そう言えるだろう」

 

「ええ、その通りです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「足だッ!あの騎士みたいなのは足を狙えッ!!!」

 

戦車長の怒号が響く時、その“騎士みたいなの”の足は戦車の直ぐ真上まで迫っていた…あまりのスケールからくる巨大な1歩は、彼らの意識外からやってきたのだ。いくら堅牢と言えども、その質量の前にはあばら家と同等に過ぎず、中にいる数人の命ごと戦車は爆裂四散。大地の染みと化した。

 

 

――――そのコンマ数秒後、白い閃光が騎士擬きに直撃した。

体勢を崩し、仰向けに倒れたそれの心臓部に眩い刃――――“零落白夜”が突き立てられる。その一撃必殺によって騎士擬きは消滅。

 

「くそッ…間に合わなかった…!」

 

一夏は踏み潰された戦車の残骸を悔し気に見つめた。

 

「一人一人を見ている暇はないぞ!一夏!」

 

「そうよ、もう全員は救えないわ…今はッ―――」

 

箒と楯無が言う様に、この混沌を極める戦場では秒単位での命の消費が行われている。兵士もそうでない者も、そこに居れば一寸先の運命すら危うい。たった今、楯無の真横を掠めて落下した戦闘機のように。

 

 

そして爆発、それに次ぐ爆発。

一つは先の落下した戦闘機の誘爆、そしてもう一つは着弾した自走砲の砲弾の炸裂。爆ぜた炎がデーモン達を薙ぎ払い、人類側に一瞬のチャンスが生まれた。その隙に戦車隊、歩兵隊、そして軽車両等の地上部隊が一気に展開を開始する。

 

「反撃が…始まったのか?」

 

「そのようね。

二人共、前に急ぐわよ!押し返すなら今しかないわ!」

 

「楯無さん、押し返すって何処に!」

 

「“アレ”に決まっているだろう!」

 

一夏は箒が指差した方向を見た。それは、太平洋側の海に浮かぶ…巨大な“何か”。まるでIS学園のようなメガフロートにも見えるそれは、しかし非常に有機的であり時折グロテスクに蠢く様は、とても「島」であるとは言いきれず、寧ろ“獣”に近かった。そしてよく見れば、そこからデーモン達が湯水のように湧いて出ているのが遠目でも見て取れる。

 

 

「あんなのがっ…!?」

 

人命救助に夢中でそれに気が付かなかった一夏は、暫しの間あっけにとられるも状況を再び見て先を急ぐ姿勢を見せる。

 

「所で他の皆は?」

 

 

「私達は既に前線まで到着していますわ!」

 

「早く来なさいよ!4人じゃ手が回らないから!」

 

セシリアと鈴音が後方の3人に呼び掛けるのと同時に、まだ3体ほど残っていた騎士擬きの対処を開始。

 

「もうじきクラリッサ達も到着する!

――――!!、シャルロット!3時の方向だ!」

 

「分かった!――――ラウラ6時の方向!」

 

「了解だ!」

 

市街地にて、未だに蔓延るマンイーターやフィーメルイーターの群れをラウラとシャルロットが掃討に出向いていた。

 

 

そこへ後方支援部隊の自走砲が再び火を噴き、多くのデーモンを薙ぎ払うのと同時に主力戦車の列が端から順に主砲をぶちかまし、騎士擬きのタワーシールドを遂に砕く!

 

更にマンイーター、フィーメルイーターの群れへと量産型IS(ラファールリヴァイヴ)の部隊が突撃、試作改良型のクアッド・ファランクスを装備した1機の援護を受けたその部隊の制圧力は凄まじく、悍ましいまでの大群を相手に圧し勝っており人類側は一気に前線を押し上げる事に成功する。

 

 

盾を失い、体勢も大きく崩した騎士擬き。それらに鈴音が龍咆をありったけの勢いで放ち、セシリアが実弾誘導型のBTを顔面に直撃、箒が雨月と空裂の2段光波で3体それぞれにトドメを刺した。

 

 

 

「隊長!遅くなりました!」

 

「クラリッサ!」

 

「ネーナ、ファルケ、マチルダ、イヨもそれぞれEOSで出撃しています。

最早これ以上の戦力は望めないでしょう」

 

更に、シャルロットの一件で日本に来ていた黒ウサギ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)も到着。副長のクラリッサが言う様に、ほぼ現実的な範囲ではこれ以上強くなることは無いと思われた。

 

しかし、ラウラの反応はまた違う…。

何せ【彼】がまだ到着していない。

 

「兄さんがまだだ…連絡も無いが」

 

「佐々木、潤…ですか」

 

――――その時、ラウラとクラリッサ目掛けて数体のフィーメルイーターが急降下して来た!が、シャルロットのアサルトライフルによる弾幕がそれら全てを打ち落とし事なきを得る。

 

「大丈夫、潤の遅刻はよくある事だから…!」

 

「シャルロット…」

 

ラウラもまた、シャルロットの背後に迫っていたフィーメルイーターをレールカノンで撃ち落とす。

 

 

更に一夏が剣を振るった風圧で多くのイーターを吹っ飛ばし、そして彼を背後から追いかけていたマンイーターも鈴音が連結した双天牙月の投擲で全て切り刻んだ。

 

「そうだぜ、アイツ時間感覚が適当だからな」

 

「全く…遅れた分の埋め合わせはして貰わないと困るわよ!こんなのッ」

 

「そこら辺は信頼できる人ですわ、手土産に期待しましょう!」

 

 

セシリアがBTでイーター共を一掃した後、更に箒が切り込みをかけて前線の押し上げに直接貢献する。

 

此処までの流れは、出遅れ等の要因でデーモンになすがままであった人類側としてはとても大きく、そして犠牲となった命にも十分手向けられる希望がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――しかし、そんな物は所詮風前の灯火にしか過ぎない。

突如海面から飛び出した無数の極太の光が、山なりに飛んで地上に落ちる。

 

「…え?」

 

いち早く反応できた一夏が振り向いた瞬間、落ちた光が数多くの命と共に炸裂した。

…戦車部隊、自走砲、歩兵部隊、他多数の地上部隊がこの一瞬で壊滅した。

 

 

遅れて海面から浮き上がるのは、より多い…そして全身に蛭のような軟体動物や不潔なガラクタを纏った騎士擬きの群れ。

追い打ちをかける様に上空がいつの間にか無尽蔵のイーターで埋め尽くされており、それは現在までの人類の奮闘を盛大に嘲笑うかのようだった。

 

何なんだ、一体なんだったんだ…キャパシティを余裕で超え得る絶望を突然打ち付けられた、そこにいる誰もが固まった。そして戦意までもが亡者のソウルのように儚く抜け落ちてゆく。今目に映る数より少なかった、先ほどまで押し返すためにどれ程のカードを切った事か。ジョーカーやロイヤルストレートフラッシュは無くとも、エースや2のカードなど幾つも切った。

 

 

もう出し切った…出し切ってしまった。それでもやるしかないのだ、絶望する事など許されない。後ろに守るべき全てがある限り…死ぬまで戦ってそのまま無残に四肢を食い尽くされなければいけない。散らした命の数だけ人は生きられる。戦って死ね、より殺してから死ね。どんな汚い手を使ってでも自軍を勝利に近づけろ、これは生存競争という聖戦である。生存競争に清も濁もあるものか。叩き潰されても叩き潰すのだ!

 

死ね、死ね、死ね。敵も味方も死に続けろ!それが…それだけが今に刻み込まれた残酷な運命である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


世界は抗う術 すべて失い 望みを託して 奴らの名を呼ぶ

――――Bloodlines~運命の血統~(作詞:影山ヒロノブ、作曲:影山ヒロノブ)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――だからこそ、だからこそだ。

火は…人の為に投げ入れられた。燃え広がる劫火も全ては、人の敵を薙ぎ払うためなのだ。ソレが今が神の世でなく人の世たるのであればこそ。

 

燃ゆる聖竜は…人々の前に降り立った。

その姿の変わり様は、燃えてさえいなければ誰も【彼】であるとは気づかなかっただろう。

 

 

己を見つめる皆を振り返りもせず【彼】はデーモンの軍団に向けて歩み始めた。襲い掛かるイーターを雄々しく激しく、双斧やNARUKAMI mdl.1で叩き斬り伏せて…周囲に蔓延るデーモンを一通り葬り去ると、その場で立ち止まった。

…その紫水晶のような額の腔には、徐々に徐々に火が溢れ出している。【彼】は地上を踏みならす騎士擬き(塔の騎士)の列を、そして無造作に並ぶ無尽蔵のイーターを見た。その瞳は、確実な絶滅へと追い込む無量大数の殺意に溢れ、それに呼応するように巨格がゆっくりと浮き上がり、ついに額から火が一気に溢れ出す!

 

【彼】は火炎放射を先ずは地面に向けた。そこから扇状に広がる火炎が、地を駆けるデーモンを焦がしながら段々と収束して行く。無数に広がるそれが、ただ一つ…一縷の光と成った時、彼は思いっきり顔を上げた!!

 

 

消える、消える消える!【彼】の額から伸びた、紫の閃光に触れたデーモンは1つ残らず消え去り、無尽蔵に居たハズの軍勢のかなり疎らになって行き、塔の騎士たちも熱されたナイフに触れたバターのように容易く切り裂かれ、そして崩れ落ちて行く!

 

あの絶望が嘘のように消え失せて行く、その光景はしかし希望の光よりも前に更なる混沌にすら見えてくる。訳が分からない…理解が追い付く前に全てが消えてゆくのだから。その紫色の1本は、消しゴムでもあってペンでもあるように“消えた”という情報を“書いた”。

 

 

粗方のデーモンを消し去った時、極光は突如として消えてその出所たる額からは焦げ臭い煙が上る。そして【彼】は間髪入れずに腕をクロスし、身を屈めた。その瞬間!纏う炎が、暗い魂が…そしてその奥に隠れた大いなる虚無が、嘗てと彼方の全てが、【彼】を通して“煌く電光”となりて爆発的に溢れ出した!やがてその煌く電光も火を生み出し、周囲に存在する全てが溶けだして行く…!

 

 

彼が見据えるのは、遥か海の向こうの…巨大な“獣”。それは【彼】という嘗て己をその内側から喰らった最大級の脅威から避ける様に、大津波を起こしながら徐々に徐々にと海面から浮き上がり、やがてその悍ましい全体を露わにしながら、あの遥か向こうの宇宙(そら)へと逃げ出した。

――――それ目掛けて【彼】は、亜光速で飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

迎え撃つは、飛び去り行く“獣”から文字通り生まれ落ちた無数のデーモン。最早マンイーターやフィーメルイーター、そして塔の騎士といった特定の種類に限らない…尖兵や飛竜の群れ、そして偶像や巨大なファランクス達が【彼】を射落とさんと躍起になってかかる。その総てが電光の前に燃えて尽きるとも知らず…必死に足搔く人類を本能の内に嘲笑っていた奴らが、今度はその本能によって必死に足搔こうとしているのは何たる皮肉か。

 

【彼】はファランクスの槍をへし折り、偶像の光弾をかき消し、尖兵共を薙ぎ払って狂気の突撃を続ける。

 

 

結局は、何も変わらない…それでも帰れるのならと、何処までも薪たる【彼】の眼はピクリとも他所に動く事は無い。存在するハズが無かった、より古い記憶が悲しい声で咆哮(ほえ)る。貴様が言った、悲劇などもう何処にも在りはしない…例え喜劇ですらないのだとしても、その毒はただ蝕むだけでしかない厄病だ。

 

【彼】は直角に上方向へと身体を回し遥か宇宙(そら)へと飛び去って行く、同じ様に飛ぶ“獣”をあっという間に追い越し、成層圏を飛ぶ内――――彼はまた、色の無い何かを観た。

 

 

 

何故これを、今この時に?その疑問の答えを探すように、辺りを見回すが色の無い何かにはいつものように何も…否、一つだけ、たった一つだけだ。そのたった一つの“人影”を【 】は見つけた。

 

 

 

それぞれのページに違う絵が描かれたパラパラ漫画のように、目まぐるしく見た目が変化するそれは…よく見ればすべて己があのロードラン、ドラングレイグ、ロスリックの地で見た武器防具のそれであった。

 

…そうだ。そうなんだ、【彼】は“燃えるもの”。薪、それ以上でもそれ以下でも無く。ただ何時までも何時までも過去から這い出る全てのしがらみを奪い去り逝くのみ。古き世界の化身は常にそうであるべしと。何処までも別たれようとも。

 

しかし…この円環は常に、終わる事は無い。例え何が常であろうとも既に常としてあったものがそう容易く絶えるハズも無く、隣り合わせであり続ける。しかし、もしもこの波の平定を望むのであれば…誰かが一人、其の遺産を継いでいかなければならぬ。故に化身達はその傍まで歩み寄り…そして同じ一言を口にしたのだ。

 

 

 

お前は違う。そう言い、【彼】全員が【 】を強く…強く、押し出した。

最後に見えた、その姿はかの“悔み続ける者”のそれであった…。

 

「先ずは100年、キッチリ約束を果たしてきな」

 

悲しみの終わる、その場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

 


「まだ私の声が、聞こえていらっしゃいますか?」


 

 

 

 

 

 

 

<オペレーション『SHINSPARK』完了>

 

 

<警告:【黒檀の帝王】機能停止>

<機体の安定を維持できません>

<システムを緊急停止します>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「まだあの空が、見えていらっしゃいますか?」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ERROR≫

<――――不明なシステムによる、二次移行の誤作動を検知>

<機体の修正を開始します>

 

<――システム『THEORDER』を適用>

<再構築が完了しました>

<二次移行、開始>

 

 

<二次移行が完了しました>

<レガシーオブDARKSOULS、再起動します>

 

 

 

 

さようなら。

<帰りましょう>

また会おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

嘗て、その空にて燃えたもの

 

 

【彼】が目覚めた時、はっきりとした景色で尚やはり明るかった。

赤い炎で轟々と燃える“獣”が、自らと同じように太平洋の片隅目掛けて落下を始めている。もはや予定調和、何処に行ったって見た、何かが燃ゆる光景。

 

そこに居る理由に、彼は疑問を持たなかった――――まだ終わりではない、今までも…今この瞬間も。そしてこれからも。

 

 

急速にPICを起動し、空中で緊急停止しつつ素手のまま構える…そこへ数匹のマンイーターが突撃してきた。

周囲に居たデーモンは先の“煌く電光”の余波で焼き尽くされたのだろうが…しかし何事も完全でなく、こうして生き残りがまだ多くいるわけだ。あの燃ゆる獣も、それはただきっかけを生み出しただけに過ぎない。

 

もうすでに聖竜などではない。それに気が付いていた【彼】は、武器を手にする暇など無いとしてそのまま徒手空拳でマンイーターを叩き落すつもりでいた。

 

 

 

 

 

――――己が視界が暗くなったのはほんの一瞬だった。

バックスタブを取られる時のような冷ややかな感覚を僅かに、そして“ありえないもの”を見た様に呆気にとられるのは瞬く間の変化であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でぇりぁあああああああああッ!!!」

 

聞き慣れた、一夏の声が響き渡る。

真正面のマンイーターを唐竹割りにした彼に続き、箒にセシリア、鈴音…そしてシャルロットにラウラが続々と【彼】を庇うように周囲のデーモンの生き残りへと迎撃を開始した。

 

 

何故ここに?と、【彼】は皆に問う。

 

「ようやくマトモに喋ったな」

 

「他に何かいう事があるじゃないか、兄さん」

 

己が()()()()()()いるからか、それとも状況を急いでいるからか、彼はいいから説明しろと全員を急かす。

 

「佐々木さんが世界のあっちこっちで大暴れしたお陰で、全軍による未確認生命体による攻略戦が始まったのですわ」

 

「お陰で自国内の対処で手一杯だった国からも援護が来て、ご覧の有様って事」

 

鈴音の言う通り、周囲を飛ぶISや戦闘機等の通常航空兵器の数が尋常ではない。

ラファールリヴァイヴだけでなく過去のモンド・グロッソの映像で見た様な機体から全く目にしたことのない試作機まで、そして戦闘機もまた4種以上の種類が確認出来る。

…【彼】は戦闘機の見分けなど出来ないのだが。

 

一先ず状況は分かったので彼は助かったとだけ言い残しそのまま燃える獣へと向かおうとした。が、突如としてシャルロットが「はいストップ!」と【彼】の腕を掴む。

 

 

「先生から、貴様を一人で行動させるなとのご達しだ」

 

「潤だけだと色々心配だからね」

 

『シャルロットの言う通りだ…いくら結果が良くても、これ以上事態が混濁するのは見過ごせん。

というか貴様、言ったはずだぞ?勝手は許さんとな』

 

此処に居る彼以外の6人とそして通信で割り込んで来た千冬にまで今度こそ釘を刺されてしまった。

前科が有り余っているのと、【彼】自身それを自覚してはいるのでどうにも断り辛い状況であった…だが、“獣”の対処を諦めるわけには行かない。

 

 

しかし千冬から飛び出したのは意外な言葉だった。

 

『何も貴様の目的を否定するわけではない、認めもせんがな。

しかし監視は付けさせて貰う、それだけの話だ』

 

彼女が妥協案を出したことに意外そうな顔をする【彼】。

 

『最終的にアレには核が使われることになる、そうなればここいらは間違いなく汚染されるだろう』

 

「そうなる前に、アイツを安全にどうにか出来る方法があるんだろ?佐々木」

 

一夏の問いかけに、【彼】は首を縦に振って頷いた。

この時彼はふと、千冬の妥協案の裏にはこの男の説得があったのではないかと考えるが…今は関係ない事だ。

 

 

一先ず、彼は作戦を端的に説明した…“獣”の体内に突撃して、爆弾を解除すると。

嘗ての世界の言葉・用語による、荒唐無稽そうに聞こえる表現はある程度避けたつもりだ。が…体内に入る、というのは些か“ぶっ飛んでいる”ように聞こえるかもしれない。

 

だが、6人は眉をピクリともさせなかった。

【彼】はもう一度言った、はらわたの中に突撃しろと言ったのだと。しかし皆同じだった…最適解を知る彼がそう言うのならば文句はない、と。

 

 

 

ともかく、本当に先を急がなければならない。

僅かな可能性が、この手から消える前に。

 

各々が、【彼】を中心に自らの交戦距離を念頭に置いたフォーメーションを組み始め、あっという間に突撃の準備が整った。

シャルトットが彼に近づき、その耳元でそっと囁く

 

「今度は…離れないから…!」

 

絶対に…。

遠くなるような声で、最後に囁いた時――――命知らずの旋律が始まり、一斉に“獣”への突撃が始まった!!

 

 

 

ソレを察してか、周囲にいたデーモンが一斉に彼らめがけて飛来する!

【彼】は拡張領域から、かなり久方ぶりに回転機関銃ウォッチドッグオブヘル――の、改良版…名称ハウンドオブヘルを2丁取り出し、援護射撃を開始した!

 

ハウンドオブヘルの援護に後押しされ、最前列の一夏と箒が突貫し、道を切り開いていく。それを更にバックアップするように鈴音が龍咆で中距離を牽制かつ掃討、弱点部位の限られる硬いデーモンはセシリアが担当しつつ、キーマンである【彼】の護衛をやはりシャルロットとラウラが買って出た。

 

 

「一夏!エネルギーは大丈夫なのか!?」

 

「ああ…効率が良くなったみたいだ!そんなに減っていない!」

 

一夏が大嵐の中で放った数発の荷電粒子砲で粗方の敵を薙ぎ払いつつ、直後に箒が光波で残党を打ち払う。が、この時になって白式のエネルギーが急激に低下し、しかも運悪くマンイーターの大群が一気に詰めかけて来ていた。

 

それを見ていた【彼】はハウンドオブヘルを投げ捨てる様に拡張領域に投げ入れ、苗床の残滓を2発同時に投げ付けて前方のマンイーターを焼却!その隙に背後から急襲を仕掛けていた尖兵を雷の矢による、ファリスのような3連射で薙ぎ払った!おまけに組み付いてきた翼付き山羊頭を片手で引きはがし、ファランの速剣で斬首する。

 

「アンタ、火属性じゃ無かったの!?」

 

彼と共に――補給中の一夏、箒と代わって――最前線に並んだ鈴音のツッコミを無視して、無数の追うものたちを展開。小回りが利き、対応力に長けた小盾とハンドアクスを手にした。

 

追うものたちが周囲のデーモンに反応し、追尾を開始するのと時を同じくしてシャルロットがアサルトカノンによる爆撃で着地地点周囲を一掃、いよいよ大詰めが近くなってきたことで、一同に緊張が走る…最初は反応しなかったとは言え、やはり怪物の口の中に飛び込むと言うのは些か身構えるものだ。【彼】だってそうである。

 

 

 

【彼】は、その口を開きかけた――――が、喉から声が漏れる前にソレを閉じ、有無を言わさず獣の口腔へと急降下を開始した!

しかし本拠地周辺ともあって、デーモンの数は先にも増して多い。小盾とハンドアクス、そして癖の強いPICを駆使して落下しながらもどうにか尖兵たちを迎撃しているが、多すぎる。

 

自分の背後でシャルロットもラウラもまた懸命に迎撃を行っているが…もしかすると此処で誰か脱落してしまうかもしれない。

 

 

そんな、らしくない弱音が一瞬過った時【彼】は何処からか聞き慣れない飛翔音が響いているのを感じた。ソレがほぼ上空まで迫った時、強烈な爆破音へと変わった!続く連続した破裂音は早急にデーモンをハチの巣にする力へと代わり、そして彼らの頭上とつま先の下を物凄い風切り音と燃焼音が一瞬で通り過ぎて行く。

 

この時点で7人は、何が起きたのかを確信したのだ。

 

 

 

不意に、彼らの元へ見慣れない通信が入る。

 

『此方グワイヒア隊、今からホビット達とストライダーの援護に回る』

 

『ワーグの群れは任せろ。

君らは安心して火山に指輪を突っ込んで来い!』

 

周囲を見回すと、確かに数機の戦闘機が着々とデーモン狩りを行っていた。

ジョークのセンスは兎も角として…【彼】は風早彦(グワイヒア)達に感謝を告げて獣への進撃を再開した。

 

 

内側に規格の揃っていない鋸のような歯が並ぶ、巨大な口腔がもう目前に迫っている。

しかし目の前には主を護る様に、幾匹かのイーターが飛んで並んでいた。

 

【彼】らは皆、それを力づくにぶち破る準備をした。一夏と箒が刀を構え、セシリアが一番先頭に立つデーモンの眉間に照準を定め、鈴音が龍咆をスタンバイし、ラウラがレールカノンをチャージ。シャルロットはもうアサルトカノンの引き金を少し引いていた。

 

 

――――だが、そのうちの誰もアクションを起こすことなくデーモンは一掃された。

デーモンの背後から現れたのは――――水色のIS、ミステリアス・レイディを纏った更識楯無だった。今まで何処に居たのだろうか?

 

「行きなさい、オルドルインはこの先よ」

 

何故かグワイヒア隊のジョークに乗っかる楯無。それについて【彼】が突っ込む。

 

「だって…私の友達だもの。彼ら」

 

あぁそういう事かと、彼は楯無の手引きに感謝した。

…彼女をガンダルフと呼んで。

 

「せめてガラドリエルが良かったわ。私がイアン・マッケランに見える?

ともかく…幸運を」

 

少なくとも彼女はケイト・ブランシェットにも似ていない。

 

 

 

楯無に見送られながら、あっという間に口腔を通り過ぎ、いよいよ獣の体内へと入ると…そこには鬱蒼とした森のような空間が広がっていた。どうやら外面の炎が体内にまで回っていたようで、低木のようなものは所何処赤く燃え、周囲には火の子がちろちろと舞っている。

 

 

 

生きているデーモンの数は少なく、大半が燃え尽きているか…そうでなくとも非常に未熟な状態で力尽きていた。

 

「これ…生まれてる途中、だったって事か?」

 

マンイーター、あるいはフィーメルイーターの未熟児と呼ぶべきだろうか?そう思われるそれを見て顔を引きつらせる一夏の問いに、おそらく…とだけ【彼】は答えた。体内中に蔓延る“できそこない”達の遺骸を………それでも容赦なく踏み越えて、目指すべき最深部へと急ぐ。言ったろう、生存競争に清も濁も在りはしないと。

 

進むにつれて、デーモンの死骸の数も多くなっていく。

しかし全てが死に絶えた訳では無い…まだ数体ほどに生き残りが確認できる。

 

「やっぱりそう易々とは通させてもらえないか…!」

 

「数は少ないから、何も問題ないわ」

 

数少ないそれらによる襲撃を難なく捌いている内に、その“出元”の存在と出会った。

 

 

 

 

 

まるで女王アリ…若しくは、エイリアンの女王のように膨れた腹を持ち、尚且つその貌は中性的かつ憎悪と怨嗟に歪んだ人の面であるという何とも言い難い異形の持ち主。

 

「うわっ…」

 

先の炎の影響か、所々爛れたそれの穴と言う穴からはマンイーターやフィーメルイーター…その未熟児たちが生まれ落ちていた。いや、生を受ける事を出産と呼ぶのであれば…最早それは違うのだろう。流産にも近い、人の業のメタファー…その塊とも受け取れなくもない様子に、ここまで耐えて来た【彼】以外の面々はそろそろ参ってしまいそうであった。

 

――だが、その女王が彼らを視認してからは状況が一変する。

重々しい身体とは裏腹に、防衛本能の故か突如として機敏に暴れ出し甲高いギャーギャーとした雄叫びを上げたかと思えば、一同目掛けてその細長く鋭い爪をもった爪を振り翳して襲って来た!どうやら蜘蛛の様な太い針金が如き足が数本生えているようで、それらがあの機動力を生み出しているらしい。

 

しかし、突如として“獣”全体がぐらりと揺れ、女王はバランスを崩してその場でよろめいた。

一先ず大事には至らなかったものの【彼】はこの現象で時間があまり残されていない事を悟る。

 

 

あの女王を相手取る暇はない…何か策をと手をこまねいていると、一夏が「なあ」と【彼】に呼び掛ける。

 

「俺はあのデカイのをやるから、佐々木は急いでくれ」

 

突然の一夏の提案はとてもありがたかった…のだが、それに対して不安もある。白式の性能があると言えどもまだ実力の足りていない彼を置いて行く事への不安が、未だに【彼】の足を引っ張っていた。

 

 

そこへ箒が一夏の隣に並ぶ。

 

「一夏だけではない…私も此処でコイツを食い止める。

今度は私達の番だ」

 

きっと…福音戦での一時撤退を思い浮かべているのだろう。

更に鈴音とセシリアもまた、一夏の隣に並んで得物を構えた。

 

「駆け抜けはさせないわよ箒」

 

「その通りですわ!

…一先ずここは二手に分かれましょう、佐々木さん。ご武運を」

 

そう言ったセシリアは、いの一番に女王の頭へレーザーを打ち込んだ。

 

 

 

 

【彼】は残るシャルロットとラウラにも、ここで残るように命じた。

しかしラウラが「それは出来ない」と、きっぱりと断ってしまう。

 

「教官からのお達しは…兄さんの監視だ」

 

「それに、また約束を破るつもり?」

 

彼女らの言葉に対し、何も言い返せない【彼】。

ひとしきり悩んだ末…しっかり付いて来るよう命じ直して再び最奥目掛けて走り出した!

 

 

そんな折に、再び千冬から通信が入る。

 

『佐々木、そろそろ上も核のスイッチに指をかけている…もう時間がない』

 

どうやら今の今まで時間稼ぎをしてくれていたらしい…突撃決行から指示が飛んでこなかったのはそう言う事だったようだ。だがそれも、もうじき限界を迎えるようだ――――しかし【彼】もまた、獣の最奥…無色の霧によって閉ざされたその前まで到達していた。この先へ征けるのは…かの化身のみ。

 

今こそ、過去の清算が行われようとしていた。

 

 

 

 

しかしここに来て、何処かへ潜んでいたイーターたちがあちこちから這い出て、【彼】ら3人へと襲い掛かった。すかさずシャルロットが飛び出し、アサルトライフルの掃射によってその波を押さえつけるその後ろから【彼】もソウルの結晶槍を放ち援護を行う…が…。

 

「潤!僕たちのことはいいから…先に行って!」

 

シャルロットが【彼】を急かす。

しかし…と言い淀む彼に、彼女は「早く!」と叫ぶ。

 

そしてラウラもまた、チャージしたレールカノンを撃ち放った直後に【彼】の方を向いた。

 

「兄さん…私達では、コレをどうすればいいか分からない。知っているのは、兄さんだけだ。

行ってくれ。私達の命が、まだあるうちに…!」

 

 

…その直後、彼の兜が少し上にずらされたかと思うと―――また何か、唇に触れた。

今度は兜が無理やり動いた関係で良く見えなかったが、何が起きたのかは理解した…【彼】は今この瞬間だけ、己も一夏のことをとやかく言えないとだけは思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【彼】は、霧の中へと消えた。

最初に見えたのは…火だ。それでいいのだ…ここが炉である限りそれが正解だ。

 

 

彼は一先ず準備を始めた…火の隣にあった、白いサインへと手をかざす。あの時も、その前のあの瞬間も…これで良かった。だが今回は違う、こんなものはタダの準備の一つに過ぎない。そうして己を見る内に………その手に、武器が握られているのを感じた。

 

改めて【彼】が何者であるのかを知った、その事実は変えようがなく、常に付きまとい続けるだろう。コイツも…何もかも、すべて己が解き放ってしまったために。

 

 

 

しかし…明日もまたそうである訳では無い。

“人”は変われるし、現に【彼】は変われた。あの学園の、皆の元で――――だから、彼は踵を返し、その場から立ち去ったのだ。その場に立ち尽くし、暗くなるまで見届けたのだ。元よりそれが正解だったハズなのだ。漸く清算し切った…此処からは誰もまだ知らない、知るのは【彼】一人のみ。

世界が漂白される…古い凡てが、最初から無かったかのように。

 

 

何も無い景色…色が無い、なんてものではない。

本当に“無”。“虚無”…そうである筈だった。

 

 

 

 

 

獣のデモンズソウルが、あった。

いつの世にも在り続けた…生命の源。

 

その、より強力かつ原初的なそれに手を伸ばし、そっと触れた。すると、みるみるうちに獣のデモンズソウルは小さくなり、やがて完璧に消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

嘗ての時代は、遺産のみが残り、遂に終焉を迎え…誰にも見届けられる事もなく消えて逝く。

しかし輪廻は引き継がれなければならない…故に【彼】はその(IS)に掲げられた律を放つべく、両手を広げた。

 

【彼】のIS…[レガシーオブDARKSOULS]の、コンクリートのような装甲が金色に輝きだし、その幾何学模様が…暗く漂白された空間に広がった。

 

律されたそれが、燃えて消えて逝くハズのこの星の隅々までいきわたって行く。

 

おわらぬ命の限り、この果てなく続く黄金の地を見届けることが出来るのだろう。

己が薄れ、この律の中に溶けて行くのを感じながら…。

 

 

 

 

 

 

何処までも…何処までも何処までも何処までも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…やがて落ちて行くうちに、何か……誰か?

何も分からぬまま、()()()へと手を伸ばし――――最後に残っていた、その指に触れた時…漸く遺産が完結した。

 

 

 

 

 

 

  ■――――――――――――――――■

   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  

 

ある公園のベンチ、間違いなく日本の何処かだが【彼】はその場所を知らない。

しかし悔み続ける者は良く知る場所であるようで、まるで童心に帰ったかのように滑り台を逆走して頂点まで登る。

 

 

「ココにもあるんだ。

ついでに――――やっぱいいや。ともかく何も完璧にはいかん訳よな」

 

階段から降りた彼は何の脈絡もなく、急に何かの話をし始めた。

しかし今度は【彼】も知り得る内容だ…寧ろ今の今まで懸念し続けていた内容でもある。

 

「確かに今後、アレを抜きにしたって世の中は荒れるだろう…が、それは結局どの世界でも必ずプログラムされている、変革のための乱数でしかない。結局の所異端(イレギュラー)など存在しないって訳さ」

 

悔み続ける者は【彼】と同じベンチに座り、手に取ったウイスキーを一口…それだけで「うわまっず!」と吐き出し、瓶を【彼】に押し付けた。

 

「やっぱこんなもん週1で飲んでた親父がわかんねぇや。まだ。

――――とどのつまりお前や、あの一夏とかいう妙に出生のわからん1年坊と同じさ。世界は普遍たるために、変数を幾つか備える」

 

今度は立ち上がった。

この悔み続ける者という男、かなり落ち着きがない様である。

 

「現に“銀”と“嵐”は一夏が持ってたんだな。あ、そういえばお前も“竜”は持ってたんだっけ?

一先ず散らばった奴らに、ルールは設ける訳だ。律、って奴をさ。

あの…何だっけ?アレ、アレだよ。忘れた…まあアレみたいにはならんさね」

  

 

【彼】はベンチから立って、出口へと向かった。

 

   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

  ■――――――――――――――――■

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば、両脇を抱えられて…海辺の浅い所を歩いていた。

身体までずぶ濡れでない辺り、どうやら前の様に大海原へドボンと突っ込んだ訳ではないらしい。

 

…陸の向こうに、手を振る一人の姿が見える。そしてただ此方を見つめる何人かの姿も…いずれも、見知ったものだ。

 

【彼】は両脇を抱えていた二人から降りて、漂着物だらけのその地に立ち尽くした。デーモンの姿形は何処にもない…まるでそれ自体が嘘だったかのように。しかし、黒煙が燻る町がその存在をその爪痕を示している…それが戒めであるが如く。

 

それと、己の仲間たちを見つめて尚も…やはりその足は重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ少し、間を置く必要があった…まだまだ時計の針は進まない。

 

「さあ、兄さん」

 

「帰ろう…」

 

いつかまた、きっと動く…その時までは。

 

 

 

 

 

 

 

 


 「お前は…、人間達の中で生き続けろ…!」

――――いつか、どこかの、ある記憶から。


 




次回で本当に完結です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。