(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
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…ええの?
何もかもを震わせた…ゴングにもなり得る程重い、最後の一撃。
…だが一撃に伏した者が勝ち、一撃を放ったものが敗北するという奇怪かつ壮絶な最後は、全てに静寂へと導く。
敗者は留まる事をせず、上半身をようやく起こした勝者に背を向けて去っていく。
「…!」
その、遠くなる背中に向かって…手をかざしたって、止まるわけでもない。
やがてカタパルトの奥へ【彼】は進み、セシリアの視界から姿を消した。
「戻ったな、ISを解除しろ。
やり方は覚えているな?」
カタパルトの発射地点まで戻った【彼】は指示通りにアックスマンを待機状態にして、再び生身の状態へと戻る。左の二の腕に巻き付く腕輪がその待機状態だ。
身体がISから解放される際、アックスマンの全長故に結構な高低差から落とされた。
彼はその脚で着地の衝撃をしっかりと吸収して体勢を保つ。
「…代表候補生をあれほどに追い詰めて、まさか自らが課したハンデで敗れるとはな」
あぁ…と、【彼】は千冬先生に指摘された自らの不甲斐なさを何処か眼中にない様子で嘆いた。
「本当、勝つかと思ったんだけどな。
…惜しかったな、潤」
いつの間にか来ていた一夏の―――少しばかり上からのように感じる―――慰め言葉に【彼】は微妙な顔をして内心笑う。どの目線で物言っているのだと。
それはそれとして…と、彼は一夏に修行の成果を聞いた。
…すると一夏は何か不味そうな顔をしだす。どうやら成果は芳しくないようだ。
その隣で何故かそっぽを向く箒。
一夏について来たのだろう。愛しの幼馴染のうしろをテクテクと。
【彼】は仕方ない、とポケットからあるモノを取り出す。
なんてことの無い、ただのUSBメモリだ。
USBメモリを一夏に向かって下から投げた。
突然の飛来物に一夏は慌てて反応し、落とさないようソレを2、3回お手玉した後両手でしっかり握る。
「え…え?
潤、これって……………」
中身はなんてことの無い、先の戦闘記録だ。
別にこれをISに付けて性能が上がるわけでもない、ましてや下がるわけでも予期しない性能変化が起こるわけでもない。
だが、これは一夏に学習能力に劣る部分が無い限り最高のヒントになり得るはずだ。
きっと導き手もそばにいることだろう。
【彼】はその場を去った。
自動ドアの奥へと…その姿は離れていくたび小さくなり、やがて姿そのものを自動ドアが隠してしまった。
廊下には誰もいない、がらんどうだ。
足音がよく響きそうだ…そう思うと、やはり足音が隅々まで行きわたるように響いた。
だが殺風景でもない。
窓から覗く景色は壮大…ではないものの、“生”を感じられる豊かな風景だ。
あちこちで見られる人の営みは彼にとって久しく見ていなかった、(あらゆる意味で)新鮮なものだ。
【彼】は思わず見入ってしまった、幾人もの生の人が行き交う様を。
もしこれが己の業の果てなのならば――――様々な思考が入り乱れる内、遂に【彼】は直視できなくなった。
達成感も疑問も後悔も全ては一度にあるのだから。
己とは何だ…己のソウルとは一体…何を以て個を定義すると言うのだ。
色の無い何かを幻視して、彼は我に返る。
…慌てて窓の先を見渡すが、別にその風景が壊れている事はなかった。大丈夫だ、まだどこにも終わりは来ていない。
―――そうだ、成すべき事を成す。
何故選ぶ義務も無かった、再び剣を握る道を選んだのか…既に自分は、成すべき事を成す事でしか生きられない人間なのだから。
…自分以外の足音がした。
振り返ると、先ほどまで刃を交え合った―――いや、この場合は銃口を向け合ったと言うべきか?―――女、つまりセシリアがいた。
敗者を嗤いに来たのかと問うと、彼女は首を横に振った。
「まさか。
これ以上の醜態を晒すつもりはありませんわ」
彼女の答を聞き、【彼】はセシリアの顔を見た。
…落ち着きが出ている、もしくはこれが本当の彼女か…。
「…何故あの時、態々“左手”を出したのです?」
突拍子もないセシリアの問いに【彼】は目を開く。
そして静かに答えた。態々も何も…と、彼はあの左手は故意でなく自身の油断が招いたミスだと説明する。
だが彼女は納得しない。
「嘘おっしゃいな。あれほどワザとらしくては何を言っても苦しいだけですわ」
何を…と彼はセシリアの勘違いであると主張する。
どうであれ彼女は勝っている、それは誇っていいものだとも付け加えた。
「そうしますわ。
誇れる勝利であるならば…!」
確かに相手の反則で勝ったとあれば、例え軽蔑した相手の自爆という様々な意味でおいしいモノだとしても納得がいかないのかもしれない。あれほど圧倒された後では尚更だろう。
だが、それでも彼女は…セシリアは【彼】に勝利したのだ。
彼はセシリアに背を向け、立ち去ろうとする。
…が、ここで気分が変わったのか立ち止まり、言葉を投げかけた。
曰く、新米の坊主もとんだ大番狂わせかもな。と…思わせぶりに話す。
彼女は相変わらずの仏頂面だ。まあ【彼】とて常に真顔だが。
なにあれ、侮らぬことだと最後に警告を残して立ち去っていった。
そして再び太陽が地平線に飲み込まれ、闇が支配者となる時間が訪れる。
だが人は自ら光を作り、自らの視界を照らすのだ…例え枷であっても光は離しがたいのだろうか。
だがそんな人々も眠るときは光を遠ざける。ただただ睡眠に邪魔だと言ってしまえば“それ”らしいのだが…【彼】にとっては不思議にも感じる。
枷を抱く人々も、枷には嵌められていない…また別の枷に置き換わられているからだ。
眠る必要のない【彼】は、再び朝までの時間をじつと待つことにした。
――――そのうちこの朝まで待つことに飽きて、辟易している所でゲーム機という娯楽を見出すのはずっと後の話である。
そして翌日、【彼】は再び管制室に姿を現した。
既に一夏とセシリアの試合は始まっており、モニターがその熾烈な争いを写している。
しばらくの間、黙って試合を見つめていた。
…やはりと言うか、拙かった。一夏は。
自分ならねじ込んで行くような隙を見逃していくのを見ていると、もどかしさを覚えてくる。
というよりも何故か意地でも刀で突撃しようとする一夏を見て、彼は素直に銃を使えと言いたくなった。ついでに日本人のイメージも偏った。
(彼のIS[白式]が刀しか武器のない事を知るのはまた後だ)
とはいえ一夏が生まれ育った環境は、彼とは違うのだ。
温室育ち、などと言ってしまえばそれまでだが、生まれてくる赤子は環境を選べない。
こんなものか…と、彼は呟く。
「なッ!?さ、佐々木!?」
「佐々木君!?何時から居たんですか!?」
すると箒と山田に驚かれた、それもかなり大袈裟に。
「二人とも静かに、先ほどから居たぞ」
千冬は特に動じなかった。
別に息を潜めたつもりも無かったが、二人にもそういう反応をされるとソチラを基準としてしまい、千冬が素晴らしく優れているように思えてしまうのだ。
実際彼女は、素晴らしく優れた人物ではあるが。
再び画面を注視する。
…やがて、拙くはあるが決して拙いだけではない一夏の努力が浮き出て見えた。
動きだ。
何を見るべきか、何を注意すべきかを分かってないと出来ない動きをしていた。
徹底することは出来ていないが、偶に(新米にしては)驚くべき動きをしてみせている。
とは言え、それでも届かないものは届かなかったようだ。
…セシリアの表情が固い、新米を相手にするような眼では無かった。
とにかく近接装備しかない白式を一方的に潰すよう徹底している。
所謂ガチ、というヤツだ。
彼は一夏に僅かに嫉妬した。
セシリアが此処までやれるのなら、自分にもこれくらいで挑んでくれれば多少噛み応えが違っただろうと。
全く恵まれた男だ…そう口から漏れてしまった。
「その通りだよ。
とは言えだ、あの愚弟はそれに気づきにくい…というより気づかないのが玉に瑕、というヤツだな…」
「本当に…!」
拳を握りしめ、千冬の言葉に強く共感する箒を見て【彼】は何かを察した。
…そういうことである。まったく青い、青臭い。
これでは当分飽きないなと、彼は姿が変わりつつある白式を見つめた。
――――ようやく一次移行である。
不死人、眠れない事をいいことに徹夜型ゲーム廃人化が決定。