(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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ガンタンク…ガンタンク…。



選出。

一次移行を終えてから、その性能に裏打ちされた破竹の勢いで一夏はブルー・ティアーズを翻弄していく。現行機で追いつける機体など限られるような超加速で彼女の苦手な至近距離へと軽々と踏み込んだ。

 

背後より急襲したBTも一つは回し蹴りで、残り全て的確に斬り払って全滅させた。

 

 

まごう事なき圧倒っぷりである。

“白式”という名が示す純白が残す残像は、正に流星。

 

 

だが【彼】はあぁ…と、思わず漏らす。落胆を隠しきれなかったようだ。

彼の見つめる画面には、一夏がその手を何度も握って離す様がしっかり移っていった。

 

「…浮かれているな、アイツ」

 

千冬先生の発言に彼も、やはりかと頷く。

続けて彼の精神的な若さ故の失態も指摘する。

 

新しい玩具に浮かれている、と。

途中までそこそこ良かった動きが急に粗で塗れて台無しであると言った。

 

何分、持ち前のセンスと反射神経がいいだけに(素人目には)それなりの動きが出来ているように見えるのが厄介であろう。

 

 

慣れた気でいる、と【彼】は厳しい評価を下した。もう少しやれると思ったが。

 

「あれはその内単純なミスをする………馬鹿が」

 

 

 

 

…とは言え、技術面はともかく精神面までこき下ろす必要はなさそうだ。

白式のブレードが変形し、エネルギーの刃を生成する。

 

名を、零落白夜…果たしてその業物を生み出したのは科学か、または魂か。

 

 

一夏は言った――――――最高の姉を持った、と。

 

『…けど、もう守られるだけなのはお終いだ。

今度は…俺が守るっ…!』

 

『何を…!』

 

並大抵の覚悟ではなり得ない眼、それを一夏は今持っていた。

 

 

その刃は、純粋だった。

純度の高く…美しい、鋼の刃だ。

 

刃から放たれる美しき光が、何もかもを砕く稲妻のように突き進む。

 

『ッ…!

これで、終わりですわ!』

 

『ぉおおおおおおおおおおおおッ!!!!』

 

 

 

 

――――だが。

 

 

『ッ!見切ってるぜ!』

 

『何ですって…―――――ッッ!?』

 

『トドメだぁあああああああッ!!!』

 

 

…刃がセシリアを掠めた瞬間、ブザーがけたたましく鳴る。

 

 

「試合終了!

勝利、セシリア・オルコット!」

 

―――――――美しい刃では、戦えない。

 

 

 

 

鋼は純粋だと、その純度ゆえに脆くなってしまう。

だから混ぜ物が要るのだ…美しさに、強さを加える“何か”が。

 

物の理において、強さとは“純度”ではなく“不純”なのだ。

 

 

「何…!?」

 

「い、一体…」

 

 

…例の一撃必殺か。【彼】は千冬先生に問うた。

嘗て、彼女…織斑千冬がモンド・グロッソにて優勝した際の乗機[暮桜]の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)[零落白夜]は、自機のシールドエネルギーを糧に一撃必殺のパワーを引き出す諸刃の剣だ。

 

それが何故白式にも表れているかはさておき、恐らく一夏はその性質を知らずに使ったのだろうか…瞬く間にシールドエネルギーが持っていかれて今敗北に至ったのだ。

 

 

 

…まあ、あれで勝っても変に増長してしまう可能性が否めない事も考えれば多少いい薬にはなっただろうか。

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

    ◆   ◆

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

 

自販機が吐き出した缶ジュースへと伸ばした手が止まる。

ソレが一瞬、最後の光景をフラッシュバックさせたからだ。

 

去っていく者へと伸ばす自らの手は何にもならずに終わった…打ち負かした相手―――否、あれを打ち負かしたと?冗談ではないと彼女は残留する屈辱を噛み締める。

 

あのような勝ち方で代表になったとあっては笑い者だ。

プライドの高い彼女にとってそれは許せなかったし、何より今まで守ってきたモノへ付け入る隙を与える事になりかねない。

明日にでも…いや、今からでも辞退しに駆け込みたい気分だった。

 

 

そして二人目の…一夏への感情に関して、セシリアは何も分からずにいた。

彼の顔と、一言一句が【彼】が彼女に与えた一撃以上…重たく身体中を響き渡る。

 

 

一先ず缶ジュースを手に取った。

タブを起こして蓋をあけ、中身を喉へと押し込むように飲む…。

 

 

―――――隣の自販機から飲料を排出した音が鳴る。

セシリアはいつの間にか人が来ていた事に少々驚きながら、チラリと横目でたった今自販機を使った人物を見る。

 

 

「!?、あ、貴方…」

 

…そして二度見した。

口に含んだものを噴き出しそうになる衝撃をどうにか抑え込み、飲み込んでその相手…【彼】をもう一度見る。

 

【彼】の方もまた、あ……という少々間抜けな声を出し、突然の遭遇に驚きを隠せていない。

 

 

「な、な…何の用です…?」

 

とは言うが、【彼】は特に彼女へ用があった訳ではない。

本当に偶然なのだ。偶々興味本位で立ち寄っただけであって、セシリアがいると知って来たわけでもない。

 

その事を伝えると、【彼】も同じく自販機の口へ手を伸ばしペットボトルを取り出した。

 

 

「…ああ、そうですか」

 

セシリアは空になった缶をゴミ箱に捨てた。

彼女が再び【彼】を見ると、なんとペットボトルのフタに苦戦する姿があった。

 

彼女は二度見、三度見した。

彼はそんな非力だったのか?と…あれだけの得物を豪快に振るっておいて、まさかの本人自身は非力な人間だったのだとしたら。別にもうどうとも言わないが先の事実上の敗北がより一層複雑な気分になってくる。

 

 

そう思ってペットボトルを注視していると、ある事実に気付く。

―――単純に逆に回そうとしていたのだ。

 

 

「…逆ですわ」

 

【彼】は自らの間違いを指摘され、正しい方向へ回すと一気に蓋が回り、炭酸飲料特有の開封時の水分が弾けるような音を響かせる。

 

彼は短い感謝の後に中身を飲み始めた。

この男に足りないのはおつむか、それともただ天然なのか…セシリアはため息をつく。

 

 

 

…そして直ぐにペットボトルから口を離して、渋い顔をした。

小さくこう呟く…やっぱり美味くない、と。

 

セシリアからは手で隠れて見えないが、彼が購入したのは好き嫌いが分かれる事で有名な某胡椒医者炭酸飲料である。

 

 

大したやり取りはそれっきり、長く沈黙が続いた。

何か考え込むように座り込むセシリアはともかく、【彼】はもう長居する理由は無いのだが何故か帰らない。

…結局あの不味いモノは飲み切ったのだ。

 

ふと気がついた時、空のペットボトルをゴミ箱へと投げた。

入るべくして入ったような、なんのアクロバティックさもない安定した軌道でペットボトルは弾かれること無くゴミ箱へと吸い込まれていく。

 

そうしてもやはり、静音が場を支配するのは変わらなかった。

 

 

 

 

「…佐々木さん」

 

セシリアがこの音が無いに等しい時間にピリオドを打つ。

 

 

「――…私、代表を辞退しますわ」

 

急な発言に【彼】は、そうか…と淡泊に返した。

驚く者もいるかもしれないが、ともかく彼はそうでは無かった。

 

続けざまに、ならばどうする?と聞く。

 

 

「それは………。

――――貴方にお譲りしますわ、代表の座を」

 

再び、そうか…と答える。

そして彼は続ける。

 

 ならば俺も辞退しよう、俺も目立つのは趣味じゃない。

 

 

心なしか、セシリアは僅かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、俺が選ばれたのかよ」

 

食堂の一角を使った1年A組による、織斑一夏の代表就任パーティー。

ここにきて一夏に初めて事の顛末が(簡潔に)語られたのだった。

 

 

「そうですわ。

あの結果も当然の事ですわ、私が相手だったのですから…」

 

流石だ、そのセンスに俺は到底及びそうに無い…と、やはり高飛車なセシリアに【彼】は皮肉交じりの称賛を送った。

 

「―――それと、大人げなく怒ってしまった事もありますし…。

お詫びの印でもありますわ」

 

 

これに関しては何も言わないで置くことにした。

この一言が本心からくるものであるのは知っていたし、あとなんかセシリアが色っぽかったので面白がって【彼】は無表情のまま、内心ニヤニヤしながら彼女をほったらかしておいたのだ。

 

…だがここで思い出す、自分へのお詫びはないのか?と。

そうこう考えている内に物事はどんどん先へと進んでいく。

 

 

――――突如、カメラのフラッシュが何処からか焚かれる。

カメラや写真に馴染みのなかった【彼】は一瞬身構えるが、カメラがどんなモノであったかを思い出すと構えを緩める。

 

「はいは~い、新聞部でーす!」

 

どうやら新聞部の人間がこちらに来ていたようだ。

 

 

…そして身構え方がやや大げさだったようで、他のクラスメイトが引き気味に尋ねてきた。

 

「えっと、佐々木君?」

 

自らの行動を自覚して、フラッシュに驚いた事を落ち着いて話した。

 

 

「え?カメラに?」

 

「もしかして佐々木君、写真撮られると魂吸われるって思ってるタイプ?」

 

“魂”という言葉に反応して、食い入るように事の真偽を訪ね始める【彼】。

クラスメイト一同は更に引き気味になり、いやいやと手をワイパーのように降って否定する。

 

 

そして面白がった新聞部の人間が更に写真をフラッシュ込みで撮るのを見て、もう驚かんよと苦笑いで返した。

 

「あららぁー。

じゃあ、一夏くんと佐々木君とセシリアちゃんの3人で写真撮ろっか!注目はやっぱり専用機持ちなんだよねぇ!」

 

「三人…」

 

セシリアは喜んでいるのか落ち込んでいるのかよく分からない微妙なバランスの顔をしているが、誰も気がつかない。

 

何はともあれ3人は立ち上がる。

 

 

その際【彼】は何気ないジェスチャーでセシリアに一夏に近寄る様に指図する。

…彼女は「話が分かってますわね」と言わんばかりにウキウキしながら(若干じりじりと)一夏に近づいて行く。

 

そして自らは二人の中央に立った。

…身長は専用機持ちの中で一番高い(というかIS学園内でもトップクラス)ので顔が隠れる事は無かった。

 

 

「は~い、もうちょい笑顔で…あ!、一夏くんとセシリアちゃん、握手とかして貰えるかな?そうそうそんな感じ…じゃあ佐々木君腕組みとか…いいねぇ!威厳出てるよー!

いくよ~、はいチー…」

 

 

ここで【彼】の悪戯心が働く。

ジェスチャーでクラスメイト全員が写真に参加するよう指図し始めた。

 

一瞬で僅かなジェスチャーの意図を理解したクラスメイトの面々はあっという間に群がり、専用機特集となるハズだった写真は急遽予定を変更してクラス写真になった。

新聞部としてもコレはこれでおいしいモノである。

 

 

…尚、一番煮え湯を飲まされたのは人物は。

 

「な、何で全員映るんですのぉ!?」

 

ぷんすか、という擬音が尽きそうなくらいプリプリ起こっていた。

 

 

「…フン」

 

そして先程から仏頂面で居座っていた箒も、一夏に寄り掛かる形でちゃっかりセンター付近に陣取っていたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…始まりの物語は幕を閉じるのだった。

だが、彼という不死の物語に終焉はない…終わって尚、何処かで繰り返してやがて巨大な渦に姿を変えて一つの巨大な歴史へと成る。

 

誰かが覚えている限りは終われない、きっと誰かが覚えている。

そして感染する。

 

 

3度目が、世界を喰らい尽くす事も光を奪うことも無い…“優しい”記憶であるなら繋ぐ価値はあるハズだ。

 

 

 

そのためには、しがらみを取り払わなければならない。

殺すもの、継ぐもの、終わりのないジレンマを乗り越えて不可能をもねじ伏せ、しがみつく古い影さえも断ち切らねばならぬ。

 

ひらくもの、その使命のために――――――――敵を叩き割り、壁を砕き伏せる斧兵(アックスマン)ともなろう。

もう、古さが横行して新しい全てを封じる時代は散々だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして使命が終われば…また、静かな場所へ…。

 

 




でさ、ガンタンクって何すりゃいいの?
これISとダクソだよ?

いやまあ、自爆なんだけどさぁ。
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