(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】   作:エーブリス

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遅れて、申し訳ありませぬ。
今こそ、成すべき事を成す…。





あ、今回はオープニングみたいな話なので内容はヘルシーです。


訪れ。

ちろりと建物の頭から朝日が覗く。

日の出だ。それが真っ直ぐに刺し貫くような光線を放って、部屋を暖め影を照らす。

 

光と熱の見せる幻影は【彼】に懐かしさを呼び起こす、その懐かしさに導かれるように温かな記憶が湧くような錯覚さえ…。

嘘を言うなっ!

――――全てはまやかしだ、彼にそのような温かみのある記憶は無い。

現実とは冷たく暗い、そして乾き切った無情が全てだ。

 

 

現実の無情に叩きのめされた太陽の男がいた。

追い求めた太陽が如何なる無情であったのか…知る術など今は無い。

 

 

 

 

…もう今はあまり関係の無い話だ。

彼はゲーム機の電源を切って、コントローラを台の上にそっと置いた。

 

一晩中被っていたヘッドホンを首に掛け、耳から久方ぶりの空気を存分に感じる。そして彼はハンガーの制服に手を伸ばした。まだ食堂や教室等の施設が開く時刻よりかなり早く、どのクラスメイトも目を覚ましてはいない…ましてや寮長の織斑千冬ですら起きている可能性が低いが、ゲームも飽きてきた所でこの部屋にやる事などない。

 

静かに扉を開けた先の風景は、無人の廊下だった。

寮の廊下など、元より人が集まる場所でもないがそれでも此処まで人気が無いと寂しさも返って清々しいものだ。

 

 

 

寝ている人を起こさぬように、足音に気を付けながら廊下を歩く途中彼は見慣れない人間がいる事に気がつく。いや、世界中から幾多の人間がやってくるこのIS学園では知らない、面識のない人間はいくらでもいる…のだが、流石に見かけただけの人間は生徒の半数はいると【彼】は自負している。

 

その中でも特に目に付くのは、制服に独自の改造を施した生徒だ。

ある程度の制服の加工が許されているこの学園では、多くは無いが独特な制服を纏った生徒がちらほらと見られる。

 

それらに(ペアルック風等を覗いて)全く同じものは決してない、千差万別である。

…視界の先の、小柄な彼女もそうだ、例に洩れずオリジナリティ溢れる改造制服だ。

 

 

【彼】はどうも、あの制服と顔を見た覚えがないと感じている。

とはいえ転入生も然程珍しい話ではないと聞く。そういう事もあるのだと一応の納得はした。

 

 

 

 

 

あの少女は迷ってるわけでも困っているわけでもないので放っておく事にしたようだ。

 

彼は食堂には向かわなかった、不死故に腹が空かない。

飯など娯楽程度だ、気分でなければすることも無い。

 

真っ直ぐに教室へ向かった。

――――そんなわけで、【彼】が食堂にいるのはかなりレアなものとなり、果ては青い鳥のような扱いまでされているのは彼の知るところではない。

 

 

 

 

あっという間に教室前についた。

だが、教室の自動ドアは一向に開く様子を見せない。

 

当然ながら鍵がかかっていて開かないだけである。

今になって開くはずがないことに気が付くも後の祭り、立ち往生をする羽目になってしまった。

 

 

【彼】は仕方がないと言わんばかりにため息を軽くついて自動ドアにもたれかかり、教室が開くのを待つことにした。

 

 

気が付けば色の無い何かが見えてくる。

自分が何者であったのかを悟った時から、“己”に狂いが生じた。何もかも食らおうと。

 

だから彼は使命を選んだ。

二度とあの獣を解き放たぬように…。

 

 

最初の戦いには勝利した、次なる戦は―――――――

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

     ◆   ◆

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

光はいつか闇へ、そして闇が…もしくは他の何かが光へ成り代わる。

そして闇に転じた光は奈落の底で眠り、深く暗いところで誰からも忘れられていく。

 

暴かれるべくして暴かれる真実もある。

影に光を射す者はいつの時代もいる…いつからか人が闇を恐れたその時から、そして神を疑い始めたその時から暗闇を暴くものは生まれた。

 

 

人は今や、自ら“闇”を払う術を持った。

皆こう言う。「闇など元より存在しない。ただの幻だ」、それだけで払える闇があるのだ。

 

 

「チッ…。

お前か、何の用だ?」

 

織斑千冬が忌々し気に端末を手に電話に出た。

…どうやら電話の相手がかなり一方的なようで、彼女が発する言葉は「ふん」だとか「ほう」「それで?」等合いの手のような返事のみである。

 

いつしかその返事すら面倒になったのか一言も言わなくなったが、向こうの話を一通り聞き終わったのちに再びその口を開く。

 

「―――――――――ほう?お前が久しぶりに電話を寄越したと思えば…。

いつからお前は鞍替えした?え?」

 

どうやら相手に似つかわしくない話題であったらしい。

また彼女に無言の時が訪れた。

 

 

…今度は、次第に眉間の皺が増えていく。

何か、聞くべきでなかった厄介事を持ち込まれたかのように…。

 

 

 

 

「……………私からはこれだけ言っておく。

マトモであれば考える、以上だ」

 

その一言を最後に、彼女は通話をバチッと切った。

一層眉間の皺が強くなり、目つきも険しくなる…まだ彼女の周囲に人はいないが、居たのならきっと遠ざかることだろう。

 

やがてちらほらと生徒が起床し食堂に向かう時刻になっても、その眉間の皺は解れなかった。

 

 

太陽は望むことなく死にゆくこととなった。

そして闇もまた深淵のさらに奥底…即ち“虚無”へと追いやられた。

 

誰の記憶にもとどまらない、覚えている者もまた皆太陽と闇と共に虚無へと沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 俺は血を飲み干した。もう誰も絵画を描かない

 俺は火を我が物にした。もはや継ぐべきモノはない。

 

 

 

僅かな振動と音は、【彼】を色の無い幻視から解き放つ。

ドアが開いてもたれかかるものも無くなり、彼は大きくバランスを崩して背中から倒れた。

 

背中を打つ衝撃は大したことないモノだ、だがこんな醜態を晒した自分を彼は恥じた。

そちらのほうが“ショック”だっただろう。

 

 

だが起き上がれば良いだけの話だ。

その程度なんの苦も無く立ち上がり制服の埃を払った。

 

そして自分の席に座って、背もたれに寄りかかり再び寛ぎ始めた。

 

 

暫しの間彼は待つことになるだろう。

いずれ来る誰か、そしてやがて来る最初の試練を。

 

 

 

 

 

 

偽りなき実の太陽あれ

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