(完結)成層圏にて燃えるもの【IS×DARKSOULS】 作:エーブリス
ちゅうか!本当にマジで遅れてすみませんでしたあああああ!
途中まで書いてそっから3か月以上放置だよ!?↑の浅倉やら王蛇云々も「コレ何時書いたっけ?」ってレベルですよ!
とにかく、すんませんしたぁ!
という訳で、酢豚の香りが一切しない酢豚編ラスト、どうぞ。
幾多の魂を束ねても。鋼鉄の身体がひび割れ、業火を全身から吹き出す。この終わらぬいのち、欲しいならいくらでもダークリングにくれてやろう。闇の中に生まれ、闇の中へ潜み、そして始まりの炎と共に闇を切り裂いた者の極意の刃を知るがいい。
王たる意味を今お前に分からせてやる!
来るべくして、その時が来た。
試練だ、試練の時だ。生きとし生けるもの全てに降りかかる苦難だ。よくあるのがドラゴンの火炎を避けながら前に進むような事で、ある時は地上と地下の鐘を鳴らし、ある時は一寸先も白く隠す吹雪の中を突き進み、ある時は毒沼に長時間浸かり毒に全身を犯されながら火を消して回り、ある時は狂ったように入り組んだ臭い地下を長時間歩きまわり、そしてある時は一人で屈強な複数の戦士を相手にしなければならない…そのような試練の時が。
アリーナのバリアを破壊するというダイナミックの中でも相当ダイナミックな
同時にアリーナの観客席が封鎖、さらに学園全体のシステムがダウン。
アリーナやVIPルームには数多くの人が閉じ込められ、取り残された。
そしてアリーナ観客席ではない、どこかの一室。
…【彼】もまた閉じ込められた一人である。
閉じた分厚いシャッターを何度も蹴るが、日本で一般的な学校のシャッターとは違い対テロ対策も考慮されたそのシャッターを人力でぶち破ることは(当然ながら)不可能だ。応援を要請するために携帯端末を使おうとするが、妨害の類か…それともただ単に電波状況が悪いのか圏外に居るようだ。孤立無援…これほどに今の彼を表す言葉が他にあろうか。
…だが、力がないわけではない。
更に言えば、【彼】は今最も強烈な力を持っている。
彼は直ぐに実行した。
“保護者”曰く、アックスマンのパワーアシストはそんじょそこいらのISとは比較にならず、拳の一撃だけでも単純な運動エネルギーに限った場合、現行のIS用キャノン砲の1.5倍近い威力があるらしい。そして【彼】自体の地力もソウルを己の力としたことで並の人間と比較にならない。パワーアシストがどのような仕組みで動くかは定かではないが、この二つを単純計算すれば多少分厚い鉄板など訳ないという話だ。
その分かりやすい力量計算に全ての望みをかけて、右腕のみISを纏って大きく振りかぶった。
一瞬、彼に疑念が過った――――――――修理費の事だ。
だがそんな些細な事は直ぐに頭から離れた、後でどうにでもなると。
…聞く者の背筋を凍り付かせるような、すさまじい金属音が響いた。
望み通りシャッターに穴は開いた。全壊という訳ではなかったが、この穴ならば人一人通る程度問題ないだろう。
彼は直ぐにシャッターを通り抜けて全力疾走した。ISは右手だけ展開してもバランスが崩れるので再び待機状態へと移行させ、制服も上だけ脱いで着込んでいたISスーツを露出する。
再びシャッターと出くわしたが迷わず右手にISを纏い助走のついた勢いのまま拳を振りぬいて、今度は先ほどよりも一回り大きい風穴を開けた。流石に修理費が気になっては来たが。
風穴を飛ぶように走り抜け、それっきり彼を阻むものは何もなかった。
この時から既に【彼】はこれより迫る、更なる気配を悪寒と共に感じていた。
過去の陰我が這い上がるようなその気配がすぐ近くにあると…彼は、彼だけがそれだけを確信していた。
さあ、気が付けばアリーナは目の前だ。
確信が実体を持った今、既に巡礼者たる戦士の目をしていた【彼】は何にも構わずに駆け出した!そして飛び上がる!
戦の貌はすべて全身装甲に隠れ、そこにあるのは無機質な殺意を持つ一人の不死であった。
――――――――――――――今、このアリーナで渦巻く運命はさらに過酷な形へと変貌する未来が確定した…!
一夏と鈴音は巨腕の侵入者と対峙しており【彼】の接近に気が付かない。
しかし侵入者はすでに彼の姿を捕捉していた…が、最早状況は侵入者が【彼】の相手をする余裕さえ許していなかった。その高い性能が既に“更なる脅威”を彼以前に捉えていたからである。
【彼】が斧を大きく振りかぶった時になって初めて二人がその存在に気付くものの、時すでに遅く先のゴーレムに遅れて続く形で、一条の光がバリアーを紙のように突き破りアリーナの地面に着地する!
ソレが着地する瞬間を狙っていた【彼】は、斧に渾身の力を込めて振り降ろし、準備が整う前にカタを付けようと試みる!
―――――――――だが、その先手必勝の刃は、同じ刃によって防がれた。
やはりと言うべきか、落下物はIS…しかもその身を優に超えるような、長い刃の大剣を担ぐISだ。
ツヴァイヘンダー…そう言うべき得物を持つISはその大剣でアックスマンの斧を弾き返し、横薙ぎを繰り出す!
【彼】はその横薙ぎを、大剣の刃の上を転がるようにして回避する。
大きな得物は、振り切った時大きな隙を晒すことになる。
そこを見逃すことなく彼は再び斧を振り上げて、今度こそと力強く踏み込む。
だが、相手もそう単純な隙を晒して果てるような愚鈍さは持っていなかった。
重量が邪魔なだけの大剣を捨て、代わりに直剣を引き抜いて斧の一撃を受け止める。
―――――――――鍔迫り合いが始まった!
アックスマンの狐のような5つの目は、謎のISの獅子が如き兜と睨み合う。
パワーは対格差の割に拮抗している、相手は比較的細身の直剣で斧を受けているにも関わらず何ら苦を感じていないようだった。
戦いが膠着状態に入りかけた時、彼らの上空で何かが動いた!
紙飛行機を鋼鉄で作ったようなソレが両者の上空を一瞬で駆け抜け、遂にはアックスマンの背後からマシンガンを掃射した!
背中に強烈な弾幕を受けた彼は怯み、その隙に獅子兜の男がアックスマンのガードを崩して腹に直剣の刺突をたたき込む!
―――――――――――――――――――そうだ!奴が、あの飛行物体が“突撃”でバリアーを破ったのだ!
ISの絶対防御がある為に、かの地での戦闘のように刃が体を突き抜けることはないが衝撃そのものはどうしようもない。しかし【彼】はそのISの特徴が非常にありがたかった。
衝撃で後ずさる勢いをそのまま後退に使い、一夏とのトレーニングで使用した大剣(こちらはグレートソードのような物だ)を呼び出し、今度は飛行物体へと斬りかかった!
だが、飛行物体の機動能力は凄まじく、その縦振りの一撃をひらりと紙一重で躱して獅子兜の元へと合流した。
…一先ず【彼】は、それで良かった。流石にあの出鱈目な一撃でアレを倒せるとは思ってはいない。
2体の目的について彼はある程度の予想が付いていた。今、後ろで一夏や鈴音と戦闘を行っている巨腕の侵入者だ。
奴らの目的は、アレの鹵獲…そう目星を付けていた。
―――――――――突如、コアネットワークに通信が入る。
一夏や鈴音、そしてセシリアに箒、というか学園関係者はおろか“保護者”でもない。
顔は隠されている…が、何となく何処からの通信であるのかは察した…そうだ、目の前の獅子兜か紙飛行機だ。
やがて、低く暗い声が【彼】へと響く。
『…目覚めて大分経つようだが、変わらんな』
要領を得ない相手の言葉を、それでも黙って彼は聞く。
『良い巡礼者ではあるようだ、当然だがな。
使命のために厳格で、そして冷酷…それでいて核心には愚鈍だ』
何が言いたいのかは分かるものの、何故それを言いたいのかが掴めない。
だがしかし、彼は一切の質問をしない。するだけ無駄であるともとより悟っているからだ。
『…いずれ現れる、心しておけ』
最後にそれだけを言い残して、紙飛行機が再び突撃でバリアーを破り、それに続いて獅子兜もまた飛び去ってしまった。【彼】は追いかけようとするが、直ぐにバリアーが再起動してしまい、その頃には獅子兜も紙飛行機も遥か遠くへと退いていた。
…獅子兜、または紙飛行機のどちらかは、何かの出現を予期していた。
しかし、その“何か”の詳細については語らなかった。大まかな概要であっても言い残して行かなかった。
―――――――――――――――――――彼の背後で、一条の光が走った。
どうやらセシリアが駆け付けて、あの巨腕を仕留めたようだった。
…何はともあれ、試練は一先ず終えた。
その場をどうにか凌いだのだ。どうせまた何か来るだろうが、一々考えていても終わらないので彼はともかくと言わんばかりに足を動かし帰投した。
…ピクリ、【彼】の足元でソイツが動いた。
例の巨腕だ…かなりしぶとく作られたらしい。
あっ、と素早く気付いた彼は流れるように大剣を突き刺し侵入者をシメた。
ついでに四肢を砕き、頭部も捻っておいた。
これほど念入りにシメをやっておけば例えナマズのような生命力があろうとも動かぬだろう。
再び帰路につくと、他の専用機持ちが唖然とする様子が飛び込んできた。
無理もない…死んだと思ったら動き出したのだ。彼がすぐさま対処してくれたとは言え、何か間違えれば一大事も考えられた訳であって肝も冷えたものだろう。
◆ ◆ ◆
彼は“保護者”への報告を終えた。
そして報告に対しての返答も「それで良し」というものであった。
ゴーレムの件も取り合えず学園が回収し解析をかけているらしい、そして残りの2体についても捜索中とのことだ。
しかし見つからないだろうと、【彼】は予測する…剣を交えたのと、数分の(一方的な)会話から既に理解していたが、紙飛行機はともかくとして獅子兜は、彼の同類だ。
つまりは不死…或いはロードラン、ドラングレイグ、ロスリックといったあの火継ぎの世界の住人だ。
その男が最後に何かを警告して去っていったのだ…今回の件は想像以上に面倒臭い。
…あとついでに鈴音(というか中国)の件は全くのシロだそうだ。
で、だ。
その鈴音と言えば、誰もいない食堂で(余程疲れたのか)椅子で眠り込んでいる一夏にやたら顔を近づけている。
【彼】はため息をついて、食堂を去った。
やたら色が付いている…と。
色に溢れたあの場所に、彼は居場所を感じられなかった。
それで良かったのだ…遺物に場所がある事がおかしい。
―――――――――――――――――――だが、運命は彼を放っておく気はないようだ。
彼は無色ではいられない…いずれ何かに染まらねばならぬ。
次の試練は、或いは色分けか…。
次はねんがんのしゃるらう回だ!
という訳で本当に何時になるか分からんけど、次回もお楽しみに!