(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
つまりマジモンの蛇足です。
時系列としては最終話後半の不死人、シャルロット、ラウラの合流シーンの前日譚的な扱いとなっております。
ある真実の欠片たち
どうしても、まだ終われなかった。
時計の針を進めるまでに至らない。
後顧の憂いは断つべきだ、最早それが時代だとか使命だとかと関係なく…己自身の戦いだったとしても。
ふと立ち寄った喫茶店で、気分転換の食事を済ませた後【彼】は一度、博士のラボより(勝手に)持ち出した資料を見直した。
これらに最後の手がかりがある筈なのだ。
きっと、アレを仕留めなければ…彼はまた使命を引きずる人生へと逆戻りするだろう。
――――にしても、この喫茶店の名前がちょっとよく分からない。
ジャカ…いや、ジャック・ア…ジェイカーラン…いや、確かドイツ辺りではJは日本語で言う「や行」の読み方を…そこらあたりまで考えた所で、【彼】はもうなんか後で聞けばいいやと諦めてしまった。
ここを紹介したクラスメイトによれば「たらこスパゲッティとタコライスが絶品」だそうで、実際そうだったが…その時店の読み方でも聞いておくべきだったのだろうか。
ともあれ、そんな事を考えている暇はあまり無い。
眼を通した資料を鞄に片付け、そのまま会計を済ませて喫茶店を後にした。
…この時、見知ったような顔とすれ違った気がしたが、どうやら気のせいだったらしい。
顔こそ似ていたが…雰囲気だけは全くの正反対だった。
最初に訪れたのは、かの研究施設だった。
嘗ては「人類の進化の謎を研究する機関」の本拠地として使用されていたその廃墟は、あの一連の事件の中でラウラと共に潜入し…そしてアルベール・デュノアを拉致、あるいは保護した場所でもある。
…そして嘗ての研究対象だったのだろうか、山羊頭のデーモンと(後にデーモンの一種だと分かった)長剣の騎士と交戦した場所でもあった。山羊頭は多少強かったが倒せたものの、長剣の騎士だけは突如現れた男…六多七瀬に任せてしまった。
あの男もおそらくは不死の一人だ…妙な雰囲気だったが、外見以上の年月を生きて来たのは分かる。
正直あの喫茶店前で見た男とは、彼と酷似した顔を持った誰かだった――――この時の礼を言えればいいと思っていたのだが、と【彼】はぼやく。
そして立ち寄った研究施設に関して、結論から言えば無駄足だった。
目の前に移る“解体工事中”の立て看板が全てを物語っている。
元より、この施設は大体18年程前から取り壊しの話が出ていた…丁度この施設で何らかの事件が発生し、機関の壊滅と共に廃墟と化した時期だ。結局は機材や資料等が綺麗サッパリ持ち出される(多少行方になった物がある様だが…)だけに留まり、今日までそれは延期されていたのだ。
ついでに元の出資者は現在も行方不明らしい。
――――因みにこの後、これらの資料をデュノア社の例の一派が入手した様であり、それを元に開発されたのがあの怪物…確か【I-trial】とか言った名前のヤツだ。
シャルロットはその改良の為に必要とされたらしい。アレと彼女が融合させられる等…そんな悪夢が過った所でこれ以上考えないようにした。
すでに工事はかなり進んでいる。
最早得られる物は少ないだろうし、仮に得られるとしても人があまりに多い。
【彼】は踵を返し、崩れゆく研究施設を後にした。
――――ああ、そうだ。今回の話には少し気になる点がある。
この事件の末に死んだ、シャルロットの継母。つまりアルベールの正妻ロゼンタ・デュノアが不死人であった事だ。子供の生めない体質も、不死人であるのなら合点がいく。
1発の凶弾で息絶えた彼女のソウルを…その時既に持っていた“錬成炉”の力でどうにか形にはしたものの、いくら永く生きたといえ一介の不死人のソウルなどたかが知れている。
結局、大したモノにはならなかったし、その意味も分かりかねてしまった。だから彼は…曲がりなり、曲がりに曲がりくねっていながらも“母親”であろうとした彼女の意思を尊重するつもりでシャルロットにそれを託したのだ。
…世の中には、ロゼンタのような隠れた不死がまだまだ居るのだろうか?
いいや、それは全くないと言い切れるだろう…そうでなければ、あの“獣”のソウルを律によって引き裂いた後、彼女の左手薬指に嵌められていた【竜鱗の指輪】に触れた瞬間【レガシーオブDARKSOULS】が完成する等と言う事は起こらなかった。
もう自分以外にいないのだ。
その次に訪れたのは厩舎だった。
自らの足となった軍馬「孤鬼」を拾った場所だ…相変わらず老朽化が目立つものの後7、8年は持ちそうだ。
というか、前に来た時より明らかに片付いている。
先ず敷かれていた牧草が無い…何もかもが綺麗に、というには少々お雑だが、それでも片付けられた痕跡は見受けられる。【彼】が言うのも何だが、本当に雑な片付け方だ。
その証拠に小屋の隅にある、腐食気味の木製テーブル…その足元に、一冊の書物が放置されていた。
中身を確認すると、どうやら嘗てここを管理していた者の日誌だった。
その内容によれば、元は年老いた孤独な金持ちが馬…つまり孤鬼と一緒に購入したようだ。
因みに孤鬼と言う名前は、戦国時代の武将だか何だかの愛馬の後継者と言う意味があったらしい。
そして元の管理者が自身の死期を悟った時、この厩舎を馬ごと誰かに託したらしい。
束博士かと彼は一度考えたが、日誌に明らかに“男”と書かれているのできっと違うのだろう。
獅子兜か、その相棒のクロウ…或いは六多七瀬なのか、もしかすると他の人員をカットアウトでも通して派遣したのか?
人を拒絶しがちな、あの博士にそんな技能があるとは多少思えないが。
日誌の残りは…正直読めたものではない。
老いさらばえて、手の力も脳も弱くなったために筆圧や文字の形が安定せず、読めたとしても恐らく認知症の類の影響で文章が支離滅裂だった。
恐らく生涯の最後に書いたソレは、最早抽象画とも言えなかった。
残るは空白、読み流すまでもなく…ぺらぺらと捲られる無のページ――――である筈だった。
【研究結果報告書第32番】
いきなりこの文字列が現れ、流石の【彼】も多少驚く。
読めるのが不思議なくらい汚い字だ…恐らくこの部屋を片付けた者が書いたのではないか?
また一ページめくる。
【研究結果報告書第11番】
やはりだ、やはりあった。
しかし意味が分からない…何かの暗号か?そう考えている内に、彼は知らず知らず“それ”に引き込まれていった。
【研究結果報告書第42番】
【研究結果報告書第13番(欠番)】
【研究結果報告書第24番】
もう引き返せない。
捲る度にそれが現れて、そこから腕が伸びているかのように彼を捕まえて離さないのだ。
そしてついに、最後のページが捲られた。
【研究結果報告書第15番】
――――気が付けば【彼】は、あの灰の丘にたどり着いていた。
まるで埋もれ朽ちた輪の都を思わせる、その光景は最早見慣れていた。
何を見渡すまでもなく、彼は一歩歩み始める。
――――するとどうだ?あの終わりを象徴するような風景は、一瞬にして美しい自然に囲まれた風景へと早変わりしてしまった。
赤裸々に語れば、こういった現象もここ最近で経験があった。
またこれかぁ、と【彼】はため息をつく。
どうやらこの場所は墓地のようだ…あぁ、そう言えば彼もまたここを訪れていた、と一つ一つ記憶を取り戻していく。あまりに胡乱な記憶だったので、頭に留めておくのも一苦労だった。
現代で言うキリスト系統らしい、白い墓石が立ち並ぶが…形はあまりそのように見えない。
【彼】や私の語彙では表現し辛い複雑な形のそれが立ち並ぶその場所は煌びやかな様で、しかし静かでもあり、死者の寝床としてはこれ以上ないものだった。そして墓石に刻まれた名も多種多様な国籍のものである事に気が付く。
この世界に何があったのだろう?態々墓所を統一する等と…まあ並々ならぬ経緯があったに違いない。
暫く墓石に夢中になっていると、後ろで足音が響く。
その気配を隠そうともしない様子だが、それでも背後に立たれた以上は警戒しなければならない。
【彼】はゆっくりと振り向いた。
其処に立っていたのは、最早言わずもがな…不定形、あるいは異なる法則の中の住人。
いつも【悔やみ続ける者】と呼ぶそのシルエットは、しかし妙に“若すぎた”。
姿形が若いという訳ではない…あの者特有の、最早吹っ切れた様な余裕さが無い。
その表情は余りにも憔悴しきっており、どうも様子がおかしかった。
――――突然、悔やみ続ける者が【彼】に掴みかかる!
「お前がッ…お前がぁ!」
鬼気迫る男の覇気に気圧されて、彼は後ずさる。
一体何がこの男の逆鱗に触れたというのだ…訳が分からぬうちに怒りを買い、恨まれる経験は初めてでは無いが、慣れる程のモノでもない。
「お前がっ、殺して。
…お前があの時!殺してさえいればァアッ!!」
悔やみ続ける者が拳を振り上げる――――その瞬間に景色はまた、あの灰の丘へと戻った。
一体何だったのか、そして自分が殺し損ねたもの…それにはどうも心当たりがあった。
【彼】はその姿を思い浮かべる…その瞬間に、辺り一帯に影が差した。
見上げるとそれは、正しく今思い浮かべていた――――いや、その姿と比べれば大分矮小ではある。
だが、それはあの時消し飛ばした筈の“獣”に違い無かった。
彼は即座に戦う構えをとった…武器は最早剣でも斧でも、ISでも、果てはそこらの板切れでさえ良い。
殴れば、殴り続ければ何だって死ぬのだ。
そうか、これが【 】の姿か。
随分醜くなるものだと独り言ちながら、それを殺す算段を目測で立てていると、何か聞き覚えのある声で「待て!ストップ!」と鼓膜に響いてきた。
「待て!待って…!ホントマジ!ソイツもう殺さんでええから!
待ってって、ほんとに…百円あげるからマジ…」
もう息も絶え絶え…さっきとは違う焦りを纏って近づいてきたのは、やはり悔やみ続ける者だった。
「待て、ほんと待てって。ちょ待てよって。
アレな…もう大丈夫やねん、もう“俺達”の制御下だから…」
そして飛び出す、何やら聞き捨てならぬ情報…しかし詳細を問い詰めると、悔やみ続ける者は「あっそれはまたの機会に…」と妙ちくりんなやり方ではぐらかしてしまった。
続けざまに彼は先の暴挙について語った。
「あ、あぁ…ぁぁ、あの、さっきの“俺”について何だが、本当に気にしないで、貰える?」
気にしないで欲しい事ばかりだな、と【彼】は目の前の適当野郎に文句を言った。
「ハハッ、わり。
――――まあ、その、あの頃の俺は…とにかく余裕が無かった。ずっと“逃れられぬ運命”って奴に、怯え続けていた」
この時、悔やみ続ける者の目はかなり泳いでいた。
嘘を付いている…というよりは、過去に後ろめたさを感じて居る様だった。
それからというもの、この男は「あぁ…」とか「うん…」とか、どう見たってやりにくさが抜けない様子が続いた。
「まさかあの時の自分に、あれだけの権限が付いてるとは…。
ま、まぁいいや――――で?お前…態々こんな場所に足を運んだわけだ。何か相当な理由があるんだろ?まさかゲーム機探しに来た、とか言うなよな…」
最後の言葉の意味は本当に訳が分からなかったが、兎も角尋ねられた事には答えるべきだ。
【彼】は己の目的を嘘偽りなく、赤裸々に話た。
すると悔やみ続ける者は「あー、はいはい」と頷く。
「成程…ねぇ。
それなら、まあ…付いてきな」
彼に誘われるがまま、共にこの灰の丘を歩み始めた。
フィリアノールの“殻”を破った後の輪の都もそうだった訳だが…歩いていて、とても不思議な感覚だ。
…ある程度の時間、進み続けていると“ある事”に気が付いた。
誰か、それも足元の覚束ない人影…女性だろうか?ともかくソレを各所で見るのだ。
何気なしに【彼】は悔やみ続ける者へと、お前の女か?と冗談紛いに問いかけた。
しかしそれがクリティカルヒットだったようで、まだヘラヘラとしていた筈の彼の表情がかなり曇っていた。
流石に謝った。
「いや、いい…いいんだ。
それにありゃ、確かにあいつだが…本人じゃない。俺の、罪悪感だ」
妙に要領を得ない一言だったが、言わんとする事は理解できた。
この空間は確かに精神世界的な側面もある…大方、恋人か妻に大変申し訳ない事でもあったのだろう。
伊達に“悔やみ続ける者”等と名打たれてないわけだ。
「あいつと、スミカ――――娘の為に、俺は“二人目”になった。
お前にも貸した【
お前にも分かるだろ?この後どうなったか…それを口に出さず、悔やみ続ける者は視線で語り掛けた。
確かに【彼】は不死であると同時に“一人目”、つまり【
いいや、彼はまだ
「――――さて、着いたぜ。
この奥だ、お前の目当ては…しっかし本当に殺すのかねぇ?曲がりなりにも…」
悔やみ続ける者に、これ以上言われる前に【彼】は軽く感謝を述べてさっさと入り口の奥へと進んでしまった。
「全く、コイツ非情な時はとことん非情なんだからよ。
――――ま、俺もか。俺も今、奴の立場だったら…そうする、しか、ないよなぁ…本当に、そうであってくれ…」
そしてこの男もまた何処かへと消えた。
まだまだやるべき事は山積みなのだ。
…それはまるで、何かの祭壇…その残骸のように見えた。
いいやこの際だはっきり言わせてもらうと、ソレは“最初の火の炉”に酷似していた。
かつてロードランを旅した最後に見た時と同じ風景だ。
最奥にはグウィンの代わりに…酷くやつれ、異形へと変わり果てた【 】の姿があった。
これはあの男…七瀬の言葉で“玉座”を捨てた際、切り離した自分達と
あれを生かす理由が、もうない。
【 】は立ち上がり、複数の武器を構えた。
足は兎も角、腕は不定な位置から木を接ぐように複数本生えて、まるでタコやクモの怪人のようになっている。
あれが元々“王”であった事を考えと、【薪の王】改め【接ぎ木の王】と言ったとこか。
そして【彼】もまた、ハベルの鎧に流刑人の足甲…そして処刑人の手甲に黒鉄の兜、武器は【黒騎士の大斧】一本で完全武装だった。木を切り倒すには嵐か斧と、いつの世も相場が決まっている。
――――――――【 】が斬りかかってきた!
それを慌てもせず、彼は冷静に相手の懐へと飛び込む事で回避し、すれ違いざまにその足を斧の刃で斬り付ける。
どす黒く濁った血が【 】から噴き出す…だが致命傷には到底至らない。
分かり切っていた事だ…こんなので死ぬ相手だったら、今頃こんな事になっていないし、自分も現世に生きてはいない。
…3本ほどの腕が、手に持つ触媒を用いてソウル魔術を行使し始めた。
おそらく結晶槍かその類だろうと、【彼】は発射の瞬間を見切る為に収縮するソウルを注視した。
しかし妙だ、何故か発射口がどれも下方を向いている。
彼がまさか…と、嫌な予測を立てた瞬間、正にそれが正解だったと知る事になった。
放たれたのは結晶槍などと多少賢しく火力を出すための中途半端なものではない…ソウルの力をそのまま“流れ”としてぶつける【ソウルの奔流】だった。それが3発…どれも薙ぎ払う様にしてぐねぐねと動く。
これには【彼】も面食らった…が、その程度である。
所詮は過去に数度…主に【デーモンの王子】や【闇喰らいのミディール】が行った事の延長線上でしかない…十分に対処は可能である。
―――先ずは1本目。
これを彼は完璧なタイミングで潜り抜けた。
―――続く2本目。
1本目の往復が来る前に、どうにか機会を見計らって、そのまま飛び込んで突破に成功した。
―――しかしその直後に3本目がきた。
流石に肝が冷えたものの、ここまで来たら下手に考えず突っ走る方が良い場合があるのは、彼の経験が告げている。
勢いのままに最後の関門を突破した彼は、追加で迫って来たレイピアの刺突を馬鹿力で弾き返し、そのまま――今度は反対の足を――斬り去った。
今回の一撃は、初撃よりも深く切り込めた。
おかげで【 】は膝をつく。
背後を取った彼は、そこで攻撃を止めなかった。
続け様に斧を振り下ろす、一度のみならず、二度三度…その背中が滅茶苦茶になるまで。
またあの汚れた血液が飛び散り、辺り一面…それこそ【彼】含めて赤黒く塗れる。
再び【 】が反撃を行った…今度は【太陽の光の槍】或いは【雷の杭】を握った手を、意外な事に横振りで放ち、直接彼に突き刺さんとして来た。
これらの奇跡(或いは“太陽の光の力”そのもの)は着弾時に周囲にもその影響を及ぼす。
だが、アレは最早執念の塊だ…爆風等と言うオマケで殺しきれると考えられず、直接この力を叩き込まねば気が済まないのだろう。
無論、そんな大ぶりな攻撃に当たる訳がないと、【彼】は地を転がってソレを避けた。
其処に追加でツヴァイヘンダーの振り下ろしが迫る…流石に文字通り手数が多いだけある。
回避直後を狙われたために避け切れず、仕方なく大斧で受ける事にした。
…刃が柄のど真ん中に直撃した衝撃で彼はかなり後方まで吹っ飛び、しかし勢いに負けて転げる事無く踏ん張った。
そこへ片足の力のみで飛び込んで来た【 】が、2本の大槍を真っ直ぐ【彼】目掛けて突き出す!
これもまた寸での所で回避した彼は、しかし続く相手の2撃目への回避の為に反撃を行う事は出来なかった。
そして続く3撃目…というか、これは曲剣と短剣による乱舞なので先ほどまでの様な躱し方では、なます切りにされる。
だから【彼】は踵を返し、2つの刃の範囲外へと出たのだ。
だが…それを【 】を黙認する訳がない。
すぐさま乱舞を止め、何故か4本ほどの腕を掲げ、そこに闇の力を集中…かなり巨大な【闇の刃】を形成した。
今度こそ【彼】は心からドン引きした…大体自分なのであまり言いたくはないが、そこまでやる必要があるのかと。
有無を言わさず、その巨大な一撃は炉の床へと思い切り放たれた!
それにより炉の中でとんでもない勢いの衝撃が暴れまわったどころか、その衝撃がとうとう炉の壁を突き破り、固く閉ざされていたハズの炉心を吹き抜けにしてしまったのだ!
炉の壁を粉々に突き破って尚、闇の力は留まる事はない。
衝撃波は輪を作り、今も灰の空を飛んでいる。
そして【 】の猛攻はそれで終わらなかった。
今ある腕全てに【呪術の火】を持たせ、それで大火を生む。
この存在は半分こそ“王の残骸”ではあるが、もう半分はISなのだ。
それに見合った…正に無限の成層圏へと至るに足る力が存在する。
その大火は勢いよく地面へと叩きつけられた!
瞬時に生まれたエネルギーは極光となり、それが柱となって天を貫く!
本来火を内に宿すための炉は、その火の勢いに耐えきれず木端微塵に…何もかもが吹き飛んでしまった。
あまりの衝撃で、この一帯が灰による吹雪に覆われた。
今現在もそれで十分な視界が確保できず、【 】は【彼】の生死を確認出来ない。
だが…あの衝撃だ、最早生きてはいないだろう。
相手は不死なのでまたやって来るだろうが…同じことをやってまた送り返してやればいい、何度も…何度も。
しかし不死の巡礼に、そんな都合のいい事はあっただろうか?
寧ろその旅は理不尽に塗れてはいなかっただろうか――――だが、それが反転した時、何が起こるのか。
――――突如、【 】の腕が一本ずつ…計4本吹き飛ばされた!
何があったと衝撃がやって来た方向を振り返ると…灰吹雪に紛れ、巨大なスナイパーライフルとレールカノンを構える1機のISが浮かんでいるのが見えた。
ソレは【彼】――――いいや、今だけは【彼ら】と呼ぶべきか。
…時に記憶の力とは、とてつもない力を生む。非実体的なそれがどうして現世に影響を及ぼすのだろうか…何であれ、それは確かにある。実際に【竜狩りの鎧】は“狩りの記憶”に動かされ、再び動き出したのだ。
コアからコアへ、そしてそれらコアの繋がりが彼のコアがあるソウルへと達し…今の姿があるのだ。
【 】は上空に浮かぶISを敵と見なし、自らのISの力を使ってスラスターを吹かして灰の舞う空へと飛んだ。
…だがその直後、何処かより伸びて来た“紐”に絡めとられ、一切の動きが取れなくなってしまう。
よく目を凝らせば、それは【彼ら】より伸びてきている事が分かった。
それを無理やり、力任せに引き離そうとした瞬間――――【 】へと弾丸の雨が降り注ぐ。
【彼ら】が両手に1丁ずつ持ったヘビーマシンガンから放った弾丸だ。
まるで相手に自らの姿を捉えさせんとするように、縦横無尽に蛇行しながら近づくそのISは、より距離を詰めると瞬時にショットガンへと持ち替え、どうにか繋がっている【 】の右脚を吹っ飛ばした!
片足の喪失に呻くその遺物は、反撃にとワイヤーに絡まれていない腕を用いてジャベリンを投げ放つ!
しかしそれを素直に喰らう【彼ら】ではない。
左手のヘビーマシンガンを拡張領域へと叩き込み、その手で停止結界を展開して飛来したソレを止める。
運動エネルギーを失ったジャベリンはそのまま大地へと落下を始め、灰吹雪でその姿さえ見えなくなってし合った。
眼前の敵を断つべく【彼ら】は、今度は両の手に二振りの日本刀を持った。
オーラ放つその双刀をすかさず振るい、放った光波と共に自らも跳び蹴りを放つ!
光波と蹴り、この2つが【 】へと直撃した事で凄まじい衝撃が生まれる。
これで大きく吹っ飛ばされてしまったその醜い巨躯へ、間髪入れずに衝撃砲のありったけ叩き込む!
見えない弾丸に弾かれ、各所が爆裂していく内…残っている腕を総動員して、今度は“深淵”の力を呼び出してしまった。その力は最早未知数!何が起こるか正確な予測は出来ないが、間違いなく破滅的なエネルギー量が暴れ狂う。
構うものか、どうせここら一帯は終わった大地だ…そんな執念の元どんどんと深淵を溢れさせる遺物の前に、突如として【彼ら】は現れた!
瞬時加速で一気に距離を詰めたのだ!
そして両手で保持した、エネルギー刃の刀剣を用いて深淵の噴出口となっている3本の腕の1つ、2つ、そして3つ!と全て…まるで回り躍るような剣舞で切り落とした。
刀剣の作用により深淵の力は瞬時に掻き消え、遂にはその刃が【 】の胸へと狙いを済ます。
――――その遺物は、咄嗟に盾を用いてその軌道を遮った。
だがそれで止まる【彼ら】ではない…刀剣の刺突を放つ直前、左手の“盾殺し”を付き立て、その硬く…しかし脆い盾を跡形もなく砕いた!
最早【 】に攻撃を防ぐ術は無い。
刀剣が真っ直ぐ…それの胸につき立てられる!その傷口から、遺物のISとしての力が全て抜け出して…でろでろと溶け始めた。
最後の一撃として…よく知ったISの集合体は、一丁の巨大なスナイパーライフルを構えた。
そしておまけに周囲へ数機のBT兵器を展開…全て狙う先は同じ!その不定形の頭…それもゼロ距離だ!
この距離で、その様子では、何も防げない…【彼ら】は一斉に引き金を引いた。
放たれたレーザーは至近距離で炸裂し、ばじゅぅうッ…という、モノがグロテスクに灼ける音を灰吹雪の中に轟かせた。
これを機に【 】は全身が爛れ始めた…最早長くは無いだろう。
だが、それでも確実にとどめを刺さんと、【彼ら】の内側から光を放ち、大斧を担いだ【彼】が飛び出す!
振り翳したその刃が狙う先は勿論、眼前にて無限に爛れ続ける、己の過去そのものだ。
彼は今まで以上に我武者羅だった…もう一夏のソレを笑えぬくらいには。
ズガァアッ!と、渾身の力で振り下ろされた一撃は遺物に巨大なクレバスを生じさせ、【彼】は躊躇いなく…その中へと手を突っ込んだ。
そしてズルリと引き出したのは【 】の中身――――いいや、最早何とも呼ぶ名さえ失った、誰も分からぬ哀れな亡者だ。
亡者は最後のあがきとして、両手を彼の首に伸ばし、それを絞めた。
だが…非力に老いさらばえたその細腕では、彼を絞め殺す事はおろか痕をつける事さえ敵わない。
最早“使命への妄執”に、それだけの力など在りはしないのだ…なぜなら、最早それ自体が完全に要らぬのだから。
【彼】は“ポケット”から、隠し持っていた最後の刃…ロングソードを取り出した。
今、この一人の不死だった男は…何よりも無情である。
亡者の心臓を、ソウルを、この手で貫いた。
そして殴り飛ばし…亡者の遺体を遥か彼方まで送る。
この瞬間からすべてが消えていく…まるで最初から無かったかのように。
結論から言うと、思ったほど晴れ晴れとした感覚は覚えなかった。
ああそうだ、結局のところは“内なる自分”と言う虚無との死闘だったのだ。
何を斃そうが、何を屠ろうが、個人個人が「何であるか」という事実からは逃れられない―――生涯それは付いて回り、いくら逃げてもそれは帰って来る。
…けれども、その人の「生き方」だけは、その事実には縛られない。
一体それが何であれ、行動の自由を奪うまでの力など…今や無いのだから。
True Blue Traveler
作詞・歌:栗林みな実 作曲・編曲:菊田大介
きっと逢えるよ 笑顔と涙を抱いて
君と一緒に…
明日の空は 何色に変わるかな
自分の力で 輝かせてゆこう
知らないこと だからドキドキするね…☆
試したい、もっと… 限界は 決めなくていい
気づいて… 風の声が教える
進もう、次の物語へと…
羽ばたいて 負けそうでも逃げたりしない
君と刻む時を 信じてゆこう
光まで… 笑顔と涙を抱いて
大切な人守るために、強くなれ…!!
まだ【彼】であるこの男が目覚めた時、世界は既に明るかった。
薪という偽りなき実の太陽が、遥か遠くの
彼は直ぐに支度を整え、外へと飛び出した。
実はかなりイリーガルな方法で取得した免許を確認し、原付バイクへと跨る。
…この時、自分の右ポケットの違和感に気が付いた。
中身はペンダントだった…特に特徴的な印のある訳でもない、本当に何の変哲もないペンダントだ。
一先ずそれを持っていく事にした。
いつか、時計の針が動く…その瞬間までは。
はい、終わり。
あ…因みに「もしかして、コレってこういう事?」みたいな感じの質問はメッセージでお願いしますねー、正解か不正解かで答えます。